• 更新日 : 2025年3月19日

予実管理は意味がない?基本から経営における必要性まで解説!

マネージャー職・部長職に就いて「予実管理」を担当することになり、「予実管理ってなに?」「予算管理はする必要があるの?」と懐疑的になったという人は少なくありません。

本記事では、予実管理の基本と必要性を解説し、正しい手順や予実管理成功へのコツをご提案します。改めて予実管理への理解を深めて、実務に活かしてみましょう。

予実管理は意味がない?今さら聞けない基本知識を解説

予実管理とは、企業の予算と実績を管理することを指します。

正確には予算実績管理と呼ばれ、企業の経営目標の達成のために、なくてはならない重要な業務です。

しかし、目標達成のためだけの業務なら予実管理をする意味はあるのでしょうか。また、予実管理と混同されがちな「予算管理」とのちがいについても解説します。

予実管理をする意味

予実管理は予算と実績を逐一照らし合わせることで、事業の進捗を把握・管理し、目標を達成できるかどうかを確認する重要な管理業務です。経営目標を掲げるだけでは、達成できるかどうかを期の途中で判断できません。

目標値に対して現時点での進捗状況を常に確認することで目標に効率よく近づけます。そのためにも、予実管理を行い、予算と実績の差異を毎週もしくは毎月チェックする必要があります。細かい確認をすることで、企業やチームの課題や問題点をすぐに洗い出し、早期の対策を立てることができます。

早期の対策・対応で目標に対して柔軟な軌道修正を加えられるという点で、予実管理は会社経営において重要な意味を持ちます。

予実管理をする目的

予実管理を行う目的は、「経営状態の把握」「改善策の検討」「経営の効率化」の大きく3つに分けて考えられます。

予実管理で、週次・月次ごとに予算と実績の乖離を分析すれば、経営状態を具体的な数値で把握できます。

また、現状維持か修正かなどの改善策の必要性を早い段階で検討する余地が生まれ、さらに実績が予算に対して大きく乖離している場合なら、実績不調の原因を発見し、結果として効率的な経営を進められます。

予実管理の目的とは、予算に対して実績が、目標を決定した当初の経営計画どおりに遂行できているか細かく進捗管理することで、実績が釣り合っているか経過確認を行うことにあります。

予実管理と予算管理のちがい

予実管理と類似するキーワードに「予算管理」があります。

予実管理とは予算管理の活動の一環であり、予算管理における重要な役割の一つです。

それぞれの具体的な内容は以下の通りです。

予算管理事業活動における予算計画全体の管理活動を指します。

3か月ごとなどの中期間隔で確認し、実績把握・進捗管理・改善施策の計画や実行をします。売上予算・経費予算などの見積もり計画の立案も含まれるため、一般的な企業では財務部や経営陣の担当となる場合が多いです。

予実管理予算と実績の差異を1週間~1か月など短期でコンスタントに分析を行い、改善を図ることを指します。

一般的な企業では経理部の業務範囲とされます。

以下の記事では、予実管理の具体的な進め方などを解説していますのでぜひ参考にしてみてください。

予実管理のメリット

予実管理には3つのメリットがあります。予実管理は目標到達までの過程を見える化することが目的のひとつです。

過程が明確になることで、予算と実績の乖離の早期発見ができたり、データに基づいた経営判断ができたりするほか、管理者層の育成に影響するなど大きなメリットをもたらします。

予算と実績の乖離を早期発見できる

目標達成までの過程の進捗を短いスパンで確認すると、実績と目標値の乖離の原因を早期に発見できます。

そもそも目標設定が高すぎたのか、目標に対しての業務が上手に運用されていないのか、売上があってもコストがかかりすぎて純利益が低いのか、など原因を追求できれば、早い段階で改善策を練ることが可能です。

原因の早期発見により、迅速で柔軟な対応や改善策を行えます。つまり予実管理によって事業や企業全体の課題の発見にもつながります。安定した経営の持続や企業の成長には予実管理は必要な業務といえます。

データに基づいた経営判断ができる

予実管理によって算出されたデータは経営における重要な判断材料になりえます。

経営者の経験値や感覚に基づいた曖昧な判断では、ヒューマンエラーも起きやすいため、データに紐づいた根拠が明確な経営判断の方が、人的ミスを事前に防ぎ、さらに役員・従業員を納得させられるでしょう。

管理者層の育成につながる

予実管理を適切に行うことで、データ分析のスキルが向上します。実績データを分析できるようになれば、今後の経営において起こりえるリスクを先んじて読み取れるようになるでしょう。

