- 更新日 : 2024年8月8日
損害保険料とは?契約期間ごとの仕訳・積立保険の計上方法を解説
損害保険料勘定は、主に商品や事務所などの事業用資産に対する損害保険料を計上するための勘定科目です。損益計算書の販売管理費の内訳として表示されます。
損害保険料とは
損害保険は、火災保険や自動車保険(自賠責保険・任意保険)が代表的ですが、そのほか次のようなものがあります。
・傷害保険
・盗難保険
・損害賠償責任保険
損害保険料勘定は、これらの損害保険のうち商品や事務所などの事業用資産に対する保険料を計上するための勘定科目です。
支払った保険料のうち掛け捨てとなる部分について、損害保険料として費用計上します。
なお、自動車保険の保険料は、自動車に関するその他の費用に含めて車両費として計上することが可能な場合があります。
損害保険の契約期間が1年以内の場合
損害保険の契約期間が1年以内の場合は、契約期間が決算期をまたいでも保険料の全額を当期の経費とすることができます。ただし、毎期継続して同じ方法で会計処理をする必要があります。
(例)A社は火災保険を契約し、毎年1年分の保険料5万円を普通預金で支払っています。
この火災保険の契約期間を毎年10月1日からの1年間とした場合の仕訳例は次のとおりです。(事業年度は4月1日から翌年3月31日までとします。)
契約期間が1年以内であり、毎期継続して同じ方法で会計処理をするのであれば、損害保険料は当期の費用にすることができます。期間按分する必要はありません。
損害保険の契約期間が1年を超える場合
契約期間が1年を超える場合は、保険料を事業年度ごとに期間按分して、翌期以降の分は前払費用に計上します。翌期以降は、前払費用を取り崩して損害保険料として費用計上します。
前払費用のうち、翌々期以降に費用計上する部分については長期前払費用に計上します。
(例)B社は火災保険を契約し、5年分の保険料として30万円を普通預金で支払いました。
この火災保険の契約期間を00年7月1日からの5年間とした場合の仕訳例は次のとおりです。(事業年度は4月1日から翌年3月31日までとします。)
■仕訳例 00年度の処理
5年間(60か月)の契約期間のうち00年度の部分は00年7月から01年3月までの9か月であるため、00年度の損害保険料は30万円÷60か月×9か月=4万5千円となります。
01年度の損害保険料として前払費用に計上する部分は、30万円÷60か月×12か月=6万円となります。
02年度以降の損害保険料として長期前払費用に計上する部分は、30万円÷60か月×(60か月-9か月-12か月)=19万5千円となります。
■仕訳例 01年度の処理
01年度の損害保険料は、00年度に計上した前払費用6万円を取り崩して計上します。また、02年度の保険料6万円を長期前払費用から前払費用に振り替えます。以後、契約期間が終了するまで同様の会計処理を繰り返します。
貯蓄性がある積立部分の保険料は保険積立金として資産計上
損害保険には、契約期間が満了したときに満期返戻金が支払われるなど、貯蓄性があるものもあります。このような損害保険の保険料には積立保険料部分と危険保険料部分があり、積立保険料部分は保険積立金として資産計上します。
(例)C社は積立火災保険を契約し、5年分の保険料として49万円を普通預金で支払いました。
この火災保険の契約期間は01年10月1日から5年間、保険料49万円のうち積立部分は47万円である場合の仕訳例は次のとおりです。(事業年度は4月1日から翌年3月31日までとします。)
■仕訳例 01年度の処理
保険料49万円のうち、積立部分である47万円を保険積立金として資産計上します。残りの2万円は損害保険料として費用計上します。
ただし、この2万円は5年分の保険料であるため、02年度の部分は前払費用として、03年度以降の部分は長期前払費用として資産計上します。
