- 作成日 : 2025年2月5日
減価償却費の計算方法は?定額法・定率法の違いや注意点もわかりやすく解説
減価償却の計算は、取得した固定資産の種類によって異なります。本記事では、減価償却の計算方法を、具体例を用いて解説します。
また、減価償却の計算をするにあたって押さえておきたい注意点や、仕訳の方法もまとめて取り上げるため、ぜひ最後までご覧ください。
目次
そもそも減価償却とは
減価償却とは、固定資産を耐用年数に応じて取得金額を分割して計上することで、費用と収益を正しく対応させるために行います。取得した固定資産の取得価額を一度にまとめて計上してしまうと、その資産が複数年に渡ってどのような影響を会計に与えたか、正確に反映させられません。
その結果、経営状況を適切に把握できないため、正しい経営判断ができなくなる可能性があります。また、課税の公平性を確保することも、減価償却を行う目的の1つです。
減価償却の対象となる資産
事業に用いられている固定資産は、年月の経過や継続的な使用によって価値が下がります。ただし、すべての固定資産が減価償却の対象になるわけではありません。
以下では、減価償却の対象となる資産について解説します。
建物
建物は、事務所や工場、店舗などが分類されるカテゴリです。建物の耐用年数は使用されている建材の種類や使用目的によって異なります。
たとえば、同じ事務所用に建てられた建物でも、木造であれば耐用年数は24年、鉄筋コンクリート造であれば耐用年数は50年です。
建物附属設備
日よけ設備や店用簡易装備、電気設備などが該当します。建物と同じく、耐用年数は使用されている素材によって変化します。
車両・運搬具
自動車をはじめ、自転車やリヤカーなどが該当します。ほとんどの車両、および運搬具の耐用年数は5年以内ですが、普通自動車は6年、電車や蒸気機関車はそれぞれ13年と18年です。
工具
測定工具や切削工具、検査工具などが該当します。耐用年数は、おおむね5年以内のものが多いです。
活字、および活字に常用される金属のうち、自製活字や活字に常用される金属の耐用年数については、8年とやや長めに設定されています。
器具・備品
家具、電気機器、ガス機器、通信機器、時計、看板など、かなり該当するものが多いカテゴリです。耐用年数も2年から20年まで幅広く、見落としがないように国税庁が公開している「主な減価償却資産の耐用年数表」をチェックしておきましょう。
機械・装置
食料品製造業用設備、繊維工業用設備、ゴム製品製造業用設備などが該当します。器具や備品と混同されやすいですが、機械や装置はそれぞれが設備の一部としての機能を果たすもの、器具や備品はそれ自体で固有の機能を果たし、かつ独立して使用できるものを指します。
無形固定資産(パソコンソフトやのれん、商標権など)
読んで字のごとく、物理的な形態を有していない固定資産の総称です。特徴として、1年を超えて利用される資産である点が挙げられます。
なお、のれんとは会計用語で企業が有するノウハウや立地など、代替できない無形の価値を指します。お店の軒先に飾ってあるのれんは関係ないため、注意してください。
参考:財務省 無形固定資産
減価償却費の計算方法
減価償却費の計算方法は、1つではありません。以下では、それぞれの計算方法と特徴について解説します。
定額法
定額法とは、毎年同じ金額を減価償却費として計上する計算方法です。具体的な計算式は、以下のとおりです。
2,000万円で取得した事務所用に建てられた木造建築(耐用年数24年)の減価償却費を計算すると、次のような式になります。
定額法の償却率は耐用年数や取得時期によって異なるため、国税庁の「減価償却資産の償却率表」を参考にしてください。
定率法
定率法は、最初に多く減価償却費用を計上し、徐々に計上する減価償却費を減らしていく計算方法です。具体的な計算式は、以下のとおりです。
40万円で取得したパソコン(耐用年数4年)の減価償却費を計算すると、以下のような式になります。
1年目:400,000×0.5=200,000
2年目:(400,000-200,000)×0.5=100,000
償却費が償却保証額を下回ったら、以降は償却率ではなく改正償却率を使用して計算します。定額法と同じく、耐用年数や取得時期によって償却率が異なるため、国税庁の「減価償却資産の償却率表」を確認しましょう。
リース期間定額法
リース期間定額法とは、リース資産(リース取引によって計上された資産)専用の減価償却費の計算方法で、計算式は以下のとおりです。
