- 更新日 : 2025年4月23日
工事費に関する勘定科目・会計処理まとめ
企業の経理担当者は、工事費の勘定科目について知りたいのではないでしょうか。工事費の内訳を見ると費用の詳細が記載されているため、どのように会計処理を行えばいいのか悩みますよね。
本記事では工事費に関連して仕訳上利用される勘定科目や、具体的な仕訳例について解説しています。また、減価償却費が必要な費用についても解説しているため、ぜひ参考にしてください。
目次
工事費の仕訳に使える勘定科目
工事費については、そのまま支出した期の経費として計上する場合もあれば、固定資産として計上したうえで減価償却費を通じて使用期間にわたって毎期費用を計上していく場合もあります。工事費を支出した際に仕訳に計上される勘定科目としては以下のようなものが考えられます。
<そのまま支出した期の経費として計上される場合に使用される勘定科目>
- 修繕費
- 諸経費 など
<固定資産として計上する場合に使用される勘定科目>
- 建物
- 建物附属設備
- 工具器具備品 など
店舗や事務所などの工事を行なった場合は、工事の内容などにより必要な会計処理が異なります。ここからはそれぞれの勘定科目と具体的な仕訳例について解説していきます。
工事費を「修繕費」勘定を用いて仕訳計上する
店舗や事務所などの修理を行なった場合は「修繕費」の勘定科目を用いて仕訳を行います。
ここで言う修理とは、建物の価値を増加させたり使用可能期間を延長させたりするものではなく、あくまで維持管理などを目的として支出した費用のことをいいます。
具体的な仕訳例は以下のとおりです。
例)店舗の塗装が経年劣化により剥がれていたため、塗装業者に外壁の塗装を依頼した。代金30万円は現金で支払った。
塗装代として |
修繕費については、別の記事で詳しく解説しています。
工事費を「諸経費」勘定を用いて仕訳計上する
工事請求書に記載されている諸経費については、後述する建物などの固定資産の取得原価に含めるべきものでなければ、そのまま諸経費の勘定科目を使用することが一般的です。諸経費の詳細は記載されていない場合がほとんどですが、作業員の旅費やガソリン代、労災・損害保険の保険料などが含まれています。
具体的な仕訳例は以下のとおりです。
例)店舗の内装工事を依頼した会社へ諸経費として現金5万円を支払った。
工事費を「建物」勘定を用いて仕訳計上する
事務所や店舗、倉庫などを建築した場合は、固定資産である「建物」の勘定科目を用いて仕訳を行います。建物の勘定科目を使用する場合は新築であることが必要です。
また、建物の会計処理を行う場合は一括で費用計上できず、建物の種類ごとに定められた法定耐用年数に応じて、減価償却費を計算する必要があります。
建物を取得した際は資産計上を行い、減価償却費として期末に経費計上を行います。
具体的な仕訳例は以下のとおりです。
(例)事務所を期初に500万円で新築した。代金は現金で支払った。
建築費用として |
また、減価償却を行う場合は以下の式を用いて減価償却費を算出します。
非業務用の事務所(木造)の法定耐用年数は24年であり、減価償却資産の償却率等表によると定額法の償却率は0.042となっています。
上記より、減価償却費は次のように計算できます。
500万円 × 0.042(定額法償却率) = 21万円
減価償却を実施する場合は、以下のように仕訳を行います。
例)期末になったため、取得した事務所の減価償却費を計上した。
住宅や業務用建物の減価償却については、別の記事で詳しく解説しています。
工事費を「建物附属設備」勘定を用いて仕訳計上する
冷暖房設備や電気設備といった建物内の設備工事を行う場合は、固定資産である「建物附属設備」の勘定科目を用いた仕訳が必要です。なお、単に建物内にすでにあるこれらの設備をメンテナンスする場合は「修繕費」の勘定科目を使用しましょう。
建物附属設備の会計処理を行う場合は原則として、附属設備ごとに定められた法定耐用年数に応じて減価償却費を計算する必要があります。
具体的な仕訳例は以下のとおりです。
例)事務所の新築に伴い電気設備の工事を実施した。代金400万円は現金で支払った。
費用として |
また、減価償却を行う場合は以下の式を用いて減価償却費を算出します。
蓄電池電源設備以外の電気設備の法定耐用年数は15年であり、減価償却資産の償却率等表によると定額法の償却率は0.067となっています。
上記より、減価償却費は次のように計算できます(期首に取得と仮定)。
400万円 × 0.067(定額法償却率) = 268,000円
減価償却を実施する場合は、以下のように仕訳を行います。
例)期末になったため、電気設備の減価償却費を計上した。
年次償却 |
工事費を工具器具備品として仕訳計上する
事務所や店舗、倉庫などに設置する取得価額が10万円以上の備品を購入した場合は、固定資産である「備品」の勘定科目を用いて仕訳を行います。
備品は原則として減価償却が必要ですが、取得価額が一定の額を下回る場合は取得価額の全額または一部を一括償却することもできます。
具体的な仕訳例は以下のとおりです。
例)会社の備品としてスチールラックを購入した。代金50万円は現金で支払った。
購入費用として |
また、減価償却を行う場合は以下の式を用いて減価償却費を算出します。
スチールラックの法定耐用年数は18年であり、減価償却資産の償却率等表によると定額法の償却率は0.056となっています。
上記より、減価償却費は次のように計算できます(期首に取得と仮定)。
50万円 × 0.056(定額法償却率) = 28,000円
減価償却を実施する場合は、以下のように仕訳を行います。
例)期末になったため、購入した事務机の減価償却費を計上した。
年次償却 |
備品については、別の記事で詳しく解説しています。
工事費の仕訳では減価償却に注意しよう
工事費を経費計上する場合は、明細の内容をもとに適切な会計処理を行いましょう。建物や付帯設備、備品については原則として減価償却費の計算が必要となるため、間違った仕訳をしてしまわないよう注意が必要です。
減価償却の特例や他の工事費の仕訳について気になる方は、税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。
よくある質問
工事費は経費にできる?
多くの工事費は経費にできます。ただし、固定資産に計上したうえで減価償却が必要なものもあるため注意が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
工事費を修繕費で仕訳するポイントは?
修繕費は、建物の維持管理などを目的として工事を行なった場合に使用します。工事によって資産価値が向上する場合や、使用期間が延長される場合は修繕費に該当しません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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