- 更新日 : 2025年2月20日
持ち帰りとイートインスペース利用、軽減税率の適用基準や罰則は?
2019年10月、消費税が10%に上がるにともない、生活に密接にかかわる飲食物については、そのほとんどが現行の消費税のまま8%に据え置かれる、軽減税率の措置が取られることが決まっています。
しかし、同じ飲食物でもすべてが対象になる訳ではありません。例えば、いわゆる外食は軽減税率の対象外です。それでは、同じように店内で食事をするイートインはどうなるのでしょうか。
イートインの消費税率と、軽減税率適用の有無、店側で注意したいことを解説します。
目次
持ち帰り、いわゆるテイクアウトかイートインかで消費税率が変わる
軽減税率の実施において、同じ飲食物の譲渡でも、どのように提供するかによって対応が変わります。例えば、イートインの場合でも、注文時に店内で飲食するか持ち帰るかによって、税率が変わることになります。
まずは、具体的なケースを考える前に、飲食物の軽減税率の扱い、イートインでの消費税設定上の判断基準について整理していきましょう。
消費税の軽減税率を受けられる食品の扱い
消費税の軽減税率を受けられるのは、食品表示法に定められた飲食物と週2回以上の定期購読契約がある新聞です。このうち飲食物はほとんどのものが対象になりますが、提供のしかたによっては軽減税率対象にならないことがあります。
対象でないのは、外食やケータリングなど、特定の場所や施設で提供される飲食物、あるいは客の注文によって指定の場所で提供される飲食物です。つまり、日々の必要な生活食品を超えたとみなされる、ぜいたくな飲食物の提供は軽減税率が適用されず、消費税10%になります。
イートインの判断基準
イートインとは、購入した飲食物を店内で食べることです。店内での飲食は、軽減税率対象の取り決めにおいて、外食の範囲に入るため、基本的には軽減税率の対象外になります。しかし、いわゆるイートインであっても、そのすべてが軽減税率の対象外になる訳ではありません。
それでは、消費税の設定上、イートインと言われるものはどのようなものになるのでしょうか。
国税庁では、イートインスペースを含んだ飲食設備の範囲を、飲食に利用できる設備があるものとしています。それは、イスとテーブルがセットになっている場所はもちろん、イスのみ、テーブルのみ、あるいはカウンターのみも規定する飲食設備の範囲内です。しかも、そのスペースの規模は問われません。
つまり、カウンターなどの簡易な設備であっても、飲食できるスペースがあれば軽減税率は適用されず、消費税10%になります。
一方、消費税の軽減税率の判断において、イートインとみなされない、つまりテイクアウトのような性質を持った飲食物の譲渡については軽減税率が適用され、8%に据え置かれます。
イートインスペースの具体例
消費税設定上の軽減税率の定義について説明してきましたが、実際にどのようなものがイートインスペースとして考えられるのでしょう。具体例をいくつか紹介します。
コーヒーショップ店内での飲食
外食においての軽減税率の適用は飲食物の種類を問いません。たとえコーヒーのような軽い飲み物やスイーツなどのデザートであっても、同じように判断されます。この場合、店内で飲食できるようにテーブルやイスを設置している店舗がほとんどでしょうから、軽減税率は適用されず、消費税10%になります。
コンビニのイートインスペース
ものを販売するだけでなく、店内でも食事できるようにイートインスペースを設けるコンビにも増えてきました。コンビニの場合、弁当や揚げ物、おでんなど持ち帰りを想定したものが販売されていますが、客がイートインスペースを利用する場合は軽減税率対象外で消費税10%になります。そのため、同じ商品でも個別に確認することが必要です。
スーパーの休憩スペース
スーパーの休憩スペースが購入された飲食物を食べられるように開放している場合も、コンビニのイートインスペースと同じ判断になります。顧客にスペースを利用して飲食をする意志があれば、軽減税率は適用されず、消費税10%になります。なお、判断基準として休憩スペースの目的は問わないことになっているため、たとえ飲食のための休憩スペースでなくても、利用する以上は軽減税率を適用しない判断になります。
ケーキ屋のイートインスペース
コンビニやスーパーの例を見ていくと、ほかの飲食物を提供しないイートインスペースのある販売専門のケーキ店でも注意が必要なことが分かります。テーブルやイス、カウンターが設置されている以上、軽減税率が適用されるためです。利用状況に応じて、そのままスペースを設置したままにするか、あるいは都度確認するか対応が必要です。
