• 作成日 : 2024年8月30日

漁業の事業計画書の書き方・無料テンプレート【簡単解説】

漁業を開業するとき、事業計画書を作成することは極めて重要です。事業計画書は、漁業の事業内容や将来性を明確に示す重要な資料となります。

本記事では、誰にでも理解しやすい事業計画書の書き方と、漁業特有の項目や必要な資格・許可について詳しく解説します。また、テンプレートを用いた具体的な作成方法も紹介していますので、ぜひダウンロードしてご活用ください。

漁業の事業計画書はなぜ必要?

漁業の事業計画書は開業時に必須ではありません。しかし、融資を受ける際には作成を求められます。また、事業計画書を作成することにより、事業内容や収益性・将来性が可視化されます。

事業計画書の主な目的は、次のとおりです。

  • 金融機関や投資家からの資金調達
  • 取引先との信頼構築

漁業の事業計画書を作成する際には、次の項目を重視するとよいでしょう。

漁業に関する経験漁業に関する経験の有無
事業内容予定している漁業の種類(沿岸漁業・沖合漁業など)
漁獲計画対象魚種・予定漁獲量・漁期の詳細
市場分析と販売計画販売先・市場価格・需要動向の詳細
従業員事業に関わる予定人数
資金計画初期投資額・必要運転資金・収益予測の内訳

これらをわかりやすく記載することで、漁業の成功と持続可能性を金融機関の担当者や投資家にアピールできるようになります。

漁業の事業計画書のひな形、テンプレート

事業計画書 漁業

マネーフォワード クラウドは、漁業向けの事業計画書のひな形、テンプレートをご用意しております。事業計画書作成の参考として、ぜひダウンロードして、ご活用ください。

漁業の事業計画書の書き方・記入例

漁業の事業計画書の書き方・記入例をテンプレートに沿って紹介します。事業計画書に決まった様式はありませんが、テンプレートは事業計画書を作成する手助けとなります。ぜひ、ダウンロードしてご活用ください。

創業の動機・目的

創業の動機・目的は、漁業に対する思いや将来性などを書きます。事業のビジョンや理念を、誰にでも理解できるように表現することが重要です。

たとえば、次のように記載するとよいでしょう。

  • 人々の食を支える仕事がしたい
  • 漁師の元で積んだノウハウを共有して規模を拡大し、漁業に新たに人材を取り込みたい
  • 父が漁協で働いており、幼い頃から漁業関係の仕事に興味があった
  • 漁業が盛んな地域で育ち昔から海や魚と接する機会が多く、漁師になりたいと思うようになった

動機や目的は、誰でも理解できるように簡潔に書きましょう。

職歴・事業実績

職歴・事業実績は、事業計画書において信頼性を高める重要な要素です。具体的には、経営者の職歴やスキル、過去の事業実績を詳細に記載します。

漁業の職歴・事業経験には、次のような項目を記載しましょう。

  • 過去の漁業経験
  • 関わったプロジェクト
  • 漁業に関連する資格など

専門知識や実績も強調することで、事業の実現性がアピールできます。信頼性を高めるために、具体的なデータや事例を挙げるとより効果的です。

取扱商品・サービス

取扱商品・サービスには、提供する製品やサービスの詳細を明確に記載します。漁業の場合、次の項目を含めるとよいでしょう。

  • 漁業の方法
  • 主な魚種
  • 漁場

セールスポイントについては、漁師としての経験年数や過去の実績を具体的に記載し、事業の継続性を強調します。さらに、競合分析や市場調査の結果を踏まえ、自社の強みを明確にすると説得力のあるアピールが可能です。たとえば、特殊な漁法や鮮度維持技術、持続可能な漁業への取り組みなどが挙げられます。

取引先・取引関係

取引先・取引関係には、次のようなことを記載するとよいでしょう。

  • 現在の主要取引先と今後の取引予定先
  • 取引条件の概要

漁業の場合、出荷は地元の漁業協同組合を通じて行うのが一般的です。そのうえで、次のような取引先を名称とともに明記し、取引規模も説明します。

  • 卸売市場
  • 仲卸業者など

このような情報は、確実な販売ルートと持続可能なビジネスモデルを明確にすることにつながります。

従業員

従業員に関する情報は、事業計画書で組織の運営体制を示す重要な要素です。次の点について詳細に記載しましょう。

  • 常勤役員の人数(法人のみ)
  • 従業員の人数(船長・漁師など)

