- 作成日 : 2024年10月1日
仕入れ・売上の管理をエクセルで行いたい!メリットデメリットや手順を解説
売上や仕入の管理をするのにすぐ実行できる手段として、エクセルが挙げられます。それほどデータ件数が多くない場合、PCに入っているエクセルで売上や仕入の管理ができないかと考え、チャレンジした人も多いのではないでしょうか?
この記事では、売上・仕入管理にエクセルを利用する場合において、良い点・悪い点を踏まえた利用方法を解説します。
目次
売上管理とは
損益計算書のトップに表示されるのは「売上高」です。種々の財務指標の中でも、シンプルで、かつ、インパクトの大きいものは「売上高」や「売上高の伸び率」でしょう。改めて、企業にとって売上高を管理する目的は何でしょうか?
目的
売上高は、企業の活動規模を示す基本的な指標となります。また、売上高によってその企業の市場での相対的な位置づけを把握することが可能です。売上高の管理によって、設定された売上目標をどれだけ達成したかを把握でき、これを通じて事業活動の大きさや市場での位置を測定することができます。
また、売上高は企業の利益を生み出す源泉であり、売上高は企業のキャッシュフロー(現金流入)の主な財源でもあります。
売上高管理を継続すると、過去の売上分析から将来の売上予想をすることが可能になります。これを基にさらに、社内のコストや株主への配当など経営資源の効率的な配分を計画することができます。管理をすることによって、予算計画を可能にします。
対象データ
売上管理をするためには、管理目的に沿って売上データを集める必要があります。どのような管理をしたいかによって取得するデータは異なりますが、一般に次のようなデータがよく利用されます。
- 月別、取引先別、商品・サービス別の売上高
- 地域別・部門別の売上高
- 営業担当者別の売上高
- 売上目標、達成度
- 前年、前月との比較
仕入れ管理とは
一般に、企業が外部から商品や原材料を調達し、在庫として受け入れる取引を仕入と言います。売上高は、この仕入に支えられているとも言えるため、仕入管理は売上管理とともに企業を知る上で重要な要素となります。
目的
仕入高は多くの企業にとって最大の費用となり、製品やサービスの原価の主要な部分を占めます。仕入は、在庫とともに売上総利益に直接影響を与えるとともに、企業の主要なキャッシュフロー(現金流出)の原因となります。
したがって、仕入管理をするのは、コストの削減や在庫調整によって利益率を向上させるためであり、仕入タイミングなどを調整してキャッシュフローを最適化するためだと言えます。
対象データ
仕入管理のためのデータは、実にさまざまです。売上高同様、管理方法によって取得するデータは異なってきますが、次のようなデータがあります。
- 月別、取引先別、商品・サービス別の仕入高
- 仕入先情報、取引条件、仕入価格の推移
- 商品ごとの仕入数量、発注から納品までのリードタイム
- 在庫数、品質(返品・不良品の率)
- 運送コストや倉庫コスト
- 前年、前月との比較
仕入れ・売上管理をエクセルで行うメリット
中小企業などで取引件数があまり多くない場合には、エクセルで仕入や売上を管理することが可能です。エクセルで管理するメリットは次のとおりです。
低コストでソフトを利用できる
企業のパソコンは、エクセルを使える環境が整っていることが多いでしょう。また、エクセルがインストールされてなくても、「Excel for the web」(エクセルのオンライン版)でインストール版に近いものを利用できます。
参考:無料の Microsoft 365 Online|Microsoft
操作スキルを持つ従業員が多い
エクセルは汎用的なソフトとしてあらゆるシーンで利用されており、多くの従業員がすでに操作スキルを持っていることが少なくありません。エクセルで作成した管理表であれば、後任者に引き継ぐときも基本的な操作方法の説明を省略できるため安心です。
カスタマイズが可能
エクセルはPCの初心者から上級者まで幅広い層をカバーするソフトウェアです。自社のニーズに合わせて管理表をカスタマイズして、ソフトウェアのように作り上げておくことも可能です。
業務フローに合わせてテンプレートやマクロを使ったり、関数などを駆使して表を簡素化させたりと、柔軟な対応が期待できます。
仕入れ・売上管理をエクセルで行うデメリット
一方では、エクセルで管理をすることのデメリットもあります。
情報の一元化や膨大なデータの処理が難しい
エクセルの行数や列数には制限があるため、あまりにも大量のデータを扱うのは難しいでしょう。また、データ量が多くなると、読み込みや保存などのパフォーマンスが低下することがあります。