屋台や移動販売で設置されたイスやテーブルでの飲食
店舗を持たない屋台や移動販売においても、基本的な考え方は同じです。店側が飲食のためのテーブルやイスを設置しており、客が利用する場合は軽減税率が適用されず、消費税10%になります。消費税の課税上、外食していることと同じ判断になるためです。
軽減税率が適用されるイートインスペースの具体例
ここまで原則通り軽減税率が適用されないケースを挙げてきましたが、反対にイートインスペースに類似した例でも適用されるケースはあるのでしょうか。3つの具体例から考えていきましょう。
公共のベンチが近くにある場合の移動販売
イートインスペースと考えられる設備の設置は、店の店主が設置した場合は、本来の軽減税率の規定に基づいて軽減税率が適用されないこととなります。さらに、店主と設備設置者との間で顧客に利用させても良いという合意も店主が設置したときと同様の判断です。
しかし、公共のベンチがたまたま近くにあった場合、あるいは公共のベンチがある場所の近くを販売場所に選んだ場合は、店主が設置したことになりませんし、元々合意がある訳でもありません。この場合、軽減税率判断基準の外食の定義から外れ、軽減税率が適用されることになり、消費税8%に据え置かれます。
映画館の売店での販売
映画館の売店での販売は、映画館内で飲食することを主な目的としていますが、特別売店の近くに飲食できるスペースがない場合は、単なる飲食物の譲渡とみなされます。そのあと、客が映画館内で飲食したとしても軽減税率の対象となり、消費税8%に据え置かれます。
しかし、映画館内での飲食は、売店で購入したものを持ち込む形であれば軽減税率適用になるものの、座席に置かれたメニューから選ぶ場合、あるいは座席から注文する場合は外食とみなされ軽減税率の対象にはならず、10%になります。
スーパーなどで飲食用でない休憩スペースを明示している場合
客が休憩スペースで飲食する場合の軽減税率の適用はないと説明しましたが、飲食で使わないよう明示している場合は軽減税率が適用される可能性が高いです。しかし、こうした注意書きがあるにもかかわらず、実際は飲食の用途として使われているケースでは軽減税率の適用はありません。
店側での確認が必須
ここまでイートインスペースの軽減税率の適用はどのようになっているか、あるいは類似するものはどうなるかを説明してきましたが、スペースの有無だけで軽減税率適用かどうか判断できないことが分かります。
実際に客が利用するかで変わる
軽減税率の判断基準であるイートインスペースがあるかどうかに加え、重要なのは実際に客がイートインスペースを利用するかどうかです。原則的に考えると、イートインスペースを客が利用する場合は軽減税率の対象外、利用しない場合はテイクアウトになり軽減税率が適用されるためです。このように同じ商品の譲渡であっても、イートインの利用の有無によって税率が変わるため、注意する必要があります。
店によっては客側から申し出る形も許容されている
イートインスペースを実際に利用するかどうかで税率が変わるとなると、個別に確認するほかありません。しかし毎回確認するのも手間がかかります。そこで、大半がテイクアウトと想定される場合などは、イートインコーナーを利用する場合に申し出を促すようにする掲示をレジの近くに設置することなどで意思確認を図ることが認められます。
軽減税率の違反があった場合
イートインの利用は店舗側で判断することになりますが、確認時には利用しないと受け取ったものの、その後客がスペースを利用するケースも想定されます。このように違反ともとれる客側の行動があった場合はどうなるのでしょう。
国税庁によれば、軽減税率適用の判断はあくまで店側が譲渡時に行うものとしています。つまり、店側から見たら売却時にすべてが決定するため、その後イートインスペースの利用があったとしても現状では店側にも客側にもそれ以上の追及はなく、罰則は設けられていません。これは、個別に罰を与えるのが難しい状況であることも理由です。
しかしながら、現状罰則はないにしても、店側では軽減税率の適用有無を適切に処理している必要があります。税務調査などの際、証明になるためです。軽減税率を含めた適正な価格表示や注意書きは必須です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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