予実管理の徹底により、管理者層のマネジメント能力や経営スキルの向上などの育成にもつながり、将来的に層の厚い組織基盤の構築を実現できます。長期的な経営活動のひとつとして大きなメリットといえます。

予実管理のデメリット

予実管理には多くのメリットがありますが、並行してデメリットも派生します。経営において重要な役割を担う予実管理のデメリットは管理の難しさに直結するものです。

たとえば、データの共有のしにくさや集計における手間暇、ヒューマンエラーの起きやすさなどが挙げられ、予実管理だけで従業員の確保が必要になるほどです。これらのデメリットを解消するためにも業務効率化が求められます。

エクセルで管理するとデータを共有しにくい

エクセルでの管理のデメリットは、データの共有にしにくさにあります。

予実管理のデータをエクセルで入力・管理している場合、基礎となるデータが集約されていないため、間に手作業を挟みます。手動でデータをコピーしたり、複数のファイルを参照したりする必要があり、迅速な情報共有ができず、また、更新の遅延が生じやすいです。

週次、月次で更新を行うほか、修正や追記があった場合にも都度同じ状況が発生します。

予実管理ではできるだけ早く情報を分析し、関係者と共有することが大切ですから、この問題は無視できません。

また、経営層や従業員に随時情報を共有するにしても、エクセルの共有機能だけでは限界があるでしょう。

エクセルでの管理や運用の手間を解消するには、データの共有や自動更新などがスムーズに行える予実管理システムの導入がおすすめです。

集計に時間がかかる

エクセルで一つひとつ入力すると、集計に膨大な時間を要します。事業計画やプロジェクトが大きければ大きいほど、よりデータ作成と集計に時間がかかるので非効率的です。

担当者の通常業務に加えて予実管理の集計作業があると、通常業務に支障が出る可能性もあります。また、予実管理の専任担当者を設置する場合には、人員経費が別途発生するコスト的なデメリットも考えられます。

データ管理・集計の時間短縮で効率化が図れないのは、企業経営の大きな課題ともいえるでしょう。

ヒューマンエラーが出やすい

エクセルで管理することの最大のデメリットはヒューマンエラーが起きやすいことです。

数式の間違いや、入力漏れなどが起きやすく、一か所でもミスがあれば正しいデータとは言えません。さらにエクセルで入力できるのは一人だけなので、リアルタイムで確認するのにも時間がかかります。

また、ヒューマンエラーが起きれば、作業は一からやり直しになるなど無駄な工程が発生するデメリットもあり、効率的とはいえません。

ヒューマンエラーを未然に防ぐにはシステムの導入がおすすめです。

脱予算管理という考え方

「脱予算管理」とは、従来の予算管理の考え方や手順を脱して、予算を柔軟に使おうとする海外で誕生した経営戦略のひとつです。

そもそも予算の立案には膨大な労力とコストが発生し、多くの時間もかかる作業です。そのため、上場企業であれば予実管理専任チームを構成することもあり、チームの人的コストもあわせて発生します。

また、過去のデータから予算を立案しますが、市場や経済情勢、政治的背景から不確実性があり、当初の予算を守ることに目が行きがちになってしまいます。

これらの課題解決や、労力・コスト・時間のショートカットを叶えようとしたのが「脱予算管理」の考え方です。たとえば、自社内の支店同士を比較対象に予算を編成したり、同業他社の数値をベースに予算を組み立てたりなどが挙げられます。

しかし、「脱予算管理」の仕組みは抽象的かつ明確でなかったため、日本では定着しなかったやり方であり、国内の企業であればやはり忠実な予実管理を行うことが重要とされます。

予実管理は難しい?3つの手順で解決

予実管理は難しいイメージがありますが、3つの手順を踏むことで複雑な工程を分かりやすく解消できます。

以下では、3つのステップに分けてそれぞれ解説します。

1.予算目標を立てる

第一段階は「予算目標を立てる」ことです。予実管理をするのは、目標値に対して過程を見える化することで実績を効率よく目標に近づけて達成させることが目的です。そのため、まずは予算目標を立てることから始めます。

予算目標の設定とはつまりゴールの設定です。重要なのは、現実的に達成できそうな数値で設定することです。達成不可能な高い理想を目標値に設定したところで、予実管理で比較検討を行う意味が失われます。

