• 更新日 : 2026年2月24日

【新リース会計基準】不動産関連の取引における影響・実務ポイント

Point建設協力金の会計処理は?

現行では固定資産計上、新リース会計基準では現在価値を用いた区分処理へと変化します。

  • 実質的な貸付金として敷金と明確に区別
  • 新基準は額面と現在価値の差額を資産化
  • 上場企業等は2027年4月から強制適用

新基準での仕訳方法は、預託額を「貸付金」と「前払家賃」に分解して計上し、差額は期間費用化します。

2027年4月から本格導入される「新リース会計基準」により、不動産賃貸借における建設協力金の会計処理が変わろうとしています。 これまでは「貸付金・預り金」として処理されることが一般的でしたが、新基準では「現在価値」を用いた評価や、仕訳の複雑化が予測されます。

本記事では、建設協力金の基礎から、現行の実務的な仕訳、そして新リース会計基準導入後に求められる変更点について、2026年1月時点の情報を基に解説します。

参考:
企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」|企業会計基準委員会
企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」 | 企業会計基準委員会

建設協力金とは?

建設協力金は、テナントが建物の建設資金を地主に融通するもので、実質的な「金銭消費貸借(貸付金)」としての性格を持ちます。

ロードサイド店舗や商業施設の出店において、借主(テナント)が貸主(オーナー)に建設資金を預託する建設協力金。

一般的な敷金が「債務の担保」であるのに対し、建設協力金は「資金調達の協力」が目的です。そのため、多くの契約では賃貸期間中に分割返済されたり、賃料と相殺されたりします。

建設協力金と敷金の比較

建設協力金は金融的な性質が強いため、敷金とは区別して管理する必要があります。

項目建設協力金敷金・保証金
主な目的建物建設資金の融通(貸付)賃料不払い等の債務担保
法的性質金銭消費貸借に近い債務担保のための預託金
返還方法契約期間中に分割返済・賃料相殺が多い退去時に一括返還が一般的
利息無利息または低金利が多い基本的に無利息
会計処理長期貸付金借入金としての性質が強い差入・預り保証金として処理
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【現行】建設協力金の仕訳例(借主・貸主)

現行基準では、借主は「投資その他の資産」、貸主は「固定負債」として計上し、1年基準(ワン・イヤー・ルール)に基づいて会計処理します。

現行の実務において、建設協力金は返済期間が長期(1年超)にわたるため、固定資産・固定負債として扱います。

借主(テナント)の仕訳例

前提:建設協力金1,000万円を預託。返済期間20年。

1. 預託時(支払い時)

支払った建設協力金は、返還期限が1年を超えるため、固定資産の「差入建設協力金」として全額を資産計上します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
差入建設協力金10,000,000普通預金10,000,000

摘要: 店舗建設協力金の支払い

2. 返済時(賃料相殺時)

毎月の家賃支払額と協力金の返還額を相殺し、差額のみを決済することで資産を取り崩します。

※家賃30万円のうち、5万円が協力金の返済として相殺される場合。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
地代家賃300,000普通預金250,000
差入建設協力金50,000

摘要: 家賃の支払い(協力金返済相殺後)

貸主(オーナー)の仕訳例

前提:建設協力金1,000万円を受入。返済期間20年。

1. 受入時(預かり時)

受け取った建設協力金は、将来返済する義務があるため、固定負債の「預り建設協力金」として全額を負債計上します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
普通預金10,000,000預り建設協力金10,000,000

摘要: 建設協力金の受け入れ

2. 返済時(賃料相殺時)

受け取る家賃収入を計上すると同時に、建設協力金の返済分を相殺して負債を減少させます。

※家賃30万円のうち、5万円を協力金返済として相殺する場合。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
普通預金250,000受取家賃300,000
預り建設協力金50,000

摘要: 家賃の受け取りと協力金の返済

新リース会計基準が不動産賃貸借に与える影響

新リース会計基準の導入により、オペレーティング・リースのオンバランス化やリース期間の見直しなど、不動産管理の実務は変更を迫られます。

2027年4月から適用される新基準では、不動産の賃貸借取引において以下のような具体的かつ広範な影響が生じます。建設協力金の処理と合わせて、取引全体の見直しが必要です。

新リース会計基準が適用される企業は?

原則として、上場企業およびその連結子会社、関連会社などが適用の対象となります。

新リース会計基準は、主に金融商品取引法の適用を受ける上場企業や大企業を対象としており、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度から強制適用されます。

一方で、上場していない中小企業については、当面の間は新基準の適用義務はなく、従来通りの「中小企業の会計に関する指針」等に基づいた処理(賃貸借処理)が認められる見込みです。

ただし、以下のケースでは中小企業であっても対応が必要になるため注意が必要です。

  • 親会社が上場企業である場合連結決算のために新基準でのデータ提出が必要)
  • 将来的にIPO(株式上場)を目指している場合
  • 会計監査人(監査法人)の監査を受けている場合

1. 不動産賃貸借(オペレーティング・リース)のオンバランス化

原則としてすべての不動産賃貸借契約において、「使用権資産」と「リース負債」を貸借対照表(B/S)に計上しなければなりません。

現行基準では、店舗や事務所の賃料は「オペレーティング・リース」として、支払いの都度経費処理するだけのオフバランス取引でした。しかし新基準ではこれらが資産・負債としてB/Sに乗ってくるため、特に多店舗展開する企業や大型施設を借りている企業では、事務負担の増加と管理項目の増大が懸念されます。