情報の一元化ができなくなると、ファイルを分散せざるを得なくなり、全体での把握が難しくなります。
共同編集しづらい
基本的にエクセルでは、同じエクセルブックを何人かで開いて共同作業をすることが可能です。しかし、共同相手が異なるバージョンの場合などには、異なるバージョンのファイルが作成されます。そのような場合は、どれが最新か分からなくなることがあり、共同編集にはあまり向いていません。
ミスを発見しにくい
手動による入力の場合には、入力ミスが発見しにくいと言えます。また、エクセルユーザーには初心者から上級者までいますが、上級者が複雑な計算式を用いてファイルを作成しても、初心者にはその計算式を解読できずミスを見過ごすことも考えられます。
仕入れ・売上管理表をエクセルで作成する手順
エクセルで管理表を作成する際、気をつけたいのは多目的で利用しないことです。売上管理、仕入管理、どちらにおいても管理表に求める情報は何かを見極め、管理表の「目的」を可能な限り絞り込むことをおすすめします。
ここでは、売上や仕入の管理表を作成するときによく使われる手順の概要をご紹介します。
会計ソフトデータを読み込んで作成する
理想の管理表のフォーマットはあっても、手入力では正確なデータを入れるのが困難です。そこで次のような手順で会計データをエクセルに読み込んで、関数などを利用します。
- フォーマットを準備する
- 会計ソフトからcsvやtxtの形式でデータを取得し、エクセルにインポート(読み込み)します。
参考:テキスト (.txt または .csv) ファイルのインポートまたはエクスポート|Microsoft サポート - 同じエクセルブック内などに、フォーマットシートとインポートしたデータシートを配置し、管理表からデータを参照します。また、集計するには関数を利用します。
(イメージ図)
ピボットテーブルを利用して作成する
フォーマットを先に決めるのではなく、データ集計方法を適宜変更することが可能なピボットテーブルを使って管理表を作成するのも便利です。速報値と確報値が欲しい場合など、スピーディに管理表を作成できます。
注意点としては、先頭行にタイトルがあることや途中に空白がないことなどが挙げられます。新しいデータを取得した場合、「更新」機能によって管理表がデータと連動するのは非常に便利です。使用の概要については次の項目に記載しています。
エクセルで仕入れ・売上管理するなら関数やピボットテーブルを活用する
上の例でみたようにエクセル関数やピボットテーブルは非常に役に立ちます。簡単な関数でも、組み合わせによって欲しい値を求めることが可能です。大量のデータでも素早く集計できるピボットテーブルは、簡単なコツをつかめばすぐに使えます。
関数とピボットテーブルについて簡単な例をご紹介しますので、活用してみてください。
【エクセル関数】
エクセル関数で使いやすいものを一部ご紹介します。
SUM関数 | 最もベーシックな関数。複数のセルの値を合計します。 |
---|---|
VLOOKUP関数 | 与えられたコードから価格や在庫数を参照したり、取引先情報(文字列)を取得したりするのによく使われます。 |
ROUNDUP関数 ROUNDDOWN関数 ROUND関数 | 数値を指定した位に切り上げたり、切り捨てたり、四捨五入したりします。また、整数部分を求めるためにINT関数もよく利用します。 |
SUMIF関数 | 特定の条件を満たす売上や仕入の合計を簡単に計算できます。 |
参考:Excel 関数 (機能別)|Microsoft サポート
【ピボットテーブル】
ピボットテーブルの機能によって大量のデータから素早く集計や分析ができます。使用手順の概要は以下のとおりです。
1 | データの準備 | 集計したいデータを表形式で準備し、各列の最初にヘッダーを付けておきます。 |
---|---|---|
2 | ピボットテーブルの作成 | データ範囲を選択して、「挿入」タブから「ピボットテーブル」を選びます。 |
3 | フィールドの配置 | 右側に示される「ピボットテーブルのフィールド」ウィンドウを使います。 分析したい項目を「フィルター」「行」「列」「値」エリアにドラッグ&ドロップで配置します。 |
参考:ピボットテーブルを作成してワークシート データを分析する|Microsoft サポート
エクセル以外の仕入れ・売上管理方法も検討しよう
エクセルは手軽に利用できますが、担当者が変わるとメンテナンスを続けるのが難しかったり、同じような管理表がいくつもできたりと、継続して利用するには不便な面もあります。
そこで、最初から会計レポート機能が備わった会計ソフトの導入を検討してはいかがでしょうか?
