- 更新日 : 2024年8月8日
人名勘定とは?仕訳やメリットの解説
本記事では人名勘定のことを知らない人のために、概要やメリット・デメリット、具体的な仕訳例を紹介しています。人名勘定はそれほど使われる機会が多い方法ではありませんが、小規模な企業においては日常的に人名勘定で対応している場合もあります。人名勘定の帳簿に出会っても適切に対応できるように、基礎知識を習得していきましょう。
人名勘定とは
人名勘定とは売掛金や買掛金を計上する際に「売掛金」「買掛金」勘定を使用せずに、取引先の名前をそのまま勘定科目として使用する方法のことです。なお人名勘定は「債権債務勘定」と呼ばれることもあります。
なぜわざわざ取引先名を勘定科目にして使用するのでしょうか?その理由は「売掛金」「買掛金」勘定だけだと、複数の取引先がある場合に取引先ごとの債権債務残高が分からなくなってしまう可能性があるからです。取引先名を勘定科目として使用する人名勘定であれば、取引先別の残高を簡単に把握できます。
例えば、A商事あての売掛金であれば「売掛金」勘定ではなく「A商事」を勘定科目として使用することになります。人名勘定を使う場合は、取引先の数だけ勘定科目を作って対応するというわけです。
人名勘定はあくまで売掛金や買掛金として用いるものであり、誤って売上や仕入、受取手形や支払手形の代わりに使ってしまうことがないよう注意しましょう。
なお、貸借対照表上に取引先の名前を掲載するわけにはいかないため、決算時には「売掛金」「買掛金」勘定に振り替える決算整理仕訳を行って対応します。
人名勘定を使わずに取引先別残高を確認する方法
人名勘定は取引先別の債権債務残高を把握するために用いられる方法です。しかし、取引先ごとに勘定科目を作って仕訳をすることに、違和感がある人も多いのではないでしょうか。
実は取引先別の残高は得意先元帳、仕入先元帳などの補助元帳を使って対応が可能です。ほとんどの企業が「売掛金」「買掛金」の勘定科目を使いながら、債権債務ごとに取引先情報を紐づけ登録する形で対応しているのではないでしょうか。
こうした実態から、実務で人名勘定を使っているのは補助元帳を作るまでもない小規模な企業が中心となっているようです。
人名勘定を用いた仕訳の例
人名勘定に触れたことがない人にとっては、勘定科目に取引先名を使うとどのような仕訳になるか想像もつかないのではないでしょうか。
人名勘定が使えるのは「売掛金」「買掛金」の勘定科目のみです。ここでは「商品を掛けで仕入れた」「商品を掛けで販売した」「売掛金を回収した」の3パターンを、人名勘定で仕訳した事例を紹介します。
人名勘定が関係するほとんどの事例はこのパターンで対応できるため、それほど難しい仕訳はありません。知識として知っておくと便利です。
(仕訳例1)
A商事から商品5万円を掛けで仕入れた。
買掛金の代わりに取引先名「A商事」を使います。
(仕訳例2)
B商事に商品8万円を掛けで販売した。
売掛金の代わりに取引先名「B商事」を使います。
(仕訳例3)
B商事あての売掛金8万円を現金で回収した。
売掛金の代わりに用いられた「B商事」を取り消す仕訳となっています。
人名勘定の仕訳がよく分からなくなったときは、まずは「売掛金」「買掛金」勘定を用いて普段通りの仕訳をしてみて、売掛金や買掛金を取引先名に置き換える方法がおすすめです。
人名勘定のメリット
あえて人名勘定を使うメリットとしては、取引先ごとの債権債務残高や取引状況を総勘定元帳で簡単に把握できることが挙げられます。取引先別の残高が簡単に把握できれば、債権債務の消し込み(債権債務と入出金を紐づけること)をしているときに間違いが起きづらくなります。
債権債務の消し込みは日常業務の中で何度も繰り返す取引です。それだけミスも起きやすくなるため、人名勘定を使えば「消し込みミスによって金額が合わない」という事態を避けやすくなります。
