- 更新日 : 2024年8月8日
引っ越し費用や事務所移転費の仕訳に使える勘定科目まとめ
事務所を移転するときなどには、引っ越し費用を経費計上できます。引っ越し費用を経費計上する場合は、雑費や荷造運賃、支払手数料などの勘定科目で仕訳をすることが一般的です。新しく事務所を借りる際の敷金や礼金、また火災保険料などをどの勘定科目で仕訳をするのか、実際に例を提示しながら解説します。
目次
引っ越し費用は経費にできる?仕訳する場合の勘定科目
引っ越し費用は経費として計上できますが、引っ越しに関わるすべての費用が経費計上できるわけではありません。
例えば、事務所の引っ越しを行う場合は、引っ越しに関わる大抵の費用は経費計上できます。引っ越し業者に支払う代金、不動産会社などの貸主に支払う原状回復費、粗大ごみなどの廃棄費用、新しい事務所を借りるときの礼金、不動産会社に支払う仲介手数料、火災保険料なども経費として計上することが可能です。
ただし、新しい事務所を借りるときに支払う敷金に関しては、退去するときに返ってくるお金なので経費計上できません。また、引っ越し費用を帳簿に記載する際、使用する勘定科目は費用の内容によって異なります。まとめて「引っ越し費用」と仕訳はできないので注意しましょう。
また、自宅兼事務所を引っ越しする場合は、家事按分に注意が必要です。家事按分とはどこまでがプライベートな費用でどこからが業務関連の費用かを分けること、あるいはその割合を指します。
例えば、引っ越し業者に依頼するときに自宅のものと事務所のものを分けて運ぶ場合は、事務所の分だけの引っ越し費用を経費として計上しましょう。反対にまとめて運ぶ場合は、家事按分によりおおまかな割合を算出し、事務所のものにかかる費用のみ経費として計上します。
例えば、運ぶ荷物の3割程度が事務所のものであるときは「引っ越し業者に支払う料金×0.3」で経費計上分の費用を計算できるでしょう。また、引っ越し業者に支払う以外の費用についても同様です。家事按分に注意して、正しく経費を計算しましょう。
引っ越し費用を雑費で仕訳する場合
引っ越し業者に支払う料金は、「雑費」として仕訳ができます。事務所の移転を行い、引っ越し業者に11万円の代金を現金で支払った場合の仕訳は、以下の通りです。
現金ではなくクレジットカードで支払ったときは、2回に分けて帳簿に記載します。1回目はクレジットカードで決済したときです。以下のように貸方を「未払金」として仕訳をしましょう。
2回目はクレジットカードの利用料金が引き落とされたタイミングで、帳簿に記載します。借方を「未払金」、貸方を「普通預金」の勘定科目を使って仕訳をしましょう。
次は自宅兼事務所の引っ越しを行った場合について、見ていきましょう。引っ越し業者へ22万円支払い、事務所の荷物が全体の3割程度だと思われる場合は「22万円×0.3=6万6,000円」を雑費として経費計上できます。
引っ越し業者へ現金で支払った場合の仕訳は以下の通りです。
雑費として仕訳している経費が多い場合は、後で帳簿を見返しても何の費用だったのか分からなくなることが少なくありません。補助科目や備考欄に「引っ越し費用」と記載しておくと、後で何の費用だったのか分かりやすくなります。
「勘定科目を変える」「補助科目を活用する」などの工夫をして、後で見返しやすい帳簿を作りましょう。
引っ越し費用を荷造運賃で仕訳する場合
引っ越し料金は「荷造運賃」の勘定科目で仕訳もできます。例えば、事務所の引っ越し料金として12万円かかり、現金で引っ越し業者に支払った場合の仕訳は以下の通りです。
引っ越し費用のうち、ダンボール箱などの荷造りにかかった費用を「荷造運賃」と分けることもできます。例えば、自宅兼事務所の引っ越しでダンボール箱に1万円かかり、事務所の荷物は3割程度と考えられる場合であれば、仕訳は以下の通りです。
引っ越し費用を支払手数料で仕訳する場合