リース資産として500万円の機械装置を取得し、かつリース期間が10年の場合、計算式は次のようになります。
リース期間定額法で用いる償却率は、国税庁が公開している資料を参考にしてください。
生産高比例法
基準に「生産高」を用いる計算方法が、生産高比例法です。費用と収益が対応する点が強みですが、適用できる固定資産の種類は豊富ではない点が弱点として挙げられます。
なお、計算式は以下のとおりです。
100万円で取得した製造機械(総生産可能量100,000個)の当期の生産量が25,000個だった場合、次のような計算式になります。
減価償却費の計算式に必要な項目
減価償却費の計算をする際は、次の項目が必要です。
- 取得価額
- 法定耐用年数
- 償却率
それぞれの項目について、以下で詳しく解説します。
取得価額とは
取得価額は、固定資産を取得するために要した費用のことです。購入費用のみならず、引取運賃や荷役費、運送保険料なども含まれます。
ただし、不動産取得税をはじめとする租税公課や登記、または登録のために要する費用は含まれません。
法定耐用年数とは
法定耐用年数とは、税法によって定められた耐用年数のことです。同じ固定資産でも、使用されている素材によって耐用年数は異なります。
また、法定耐用年数はあくまで法的に定められた固定資産が使用できる期間です。そのため、実際には法定耐用年数を超えても問題なく使用できる固定資産も少なくありません。
償却率とは
償却率は、減価償却費を算出する際に使用する数値です。固定資産の耐用年数や減価償却の方法、取得時期によって変化します。
固定資産の種類ごとの償却率は、国税庁が公開している「減価償却資産の償却率表」で調べられます。
減価償却費の計算例
以下では、減価償却費の計算例を紹介するため、実際の減価償却費の計算をする際の参考にしてください。
新車を購入した場合
自動車は、購入したのが新車か中古車かによって計算の方法が異なります。ここでは、新車の普通自動車を事業用に200万円で取得した場合を想定しています。
取得した普通自動車の法定耐用年数が6年であるとき、定額法と定率法それぞれの計算式は以下のとおりです。
- 定額法:2,000,000×0.167=334,000
- 定率法:2,000,000×0.333=666,000
中古車を購入した場合
中古車の場合は、経過年数によって法定耐用年数が変化する点に注意が必要です。経過年数2年の中古の普通自動車(新車の場合の法定耐用年数6年)を事業用に200万円で取得した場合ですが、最初に中古車の耐用年数を以下の計算式で算出します。
今回の場合は、次のような計算式になります。
小数点以下は切り捨てのため、今回取得した中古車の耐用年数は4年です。算出した耐用年数をもとに、定額法、定率法で減価償却費を算出すると、次のような結果になります。
- 定額法:2,000,000×0.250=500,000
- 定率法:2,000,000×0.500=1,1,000,000
なお、法定耐用年数を超えている場合の中古車の耐用年数を算出する計算式は、以下のとおりです。
減価償却費を自動計算する方法
減価償却費の計算は細かい数値を用いて行うため、慣れても計算ミスが発生するリスクが高いです。しかし、ソフトやツールなどを用いて自動化することで、ある程度ミスを減らせます。
以下では、おすすめの自動計算方法について解説します。
無料サイトの自動計算ツールを活用する
昨今は、さまざまな無料サイトで特徴の異なる自動計算ツールが公開されています。たとえば、ke!sanの計算ツールは計算方法の選択が可能です。
無料サイトの自動計算ツールは、初期費用がかからない点は大きなメリットですが、無料サイトが閉鎖されるなどして、サービスが急になくなる可能性もあります。
エクセルで自動計算シートを作成する
エクセルシートを用いて、自動計算シートを作成するのもおすすめです。エクセルでは、さまざまな関数を使用して計算の効率を高められます。
複数のシートをまたいで計算もできますが、範囲や式を正確に入力しないとエラーが発生する点に注意してください。
エクセルによる減価償却の計算については、以下の記事をご参照ください。
会計ソフトで減価償却費を自動計算する
会計ソフトには、クラウド型とインストール型の2種類が存在します。クラウド型は、場所を問わずに利用できる、使用できる端末の種類が多い点がメリットです。一方で、通信環境が整っていなければ使用できない、セキュリティの不安がある点がデメリットとして挙げられます。
