- 作成日 : 2024年8月30日
ケアハウスの事業計画書の書き方・無料テンプレート【簡単解説】
ケアハウスの事業計画書をどのように作ればよいか、悩んでいる方もいるでしょう。ケアハウスは公共性の高い事業のため、ほかの事業の事業計画書はあまり参考にならないでしょう。
ケアハウスを設立するには、さまざまな要件を守らなければいけません。今回の記事ではケアハウスの事業計画書の書き方や、守るべき要件を紹介します。
目次
ケアハウスの事業計画書はなぜ必要?
事業計画書とは、売上や収益などの見込みを数値化して、今後どのように事業を運営していくかという経営戦略を、内外に説明するための書類です。なぜ事業計画が必要か、理由は以下の通りです。
- 事業内容が明確になる
- 仲間と共有できる
- 資金調達を円滑に行える
それぞれの理由を詳しく見ていきましょう。
事業内容が明確になる
事業計画書を作成することで、事業内容を明確にできます。頭の中で描いている構想を整理して、具体的なビジネスコンセプトとして落とし込み、目標や事業内容を具体化できます。また時系列に事業計画を作ることで、開業から軌道に載せるまでのスケジュールも明確になるでしょう。
また事業内容を明確にすることで、許認可要件の整理や事業運営に必要なリソースの把握が可能です。作成した事業計画書は、その後の事業の進捗管理や経営における意思決定の拠り所としても活用できます。
仲間と共有できる
事業計画書は事業内容を明確にするだけでなく、社員など仲間と共有できます。事業計画書に盛り込んだビジョンをチーム全体で共有することで、組織文化を醸成できます。また具体的な目標を折り込むことで、チームの方向性が固められ目標に向かって一丸となって取り組めるでしょう。
売上のような数値目標だけでなく、会社として目指す姿のような「将来のあるべき姿」を盛り込んでおくことで、現状とのギャップが明確となり、チームで共有できます。将来の事業展望を示すことで、メンバー全員が共通の目標を共有できます。
資金調達を円滑に行える
事業に必要な資金を調達する際にも、事業計画書は役立ちます。融資する金融機関は、融資金の返済ができるかどうかを見ています。そのため、信頼される堅実な事業計画が求められます。
事業計画書に落とし込んだ収益やキャッシュフローの実現性が高ければ、金融機関の融資審査に通りやすくなるでしょう。また具体的なリスク対策や戦略が盛り込まれていれば、出資者にとって安心材料が増えます。金融機関だけでなく、補助金申請にも事業計画書は必要になるため、資金繰りの円滑化に役立ちます。
ケアハウスの事業計画書のひな形、テンプレート
マネーフォワード クラウドでは、ケアハウス向けの事業計画書のひな形、テンプレートをご用意しております。事業計画書作成の参考として、ぜひダウンロードして、ご活用ください。
なお当該テンプレートは、日本政策金融公庫のフォーマットを基にしたものとなっておりますので、実態と合わせて内容はご変更ください。
ケアハウスの事業計画書の書き方・記入例
ここからは、実際にケアハウスの事業計画の書き方について見ていきましょう。ケアハウスの事業計画書を作成する際に、盛り込むべき項目は以下の通りです。
- 創業動機・目的
- 職歴・事業実績
- 取扱商品・サービス
- 取引先・取引関係
- 従業員
- 借入の状況
- 必要な資金と調達方法
- 事業の見通し
それぞれの項目の書き方を見ていきましょう。
創業動機・目的
創業動機や目的だけでなく、事業を運営していくうえで指針となる基本方針や経営方針などを記載します。ケアハウス事業をなぜ創業しようと考えたのか、過去の経歴などを踏まえて記載しましょう。
また事業を通じて達成したい目的も記載します。「高齢者が安心して、生きがいのある生活を送ることを支援する」などのように、ケアハウス事業を通じて実現を目指す具体的な目的を記載します。また事業を通じて地域や社会に貢献する内容を記載してもよいでしょう。
職歴・事業実績
職歴や事業実績では、これまでの職歴や事業の実績を記載します。ケアハウスを運営できるのは社会福祉法人や医療法人のため、ケアハウス以外の介護施設や医療機関を経営している場合も多いでしょう。関連する事業がある場合は、記載しておきます。
またPFI方式により、2001年から株式会社などの民間企業でも運営できるようになりました。PFI方式とは民間の資金や技術、経営ノウハウを活用して公共施設の建設や運営を行う手法です。母体企業が別の事業を行っていれば、記載しておきましょう。
取扱商品・サービス
取扱商品やサービスは、ケアハウス事業の肝となる部分です。ケアプランの作成や介護相談など実際に行うサービスを、単価も含めて記載しましょう。ケアハウスには健康状態に問題のない方が入居する自立型と、介護が必要な介護型があります。
自立型と介護型のどちらの事業を運営するかなど、具体的に記載するようにしましょう。介護サービスがついたケアハウスでは、運営規定を定める必要がある点にも注意が必要です。
取引先・取引関係
取引先では連携する医療機関や、介護用品の仕入れ先などを記載します。また販売先は入居する高齢者が主体となるため、入居可能な人数も記載しておきましょう。入居人数に加えて想定する単価を、サービスごとに決めておくことで具体的な売上計画がたてられます。
さらに売上と仕入れの支払いスケジュールまで確認しておくことで、緻密な資金繰りが可能になります。
従業員
ケアハウスでは指定基準の中で、人員基準を定めています。具体的には、次のような人員基準を守る必要があります。
施設長(管理者) | 社会福祉⼠などの有資格者、もしくは社会福祉事業に2年以上従事した施設長を1人設置する |
---|---|
生活相談員 | 有資格者を入居者100人ごとに1人配置 |
看護職員・介護職員 | 要⽀援者10⼈につき1⼈、要介護者3⼈につき1⼈配置が必要 |
機能訓練指導員 | 有資格者1人以上の配置が必要で、兼務も認められている |
