- 更新日 : 2025年2月19日
洗替法(洗い替え方式)とは?切放法との違いや売買目的有価証券の仕訳例など徹底解説!
簿記で資産負債の帳簿価額(簿価)を評価計上する際の方式として「洗替法」「切放法」「差額補充法」があります。
売買目的有価証券や貸倒引当金(大企業では廃止)などを評価替えする際に用いる「洗替法」とはどのようなものか?について仕訳を例示しながら解説していきます。
洗替法とは?
「洗替法」は資産負債を評価するに際に用いる処理方法の1つです。
資産負債の評価方法には「取得原価主義」と「時価評価主義」の2つの考え方が存在します。
帳簿価額を取得価額のまま計上しておく「取得原価主義」に対して、資産負債を時価により再評価し直すのが「時価評価主義」です。
「洗替法」の具体的な処理として、資産負債の評価額(簿価)を期末において、いったん時価評価した後、翌期首に逆仕訳により取得価額に戻すという手法をとります。
海外では主流となっている「時価評価主義」を取り入れつつも「取得原価主義」に寄った処理方法であるといえます。
洗替法と切放法の違いは?
評価損益を計上した後、翌期首には取得原価に戻す「洗替法」に対して、「切放法」では翌期首の逆仕訳を行いません。
つまり一度時価評価により評価損益を計上したら、資産負債の簿価は評価替え後のままとなります。
「洗替法」「切放法」は全ての資産負債に対し自由に選択できるわけではありません。
このように「洗替法による取得原価主義とすべき項目」「切放法による時価評価主義とすべき項目」というのが決められているのです。
洗替法の仕訳
では、実務における「洗替法」の具体的な仕訳について解説していきます。
資産項目の1つである「売買目的有価証券」を例に挙げてみましょう。
売買目的有価証券の洗替法による経理処理と仕訳例
売買目的有価証券とは、近い将来売却する目的で所有する有価証券のことを指します。売買目的有価証券について詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。
売買目的有価証券の「洗替法」のイメージは以下の通りです。

例:売買目的有価証券を100,000円で購入した
売買目的有価証券の取得時は「取得価額」で資産計上します。
例:期末における時価評価額は50,000円であった
平成11年1月に企業会計審議会が定めた「金融商品に関する会計基準」では、売買目的有価証券は時価評価により評価替えを行うこととされています。
例のように取得価額より時価評価額が下落した場合、評価損50,000円を計上しなければなりません。結果として貸借対照表には評価替え後の50,000円が計上されます。
投資その他 売買目的有価証券 50,000円 |
例:翌期首に洗替法による会計処理を行った
この仕訳が「洗替法」のポイントです。
前期末に計上した評価損の仕訳と反対の仕訳(逆仕訳)をおこして、売買目的有価証券の簿価を取得価額に戻す処理を行います。
投資その他 売買目的有価証券 100,000円 |
結果として貸借対照表の売買目的有価証券は評価替え前の100,000円(取得価額)に戻ります。
例:売買目的有価証券を80,000円で売却した
売買目的有価証券売却損 20,000円 |
洗替法により売買目的有価証券の簿価は取得価額100,000円に戻っていますので、売却損は取得価額との差額20,000円となります。
なお、売買目的有価証券に「差額補充法」は使えず、「洗替法」又は「切放法」のみ選択可能となりますので注意してください。
貸倒引当金の洗替法による経理処理と仕訳例
「貸倒引当金」とは、将来的に回収不能となる可能性が高い債権について、その貸倒損失を見越して一定割合を当期に費用計上する勘定科目です。貸倒引当金について詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。
大企業における簿記では既に「貸倒引当金」は廃止されています。
しかし中小企業では税法上「貸倒引当金」の計上はまだ行えることになっています。
この場合「洗替法」により処理するのが原則です。
例:製造業の会社が当期末に売掛金5,000,000円に対して0.8%の貸倒引当金を設定した
(資産のマイナス項目) |
貸倒引当金の設定額は 5,000,000円 × 0.8% = 40,000円となります。
例:翌期末に洗替法で売掛金8,000,000円に対して0.8%の貸倒引当金を設定した
貸倒引当金繰入 64,000円 | 貸倒引当金 64,000円 (資産のマイナス項目) |
「洗替法」により前期に計上した貸倒引当金40,000円を一旦戻し、当期末の設定額を計上し直すという処理を行います。
貸倒引当金の設定額は 8,000,000円 × 0.8% = 64,000円となります。
洗替法について理解できましたか?
「洗替法」の目的は、実際に動いた取引額で資産負債を計上することです。
これにより恣意性を排除した客観的な評価を行うことができますから、第三者から見た場合信頼性が高くなるというメリットがあります。
「洗替法」のメリットを意識しながら正しい処理を行うようにしましょう。
よくある質問
「洗替法」とは何ですか?
資産負債を評価替えする際の処理方法の1つです。詳しくはこちらをご覧ください。
「洗替法」と「切放法」の違いは何ですか?
「洗替法」は逆仕訳をおこし取得原価で資産計上します。「切放法」は評価替えを行ったまま資産計上します。詳しくはこちらをご覧ください。
「洗替法」ができる項目にはどのようなものがありますか?
売買目的有価証券、棚卸資産、貸倒引当金などがあります。 詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
商品廃棄損やロスの仕訳は必要?計上の仕方や勘定科目を具体例つきで解説
売れ残ってしまった商品をどう扱うかは、多くの会社にとって悩ましい問題です。商品をずっと保管していても、その分のコストがかかり続けますし、時間がたてば価値も下がってしまいます。やむを得ず商品を廃棄する場合には、きちんとした会計処理が必要です。…
詳しくみる労務費の意味や人件費との違い、計算方法や内訳、労務費率まで解説
労務費は製品の製造と密接な関わりがあり、利益にも大きな影響を与える費用です。そのため、きちんと把握・管理した上で適切な値とする必要があります。 この記事では労務費について人件費との違い、計算方法、内訳、労務費率の解説を行います。正しく理解し…
詳しくみる売掛金元帳とは?書き方や記入例を解説
「売掛金の管理に手間がかかる」とお悩みの場合には、売掛金元帳が便利です。取引先ごとの売掛金の発生・回収状況を把握でき、売掛金がいくら残っているかもすぐにわかります。この記事では、売掛金元帳の内容や書き方のポイントを分かりやすく解説します。 …
詳しくみる災害損失とは?特別勘定や会計処理について解説
被災された事業者は災害損失だけでなく、復旧費用も負担しなければいけません。 そのような事態のため税金面で特別の優遇制度があります。 この記事では、優遇制度を受けるために必要な事項である災害損失の基本的な内容から、災害損失特別勘定に加えて引当…
詳しくみる前払費用の勘定科目と仕訳例や長期・短期前払費用との違いを解説
前払費用は、貸借対照表に資産として表示される科目で、決算ではよく使われるものの一つです。 貸借対照表の資産の部には、よく見ると流動資産だけではなく、固定資産の部にも「長期前払費用」として表示されている場合があります。 この記事では、前払費用…
詳しくみる新聞図書費はどこまで経費にできる?仕訳の例やポイント解説
新聞図書費は、新聞の購読料や書籍代、地図代、情報誌の購入費用に関わる勘定科目です。この記事では、新聞図書費に該当する経費と該当しない経費、仕訳例や仕訳のポイントについて解説します。 新聞図書費とは 新聞図書費とは、従業員が事業に携わるにあた…
詳しくみる