- 更新日 : 2025年5月15日
回収代行サービスとは?種類やメリット、導入方法、選び方などを解説
代金回収は重要な業務ですが、担当者の工数がかかるだけでなく精神的な負担も大きい傾向にあります。回収代行サービスを利用すると、企業は業務を委託して上記の課題を解決し、効率よく経営を進めていくことが可能です。
本記事では回収代行業務の種類やメリット、導入が向いている企業、回収代行サービスの選び方などについて解説します。
目次
回収代行サービスとは
企業間の取引に多い掛取引。掛取引を行う場合は、商品やサービスを提供したときには代金を受け取らず、後日、売掛金を回収します。
事業者自身が回収業務を行なうこともできますが、取引先によって債権の回収方法や回収期限が異なるため、取引先が多い事業者であれば対応や管理に工数が掛かってきます。特に売掛金は月末などに回収期限が集中するため、担当する従業員の負担が大きく、場合によっては時間外労働が増えるなどのデメリットもあります。
また、取引先の中には期限に遅れたり、請求しても連絡がつかなかったりすることもあるかもしれません。そのような場合には電話や手紙、実際に取引先の会社に訪問するなどして督促を行いますが、スムーズに進むとは限らず、従業員にとっては工数がかかるうえ、精神的にも疲弊する業務となります。
回収代行サービスは、このような業務を代行し、売掛金などの債権を回収するサービスのことです。回収代行サービスに回収業務を一任すれば、忙しくなりがちな月末も余裕を持って迎えることができるでしょう。入金確認や督促などのストレスの多い業務からも解放され、従業員の心身の負担を軽減できます。
回収代行サービスの種類
回収代行サービスは大きく分けて、集金代行サービス、決済代行サービス、ファクタリング、債権保証サービスの4種類があります。
回収代行業者がこれらのサービスすべてを扱っているわけではないので、依頼したいサービス内容を決めてから回収代行業者を選ぶようにしましょう。
集金代行サービス
集金代行サービスとは、請求から代金回収まで代行するサービスです。家賃や月謝のように、毎月決まった金額の支払が発生する取引に適していると言えます。
集金代行サービスでは、請求から集金までの一連の業務を引き受けており、依頼者の手間を削減できます。また、担当者が現金を扱うことがなくなるため、盗難などのリスクを抑えられるのもメリットの一つです。
決済代行サービス
決済代行サービスとは、決済サービスを導入する企業と決済手段を提供する金融機関をつなぐサービスです。
キャッシュレス決済が普及している現代では、顧客が選ぶ決済手段は多岐にわたります。顧客のニーズに対応するためには、自社で各決済手段を導入する必要があり、決済機関ごとの契約が必要です。決済代行サービスではこれらの契約を代行するため、契約の手間などを省けます。
また、BtoB向けの決済代行サービスでは、決済業務に加えて与信審査などを代行するサービスもあり、請求業務などの工数も削減可能です。
ファクタリング
ファクタリングとは、まだ回収ができていない売掛金を買い取ってもらうサービスです。
「売掛金の入金日までに回収を進めたい」「急な支払が必要となった」などの場合に、ファクタリング会社に債権を売却することで現金を受け取れます。また、現金化することで、売掛金が未回収となるリスクを低減できます。
なお、ファクタリング会社に債権を売却する場合、手数料が差し引かれて入金されるので注意が必要です。
債権保証サービス
債権保証サービスとは、回収予定の取引先が倒産した場合などに利用できるサービスです。契約によって回収額の全額もしくは一部を保証してくれます。取引先の経営状態についてすべて正確に把握することは容易ではありません。債権保証サービスを利用し、万が一の事態に備えることができるでしょう。
なお、債権保証サービスには次の3つの種類があります。
- 取引信用保険
- 個別債権保証
- 保証ファクタリング
取引信用保険とは、取引先からの代金回収が困難になったときに保険金で損害を補う保険会社のサービスです。基本的には売掛金全額が保証の対象となります。
個別債権保証は貸し倒れなどの損害を保証する保証会社のサービスです。取引や取引先ごとに契約することができるため、特定の取引先との間に売掛債権が複数あるときなどにも利用を検討できます。
保証ファクタリングとは貸し倒れなどの損害を補てんするファクタリング会社のサービスです。複数社まとめて契約することができます。
回収代行サービスのメリット
回収代行サービスを活用すると、多くのメリットがあります。それぞれのメリットについて紹介します。
回収業務の負担軽減を軽減できる
サービスによっては、請求書発行や送付から、入金確認や督促まで、ワンストップで対応している回収代行業者も少なくありません。このようなサービスを利用すれば、回収関連のさまざまな業務負担がなくなるだけでなく、督促などのトラブル対応も不要になります。