これらのシステムで管理すると、エクセルと異なりファイルが紛失したり、見られなくなったりするリスクが少ないほか、同時に複数の人がリアルタイムで閲覧できるなど便利な点があります。
マネーフォワード クラウド会計
マネーフォワード クラウド会計は主として中小企業を対象としたクラウド型の会計ソフトです。出力できる会計レポートには、次のようなものがあります。
- キャッシュフローレポート
- 収益レポート
- 費用レポート
- 得意先レポート
- 仕入先レポート
マネーフォワード クラウド会計Plus
中規模以上の法人企業を対象としたマネーフォワード クラウド会計Plusは、より細やかな分析が可能になるクラウド型会計ソフトです。部門別だけでなくプロジェクト別の売上や仕入管理など高度な機能が使えます。
参考:「プロジェクト」画面の使い方|マネーフォワード クラウド会計Plusサポート
究極の目的は企業の存続!管理表を使い倒す
売上や仕入の管理表を作成する目的を考え進めると、現状把握、目標設定、進捗管理、そして経営判断、戦略立案などと事業の中枢部に迫っていきます。究極的には、企業が存続するために行うさまざまな活動の大動脈が売上や仕入であり、これらの管理が曖昧では企業の将来も非常に曖昧なものになってしまいます。
企業の一番重要な部分を担うデータをあらゆる角度からながめ、次の一手を打ち出すための管理表はなくてはならないものであり、その管理表を使い倒してこそ、次のフェーズに進めるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
支払督促申立書とは?流れや書き方、費用を徹底解説
支払督促申立書は、裁判所を介して債務者に支払の督促を行うための文書です。 本記事では、支払督促の基本的な仕組みや流れ、必要な書類の書き方と申立て方法、発生する費用についてまとめました。さらに、メリット・デメリットや申立て時の注意点、他の解決…
詳しくみる前受金の年度またぎを処理する方法は?仕訳例や前受収益になる場合も解説
取引のタイミングによっては代金を先に受け取って商品や役務(サービス)の提供が次年度になってしまうケースもあります。その場合は通常とは異なる方法で会計処理を行わなければなりません。 本記事では前受金を年度またぎで処理する方法を、仕訳例を交えて…
詳しくみる債権管理とは?管理方法やリスクなど基礎知識を解説
適切な債権管理によるキャッシュフロー最適化や流動性の確保は、企業経営を安定させるために不可欠なポイントです。しかし、債権管理の複雑性から、効率的な運用方法の確立やリスクへの対応が常に課題となっています。 この記事では、債権管理の基礎知識をは…
詳しくみる債権回収とは?具体的な方法や注意点をわかりやすく解説
債権回収とは、企業が商品やサービスを提供し、その代金を請求して回収するプロセスを言います。売掛金などが予定期日までに支払われなかった場合に、債権者は債権回収をします。 企業は債権回収されないと資金繰りに影響し、大口の未回収の場合には倒産の危…
詳しくみる集金と徴収の違いとは?集金の手段や未払い対策を解説
集金は、企業が提供した製品やサービスに対する対価を回収する行為です。日々の業務に欠かせない集金ですが、徴収との違いや、効率的な集金方法について疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。 本記事では、集金と徴収の違いやさまざまな集金手段…
詳しくみる消込とは?入金消込・支払消込の仕訳や効率化する方法を解説
消込とは、売掛金や買掛金といった勘定科目に関する残高を消す作業であり、「入金消込」と「支払消込」の2種類があります。 消込には、人的ミスが生じやすい、業務が属人化しやすいなどの課題があります。この課題の解決手段としては、会計システムの導入に…
詳しくみる