ただし、人名勘定にはデメリットもあります。それは、人名勘定では取引先の数だけ勘定科目を設ける必要があることです。英語表記、カタカナ表記、全角・半角の違いなどが混在しやすいだけでなく、親会社と子会社、本社と事業所のどちらで登録するかという問題も生まれます。取引先が多い企業では、かえって会計処理が複雑になってしまう可能性もあるということを認識しておきましょう。
こうしたデメリットから、実務上で人名勘定が用いられることはほとんどありません。実務上は「売掛金」「買掛金」勘定を使用し、取引先ごとの債権債務の管理には得意先元帳、仕入先元帳などの補助元帳を使って対応することが一般的です。
メリットを把握して人名勘定を使いこなそう
本記事では、人名勘定の概要や具体的な使い方について説明しました。見慣れないうちは戸惑ってしまいがちですが、使い方自体はとてもシンプルなのが人名勘定の特徴でもあります。
人名勘定を実務で使うことはほとんどありませんが、知識として知っていれば人名勘定の帳簿に出会ったとき冷静に対応できます。頭の片隅に入れておきましょう。
よくある質問
人名勘定とは?
人名勘定とは、売掛金や買掛金を計上する際に「売掛金」「買掛金」勘定を使用せずに、取引先の名前をそのまま勘定科目として使用する方法のことです。 詳しくはこちらをご覧ください。
人名勘定を使うメリットは?
人名勘定を用いることによって、取引先ごとの債権債務残高や取引状況を総勘定元帳で簡単に把握できます。 詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
手形売却損とは?仕訳例からわかりやすく解説
お金の代わりとして使えるのが手形です。手形は金融機関に売却することで、早期に現金化できます。ただし、満期日前に現金化すると割り引かれてしまうため注意が必要です。この割引料を「手形売却損」といいます。 手形売却損は売却時の内容によって仕訳を行…
詳しくみる軽油にかかる税金の仕訳方法は?ガソリンとの違いをわかりやすく解説
ディーゼルエンジンの車に使われる「軽油」には、ガソリンとは異なる種類の税金がかかっています。経理では、軽油を購入したときの勘定科目や消費税の扱いをどうすればよいか、迷うことが少なくありません。免税制度が適用されることもあるため、会計処理には…
詳しくみる請求書関連の仕訳と勘定科目のまとめ
請求書を発行してすぐに仕訳が必要になるわけではりません。しかし、請求書を発行して商品・サービスを受け渡したときや、入金が確認されたときは、仕訳が必要です。また、請求書を受領したときは、商品・サービスを受け取ったときと、代金を入金した際に仕訳…
詳しくみるリース満了後の買取仕訳は?税務・会計処理をわかりやすく解説
会社でリース契約していたコピー機やパソコンなどを、リース期間の満了後にそのまま買い取るというケースはよくあります。業務に慣れた機器を継続して使いたいときや、新たな投資を抑えたいときに有効な方法です。ただし、会計処理としては「リース取引」と「…
詳しくみる中小企業でも社会保険(厚生年金・健康保険)に加入しなければいけない?
マイナンバーの導入などをはじめとして、さまざまな取り組みが見られる社会保険ですが、中小企業の中には未加入のところも見られます。 今回は、中小企業でも社会保険に加入する必要があるのか、さらには社会保険に加入した場合の納付までの流れや経理処理な…
詳しくみる制服代や作業服代は経費になる?仕訳と勘定科目まとめ
業務で制服や作業服を着用する会社では、従業員に支給した制服・作業服代を経費に計上します。その際、勘定科目は消耗品費にするか福利厚生費にするかが迷うところです。また、制服・作業服のクリーニング代や、スーツを支給した場合の扱いも問題になります。…
詳しくみる