- 更新日 : 2024年4月25日
会社設立で相続税対策! 法人化のメリット・デメリットも解説
会社の設立は、事業活動のためだけに行わるものではありません。資産から生まれる収益の税負担軽減や、相続税対策のための法人設立もその理由のひとつです。
会社設立は、どのような理由で相続税対策になるのでしょうか。この記事では、会社設立が相続税対策になる理由や、法人化のメリットやデメリット、資産管理会社と相続税の関係も含めて解説していきます。
目次
会社設立による相続税対策
相続税は、資産額によっては非常に高い税率が課せられる税金です。最大55%もの税率となるため、個人から個人へ直接相続しても、半分程度の価値の資産しか渡せない場合があります。しかし設立した会社をプライベートカンパニーとして活用すれば、資産の分散や相続財産の評価を通して、相続税を節税する効果が期待できるのです。
報酬の分配で資産を分散させる
高額資産の相続には、多額の相続税がかかります。相続税の税率は累進課税となっており、6億円以上の相続に対しては55%の税率が課せられます。
高税率の相続税を回避するには、法人化による資産分散が有効です。資産を移したプライベートカンパニーの役員に子や配偶者を選任し、役員報酬の形で資産を移転させていくことで、高い相続税を払わずに、実質的に資産を相続させられます。
相続税の財産評価を下げる
仮に被相続人の資産をすべてプライベートカンパニーに移し、被相続人が株式の100%を所有していたなら、相続の対象となる資産はプライベートカンパニーの株式のみです。非上場の株式の株価は、必ずしも会社が保有する資産と同等とは限りません。評価により株価を総資産額よりも低く抑えられるなら、その分相続税を支払う必要は無くなるのです。
非上場株式の評価方法は数種類あり、条件によって選べる評価方法は異なります。必ずしも株価が最低になる評価を受けられるとは限りませんが、株式を通した相続は、相続税を低減できる効果が見込めます。
相続税対策のための法人化 メリット・デメリット
会社設立がなぜ相続税対策になるのか説明してきました。一方で、必ずしも法人化が相続税対策になるとはいいきれません。法人化が相続税対策となるのはどのような条件が必要なのか、法人化によるメリット、およびデメリットを解説します。
メリット
相続税対策のための会社設立は、相続財産の分配や相続時の財産評価の面で有効だと説明しました。特に、税率が高くなる多額の相続財産がある場合に効果的です。
以下は、相続税の税率を表した表になります。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
上の表の通り、相続される財産の額が大きいほど超過累進課税で税率が上がります。相続財産が高額になれば最大55%もの相続税率が課せられますが、裏を返せば相続財産の額が下がれば、相続税の負担額は小さくなります。
相続税対策を目的に会社を設立し、相続の発生までに財産の一部を相続人へ分配し、相続人が相続時に受け取る財産の取得金額が下がるなら、本来高税率の相続税を支払うはずであった金額帯が無くなります。
また、相続人へ財産を分配する役員報酬は、金銭によって支払われることがほとんどです。相続税は一般的に現金で納税するため、相続前に現金を分配することによって、相続税の支払いに備えた納税資金の準備にもなるでしょう。
デメリット
相続の対象となる財産の額によっては、法人からの役員報酬による資産分配により、かえって多額の税金を支払うことになります。
相続税の計算にあたり、以下の基礎控除を相続財産の評価額から差し引きます。
※法定相続人とは、配偶者や子など、民法で定められた相続人をいいます。
相続税の基礎控除は、条件なく、どの相続においても適用されるものです。負債などを差し引いたあとの正味の財産が基礎控除を下回る場合は、相続税は課税されません。
3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円が基礎控除額となります。
相続対象の資産が4,800万円以下の場合には、課税対象となる資産額が残らないため、相続税は発生しません。
同条件で4,800万円の資産を役員報酬として配偶者と子に分配した場合、役員報酬に対して所得税が課せられます。相続なら0円だった税金が、所得税分多く取られてしまうのです。
以上のように、相続税対策を目的とした会社設立は、そもそもに相続税が発生しないケースでは節税効果を得られません。かえって所得税や会社設立にかかる費用分、金銭的な損失を生むことになるでしょう。
また、相続税対策の会社設立は、節税に有効なケースがあるものの、必ずしもその実態を税務署から認められるとは限りません。法人としての実態をともなわないと税務署が判断した場合、役員報酬など財産の移転が否認されるケースもありますので、注意が必要です。相続税対策を目的にするなら、十分に知見や実績のある税理士などの専門家の力を借りる必要があります。
一般的な会社設立のメリットやデメリットは以下の記事で取り上げていますので、こちらも合わせてご覧ください。
資産管理会社の設立は相続税対策になる?
不動産など、財産の管理を目的に設立する会社を「資産管理会社」といいます。資産管理会社については以下の記事で解説していますので、こちらもご覧ください。
資産管理会社の活用方法として特に有効なのが、不動産投資を行うケースです。不動産の管理方式にはいくつかの種類があり、それぞれ相続税対策の効果が異なります。
- 不動産所有方式 = もしくは建物と土地を個人から法人の所有に移転させる方式
- 管理会社方式 = 個人所有の不動産を法人が管理のみ行う方式
- サブリース方式 = 個人所有の不動産を法人が一括で借り上げ、転貸借する方式
このうち、節税効果が高いとされるのが「不動産所有方式」です。不動産の所有者が変わるため手続きなどが必要ですが、不動産投資で得られる収益はすべて法人に入るため、その後の分配がしやすくなります。設立した会社に不動産の所有権を移し、役員にした配偶者や子に役員報酬を支払うことで、贈与ではなく給与の形で財産の分配が可能です。
また、個人から法人に不動産を移転することで、該当の不動産が生む利益は法人の利益となります。そのため以降の不動産投資による利益を直接の相続財産から除外することが可能です。
なお、財産の移転方法に贈与があります。無償による財産の譲渡は贈与税の対象になり、一定の控除額を超えた贈与額に対する課税率は、給与所得に対する所得税よりも税負担が重くなる傾向があります。
つまり、資産管理会社の設立は、相続税対策になります。
相続税対策には会社設立も方法のひとつ
相続の対象になる財産が多額になる場合や、不動産投資による利益が大きい場合は、資産管理会社の設立が相続税対策として期待されます。ただし、相続する財産の額によっては余計な出費を招くことになり、また相続税対策を目的とした会社設立が実態をともなわないとして、税務署から否認される可能性などもあります。会社設立による相続税対策を考えるなら、相続に詳しい専門家に相談されることをおすすめします。
よくある質問
法人化による相続税対策のメリットは?
相続前の財産の分配による相続財産の減額、現金の分配による納税資金の確保などのメリットがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
法人化による相続税対策のデメリットは?
相続税がかからないケースでは意味がないこと、法人としての実態がともなわないと判断された場合は税務署から否認されるリスクがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
資産管理会社とは?
資産管理会社は、個人の所有する資産の管理を目的とした会社で、不動産投資の節税対策などとして活用されます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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