- 更新日 : 2025年2月20日
工事原価と4つの構成要素をわかりやすく解説
建設業では、工事原価といって、工事ごとに原価計算を行い、完成工事高(収益)との対応を行ったのちに、利益を計算します。それでは、工事原価にはどのようなものが含まれるのでしょうか。この記事では、工事原価の概要、工事原価を構成する4要素、工事原価に関連する建設業会計と一般会計との違いについて解説していきます。
工事原価とは
工事原価は、建設業会計で使用される特有の科目です。工事収入を得るために直接的に要したコストなどを表します。勘定科目としては、工事原価ではなく、以下に取り上げる「完成工事原価」や「未成工事支出金」を経て、当期の工事原価を計算します。
完成工事原価
完成工事原価は、一般会計でいう、売上原価のことです。一般的に商品販売などにおいては、売上原価には仕入額のうち当期の売上高に対応する部分が計上されます。しかし、工事原価を計上する建設業などは、ものを仕入れて販売するような業種ではありません。仕入に該当するものは一般会計とは異なります。工事原価に含まれるのは、建設収入を得るために直接要した材料費や労務費などです。(詳しくは工事原価の4要素の見出しで解説しますので、そちらをご覧ください。)
未成工事支出金
未成工事支出金は、製造業会計でいう仕掛品や半製品に相当します。仕掛品は、まだ販売ができない製造途中のもので、製造にかかったこれまでのコストを表す勘定科目です。つまり、未成工事支出金は、まだ完了していない工事について要したコストをいいます。
工事原価については、以前は工事契約に関する会計基準(工事会計基準)に基づき、工事進行基準と工事完成基準とに分けて収益認識を行っていましたが、2021年4月より適用された「収益認識に関する会計基準」により工事会計基準は廃止されています。
しかし、基本的な考え方は工事進行基準や工事完成基準と同じです。収益認識は履行義務の充足に応じて変更となりましたが、一定の期間にわたって履行義務を充足する工事については、進捗に合わせて収益を認識し、その収益に対応する費用として未成工事支出金に工事費用を計上する点は、工事進行基準と大きく変わりません。
ただし、一定の期間にわたって履行義務を充足する工事であっても、数日や数ヶ月など、履行義務が短期間で充足されるような工事については、完成時点で履行義務を充足することが認められます。原価回収基準は、工事完成基準のときと同様に完成時に完成工事高と工事原価を計上しますので、未成工事支出金への計上はありません。
工事原価の4要素とは
工事原価を構成する4要素は、「材料費」「労務費」「経費」「外注費」の4つです。以下、それぞれの特徴を解説します。
材料費
材料費とは、工事に要する材料や素材のことをいいます。工事に直接要する材料としては、材木やセメント、鉄筋、ガラス、などが挙げられるでしょう。特定の工事に直接的に投入される材料は「直接材料費」といい、材料も棚卸をしますので、実際には期首期末の棚卸を考慮した直接材料費となります。
直接材料費のほかには、特定の工事だけでなく、複数の工事に使用する、接着剤や塗料、固定資産には該当しないドライバーなどの工具、などもあるでしょう。複数の工事で使用される材料や素材、工具は「間接材料費」といい、直接的には工事原価に算入しません。
間接材料費は、関連する複数の工事で按分して、特定の工事で消費したと見込まれる分を、その工事の工事原価に算入します。
労務費
労務費とは、工事に要する人員の賃金や給料、福利厚生費、手当などのことです。
特定の工事に直接的に計上する直接労務費は、対象となる工事に直接関わった現場作業員、技術者、現場監督などの賃金です。従事した作業工数などをもとに直接労務費に計上します。適切に計上するためには、それぞれの工事において、どのくらいの人員を投入し、どのくらいの作業日数がかかったか、など詳細に記録しておく必要があります。
間接的にでも工事に関わりのない、管理部門の給料などは、人件費として販売費及び一般管理費に計上し、工事原価には算入しません。
経費
経費とは、ほかの3要素のいずれにも該当しない、工事に要するさまざまな費用をいいます。例えば、設計費、動力用の水道光熱費、通信交通費、建設のための機器や重機類の減価償却費やメンテナンス費用などが経費として計上されます。
建設工事は受注生産がほとんどであるため、間接費の概念はありますが、材料費や労務費、外注費については、実務上、間接費に振り分けられるケースは製造業ほど多くありません。しかし、経費に関しては、直接的に工事に振り分けることが難しい項目もあるため、間接費として計上されるものも多いです。経費に関しては、間接経費に計上したものを適切に按分するための原価計算に注意が必要です。
外注費
原価計算では、材料費、労務費、経費、の3つに区分するのが一般的ですが、建設業会計においては外注費が加わります(一般の製造業においても同様)。建設作業や加工を外注することが多く、工事原価において外注費が占める割合も大きいためです。
工事に関連する作業をほかの業者に委託して代金を支払ったときは、外注費として計上し、工事原価に含めます。
建設業会計と一般会計の違い
建設業会計と一般会計とでは異なる点がいくつかあります。
勘定科目の違い
まず、勘定科目の違いです。先に取り上げた完成工事原価(一般会計では売上原価)や未成工事支出金(一般会計では仕掛品)のほか、以下のような勘定科目が建設業会計特有の勘定科目として使用されています。
一般会計で使用する、売上高、売上原価、などの勘定科目は建設業会計では使用しません。
原価計算の有無
原価計算を行うのも建設業会計の特徴です。原価計算を行うのは、収益と費用は対応させる必要があるため。対応にあたっては、個別の工事の収益と原価を把握しなければならないことから、工事ごとに原価計算を行います。
また、材料費、労務費、経費には、直接的に必要となるものと、間接的に必要となるものがあります。そして、間接費についてはその使用度合いによって各工事に配賦します。
収益認識
2021年4月に収益認識に関する会計基準が適用される以前は、工事会計基準によって工事完成基準と工事進行基準による収益認識を行うことになっていたため、一般会計とは収益認識に違いがありました。
しかし、収益認識に関する会計基準の創設にともない、工事会計基準が廃止されたことで、収益認識の時点が「履行義務が充足された時点」に統一されました。
一般会計との違いは、建設業会計は場合によっては数年など、長期にわたって収益認識が行われるケースも多いことです。
建設業会計の特徴については、以下の記事で詳細を解説していますので、こちらもご覧ください。
工事原価について理解を深めよう
建設業会計では、建設に要した費用は、工事原価に集計して、収益との対応を図ります。工事原価の集計のほか、完成工事高や完成工事原価など、一部の勘定科目は一般会計と異なりますので、違いを理解して、建設業会計や工事原価への理解を深めましょう。
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よくある質問
工事原価とは?
建設業などで使用される特有の科目で、工事収入を得るために直接要したコストを表します。詳しくはこちらをご覧ください。
工事原価の4要素とは?
工事原価を構成する4要素は、材料費、労務費、経費、外注費、です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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