5年間(60か月)の契約期間のうち01年度の部分は01年10月から02年3月までの6か月であるため、01年度の損害保険料は2万円÷60か月×6か月=2千円となります。
02年度の損害保険料として前払費用に計上する部分は、2万円÷60か月×12か月=4千円となります。
03年度以降の損害保険料として長期前払費用に計上する部分は、2万円÷60か月×(60か月-6か月-12か月)=1万4千円となります。02年度以降は、前払費用を取り崩して損害保険料を計上します。
(例)上記の積立火災保険が06年9月30日に満期を迎え、C社は満期返戻金50万円を普通預金で受け取りました。
■満期返戻金の受取
保険積立金を取り崩し、保険積立金と満期返戻金の差額は雑収入として収益計上します。
まとめ
損害保険料勘定は、損害保険料のうち当期の費用に計上する部分に使用する勘定科目です。
契約期間が1年を超える場合の翌期以降の分や、満期返戻金などの積立部分は資産計上しなければなりません。間違えないように注意しましょう。
関連記事
・【地震保険料控除の基礎】対象となる契約や控除額、手続き方法まとめ
・差入保証金の仕訳を理解しよう!具体例と考え方を解説
・地方法人税はなぜ創立された?その理由と申告・納付方法について
国税庁|保険料
よくある質問
損害保険料とは?
損害保険のうち商品や事務所などの事業用資産に対する保険料を計上するための勘定科目です。詳しくはこちらをご覧ください。
保険料の全額を当期の経費にできる場合は?
損害保険の契約期間が1年以内の場合です。詳しくはこちらをご覧ください。
貯蓄性がある積立部分の保険料はどのように処理する?
保険積立金として資産計上します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
タクシー代を仕訳する場合の勘定科目まとめ
タクシー代は業務上使用したものであれば経費にできますが、状況によって適切な勘定科目が変わるため、取り扱いに注意が必要な費目でもあります。この記事では、仕訳をする際、どの勘定科目を選べばよいのか、実例を紹介しながら解説していきます。個人事業主…
詳しくみる配当金の勘定科目は?税金や仕訳方法についてもわかりやすく解説!
受け取った配当金を仕分ける際の勘定科目は、配当金の種類によって異なります。株式の配当金であれば勘定科目は受取配当金となりますが、保険の配当金であれば、勘定科目は雑収入です。 また、配当金の仕訳方法は、法人か個人事業主が対象か、配当金を受け取…
詳しくみる法人税、住民税及び事業税の勘定科目・仕訳は?租税公課についても解説!
法人である会社が納める税金にはさまざまなものがあります。最も代表的なのは、法人税(法人所得税)、法人住民税、法人事業税です。これらは、法人税等の勘定科目を使って仕訳します。ほかにも、消費税や租税公課で仕訳される各種税金もあります。これらの税…
詳しくみる土地再評価差額金とは?会計処理の方法を仕訳例を用いて解説
上場企業の財務諸表を見ると、貸借対照表の純資産の部に「土地再評価差額金」が記載されていることがあります。「土地再評価差額金」がどのような勘定科目なのか、知らない方は多いでしょう。計上している会社としていない会社があるのは、なぜでしょうか。こ…
詳しくみる倒産防止共済の仕訳と勘定科目は?損金算入に必要な書類は?
中小企業のような規模の小さい事業者は、取引先の倒産などのあおりを受け、急激に経営状況が悪化し、連鎖的に倒産の危機に見舞われることがあります。このような状況を防止するため、中小企業倒産防止共済法に基づく救済制度のひとつ「中小企業倒産防止共済」…
詳しくみるウォーターサーバーを経費にする時の仕訳に使う勘定科目まとめ
オフィスに設置したウォーターサーバーは、経費計上が可能です。サーバーレンタル料は「賃貸料」か「リース料」の勘定科目で仕訳します。水代は使用目的で異なり、「福利厚生費」や「接待交際費」、「販売費」などの勘定科目を使います。また、仕訳の際は消費…
詳しくみる