- 更新日 : 2025年2月20日
期間損益計算とは?計算方法からわかりやすく解説
期間損益計算は、会計上の基本的な概念の一つです。期間損益計算はどのような場面で用いられるのか、期間損益計算の概要と計算方法、費用収益対応の原則との関係について解説します。
期間損益計算とは
期間損益計算とは、企業が存続している期間を人為的に区切って、ある期間(会計期間)の損益を計算することです。
会計上、企業は半永久的に継続することを前提にしています。そのため、企業が存続している全期間を会計処理の対象とすると、会計情報の開示や税金の計算・納税を適切に行えません。そこで、企業は継続することを前提に、期間を人為的に定めて期間損益計算を行います。
期間損益の計算方法
期間損益の計算方法には、財産法と損益法があります。
財産法
財産法は、貸借対照表の純資産の額に注目した計算方法です。期首の貸借対照表の純資産額と期末の貸借対照表の純資産額を比較して、企業の期間における損益を計算します。
期首よりも期末の純資産額が多い場合は期間損益が黒字、期末よりも期首の純資産額が多い場合は期間損益が赤字となります。貸借対照表をもとに損益を計算することから、「資産負債アプローチ」とも呼ばれる方法です。
(例)期首純資産100万円、期末純資産120万円の場合
財産法で注意したいのは、純資産の額には損益(繰越利益剰余金など)の額以外も含まれることです。株主からの出資や株主への配当なども含まれるため、適切に損益を認識できないというデメリットがあります。
損益法
損益法は、損益計算書の収益の額と費用の額に注目した計算方法です。一会計期間の収益の総額と費用の総額を比較して、企業の損益を計算します。費用よりも収益が上回る場合は黒字、収益が費用を下回る場合は赤字となります。損益計算書をもとに損益を計算することから、「収益費用アプローチ」とも呼ばれる方法です。
(例)収益の総額が500万円、費用の総額が450万円の場合
損益法は適切に損益を把握できることから、現代で一般的に用いられている方法です。期間に対応させた集計が必要になるため、財産法に比べて計算が複雑であるというデメリットがあります。さらに、資産と負債の状況を直接把握しないために、利益の財産的な裏付けが必ずしも得られないのがデメリットと言えます。
費用収益対応の原則とは
期間損益計算のうち、損益法では「費用収益対応の原則」が重要な概念となります。費用収益対応の原則とは、期間収益と期間費用を対応させて期間損益を算出する原則のことです。
損益法では費用収益対応の原則に従って会計処理をしなければならないため、決算時には経過勘定について考慮する必要があります。経過勘定とは未収収益、前払収益、未払費用、前払費用のことです。例えば、すでに現金で支払った費用について、来期以降の使用に対応する場合は前払費用として計上し、来期以降に費用に振り替えなくてはなりません。
期間損益計算は会計上の基礎的な概念
期間損益計算は、現代では収益と費用に注目した損益法が主流です。しかし、損益法の他に財産法という考え方もあります。損益法と財産法はいずれも期間損益計算の基礎となる計算方法であるため、会計の知識を深めるための基本として概要を把握しておきましょう。
なお、損益の把握は損益法によるのが一般的です。財産的裏付けという観点から財産法による純資産の増減に着目する企業もありますが、やはり損益法を補完する役割といえます。
したがって、期間損益計算を損益法にて計算するというスタイルは当面変わらないでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
役員賞与は税金が高くつく!?
ボーナスと呼ばれる賞与は、もらう側にとって仕事が評価された喜びを高め、モチベーション・アップにもつながります。一方で、支払う側にとっては、そのモチベーション・アップを業績に反映させ、雇用環境をさらによくするための投資にもなります。 さらに、…
詳しくみる【これは軽減税率?】ぶどう狩りや梨狩り。その場で食べると軽減税率の対象外ってほんと?
2019年10月1日からスタートした消費税の軽減税率制度。主に「飲食料品」は消費税軽減税率8%の対象になりますが、飲食のシチュエーションなどによっては適用対象になりません。 本シリーズ『これは軽減税率?』では、事業者のみなさんが軽減税率につ…
詳しくみる60年ぶりの農協監査制度改革!全中の監査権廃止で日本の農業の何が変わるのかを徹底解説!
2015年2月8日に、政府と全国農業協同組合中央会(以下、全中と表記)の間で全中がこれまで、全国各地にある700に上る地域農協に対して独占的に有していた監査権を廃止することで合意がまとまりました。また、この他にもいくつかの改正点が合意されま…
詳しくみる海外子会社からの配当の益金不算入とは?目的やメリット、会計処理を解説
海外子会社からの配当の益金不算入とは、配当金の95%相当額を益金に算入しない(非課税になる)制度です。日本国内の税務上の処理になります。本記事では、益金不算入の対象になる海外子会社や会計処理の方法、源泉税の取り扱いについて解説します。 海外…
詳しくみる【公益法人会計基準とは】法人税が非課税になるのには理由があった
公益法人は税制面で優遇されています。法人なら支払うべき法人税がなぜ非課税になるのでしょうか? 公益法人は税制面で優遇されるため財務状況が厳しく審査されています。(これを公益法人会計基準といいます) 税制優遇の光と影について解説します。 公益…
詳しくみる“良い税理士”を見極めるたった一つのポイント 「近所」「紹介」の落とし穴も
この記事の読者の中に、税理士を探している方がいるかもしれません。中には知人の紹介やネット検索を頼りに検討している方もいるかもしれないですね。 一昔前と変わり、今はターゲットや専門分野を絞った税理士事務所が増え、差別化されたことで税理士探しが…
詳しくみる