- 作成日 : 2024年11月5日
返還インボイスと適格請求書の金額は相殺できる?書き方や仕訳も解説
返還インボイス(適格返還請求書)は、売上に対して返品や値引きなどがあったときに、適格請求書発行事業者が発行する書類です。インボイス(適格請求書)とは記載項目が異なるため、分けて考える必要があります。この記事では、返還インボイスの書き方や相殺の仕訳などについて解説します。
目次
返還インボイス(適格返還請求書)とは?
返還インボイス(適格返還請求書)とは、適格請求書発行事業者が発行する請求書のうち、売上に対する返品や値引き、販売奨励金などがある場合に作成する請求書です。適格請求書発行事業者が、課税事業者に対する売上において返品などが生じた場合に発行義務があります。
返還インボイスとインボイス(適格請求書)の違いは?
インボイス(適格請求書)は、返還インボイスと同じように、適格請求書発行事業者が発行できる請求書です。一定の事項が記載されたインボイスは、消費税の仕入税額控除の適用対象になります。
インボイスを作成する際には、原則として、以下の記載が必要です。
- 適格請求書発行事業者の氏名または名称
- 適格請求書発行事業者の登録番号
- 取引年月日
- 取引内容
- 軽減税率の対象品目である旨
- 税率ごとに区分し合計した対価の額と適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 交付を受ける事業者の氏名または名称
一方、返還インボイスを作成する際には、以下の記載が必要です。
- 適格請求書発行事業者の氏名または名称
- 適格請求書発行事業者の登録番号
- 対価の返還等を行う年月日
- 対価の返還のもととなった取引の年月日
- 対価の返還のもととなった取引の内容
- 軽減税率の対象品目である旨
- 返還等の額を税率ごとに区分し合計した金額
- 返還等の額について税率ごとに区分した消費税額等と適用税率
インボイスと返還インボイスを比較すると、記載する内容が異なることがわかります。また、インボイスは取引の請求のために発行する書類であって、返還インボイスは返品などがあった場合に発行する書類であることから、発行の目的にも違いがあります。
返還インボイスとインボイス(適格請求書)の金額は相殺できる?
返還インボイスの金額とインボイスの請求金額は相殺できます。例えば、前月の売上と返品・値引き等を相殺する場合です。インボイスと返還インボイスは、別々に発行することも、1枚にまとめて発行することもあります。1枚に落とし込む場合は、インボイスと返還インボイスの両方の記載事項を含めて作成しなければなりません。
相殺処理を行う場合の返還インボイスの書き方は?
返還インボイスは、先に紹介した記載事項をすべて含めて作成しなくてはなりません。特に注意が必要なのは、返還に関する項目です。取引内容の内訳や税率に関する項目については、以下の例のように記載します。
(返還インボイスの内訳・消費税の記載例)
| 取引日 | 品目 | 返品額 |
|---|---|---|
| 10月5日 | A商品 | 22,000円 |
| 10月20日 | B商品 | 11,000円 |
| 合計 | 33,000円(うち消費税3,000円) | |
| 消費税8%対象 | 0円 | |
| 消費税10%対象 | 33,000円(うち消費税3,000円) | |
返還インボイスの内訳に記載するのは、返品や値引きの対象になった品目や金額です。取引日は返還された日ではなく、返還の対象となった品目のもともとの取引年月日を記載します。上記の取引内容のほかに、返還インボイスの発行日、適格請求書発行事業者の名称と登録番号の記載が必要です。
返還インボイスの相殺処理をするときの仕訳は?
返還インボイスの金額とインボイスの金額を相殺する場合、2通りの方法が考えられます。売上から直接相殺する方法と別の勘定科目を使って相殺する方法です。いずれも、請求金額と相殺して取引相手に請求する場合は、売上高にかかる債権の額が相殺の対象になります。
以下の仕訳は、売上を直接相殺した場合の仕訳です。
(例)A社に販売したA商品2万円について返品を受けたため、今月の請求額(売掛金)と相殺することにした。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売上高 | 20,000円 | 売掛金 | 20,000円 |
返品や値引きを売上から直接控除すると、返品や値引き前の売上高がわからなくなってしまいます。売上から直接控除する方法以外に、別の勘定科目を使って相殺することも可能です。返品の場合は「売上戻り高」、値引きの場合は「売上値引き」などの勘定科目を使います。
(例)A社に販売したA商品2万円について返品を受けたため、今月の請求額(売掛金)と相殺することにした。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売上戻り高 | 20,000円 | 売掛金 | 20,000円 |
返還インボイスの相殺処理をするときの注意点は?