2. リース期間の判断基準の厳格化

契約書上の期間だけでなく、延長オプションや解約オプションの実質的な行使可能性を考慮してリース期間を決定します。

新基準では、延長オプションを行使することが「合理的に確実」である場合や、解約オプションを行使しないことが「合理的に確実」である場合、その期間も含めてリース期間とみなされます。「合理的に確実」かどうかの判断は、経済的インセンティブ(有利な条件など)に基づいて行われますが、不動産契約においては判断が難しく、実務上の大きな課題となっています。

3. 共益費・管理費の区分処理

原則として「賃借料(リース部分)」と「共益費(非リース部分)」を区分して会計処理を行います。

不動産契約には賃料以外に共益費や管理費が含まれます。新基準ではこれらを分解し、リース部分のみをオンバランス化するのが原則です。ただし、実務上の負担軽減のため、借手はリース部分と非リース部分を区別せず、まとめてリースとして処理することも認められています(貸手は不可)。

4. 自己資本比率の低下と財務指標への影響

バランスシートが膨らむことで、自己資本比率が悪化する可能性があります。

オペレーティング・リースがオンバランス化されると、資産と同時に「リース負債」が巨額に計上されます。これにより分母である総資産が増加するため、自己資本比率(自己資本÷総資産)は計算上低下します。金融機関からの評価やコベナンツ(財務制限条項)に抵触しないか、事前のシミュレーションが不可欠です。

5. サブリース事業へのインパクト

転貸(サブリース)を行う企業では、資産と負債が連鎖的に膨らむ可能性があります。

オーナーから借りて第三者に貸すサブリース事業では、これまでオフバランスだった取引が、借手としての「使用権資産・リース負債」の計上対象となります。事業実態は変わらずとも、B/S上の資産・負債が数倍に膨れ上がるリスクがあり、影響は甚大です。

【新基準】建設協力金の仕訳例

新基準では、建設協力金を「金融商品」として時価評価し、支払額との差額を「使用権資産」等の構成要素として処理します。

建設協力金は通常無利息または低金利であるため、将来返還されるお金の「現在価値(時価)」は額面より低くなります。この差額を実質的な「前払家賃」とみなして処理します。

借主(テナント)の新基準仕訳

前提
  • 建設協力金:1,000万円
  • 現在価値:900万円(市場金利等で割引計算)
  • 差額:100万円

1. 預託時(支払い時)

支払額を「貸付金(金融資産)」と「前払家賃(資産)」に分解します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
長期貸付金9,000,000普通預金10,000,000
長期前払家賃1,000,000

摘要: 現在価値と差額(前払費用)の計上

2. 決算時(毎期の処理)

「前払分の費用化」と「貸付金の利息計上」の2つの処理が必要です。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
支払家賃50,000長期前払家賃50,000
長期貸付金45,000受取利息45,000

摘要: 前払分の期間費用化および利息相当額の計上(例)

貸主(オーナー)の新基準仕訳

前提
  • 受入額:1,000万円
  • 現在価値:900万円
  • 差額:100万円

1. 受入時(預かり時)

受入額を「借入金(金融負債)」と「前受収益(負債)」に分解します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
普通預金10,000,000長期借入金9,000,000
長期前受収益1,000,000

摘要: 現在価値と差額(前受収益)の計上

2. 決算時(毎期の処理)

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
長期前受収益50,000受取家賃50,000
支払利息45,000長期借入金45,000

摘要: 前受分の期間収益化および利息相当額の計上(例)

返還されない部分の取扱い

敷金や建設協力金のうち、将来返還されないことが契約で定まっている金額(償却部分など)は、金融商品ではなくリースの一部とみなされます。全額を「使用権資産」の取得価額に含めて計上し、減価償却を行います。

新リース会計基準の不動産関連取引における影響と実務の課題

新リース会計基準が適用されると、不動産賃貸借契約のオンバランス化など、企業の実務に大きな影響を与えます。株式会社マネーフォワードは、企業のバックオフィス担当者を対象に新リース会計基準に関する調査を実施しました。

契約の洗い出しとシステム対応の必要性

調査によると、新リース会計基準への対応に負担を感じている割合は合わせて約8割に上ります。その中で特に負担に感じる業務として挙げられたのは、リース契約の洗い出し・分類・整理でした。不動産の関連取引を含め、すべての契約を洗い出して適切に分類する作業が、実務における大きな課題となっています。

また、現在対応を進めている企業等に対応完了時期を質問したところ、多数を占めたのは2026年上半期中で、63.0%でした。さらに、リース契約情報の管理における主な課題は紙や手作業に頼った管理となっています。今後のリース負債の計算や残高管理に向けて、新たにシステムを入れ替えすると回答した割合は約4割でした。複雑な実務への影響を抑えるためには、早期の契約整理とシステムの活用が求められます。

出典:マネーフォワード クラウド、新リース会計基準への対応負担や課題【新リース会計基準に関する調査】(回答者:現在の勤務先で「経理部門」「情報システム部門」「総務部門」「法務部門」「経営企画部門」のいずれかに所属する方(個人事業主を除く)660名、集計期間:2025年3月11日(火)~3月17日(月))

建設協力金の適正な処理に向けて

新リース会計基準の導入により、建設協力金の会計処理は「預け金」から「金融とリースの複合取引」へと高度化します。

  • 現行処理: 額面金額で「差入建設協力金(資産)」や「預り建設協力金(負債)」として計上する。
  • 新基準処理:返還予定額を現在価値に割り引き、差額を「使用権資産」や「前払家賃」として処理する。
  • 全体影響: 賃貸借契約がオンバランス化され、自己資本比率に影響を与える可能性がある。

特に現在価値計算は専門的な判断を要するため、適用開始前に監査法人や税理士と連携し、既存契約への影響額を試算しておくことが重要です。


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