- 更新日 : 2025年2月20日
フルペイアウトの意味とは?リース取引の基本まで紹介
会計処理上、リース取引は主に「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」の2種類に分けられます。ファイナンス・リース取引に該当するには、「解約不能」と「フルペイアウト」の2つの要件を満たすことが必要です。今回はこの2つの要件のうちフルペイアウトについて、概要と該当するための条件について解説していきます。
フルペイアウトとは
「フルペイアウト」は、会計処理上、リース取引を区分するときの要件の1つです。リース物件の使用により実質的に利益を得ることができ、リース物件の使用にともなう実質的なコストを負担するリース取引を指します。フルペイアウトによるリース取引は、資産を取得した場合と同様の経済的効果や経済的負担が生じると考えられ、多くの場合会計上は売買処理として扱われます。
※フルペイアウトを判断基準とするリース取引については後述します。
フルペイアウトの要件
フルペイアウトに該当するかどうかは、一定の要件を満たすかどうかで判断します。会計上の要件と税務上の要件に分けて、フルペイアウトの要件を見ていきましょう。
会計上の要件
会計上、リース取引におけるフルペイアウトの判断基準は「現在価値基準」と「経済的耐用年数基準」の2つがあり、いずれか1つの基準を満たす場合は、フルペイアウトとして判断します。
現在価値基準は、解約不能期間のリース料総額の現在価値が、見積現金購入価額のおおむね90%以上であるとき、フルペイアウトと判断する基準です。現在価値とは、リース物件に対する貸手の利息を割引いたリース料総額(元本)をいい、貸手の利率が不明の場合は、借手の追加借入追加利子率を用いて、リース料総額を計算します。見積現金購入価額は、合理的に見積もられたリース物件の購入費用です。
経済的耐用年数基準は、解約不能のリース期間が、経済的耐用年数のおおむね75%以上であるとき、フルペイアウトと判断する基準です(※ただし現在価値基準が90%を大きく下回る場合を除きます)。経済的耐用年数とは、税務上の法定耐用年数ではなく、利用実態に合わせた物件の耐用年数を指しますが、不合理でなければ税務上の法定耐用年数を用いることもできます。
税務上の要件
法人税法上は、会計上の要件である現在価値基準や経済的耐用年数基準ではフルペイアウトを判断せず、税制上の90%基準に該当するかどうかで判断します。税制上の90%は、リース料総額の現在価値ではなく、解約不能期間に支払う利息を含めたリース料総額が判断の基準です。リース料総額が資産取得のために通常要する費用のおおむね90%を超えるときは、フルペイアウトと判断します。
そもそもリース取引とは
フルペイアウトに関連するリース取引とは、リース会社からリース物件を賃貸借する取引を指します。不特定多数への賃貸借を想定したレンタルとは異なり、リース取引は借手の要望に合わせてリース会社が代わりに物件を購入し、物件を貸し出す取引形態です。
リース取引は、契約上は賃貸借契約が結ばれますが、該当物件の購入と経済的実態がほとんど変わらない取引も行われるようになりました。そのため、取引の実態に合わせて、売買処理と賃貸借処理に区分して会計処理を行うこととされています。
売買処理と賃貸借処理を判断する基準が、この記事でも説明した「フルペイアウト」と「解約不能」の条件です。解約不能のリース取引、かつフルペイアウトの要件を満たすときは、「ファイナンス・リース取引」に区分して売買処理を行います。一方でファイナンス・リース取引の条件を満たさないリース取引は「オペレーティング・リース取引」に区分し、賃貸借契約として会計処理を行います。
リース取引の概要やメリット・デメリットについては以下の記事で詳細を説明していますので、こちらもご覧ください。
リース取引に関連して、リース期間終了後にリース会社へ支配権が戻る「リース投資資産」についての概要や会計処理は、以下の記事で詳しく説明しています。
フルペイアウトはリース取引を売買処理と賃貸借処理に分ける基準
リース取引の会計処理は、取引の実態に合わせてファイナンス・リース取引(売買処理)とオペレーティング・リース取引(賃貸借処理)に区分します。区分時の判断基準になるのが、解約不能とフルペイアウトです。フルペイアウトについては、この記事でも説明したように会計処理上と法人税法上でそれぞれ要件が定められていますので、よく確認しておきましょう。
よくある質問
フルペイアウトとは?
リース物件を取得することで、資産を取得した場合と同様の経済的効果や経済的負担が生じるリース取引を指します。詳しくはこちらをご覧ください。
リース取引とは?
リース会社からリース物件を賃貸借する取引を指します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
口座振替の手数料はどちらが負担?導入方法や必要な費用の相場を紹介
口座振替とは、サブスクリプションサービスの料金や賃貸物件の家賃などが、利用者の銀行口座から自動的に引き落とされる決済サービスを指します。口座振替を導入する際には、手数料がかかることが一般的です。 本記事では、口座振替の手数料の種類や、提供者…
詳しくみるものづくりを行う中小企業が抱える課題とは?ものづくり企業への支援策を紹介
戦後の混乱期以降から現在に至るまで日本経済の基盤を支え続けてきたのが、自社の技術を突き詰めて新しい製品を開発、製造している「ものづくり企業」です。ものづくり企業には大企業も存在していますが、多くは町工場のようなところを含めた中小企業であり、…
詳しくみる経理の電子化とは?システム導入のメリット・手順・注意点を徹底解説
近年、企業の業務効率化が求められる中で、「経理の電子化」が注目を集めています。従来の経理業務は、紙の請求書や領収書を管理し、手作業で帳簿をつけるなど、多くの時間と労力を必要としていました。しかし、デジタル技術の発展により、これらの業務を電子…
詳しくみる財務とは?業務内容をわかりやすく解説
日頃関わりのない人にとって財務は、何をやっているのかよく分からない仕事だという印象があるかもしれません。本記事では財務に馴染みのない人に向けて、財務の業務内容や会計や経理との違いを詳しく解説します。最後まで読めば、財務の仕事が果たす役割がと…
詳しくみる通知預金とは?メリットや定期預金との違いについてわかりやすく解説!
通知預金とは、まとまった資金を短期間預けるための預金です。普通預金よりも金利が高めの場合もありますが、同程度の利率ことも多く、利息にあまり差はありません。解約する際のルールや廃止の傾向にあることについて解説します。 通知預金とは? 通知預金…
詳しくみる工業簿記と商業簿記の違いを解説!難易度やおすすめの勉強方法も
製造業などでは、製造原価計算のため工業簿記を使用します。生産現場を持つ製造業における収益最大化・コスト管理に工業簿記は欠かせません。工業簿記では商業簿記にはなかった考え方もあり、特に「原価」というものの考え方がよく理解できます。この記事では…
詳しくみる