漁業を始める際には、3ヶ月以上雇用する予定の人数を記載します。また、家族やパート従業員が含まれる場合は、内訳も明確にします。

借入の状況

借入の状況は、現在の借入金額や借入先・返済条件・返済スケジュールを詳細に記載します。具体的には、漁船や漁業のための設備投資や運転資金のための借入金額だけでなく、個人の借入に関しても明確にしましょう。一般的に、個人の借入金額は高額でない限り創業への影響は少ないとされています。

借入金額は正しく記載しなければなりません。日本政策金融公庫をはじめとした金融機関は、指定信用情報機関に照会をかけ、申請者の借入状況を確認可能です。そのため、虚偽の申請はすぐに担当者に伝わり、信頼を失います。

必要な資金と調達方法

必要な資金と調達方法は、漁業において必要な資金について詳しく記載します。漁業の場合には、次のようなものが考えられます。

主な費用内容(一例)
初期投資
  • 漁船・漁具・冷蔵設備の購入
運転資金
  • 魚を捕るための餌代
  • 漁船の燃料代
  • 漁業に携わる人の人件費

※運転資金は、3〜4ヶ月分を目安に記載する

資金は、金融機関や投資家からの融資などから検討しましょう。

また、自己資金の投入割合や返済計画も明示し、資金調達の確実性と事業の安定性を強調するとよいでしょう。これにより、投資家や金融機関に対し、計画的な資金運用と持続可能な事業展開をアピールします。

事業の見通し(月平均)

事業の見通しについては、漁業の開業当初と軌道に乗ったときの利益を具体的に示します。記載する内容は次のとおりです。

  • 売上高
  • 売上原価(仕入)
  • 経費
  • 年間の操業期間
  • 月当たりの操業日数
  • 年間の航海回数
  • 各魚種の漁獲予定量

月平均の漁獲量や販売価格を基に売上高を算出します。船舶の燃料費・従業員の給与・設備の維持費など、月平均の支出を詳細に記載しましょう。さらに、季節による漁獲量の変動や市場価格の変動を考慮し、月ごとの収益予測を行います。

事業の見通しを記載する際の重要なポイントは、毎月の利益が返済予定額を上回るように設定することです。これにより、投資家や金融機関に対して、事業の安定性と収益性を具体的な数値で示せるようになります。

漁業の事業計画書作成のポイント「漁業ならではの項目を記載する」

漁業の事業計画書を作成する際には、漁業特有の項目を記載することが重要です。たとえば、次のような項目が挙げられます。

【漁業特有の項目(一例)】

  • 漁業種類と漁場
  • 漁獲予定の魚の名称
  • 操業期間
  • 漁獲予定量
  • 漁具・餌代
  • 漁船の燃料費

事業計画書には、これらの項目を具体的に記載しましょう。漁業には天候や市場価格の変動など、独自のリスクも想定されます。リスク軽減のための対策も記載することで、予期せぬ事態への対応力があることもアピールできます。

漁業の開業に必要な資格・許可について

漁業を始めるために必要な資格や許可はありません。ただし、資格・許可を所有していると漁業を開業しやすくなります。

漁業の種類や規模に応じて必要になる資格や許可は異なります。計画にもとづいて必要な資格を確認することが重要です。

小型船舶操縦士

漁船を運転するためには、小型船舶操縦士免許が必要です。免許には次のような種類があります。

種類航行範囲特徴
一級小型船舶操縦士制限なし
  • すべての海域で航行可能
  • 沖合漁業のような長距離航行による漁業が可能
二級小型船舶操縦士沿岸から5海里以内
  • 沿岸から5海里(9.26キロメートル)以内の海域で航行可能
  • 沿岸漁業や短距離の活動が中心
二級小型船舶操縦士
(湖川小出力限定)
湖や川
  • 総トン数5トン未満、かつエンジン出力15kW未満の小型船舶を操縦可能
  • 湖や川など、内水面での活動に限定
特殊小型船舶操縦士制限なし(水上オートバイ専用)
  • 水上オートバイ専用(一級や二級の免許では操縦できない)
  • 湖沼や内水面でも使用可能
  • 水上オートバイの操縦に必要な知識と技能を習得

出典:「小型船舶操縦免許の制度」(国土交通省)を加工して作成

海上無線技士

無線通信を行うために必要な免許です。海上無線操縦士には、次のような種類があります。

  • 第1~4級海上無線通信士
  • 第1~3級海上特殊無線技士
  • レーダー級海上特殊無線技士

出典:無線従事者とは|総務省

漁業権

漁業権は、特定の漁場で漁業を行うために必要な権利です。漁業権は漁業協同組合が管理しており、申請後、地域の漁業協同組合から許可を受けることで取得できます。

出典:漁業権について|水産庁


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