インストール型は、一度インストールしてしまえばネット環境が整っていなくても使用可能な点、そしてカスタマイズがしやすい点がメリットです。デメリットとして、法改正のたびにカスタマイズして対応しなければならない点が挙げられます。
マネーフォワードでも、企業規模に合わせて選択可能なクラウド会計ソフトを提供しています。興味を持った方は、ぜひ公式サイトをチェックしてください。
減価償却費の仕訳方法
減価償却費を計上したら、仕訳も一緒に行わなければなりません。以下では直接法と間接法、それぞれの減価償却費の仕訳方法について解説します。
直接法による仕訳方法
直接法とは、固定資産の取得価額から減価償却費を直接控除する方法です。たとえば、コピー機の減価償却費が10万円だった場合の仕訳は、次のようになります。
借方 | 貸方 | 摘要 | |||
---|---|---|---|---|---|
減価償却費 | 100,000円 | 備品 | 100,000円 | コピー機の減価償却 |
間接法による仕訳方法
間接法は、減価償却費を減価償却累計額に加算して表示する方法です。直接法の説明の際に挙げたコピー機の仕訳例を、間接法で仕訳すると次のようになります。
借方 | 貸方 | 摘要 | |||
---|---|---|---|---|---|
減価償却費 | 100,000円 | 備品減価償却累計額 | 100,000円 | コピー機の減価償却 |
減価償却費の決算書での表示方法
減価償却費は、決算書における重要な項目の1つです。以下では、貸借対照表と損益計算書、それぞれの決算書での表示方法について解説します。
貸借対照表での表示方法
貸借対照表とは、企業の財政状態がわかる決算書の1つです。BSとも呼ばれ、次のように減価償却費を記載します。なお、最初から純額で記載し、減価償却累計額を注記する方法もあります。
固定資産
車両運搬具 2,000,000円
減価償却累計額 △ 334,000円
車両運搬具(純額) 1,666,000円
損益計算書での表示方法
損益計算書とは企業の収益、および費用の損益計算をまとめた書類です。PLとも呼ばれ、次のように販売費および一般管理費のなかに減価償却費を記載します。なお、売上原価に該当する減価償却費については製造原価報告書に記載されます。
科目 | 金額 |
---|---|
III 販売費および一般管理費 | |
減価償却費 | 1,666,000円 |
減価償却費の計算で注意すべきポイント
減価償却費の計算を間違えると、資産や負債の誤認や税務署による調査、およびペナルティが発生する可能性があります。以下では、減価償却費の計算をする際に注意すべきポイントについて解説します。
減価償却資産の耐用年数に注意する
同じ種類の固定資産であっても、使用されている素材や取得目的耐用年数が違うケースがあります。代表的なのが建物で、事務所目的で取得した建物でも木造は24年、木工モルタル造は22年が耐用年数です。
また、同じ木造住宅でも店舗用、住宅用に使用するなら22年、工場用、倉庫用に使用するなら15年のように変化します。
減価償却資産を処分した場合の会計処理に注意する
減価償却資産を処分する場合、適切な処理をしなければなりません。処理を間違えると、企業の経営や会計処理に影響が出る可能性があります。
処分といっても、その方法は除却や売却、廃棄などさまざまです。そのため、それぞれの処分方法に対応した会計処理を選択してください。
減価償却資産を年度の途中で取得した場合の会計処理に注意する
減価償却資産は、常に年度の最初から取得できるとは限りません。もし年度の途中で減価償却資産を取得した場合、月割りで計算します。
たとえば、決算が3月の企業が8月に減価償却資産を取得したら、8ヶ月分を計上します。なお、月の途中で取得したときは、1ヶ月に満たない日数でも1ヶ月とカウントしてください。
減価償却の計算方法は資産の種類に合わせて変える
減価償却の計算方法は、資産の種類によって変化します。計算の方法もさまざまで、資産によっては適用できない計算方法もあるため、注意してください。
また、効率的かつ正確に減価償却の計算を行いたい場合は、自動計算ツールや会計ソフトを利用するのがおすすめです。マネーフォワードでも、クラウド型の会計ソフトを提供しています。
1ヶ月の無料トライアルも実施しているため、興味を持った方はぜひ公式サイトをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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