計画作成担当者(ケアマネージャー) | 介護⽀援専⾨員の資格者で、入居者100人ごとに1人配置が必要 |
必要な人員を確保できるように、しっかりと計画しましょう。
借入の状況
運転資金や設備資金の借入がある場合は、正しく記載をします。金融機関向けに提出する事業計画書の場合、借入を少なく記載してしまいがちですが嘘はいけません。後々のトラブルを避けるためにも、正直に記載しましょう。
必要な資金と調達方法
ケアハウス運営に必要な建物と設備を記載し、資金の調達方法を決めておく必要があります。ケアハウスの指定基準には、下記のように設備基準が定められています。
定員 | 30人以上 |
---|---|
居室 | 21.6㎡以上 (夫婦部屋は31.9㎡以上) |
必要設備 | 一時介護室・浴室・便所・食堂・機能訓練室など |
ケアハウスを運営するためには、上記の要件を満たした建物を建築する必要があります。そのため設備に大きな費用がかかるため、資金調達ではしっかりとした計画が必要です。
また設備だけでなく、前述のようにケアハウスでは指定基準に沿った人員を確保する必要があります。そのため設備資金だけでなく、人件費も踏まえたうえで資金繰りを計画することが大切です。
事業の見通し
開業した後数年間の損益見通しを記載します。ケアハウスでは設立初年度は設備資金の投資も大きく、黒字を確保することは難しいかもしれません。しかし売上は入居者の人数に左右されるため、順調に入居者を確保できれば黒字化の計画はたてやすいという特徴もあります。
初年度は黒字であっても、2年目や3年目にはしっかりと黒字になるように事業計画をたてましょう。事業の見通しを作成する際は、ケアハウスの収益構造を踏まえたものにすることが大切です。
ケアハウスの事業計画書作成のポイント
ケアハウスは事業といえども、社会インフラの側面も高い事業です。そのため事業計画を作成するには、ほかの業種とは違った注意点もあります。
指定基準を織り込んだ計画書にする
ケアハウスの事業計画を作成する際には、指定基準を織り込んだ計画にする必要があります。指定基準には、人員基準・設備基準・運営基準があります。前述のように人員基準を満たすには所定の役割の人員を、入居者の人数に合わせて配置しなければなりません。
また指定基準に準じた建物と、運営基準を定める必要があります。指定基準を守らなかった場合は、簡易的な指導から始まり、最悪は行政処分を受けてしまう可能性もあります。行政処分を受ける理由で一番多いのは介護保険の不正請求ですが、次に運営基準と人員基準の違反が多いため、気をつけましょう。
ケアハウスの運営を行うにあたって指定基準を遵守することは重要なため、しっかりと事業計画に盛り込んでおく必要があります。
ほかの老人ホームとの違いを理解する
ケアハウスの事業計画を作成する際には、ほかの老人ホームとの違いを理解しておくことも重要です。ケアハウスを含む軽費老人ホームには、A型・B型・C型の3種類があります。このうちケアハウスは、C型に該当します。
C型の中でもケアハウスは前述のように自立型と介護型に分類が可能です。自立型では1人暮らしに不安があるものの、健康状態には問題がなく介護サービスが不要な高齢者が対象です。
一方で介護型は、介護保険法における「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設で、介護サービスが提供されます。自立型と同様のサービスに加えて、食事やトイレ、入浴などの介助も提供する必要があります。ケアハウスの事業計画を作成する際には、ほかの老人ホームとの違いを理解したうえで的確に計画することが重要です。
ケアハウスの開業に必要な資格・許可について
ケアハウスを開業するためには、次の点に注意する必要があります。
- 市区町村の高齢福祉担当課に確認する
- 運営主体が定められている
- 施設は自己所有する必要がある
それぞれの内容を見ていきましょう。
市区町村の高齢者福祉担当課に確認する
ケアハウスは市区町村の整備目標によって定員が決められています。開業する前は整備余地があるかどうかを、市区町村の高齢者福祉を担当する課への確認が必要です。またケアハウス事業に株式会社が算入する際には、都道府県知事の許可が必要になります。
都道府県は許可をおろすにあたって、次のことを確認するとされています。
- 当該事業を経営するために必要な経済的基礎があること。
- 当該事業の経営者が社会的信望を有すること。
具体的な要件は記載されていませんが、法人の規模や経営状況が安定的でなければ許可がおりない場合もあるでしょう。また開設に際しての国庫補助は、申請や内示スケジュールが決まっているため、開催の際は考慮する必要があります。
運営主体も定められている
ケアハウスの運営主体は、従来国や地方公共団体、社会福祉法人、医療法人に限定されていました。しかしPFI方式の導入によって、2001年からは民間企業の株式会社でも算入が認められています。
社会福祉法人とは、社会福祉の事業を行う民間の非営利法人です。利益を追及することはできませんが、法人税などが非課税というメリットもあります。設立するには評議員が7人以上、理事が6人以上必要など、株式会社の設立とは要件が異なります。
施設は自己所有する必要がある
ケアハウス事業を始める際、施設の所有権を保有している必要があります。これは社会福祉法人を設立する際も同様で、福祉事業を安定的かつ継続的に経営していくために確固たる基盤を築いている必要があるためです。
PFI方式による株式会社の場合は、自治体などが事業者に対して施設を貸与することを原則としています。ケアハウスは老人福祉法に基づいた福祉施設であるため、市街化調整区域への建築も可能です。しかし入居者確保の観点からも、市街地やその近郊のほうが望ましいでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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