- 作成日 : 2025年2月5日
仕入債務回転期間と売上債権回転期間の正しい見方と解説!計算方法も紹介
資金繰りの状況判断に必要な指標として、仕入債務と売上債権の回転期間があります。この2つの回転期間を正しく把握することは、自社のキャッシュフロー管理にとても大切です。経営状態の把握にもつながるでしょう。
本記事では、仕入債務と売上債権の回転期間を見る方法や計算方法について解説します。
仕入債務回転期間とは?
仕入債務回転期間とは、買掛金が発生してから支払いが終わるまでの期間のことです。仕入債務は、掛け売り取引を行なった際に生じる債務のことで、商品やサービスを受け取る側に発生します。
多くの企業間取引では、取引の都度に現金のやりとりはありません。そのため商品を仕入れた後、実際に費用を支払うまでの間に一定期間の猶予があります。この期間は、取引で発生した費用を会計処理上で「買掛金」として計上し、指定された期日までに現金や振込、手形などで支払いを済ませます。支払手形を選択した場合、資金化されるまで手形の満期日を待つこととなるため、現金と比較すると支払いが終わるまでに時間がかかるでしょう。
仕入債務回転期間の計算方法は、次のとおりです。
日数単位で計算する場合:仕入債務回転期間=仕入債務÷(仕入高÷365日)
月単位で計算する場合:売上債権回転期間=仕入債務÷(仕入高÷12ヶ月)
業界や業種により異なりますが、目安は40日程度を目安にしましょう。
売上債権回転期間とのつながり
売上債権回転期間は、売上から代金の回収が完了するまでの期間のことで、商品やサービスを提供する側に生じます。売上債権は「売掛金」と「受取手形」です。
一般的に売上債権回転期間が短ければ、売掛金の資金化スピードが速いことを意味します。そして、仕入債務回転期間が売上債権回転期間を下回ると、支払いが必要な時に資金の調達が困難で、資金繰りが悪化している状況を表します。
売上債権回転期間の計算方法は、次のとおりです。
日数単位で計算する場合:売上債権回転期間=売上債権÷(売上高÷365日)
月単位で計算する場合:売上債権回転期間=売上債権÷(売上高÷12ヶ月)
目安としては、30日以下を基準にしましょう。
仕入債務回転期間と回転率の計算方法
仕入債務回転期間は、ご説明したとおり「仕入時の未払金の支払いがどのぐらいで終わるか」の期間のことです。仕入債務回転期間が長ければ長いほど、支払い期間を延ばすことができるため、資金繰りに有利であると考えられます。ただし、「資金繰りが苦しいから、回転期間を長くとっているのでは?」と疑われる場合もあるため、適切に管理しましょう。
一方、仕入債務回転率は、仕入債務と仕入高の割合を表し、支払い効率の状態を把握できます。
仕入債務回転率の計算方法は、次のとおりです。
仕入債務回転率が高いと仕入債務の支払い期間が短く、低いと支払い期間が長いことを意味します。つまり、仕入債務回転率が高いことは支払いがコンスタントに行えている、資金繰りが苦しくない状態を表しているのです。
例えば…
①売上高が1,000万円、仕入債務が100万円の場合であれば、仕入債務回転率は1,000%
②売上高が1,000万円、仕入債務が200万円の場合であれば、仕入債務回転率は500%
仕入債務回転率の目安は1,200%以上とされているため、上記の場合だと①のほうが支払い効率は良いとされるでしょう。
もちろん、現金取引メインの業種と卸売などの法人取引メインの業種とでは、回転率は異なります。同業他社と比較して明らかに高い場合には、原因を探って対策を練る必要があるでしょう。また、定期的に数値を観測したうえで、回転率が悪化してきた場合は、支払い効率が悪化していると考えることができます。
とはいえ、これらの計算は一度だけ計算してみても、そこまで深い意味を読み取ることは難しいでしょう。現状の仕入債務回転期間と仕入債務回転率の数値を過去数年間と比較して、数値の確認をすることが大切です。日頃から定期的にチェックしておけば、大きな変化が起きた時にすぐに対応できます。
まとめ
今回ご説明したように、仕入債務回転期間と売上債権回転期間を把握することで、資金繰りに要する期間がわかります。加えて、回転率も把握しておくことで、自社の財政状況を確認できるでしょう。
キャッシュフローの観点からは、仕入債務の回転期間は売上債権の回転期間よりも長い方が良いとされています。しかし、業種や業界によっても異なりますので、同業他社との比較が大切です。また、一度だけでなく定期的に確認することが、資金繰りや経営状態の安定につながります。
ぜひ、本記事を参考に回転期間を計算し、自社の経営に役立ててください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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