- 更新日 : 2025年2月14日
年収1,000万円の個人事業主が支払う税金はいくら?会社員との手取り比較も!
年収1,000万円の個人事業主は、所得税・住民税・消費税などの税金をいくら支払うのでしょうか。所得税の計算は、売上から経費を差し引き、社会保険料・生命保険料などの所得控除を行った上で行います。個人事業主は国民健康保険料が全額自己負担で、消費税や個人事業税が課される場合があるため、年収1,000万円の会社員よりも負担が大きくなりがちです。このような負担を軽減するためにも、ふるさと納税やiDeCoなどの制度を活用した節税対策を検討しましょう。
目次
年収1,000万円の個人事業主が支払う税金はいくら?
まずは、年収1,000万円の個人事業主が支払う税金について、詳しく見てきましょう。
個人事業主の収入・所得とは
個人事業主の収入とは、事業による売上のことです。
確定申告では、収入(売上)から必要経費を差し引いて所得を求め、さらに所得から社会保険料控除・生命保険料控除などの各種所得控除を差し引いた金額が課税所得金額となります。
課税所得金額は、これから解説する所得税・住民税などの計算の基礎となるため、過去の確定申告書や会計帳簿を使って正しく把握しておきましょう。
所得税は累進課税なので、所得が高くなるほど税率が上がりますが、ふるさと納税やiDeCoなどの控除を活用することで、税負担を軽減することも可能です。
所得税の計算方法
所得税とは、個人の所得に対して課される税金のことです。所得には事業所得や不動産所得など10種類がありますが、いずれも1年間の所得から所得控除を差し引いた課税所得金額をもとに計算します。
事業所得や雑所得は総合課税のため、これらの所得金額を合計して所得税を算出します。一方、譲渡所得や配当所得は分離課税となる場合があるため、事業所得などとは合算せず、別途定められた計算方法で税額を求めます。
また、2037年までは基準所得税額に2.1%を掛けた「復興特別所得税」も納付しなければなりません。基準所得税額とは、所得税額から特定の寄付金控除や住宅特別控除など「所得税額から差し引かれる金額」を差し引いた後の金額を指します。
- 所得税率:23%
- 控除額:636,000円
- 所得税:700万円×23%-636,000円=974,000円
- 復興特別所得税:974,000円×2.1%=20,454円
- 合計:994,454円(所得税+復興特別所得税)
所得税の計算方法について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
住民税の計算方法
住民税は、所得割と均等割を合わせて計算します。
地域差はありますが、多くの自治体では均等割5,000円を定額負担します。所得割は、総合課税の所得に対して「課税される所得金額×10%」を基本に計算します。分離課税の所得がある場合は、それぞれに定められた税率で別途計算します。例えば、上場株式の配当に対する配当割の税率は5%になります。
- 所得割:700万円×10%=70万円
- 均等割:5,000円
- 合 計:705,000円
住民税の計算方法について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
個人事業税の計算方法
個人事業税は、地方税法などで定められた「法定業種」に該当する事業を行う個人事業主に課される税金です。法定業種は70種類ほどあり、業種によって3~5%の税率が定められています。
例えば、物品販売業・運送取扱業・飲食店業・デザイン業・コンサルタント業は税率5%、畜産業・水産業・薪炭製造業は4%の個人事業税率が課せられます。また、不動産貸付業や駐車場業も、規模や管理状況によって認定されれば個人事業税が課されます。
個人事業税の計算方法は、以下の通りです。
※雑所得が事業的規模とみなされるケースも含まれることがあります。
事業主と生計を共にする親族に給与を支払っている場合、一定の要件を満たせば経費として認められる額です。所得税の事業専従者給与(控除)額や青色申告特別控除額は、個人事業税の計算上は差し引かず、加算して計算します。
各種控除額は、損失の繰越控除や事業用資産の譲渡損失の繰越控除など、一定要件を満たす場合に適用できます。
個人事業税の計算方法について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
消費税の計算方法
基準期間(個人事業主の場合は前々年)の課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の納税義務者(課税事業者)になります。たとえ前々年が1,000万円以下でも、特定期間(前年の前半など)における課税売上高が1,000万円を超えた場合は、消費税の課税事業者となるため注意が必要です。
消費税率は、基本的に売上の10%、飲食料品や定期購読の新聞などの軽減税率対象品目については8%が課されます。
消費税には「一般課税」と「簡易課税」の2つの計算方式があり、事業規模や業種によって選択可能です。詳しくは以下の記事をご確認ください。
年収1,000万円の個人事業主と会社員は手取りが同じ?
