- 更新日 : 2025年2月20日
消費税の軽減税率 調味料なのに「みりんは適用対象外」なワケ
2019年10月1日、いよいよ消費税が10%に引き上げられます。
消費税は所得の多さに関係なく、すべての人に等しくかかる税金です。そのため低所得者の負担増の懸念から、増税と同時に、飲食料品と新聞については税率8%に据え置く「軽減税率制度」が実施されます。
そんな中、調味料の「みりん」は軽減税率の対象にならず、ツイッターなどで「飲食料品なのにややこしい」との声が上がっています。なぜみりんは対象外なのでしょうか?
醤油は8%なのに、みりんは10%
そもそもどのような品目が軽減税率の対象なのでしょうか?
政府広報オンラインによると、軽減税率の対象となるのは「飲食料品」と「新聞」です。対象品目は消費税率が10%に引き上げられた後も、税率8%が継続されます。
「飲食料品」と言ってもすべてに適用されるわけではなく、「外食」「ケータリング(一部除く)」「酒類」は対象外となっています。
※政府広報オンライン「消費税の軽減税率制度」より引用
「あれ? それならみりんはセーフじゃないの?」と思われる方もいるかもしれませんが、意外と知られていないのが、みりんは「酒類」に分類されるということ。れっきとした「お酒」なのです。
「酒類」は軽減税率の対象外と規定されているため、同じ調味料でも「醤油は消費税8%」「みりんは消費税10%」となるのです。
みりんの酒税はいくら?
酒税法によると、みりんは酒類のうち「混成酒類」に分類されています。その定義として「米、米こうじに焼酎又はアルコールを加えてこしたもの」で、アルコール分が15度未満、エキス分が40度以上のものと定められています(エキス分とは、みりんを加熱して、蒸発せずに残った成分の含有量のこと)。
もちろんみりんには酒税もかかっており、その税率は「1l当たり20円」。ビール、日本酒(清酒)、ウイスキーなどと比べると税率はとても低いです。
酒類の分類 | 1l当たりの税率 |
---|---|
みりん | 20円 |
ビール | 220円 |
清酒 | 120円 |
焼酎(アルコール分21度未満の場合) | 200円 |
ウイスキー(アルコール分37度未満の場合) | 370円 |
「みりん風調味料」は軽減税率の対象
ちなみに、スーパーに行くと、みりんのそばに「みりん風調味料」も陳列されていますよね。
いわゆる「本みりん(酒類に規定されているみりん)」と「みりん風調味料」では原料や製造方法も異なりますし、なによりアルコール分の有無が大きな違いです。
「本みりん」の製造販売で国内トップシェアを誇る宝酒造の商品は、どれもアルコール分は12.5~14.5度の間となっています。
一方、「みりん風調味料」はアルコール分をほとんど含みません。国税庁の軽減税率に関する説明でも、酒類に該当しない「みりん風調味料(アルコール分1度未満)」は飲食料品のため軽減税率の対象としています。
本家本元の「みりん」は消費税が引き上げられ、「みりん風調味料」は軽減税率の対象というのはなんとも皮肉っぽい話。「ややこしい」と言われるのも仕方ないかもしれません。
ともあれ、それぞれ若干風味が異なるので、うまく使い分けて料理を楽しみたいですね。
【参考】
■消費税の軽減税率制度 対象品目(政府広報オンライン)
https://www.gov-online.go.jp/tokusyu/keigen_zeiritsu/taisyohinmoku/naniga.html
■酒のしおり 平成30年3月>酒税法における酒類の分類及び定義(国税庁)
http://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/shiori/2018/pdf/006.pdf
■消費税の軽減税率制度に関するQ&A(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/03.pdf
■宝ホールディングス株式会社>IR説明会>2018年個人投資家向け説明会資料
https://ir.takara.co.jp/ja/IREvents/IREvents-5116211146980010836.html
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
個別財務諸表とは?連結財務諸表との違いや包括利益表示について
財務諸表は、個別財務諸表と連結財務諸表に分けられます。個別財務諸表とは、ある1つの企業の財務諸表のことです。この記事では、個別財務諸表と連結財務諸表の関係や個別財務諸表での包括利益の表示、個別財務諸表の作成の注意点などについて解説します。 …
詳しくみる借方と貸方の違いとは?考え方や覚え方を解説
複式簿記の知識は経理を行ううえで必須の知識といえます。しかし借方や貸方、貸借対照表や損益計算書など、慣れない言葉が多く登場して戸惑っているのではないでしょうか。 本記事では、借方と貸方の覚え方や仕訳の具体例についてわかりやすく解説しています…
詳しくみる松山市で経理代行サービスを依頼するには?依頼先や対応範囲、費用などを解説
松山市(愛媛県)で事業を営む方々、日々の経理業務に追われ、本業に集中できないと感じることはないでしょうか。人材の確保や、インボイス制度・電子帳簿保存法といった度重なる法改正への対応は、特に中小企業や個人事業主にとって大きな負担となりがちです…
詳しくみる使用権資産とは?概要、会計処理、適用される取引を解説
昨今のビジネス環境において企業が持つ資産の種類は多岐にわたり、無形資産も重要な役割を果たしています。そしてその中でも、使用権資産は企業にとって重要な財産の一つです。使用権資産は特にリース契約に関する会計処理で用いられる勘定科目です。 本記事…
詳しくみるヘッジ会計でリスク回避!メリットと仕組みを解説
企業としてリスクの少ない投資活動や安定した資産管理を望むなら、ヘッジ会計について知っておきましょう。 ここでは、企業の会計・財務担当者が知っておきたいヘッジ会計の概要や適用条件などの基本ポイントを解説します。 ヘッジ会計はどんな時に必要? …
詳しくみる会計ソフトとERPの違いは?導入検討時の比較ポイント
これまでは「経理なら会計ソフト」といったように、効率化したい業務ごとにシステムを導入する形が一般的でした。しかし現在は、システム単体でなく複数のシステムを統合したERPの導入が増えています。 では経理の領域で考えた場合、会計ソフト単体での利…
詳しくみる