現実的に達成可能な予算目標を設定することで堅実な経営戦略を構築できるでしょう。

2.週次・月次決算を行う

第2段階では、「週次・月次決算」を行いましょう。予実管理の精度向上のためにコンスタントに確認する作業が重要です。また、週次・月次確認した内容は従業員に共有し、現状把握、進捗把握しておきます。

適宜見直しすることで、目標値と実績の乖離を早期発見できることがポイントになります。

3.予算と実績を比較・分析・改善点を見つける

週次・月次決算を行ったあとの第3段階では、「比較・分析・改善点」を見つけましょう。予算と実績に大幅な乖離があれば、原因を追求し、随時適切な対処をする必要があります。どう軌道修正するかによって、目標の達成に大きく影響が出るでしょう。

また、売上額ではなく営業利益に着目して予算と実績の乖離分析を行うことがポイントです。売れていない商材は売れない原因の洗い出しと要改善、売れている商材はより売れる工夫や施策を投じましょう。

予実管理を失敗しないための4つのポイント

予実管理を失敗しないためには、4つのポイントが挙げられます。失敗するパターンにも触れながら、予実管理を遂行するときの注意点や目標達成のためのコツを解説します。

1.予算目標にこだわりすぎない

手順の第一段階でもあったゴールの設定、つまり予算目標にこだわり過ぎないのが重要です。予算目標は、安易に達成できない水準で適度に高い予算で設定するのがおすすめです。少し高めのラインの目標が達成できれば、企業全体の成長につながるでしょう。

反対に、低すぎる目標設定では従業員の向上心低下、高すぎる目標ではモチベーション低下に左右されます。

また、目標達成のために無理をするなどの従業員の疲弊や業務に対する不満の噴出、実績を出さないといけないプレッシャーから売上の水増しといった不正行為の横行などが考えられます。

2.経過をチェックして問題点を早期発見する

予実管理では、こまめなチェックが重要です。問題点や課題の早期発見が、事業の軌道修正に大きく作用するためです。また、予算と実績の乖離が少ないうちに対処することで、余計な作業やコストをかけずに済みます。

問題点や課題の早期発見には、最低でも月に一度は確認することをおすすめします。可能なら週ごとの細かなチェックで現状分析と把握で、より高度な予実管理が実現できるでしょう。

3.部署・チームごとにKPI設定をする

効果的な予実管理には、部署・チームごとにKPIを設定することが大切です。KPIとは、企業・組織の目標達成のための各過程における具体的行動指標を指します。

大企業の場合、組織全体の大きな数値目標だけでなく、細分化して部署・チームごとにも細かな行動指標や目標設定することで、より精度の高い予実管理が実現でき、目標達成に近づく指針が明確になります。

4.PDCAをまわす

予算と実績の乖離や現状を把握できたら、PDCAサイクルを回すことを意識しましょう。

より精度の高い予実管理にはPDCA(計画・実行・確認・改善)の繰り返しが重要です。常にPDCAをまわすことで安定的な経営の保持が期待できます。

具体的なPDCAについては以下の通りです。

【PLAN】計画する

予実管理の第一段階である予算設定をします。重要なのは、現実的に達成できそうで、かつ少し手を伸ばさないと達成できないラインで設定することです。

【DO】実行する

設定した予算に向けて具体的に行動、つまり実務を遂行することです。ここでは具体的なKPI設定も有効でしょう。

【CHECK】確認する

週次・月次で予算と実績数値から達成度合いを比較し、分析しましょう。こまかなチェックが問題点の早期発見、課題解決の糸口になります。

【ACTION】改善する

分析結果で明らかになった課題を共有、フィードバックをして改善策を練り、早めに乖離を埋めるように努めましょう。

予実管理表のテンプレート

これから予実管理を始める方や、エクセルでの予実管理に不満を感じている企業の担当者の方は、ぜひ予実管理表のテンプレートを活用してみてください。

マネーフォワードでは効率的な予実管理表を公開しています。予実管理のシステム化や効率的なテンプレートを検討中の企業におすすめです。

以下からダウンロードできますので、ぜひチェックしてみてください。

予実管理を効率化して適切な経営をしよう!

予実管理を徹底することで健全で安定的な経営を保てます。さらに実績との乖離を早期発見できる、データに基づいた経営判断ができる、管理者層の育成につながるなど、多くのメリットが得られます。

しかし、自社で運用するにはデメリットもあるため、正確で効率よく運用するにはシステムの導入がおすすめです。

マネーフォワードの予実管理システムなら自社に合ったシステムが導入できるでしょう。

以下の記事では、予実管理システムの活用方法が確認できますので、ぜひチェックしてみてください。


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