教育・学習支援業の会計・経理業務とは?

学習塾などの教育・学習支援事業においては、質の高い教育サービスの提供と経営の両立が必要不可欠です。そのためにも、講師などを雇う人件費などの原価と、その原資となる月謝などのバランスを上手に取り、効率的な会計管理で経営を安定させる必要があります。
そこでこの記事では、まず教育・学習支援業が具体的にどんな業態を指すかについて説明します。
また、教育・学習支援事業のうち学習塾などの会計でメインとなる売上や原価などの仕訳の種類や、教育・学習支援業の会計管理における注意点についても解説します。
教育・学習支援業とは?
総務省の日本標準産業分類によれば、教育、学習支援業は「学校教育」と「その他の教育、学習支援業」に分かれます。
・学校教育
幼稚園から大学までのさまざまな学校における教育が含まれます。
・その他の教育、学習支援業
公民館や図書館における社会教育や職業教育、学習支援を行う学習塾、音楽教室、スポーツ教室など教養・技能教授業などが含まれます。
学校法人の運営は教育・研究活動を目的とし、公共性が極めて高いのが特徴です。また、学校法人会計は利益の追求を目的する企業会計とは大きく異なる会計で成り立っています。
ここでは、企業会計の範囲内で成立する会社や個人事業主が開校している学習塾、音楽教室などの会計について取り上げます。
学習塾などが利益を追求しながら教育活動を継続するために、どのような会計の特徴があるのかについてみていきましょう。
学習塾の売上タイミングとは?
現在、学習塾の形態は非常に多様化しています。
集団指導、添削指導、個別指導、eラーニング、専門塾、補習塾またはそれらの複合など、指導形態や規模はさまざまです。
また、売上のタイミングも塾の形態により異なります。
たとえば「月謝」を受け取る場合は、それがその月の売上高になります。
しかし、授業料を月単位や年単位で受け取る場合は、指導期間に合わせた売上に加え、入学金やテキスト販売による収入についても考慮する必要があります。
また、兄弟割引など独自の料金体系を持つ学習塾は、個々のサービス料金設定も考慮に入れなくてはなりません。
さらに、大手チェーン塾など生徒数が多い場合は会計が複雑になり、授業料管理システムや入学金などの管理システムの導入が検討課題となるでしょう。
管理システムの導入で顧客(生徒)管理と紐づけた売上の管理を行い、会計期間に応じた売上を計上できれば、個々の授業料の仕訳を考える必要はなくなります。
学習塾の仕入や販管費とは?
次は、学習塾などの原価となる、仕入高や販管費について説明します。
テキストなどを一括購入で仕入れる場合は、仕入高として計上できます。
一方、学習塾の運営には教師や講師などの人件費が必要です。また、教室などの家賃や電話代などの通信費、生徒を集めるための広告宣伝費もかかります。それらの費用は販管費として計上します。
そのことから、学習塾の損益計算書は仕入高より販管費のほうが多くなるでしょう。
加えて、建物内の設備や楽器の費用などを固定資産として計上すれば、減価償却費が発生する場合もあります。
コピー機やパソコンも、購入かレンタル(orリース)かによって会計処理が変わります。
以上をまとめると、学習塾における会計データに原価として必要なデータは、
➢商品管理における教材の仕入や在庫
➢設備管理における固定資産データ
となります。
なお、多くの教室を持つ塾などの場合は、家賃管理なども必要となります。そのタイミングで会計システムを導入すれば、事務処理を効率化できる可能性が高いでしょう。
学習塾の経理業務における注意点とは?
学習塾の経理業務における最大の注意点は、データのつなぎ目に細心の注意を払うということです。
学習塾のバックオフィス業務は事務作業量が多い業種です。塾の規模が大きくなり、生徒数が増えるほど作業量が増えます。しかし、その事務作業の先には、会計データにつながるものが多数あり、どれも経営計画に欠かせない材料です。
人事管理や設備管理などが複雑になったら、管理システム導入を行い、事務処理の効率化を検討しましょう。その際、各データと会計システムの整合性には十分注意しましょう。データの連携は、それぞれの塾によってさまざまですが、データ間のつなぎ目が重要であることに変わりはありません。
1ヶ月ズレていることはないか、去年のデータとの差を説明できるか、契約は変わっていないか等、会計システムに取り込むのに相応しいデータであることを確認しましょう。
もともと「教育」と「経営」との歯車が合うことは難しいのですが、経理業務からは経営がよく見えます。
経理業務のデータをその次の経営に利用できるよう、日々、月次、年次の経理処理を洗い出すことから始めましょう。
効率的な会計管理は教育・学習支援業経営の助けになる
学習塾などの経営には、講師などの人件費や生徒集めを目的とする広告宣伝費などの原価が必要です。その原資となるのが月謝などの売上です。経営を安定させるためには、それらの収支のバランスを上手に取るための効率的な会計管理が必要です。
しかし、指導形態の種類や生徒数、教室数が増えるほど仕訳が複雑になり、効率的な会計管理が難しくなるでしょう。
その場合は、会計システムと紐づいた管理システムの導入を検討しましょう。それによって効率的に会計管理ができ、経営の大きな助けになるでしょう。
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