同じ「1,000万円」という収入でも、会社員の場合は「額面給与」、個人事業主の場合は「売上」と、それぞれ性質が異なります。ここでは、会社員と個人事業主の手取り額がどのように変わるかシミュレーションしてみましょう。
年収1,000万円の会社員の手取り
年収1,000万円の会社員の手取り額のシミュレーションは、以下の通りです。
項目 | 会社員の場合 |
---|---|
年間収入 | 1,000万円 (額面給与) |
必要経費 | 0円 (給与所得控除以外は考慮せず) |
所得 | 1,000万円 |
社会保険料 (健康保険+年金) | 約150万円 (会社と折半した自己負担分) |
所得控除 |
|
課税所得 | 概算 600〜700万円程度 (※1の控除後) |
所得税 | 約110万円 |
住民税 | 約70万円 |
個人事業税 | なし |
消費税 | なし |
手取り | 約670万円 |
※1 給与所得控除は、会社員に自動的に適用されるものです。
上記はあくまで概算であり、実際は給与所得控除後の課税所得金額をもとに所得税・住民税が計算されます。
年収1,000万円の個人事業主の手取り
年収1,000万円の個人事業主の手取り額のシミュレーションは、以下の通りです。
項目 | 個人事業主の場合 |
---|---|
年間収入 | 1,000万円 (年間事業売上) |
必要経費 | 300万円 (仕入・外注費・家賃など) |
差引所得 | 700万円 (1,000万円-300万円) |
社会保険料 (国民健康保険+国民年金) | 約100〜120万円 (所得や居住地などにより変動) |
所得控除 |
|
課税所得 | 概算 500〜600万円程度 (経費や専従者給与の有無により変動) |
所得税 | 約70〜80万円 |
住民税 | 約50〜60万円 |
個人事業税 | 業種ごとに3〜5% (例:5%とすると約20万円前後) |
消費税 (課税事業者の場合) | 課税売上1,000万円×10%- 課税経費分の仕入税額控除=数十万〜百万円程度 |
手取り | 約550万円〜400万円 (経費や消費税額によって変動) |
所得税・住民税は青色申告特別控除などの影響で会社員より少なくなる可能性もありますが、個人事業税や消費税が多く、国民健康保険料が高額になる傾向があるため、会社員より手取りが少なくなるケースもあります。また、経費300万円を支出として考慮すると実質的な可処分所得はさらに減少することになります。
年収1,000万円の個人事業主ができる節税対策は?
個人事業主ができる節税対策として所得から控除できるふるさと納税やiDeCo、生命保険などがあります。さらに、配偶者・家族の給与を経費に算入できる青色事業専従者給与の特例もあります。
青色事業専従者給与と専従者控除
青色申告を行っている個人事業主の場合、生計を一にする配偶者や親族が事業に従事しているときには、一定の要件のもとで「青色事業専従者給与の特例」を適用できます。実際に支払った給与の額を必要経費として計上できるため、所得を圧縮でき、結果として所得税や住民税の負担が軽減されます。
白色申告の場合は「専従者控除」として上限の定められた金額を控除する方式であり、青色申告ほどの節税効果は得られない点に注意しましょう。
青色事業専従者給与について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
iDeCo・国民年金基金
iDeCo(個人型確定拠出年金)と国民年金基金は、個人事業主やフリーランスの方が任意で加入できる年金制度です。いずれも掛金は全額所得控除の対象となり、節税効果が高いというメリットがあります。
iDeCo
加入者自身が運用商品を選び、掛金を積み立てていきます。運用益は非課税で再投資され、将来年金または一時金として受け取れます。受取時も一定の控除が適用されるため、税制優遇の大きい制度です。
iDeCoについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
国民年金基金
国民年金(基礎年金)の上乗せとして終身年金を中心に受け取れる公的年金制度です。1口目は必ず終身年金を選ぶ必要がありますので、「一生涯受け取れる年金」を確保したい方には有効な選択肢になります。掛金はiDeCoと同様、全額が所得控除の対象です。
iDeCoについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
小規模企業共済
小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者が、退職金や廃業時の生活資金を準備するための制度です。掛金(月1,000~7万円)は全額が所得控除できるため、現役時代の節税効果が高い点が魅力です。
ただし、任意解約の場合は掛金の納付期間によっては元本割れとなる場合もあるため、加入時は注意が必要です。
小規模企業共済について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
生命保険料控除
生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料を支払った場合、一定の条件を満たす保険商品に加入していれば、年間で最大12万円が所得控除として認められます。契約内容や保険料次第ではありますが、保障を得ながら節税につなげられる手段として検討する価値があります。
生命保険料控除について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
年収1,000万円の個人事業主が注意すべきことは?
年収1,000万円の個人事業主の方は、会社員より社会保険料や税金が高い傾向があり、老後の資金として退職金や年金を自分で準備する必要がある点に注意が必要です。
会社員より社会保険料・税金が高い傾向がある
会社員の場合、健康保険料や厚生年金保険料は会社と折半ですが、個人事業主は国民健康保険・国民年金の保険料を全額自己負担します。
さらに、多くの業種では個人事業税がかかり、前々年の課税売上高が1,000万円を超えれば消費税も納める必要があります。そのため、年収が同水準でも、会社員と比べて社会保険料や税金の負担が高くなりやすいのです。
年収が高くなると国民健康保険料の負担も重くなるので、業種別の国民健康保険組合などへの加入を検討してみるのも一つの方法です。
退職金や年金を自分で用意する必要がある
会社員の場合、企業によっては退職金制度が整っており、厚生年金への加入が義務付けられています。一方、個人事業主は国民年金だけでは将来受け取れる受給額が少なく、退職金制度もないため、iDeCoや国民年金基金、小規模企業共済などで自分自身で準備する必要があります。
会社員と比べると自己責任でリスクも負いますが、その分、運用や経費計上で自由度が高い点も個人事業主の特徴です。
個人事業主の手取りは節税対策で大きく変わる
年収1,000万円の個人事業主は、事業規模が大きくなるほど税金の支払いも増えていきます。しかし、iDeCoや小規模企業共済、青色事業専従者給与の特例などを活用して所得を圧縮したり、ふるさと納税で住民税を控除したりすることで、負担を大きく軽減することが可能です。また、国民健康保険料が高騰する場合、業種別の国民健康保険組合への加入を検討することで保険料負担を抑えられるケースがあります。
個人事業主の場合、事業がうまく軌道に乗れば、時間の使い方や働き方の自由度が高まり、ワークライフバランスを整えやすいというメリットもあります。会社員との違いを正しく理解し、リスクとメリットの両面を踏まえたうえで、計画的に節税・資産形成を行っていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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