貸倒リスクを低減できる
回収遅延などが生じると、取引先への督促などが必要です。また、督促を行っても、債権が回収できない場合もあります。
未回収の債権に関して督促をしてくれるサービスやファクタリングなどの回収代行サービスを導入すると、貸倒リスクを低減できるでしょう。
本業に集中してビジネスを拡大できる
請求業務は月末などの特定の時期に偏る傾向にあります。従業員が少ない事業所や、取引先が多く経理担当者だけでは請求業務を行うことが難しいケースなどでは、本来の業務も行いながら請求や回収の業務をすることは大きな負担です。
しかし、回収代行サービスを利用すれば、忙しくなりがちな月末も本来の業務に専念できます。請求や回収業務のために時間外労働をするケースも減らせるため、働き方改革にもつながるでしょう。
顧客管理が簡単にできる
回収代行サービスの中には、顧客の情報を一元管理してくれるものもあります。
顧客の情報、回収条件、提供している内容など、管理すべき情報は多岐にわたり、入力作業にも時間がかかります。顧客の情報管理が可能な回収代行サービスを活用すると、これらの情報管理にかかる手間を削減して、担当者の負荷を軽減できます。
回収代行サービスに向いている企業や業種
回収代行サービスを導入すると業務の効率化などが期待できるため、どの企業でも導入メリットがあります。しかし、その中でも特に向いている企業や業種があります。ここでは回収代行サービスに向いている企業や業種について紹介します。
サブスクリプション型サービス
毎月定額のサブスクリプション型のサービスは、クレジットカードによる支払、口座振替あるいはコンビニ払込票での支払など決済方法が多岐にわたります。それらを管理するのは非常に煩雑です。
また、場合によっては、定額のものに追加でサービスを選択するなど、ユーザーに応じてさまざまな支払い形態が考えられます。そのような観点でもサブスクリプション型サービスは管理が複雑になりがちです。
不動産管理
不動産管理も回収代行サービスに向いている業種です。振り込みや口座振替がほとんどですが、振り込み忘れや振替ができなかった場合には回収の督促が必要です。
家賃保証サービスを提供している回収代行サービス業者に依頼することで、一定期間の家賃などが保証されるほか、回収や督促にかかる業務の負荷も軽減できます。
リース会社
リース会社では毎月発生する利用代金の回収と、更新料や消耗品の購入などスポットで発生する代金の回収があります。
毎月であればわかりやすいですが、スポットの代金回収といった煩雑な管理を行う場合には、回収代行サービスの活用がおすすめです。
学習塾
学習塾の学費が現金納付であれば、場合によっては子供に現金を持たせなければなりません。また、学習塾によっては費用が高額になるケースも多く、紛失や盗難のリスクが生じます。
さまざまなリスクの予防として、口座振替や振り込みができる回収代行サービスを導入するのがおすすめです。
現金納付時の紛失、盗難リスクを抑えられるだけでなく、業務の効率化や保護者からの信頼獲得なども期待できるでしょう。
回収代行サービスの導入方法
回収代行サービスを導入するには、まずWebサイトなどでサービスを提供している業者を探し、見積もりを依頼します。
それぞれの会社の見積もりを入手したあとは、提供しているサービスの範囲、金額、実績などから導入会社を絞り込みます。
導入する会社が決まったあとは、申し込みを行い、代行会社や金融機関の審査に進みます。そこで問題なければ、回収代行サービスを利用することができます。
回収代行サービスの選び方
回収代行サービスを選ぶにあたっては、さまざまなポイントがあります。以下のポイントを踏まえて、自社のニーズに合ったサービスを検討しましょう。
サービス内容
回収代行サービスごとに対応している内容が異なります。例えば、集金業務だけに対応している回収代行業者や、決済代行やファクタリングにも対応している回収代行業者もあります。
また、回収代行サービスの中には、入金保証に対応しているものもあります。入金保証とは、取引先が入金予定日に入金しなかった場合において、回収代行業者が入金予定額の支払いを保証するサービスです。入金保証に対応している回収代行業者に依頼すれば、取引先の経営状態が悪化した場合であっても安定した収入を確保しやすくなります。
このように、対応しているサービス内容が回収代行業者によって異なるため、実際にサービスを依頼する前に、どのようなサービス内容を利用したいのか明確にしておきましょう。どのサービス内容が必要か悩む場合は、直接回収代行業者に相談してみるのも一つの方法です。
手数料
回収代行サービスを利用するときには手数料が必要です。手数料は依頼するサービス内容やサポートの充実度によって異なりますが、回収代行業者によっても異なります。負担なく払えるか、候補となる回収代行業者の手数料を比較して検討してみましょう。
