• 作成日 : 2020年5月14日

小売業の会計・経理業務

小売業の経理は、店舗によって決算における棚卸処理や仕訳などが異なります。また、契約によっても売上額や費用への計上時期が異なり、簿記を理解していても経理方法に戸惑う場合が少なくありません。
この記事では、小売業の概要や売上時期の考え方、決算棚卸処理方法などを小売業の経理業務における注意点とあわせてご紹介します。
    

小売業とは?

小売業は、商品を消費者に販売する業態です。これに対し卸売業は、商品を小売業者などに販売する業態です。平成28年時点における事業所数では、小売業が約73%、卸売業が約27%であり、小売業は消費社会を大きく支えている産業といえます。

百貨店や家電量販店、スーパーマーケットやコンビニはもちろん、大型のショッピングセンターにある店舗はほぼ小売業者です。代理店という形でメーカーの商品を消費者に販売する形態もありますし、インターネット上のオンライン店舗も多くが小売業です。

ただし小売業者である青果店は、消費者に野菜を販売するのはもちろん、飲食店などの事業者に野菜などを卸す場合もあります。ひと口に小売業といっても、コンビニエンスストアや食料品を扱う事業所をはじめ医薬品・化粧品、自動車小売業など多様な業種・業態・規模があるため、それぞれで経理処理方法が異なります。

この記事では、生産者やメーカーなどから仕入れた商品やサービスを店頭や配送で一般消費者に引き渡す、一般的な形態である「小売業」における経理業務について解説します。

小売業における売上のタイミングとは?

小売業で売上を計上する日付は、商品の引き渡しと入金が同時に行われたときが原則です。しかし、なかには商品を引き渡したがまだ現金を受け取っていない場合や、商品の予約だけを取り扱い先にお金だけを受け取る場合もあります。

一般的に小売業で採用されている売上計上基準は、「引渡基準(ひきわたしきじゅん)」です。まだ現金を受け取っていなくても、引き渡したのであれば売上を計上します。一方、予約を受けただけのときは売上を計上しません。

なお、企業における会計の原則である企業会計では、「実現主義の原則」にもとづき収益が実現した時点で売上を計上します。収益の「確実性」に注目した考え方であり、業種によって売上を計上するタイミングが異なります。

小売業では、商品などを引き渡したタイミングを「収益の実現」と捉えるのが一般的です。商品の販売やサービスの提供が実現したことをもって、「販売した日」や「提供した日」などのタイミングで売上を計上することとなります。

小売業における決算棚卸処理とは? 

在庫とは、仕入れてから販売するまでの商品のことです。在庫の明確さは、財務諸表や原価管理の信頼性に大きくかかわる重要な要素です。そのため、決算時に限らず常に在庫を管理する必要があるのです。

決算棚卸処理とは、商品等の在庫の数量を確認し、会計上の期末棚卸高を確定させる作業です。

棚卸資産には、製品、商品、仕掛品、材料、貯蔵品などがあり、貸借対照表の棚卸資産を実際に調査(実地棚卸)して、決算日においてどれくらい残っているかを調査します。

売上原価)=(期初に残っている在庫)+(当期の仕入高)-(期末に残っている在庫)

期末棚卸高の評価方法には、個別法、先入先出法、後入後出法、平均原価などがあり、評価方法によって期末商品棚卸高の金額が変わってきます。

なお小売業界では、期末在庫の売価から原価を求める「売価還元法」がよく利用されます。

棚卸資産の法定評価方法は、「最終仕入原価法」で、期末から最も近いときに取得した単価に期末の数量を乗じて評価します。ただし税務署に算出法を届けておけば、ほかの方法でも構いません。

小売業の経理業務における注意点とは?

小売業の経理処理では、過剰在庫や過少在庫(品切れ)などによる商品ロスを回避することが重要です。

たとえば、アパレルのようにトレンドの移り変わりが早い業界では、大量の売れ残り在庫が出ないように、売れ筋などの様子を見ながら期末在庫の調整をする必要があります。

最近では人が会計ソフトに在庫状況を入力するのではなく、POSレジなどを使う場合も増えてきています。商品を販売した時点で生じる金銭の情報を即時に記録・集計でき、在庫管理システムや会計ソフトとも連携しやすくなってきました。

POSシステムを使うと商品の売上情報を即座に把握でき、売上情報を踏まえた在庫管理が可能となるため非常に便利です。 ただし、イレギュラーケースについて考慮することも重要です。

値下げロスや商品廃棄ロスなど、現場での売上値引きや期限切れによる廃棄額などのデータをあらかじめPOSシステムに登録しておかないと、実際の在庫と帳簿上の在庫が合わなくなってしまいます。

さらに人間が棚卸を行うことによる検品ミスや登録ミス、不正行為などで棚卸をした際に金額が合わなくなる場合もあります。通常の範囲の不一致であれば分析して決算で調整できますが、間違いは少ないに越したことはありません。

小売業に限った話しではありませんが、在庫管理システムを利用するにあたっては、各担当における連携ルールを作る必要があるのです。

   

小売業の経理業務は在庫管理が重要なポイント

小売業の経理業務では、簿記の考えをもとに「引渡基準」で仕訳をするのが基本です。ただし、現場と会計の連携をシステムだけに頼るのは危険です。適正な会計データを得るために現場の動きをよく知ることも欠かせません。 自社の商品の流れを熟知し、必要なときには対応ができるように知識を深めておきましょう。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:岡 和恵 (税理士 / フィナンシャルプランナー AFP)

大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。その後、システム会社に転職。
システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。
2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。

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