原則として、相殺処理をする場合でもしない場合でも、売上に対して返品や値引きがあったときは、適格請求書発行事業者の場合は返還インボイスの発行が必要です。相殺処理をするときは、インボイスと返還インボイスを1通にまとめる、またはインボイスと返還インボイスそれぞれを同時に送付するなどして、相殺の事実が取引相手にわかるようにしましょう。
相殺処理については、基本的に売掛金との相殺になるため、現金の出入りはありません。会計処理を忘れないように注意しましょう。
適格請求書発行事業者において、課税事業者に対する返還インボイスの発行は義務ですが、少額の返還については返還インボイスの発行が免除されます。返品や値引きなどの返還の額が1万円未満である場合です。返還インボイスの少額の特例は、事務負担の軽減に役立ちます。
返還インボイスとインボイスは相殺できる
返還インボイスの金額とインボイスの請求金額は相殺できます。返還インボイスの金額を、インボイスの請求金額から差し引いて発行することが可能です。返還インボイスとインボイスを相殺する場合は、1通にまとめて記載するなど、相殺の事実がわかるように記載してインボイス(または返還インボイス)を発行するようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
正味売却価額とは?定義や帳簿価格との関係・使い方・計算や仕訳手順まで解説
決算や在庫評価の場面で登場する「正味売却価額」。専門用語ではあるものの、実務に直面すると「正確な定義が分からない」「帳簿価格とどう違うのか」「仕訳はどう処理するのか」と迷う方も多いのではないでしょうか。 本記事では、正味売却価額の基本的な定…
詳しくみる中小企業における「与信管理」のポイントと問題点、実施方法について解説
自己資本が潤沢ではない中小企業は、売掛先企業の影響を大きく受けてしまいます。そのため、与信管理は必要不可欠なのです。 今回の記事では、中小企業における与信管理のポイントや問題点のほか、与信管理を担当する部署や代行サービスについても解説します…
詳しくみる支払管理表エクセルの作り方!スプレッドシートとの違いや効率化を解説
経費や請求の支払い管理を正確に行うことは、会社の資金繰りを安定させるために重要です。この記事では、エクセルで支払管理表を作成する方法、Google スプレッドシートとの違い、さらに効率化に役立つシステムやテンプレート活用まで、わかりやすく解…
詳しくみる売掛債権とは?未収入金との違いや管理・回収方法までわかりやすく解説
事業をしていく上で重要となるのが、売掛債権です。せっかく売上をあげても、売掛債権をしっかり管理しておかないと、キャッシュが不足するなどの事態に追い込まれる可能性があります。 そこで、ここでは売掛債権の内容や管理・回収方法についてわかりやすく…
詳しくみる発注申請が進まない理由と効率化の方法、発注書のメール例文も紹介
発注申請は、会社が物品やサービスを購入する際に、社内で必要性や予算を確認し、承認を得るための手続きです。流れを理解し、正しい申請や書類作成、メール対応を行うことで、ミスやトラブルを防げます。この記事では、発注申請の基本から、流れ、書類の書き…
詳しくみる入金確認書とは?書き方や印紙の扱いを解説(テンプレート付き)
入金確認書とは、取引先からの入金があった際に、金額や日付などを明記して通知するビジネス文書です。本記事では、入金確認書の基本的な知識から、具体的な書き方・印紙の扱い・よく似た書類との違いまでわかりやすく解説します。さらに、入金確認書を活用し…
詳しくみる会計の注目テーマ
- 勘定科目 消耗品費
- 国際会計基準(IFRS)
- 会計帳簿
- キャッシュフロー計算書
- 予実管理
- 損益計算書
- 減価償却
- 総勘定元帳
- 資金繰り表
- 連結決算
- 支払調書
- 経理
- 会計ソフト
- 貸借対照表
- 外注費
- 法人の節税
- 手形
- 損金
- 決算書
- 勘定科目 福利厚生
- 法人税申告書
- 財務諸表
- 勘定科目 修繕費
- 一括償却資産
- 勘定科目 地代家賃
- 原価計算
- 税理士
- 簡易課税
- 税務調査
- 売掛金
- 電子帳簿保存法
- 勘定科目
- 勘定科目 固定資産
- 勘定科目 交際費
- 勘定科目 税務
- 勘定科目 流動資産
- 勘定科目 業種別
- 勘定科目 収益
- 勘定科目 車両費
- 簿記
- 勘定科目 水道光熱費
- 資産除去債務
- 圧縮記帳
- 利益
- 前受金
- 固定資産
- 勘定科目 営業外収益
- 月次決算
- 勘定科目 広告宣伝費
- 益金
- 資産
- 勘定科目 人件費
- 予算管理
- 小口現金
- 資金繰り
- 会計システム
- 決算
- 未払金
- 労働分配率
- 飲食店
- 売上台帳
- 勘定科目 前払い
- 収支報告書
- 勘定科目 荷造運賃
- 勘定科目 支払手数料
- 消費税
- 借地権
- 中小企業
- 勘定科目 被服費
- 仕訳
- 会計の基本
- 勘定科目 仕入れ
- 経費精算
- 交通費
- 勘定科目 旅費交通費
- 電子取引
- 勘定科目 通信費
- 法人税
- 請求管理
- 勘定科目 諸会費
- 入金
- 消込
- 債権管理
- スキャナ保存
- 電子記録債権
- 入出金管理
- 与信管理
- 請求代行
- 財務会計
- オペレーティングリース
- 新リース会計
- 購買申請
- ファクタリング
- 償却資産
- リース取引