なお、手数料体系は1件あたりの料金が決まっているものと、回収を委託する金額に一律の割合をかけるものの2つが一般的です。
例えば、1件あたりの手数料が決まっている場合であれば、1件あたりの回収金額が高いときには割安ですが、回収金額が低めのときには割高に感じるかもしれません。一方、回収金額に一律の割合で手数料がかかる場合、1件あたりの回収金額が高いときは比例して手数料も高くなるため、負担が大きいと感じることがあるでしょう。
手数料だけでなく、別途月額料金や初期費用がかかることもあります。初期費用は1回だけの支払いですが、月額料金は手数料に加えて毎月支払うことになるため、負担が大きすぎないか確認しておきましょう。
決済方法
現在、キャッシュレス決済の普及により、さまざまな決済方法が登場しています。ビジネスチャンスを逃さないように、顧客のニーズに応じてさまざまな決済方法の導入を検討すべき状況です。
したがって、回収代行サービスを選ぶ場合には、幅広い決済方法を提供しているサービスを選択するのがおすすめです。
過去の実績
過去の導入実績がそのまま自社に適用されるとは一概に言えないものの、実績が多い企業のほうが、より自社に適したサービスを提案してもらえる可能性が高まります。
過去にどのような会社に導入した実績があるか比較したうえで、スムーズに導入などをサポートしてもらえそうか確認しておきましょう。
セキュリティ対策
回収代行業者は、依頼主と取引先の重要情報を取り扱うことになります。情報が流出すると損害を負う可能性があるだけでなく、取引先からの信頼も失うことになりかねません。今まで築いてきた関係を守るためにも、セキュリティ対策が万全な回収代行サービスを選ぶようにしましょう。
サポート内容
回収代行業者によってサポート内容も異なります。トラブルが起こったときにすぐに連絡できるかという点も重要です。適切なタイミングで適切なサポートを受けるためにも、サポート内容を確認し、安心して利用できる回収代行業者を選びましょう。
回収代行サービスを利用して業務効率化を実現しよう
回収代行サービスを導入すると、リスクの低減や業務の効率化などにより、本業に集中できます。その結果、事業拡大などにも寄与するでしょう。
回収代行サービスを利用する目的は、「未回収リスクの抑制」「顧客情報の一元管理」などさまざまです。自社の事業戦略やニーズを踏まえて、回収代行サービスをうまく活用しながら、業務の効率化と事業拡大を実現しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
法定調書とは?知っておきたい法定調書の基礎知識
「法定調書」と聞いてどのようなものをイメージするでしょうか。 法律に定められた書面だということは言葉からわかると思いますが、どのような書面なのかといわれるとピンとこない方も多いはず。 しかし、実は意外と目にしている書類です。今回は、法定調書…
詳しくみる工業簿記と商業簿記の違いを解説!難易度やおすすめの勉強方法も
製造業などでは、製造原価計算のため工業簿記を使用します。生産現場を持つ製造業における収益最大化・コスト管理に工業簿記は欠かせません。工業簿記では商業簿記にはなかった考え方もあり、特に「原価」というものの考え方がよく理解できます。この記事では…
詳しくみる自己株式とは?取得・消却のメリットや制限、手続きをわかりやすく解説
上場企業では、比較的頻繁に行われている自己株式の取得や消却ですが、中小企業でも自己株式の取得や消却を行う会社が増えてきました。それは、自己株式の取得や消却にさまざまなメリットがあるためです。しかし、自己株式の取得には制限もあります。 ここで…
詳しくみる個別財務諸表とは?連結財務諸表との違いや包括利益表示について
財務諸表は、個別財務諸表と連結財務諸表に分けられます。個別財務諸表とは、ある1つの企業の財務諸表のことです。この記事では、個別財務諸表と連結財務諸表の関係や個別財務諸表での包括利益の表示、個別財務諸表の作成の注意点などについて解説します。 …
詳しくみるIFRSの収益認識基準とは?日本基準との違いをわかりやすく解説
IFRSの収益認識基準とは、売上収入の計上に関する基準です。IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」に規定されています。IFRSの収益認識の特徴や日本基準との比較、IFRSの収益認識の導入のポイントについて解説します。 IFRSにおけ…
詳しくみる覚書に収入印紙は必要か不要か?かかる金額は?
様々な契約の場面では、契約書以外に「覚書」の作成が必要となる場合があります。その際、「覚書に収入印紙は必要か」「覚書に貼る収入印紙の金額が分からない」といった点で困る方も多いのではないでしょうか そこで当記事では、覚書の基本知識や収入印紙が…
詳しくみる