引っ越し業者に支払う料金は「支払手数料」の勘定科目で仕訳もできます。事務所を引っ越しし、11万円の引っ越し料金がかかり、現金で支払った場合の仕訳は以下の通りです。
事務所を借りるときに不動産会社に支払う仲介手数料も「支払手数料」の勘定科目で仕訳ができます。自宅兼事務所を借り、仲介手数料として20万円を支払ったとしましょう。事務所の床面積は、全体の2割程度であれば家事按分は0.2となり「20万円×0.2=4万円」なので、現金で支払った場合は以下のように仕訳ができます。
敷金と礼金を仕訳する場合
事務所を借りる場合、敷金は後で返ってくるので経費としては計上できません。しかし、仕訳は必要です。例えば、敷金が50万円のときは、以下のように「差入保証金」の勘定科目で仕訳をしましょう。
事務所を引っ越す際に、元々借りていた事務所の敷金の一部が返還されたときは、返還されなかった分について「修繕費」として経費計上できます。事務所の敷金が50万円で、引っ越す際に13万円が現金で戻ってきたときは、以下のように仕訳をしましょう。
一方、礼金は経費計上が可能です。20万円以下であれば「地代家賃」の勘定科目で仕訳ができます。礼金が18万円で、現金で支払ったときの仕訳は以下の通りです。
礼金が20万円を超えるときは「長期前払費用」で仕訳をします。事務所の礼金が27万5,000円で、現金で支払ったときの仕訳は以下の通りです。
礼金を支払ったときにはいったん長期前払費用として資産計上し、決算に経過期間分を償却して費用計上します。礼金の勘定科目に関する詳しい解説は、こちらの記事をご覧ください。
保険料を仕訳する場合
新しく事務所を借りる際に、火災保険料を支払うことがあります。火災保険料は「損害保険料」の勘定科目で経費計上可能です。例えば、火災保険料が1万円で、現金で支払った場合は以下のように仕訳をしましょう。
自宅兼事務所を借りて、火災保険料として2万円を現金で支払った場合について考えてみましょう。事務所の床面積が2割程度であれば「2万円×0.2=4,000円」を経費計上できます。
火災保険だけでなく地震保険にも加入したときは、地震保険料もまとめて「損害保険料」として計上することが可能です。それぞれの保険料を区別して帳簿に記載したい場合は、補助科目や備考欄に「地震保険料」や「火災保険料」とメモしておきましょう。
引っ越し費用は家事按分と勘定科目に注意しよう
引っ越し費用は事務所に関する費用であれば経費として計上することが可能です。一方、自宅兼事務所の場合は、全額を経費計上できません。家事按分に注意をして、事務所にかかった費用のみを経費にしましょう。例えば、引っ越しの荷物の割合に合わせて引っ越し料金のうちの経費計上額を決定したり、床面積に合わせて礼金の経費計上額を決定したりします。
また、引っ越し料金そのものは、雑費や荷造運賃、支払手数料の勘定科目で仕訳をすることが一般的です。どの勘定科目を使ってもよいのですが、一度勘定科目を決めたら、次回の引っ越し料金も同じ勘定科目で仕訳をしましょう。帳簿が後で見返しやすくなるように意識することが大切です。
よくある質問
引っ越し費用は経費にできる?
事務所に関わる金額に関しては経費計上が可能なので、事務所引っ越しに関しては全額、自宅兼事務所に関しては家事按分をして経費計上額を決定します。 詳しくはこちらをご覧ください。
敷金と礼金の仕訳はどうする?
敷金は「差入保証金」として仕訳をし、退去時には返却分を差し引いて「修繕費」として仕訳をします。一方礼金は20万円以下であれば「地代家賃」、20万円を超える場合は「長期前払費用」で仕訳します。 詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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