- 更新日 : 2023年8月25日
老人ホーム経営の基礎知識!儲かる?初期費用はどれくらい?
高齢化が進む現代において、介護施設や老人ホームの需要は増加しており、老人ホームの経営を始める人も増えています。
では、老人ホームの経営とはどのようなものなのでしょうか。資格などは必要なのでしょうか。ここでは、老人ホームの経営が儲かるのか、初期費用はどれくらいかなど、老人ホーム経営の基礎知識について解説します。
目次
老人ホーム経営とは?
老人ホームの経営には、大きく分けて「運営者を委託するパターン」と「運営も自分で行うパターン」の2つがあります。それぞれについて見ていきましょう。
運営者を委託するパターン(土地運用寄り)
老人ホームの経営方法のひとつに、運営者を委託するパターンがあります。これは、自分の所有している土地に老人ホームを建設し、介護サービス会社などの運営者に賃貸をするというものです。土地のみを賃貸するケースもあります。この方法では、賃貸収入が主な収入源になります。
老人ホームの運営自体は介護サービス会社が行うため、どちらかというと、土地運用寄りの経営方法です。
運営も自分で行うパターン(経営者寄り)
老人ホームの経営方法には、介護サービス会社をはさまず、運営も自分で行うパターンもあります。この場合の収益は賃貸収入ではなく、老人ホームの経営から得る営業収益です。
収入が大きく、成功すれば大きな利益を得ることが可能です。自分で老人ホームを運営するため、経営者寄りの経営方法になります。
老人ホーム経営は儲かる?
次に、老人ホーム経営は儲かるのかどうかを見ていきましょう。
老人ホーム経営の収益構造
「運営者を委託するパターン」と「運営も自分で行うパターン」では、収益構造が異なります。それぞれの収益構造は、以下のとおりです。
運営者を委託するパターン
運営者を委託するパターンでは、土地や建物の賃貸収入が主な収入源になります。また、経費で大きい部分は固定資産税や修繕費です。
運営は、介護サービス会社などが行うため、人件費や営業費などの費用はかかりません。
賃貸収入の金額は、老人ホームの建物の種類や契約内容などで異なります。
運営も自分で行うパターン
運営も自分で行うパターンでは、老人ホームの月額利用料と一時入居金が主な収入源です。
運営も自分で行うため、収入は大きくなるものの、初期費用や維持費などの支出も大きくなります。例えば、経費では人件費や設備費、水道光熱費などが経営に大きく影響します。
老人ホーム経営の初期費用はどれくらいかかる?
運営者を委託するパターンは、土地運用寄りの経営です。所有している土地を賃貸する場合は、そこまで大きな初期費用はかかりません。
建物を建築して賃貸する場合は、建物の建築費が必要です。建物の建築費は建築する老人ホームの種類によって異なりますが、2億円程度です。
運営も自分で行うパターンでは、建築費以外に設備代や広告宣伝費、求人費などがかかります。土地を所有していない場合は、土地の購入費用も必要です。土地を購入する場合の初期費用は、3億円程度が必要です。
老人ホームの今後の需要は?
内閣府が公表した資料によると、令和3年10月現在、日本の総人口は1億2,550万人、その内、65歳以上人口は3,621万人、総人口に占める割合は28.9%にも上っています。さらに、75歳以上人口は1,867万人、総人口に占める割合は14.9%です。
また、この資料では、令和47年には国民の3人に1人が65歳以上になると予想されています。今後、高齢化がますます進むことを考えると、老人ホームの需要も今後さらに増加していくことが考えられます。
参考:令和4年版高齢社会白書(全体版)1 高齢化の現状と将来像|内閣府
民間が建築できる老人ホーム・介護施設の種類
民間が建築できる老人ホーム・介護施設には、次のようなものがあります。
介護付有料老人ホーム
介護付有料老人ホームとは、介護を必要とする高齢者を対象とした老人ホームです。介護スタッフが日常の生活(食事・入浴、排せつなど)の介護も行います。
介護付有料老人ホームを運営するためには、人員や設備に関する基準を達成し、自治体の指定を受ける必要があります。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームとは、住居と老人ホームが一体となったもので、介護の必要のない高齢者が対象です。主に食事や洗濯といった、生活支援サービスを提供します。
入居者は、別途サービス事業所と契約すれば介護が受けられますが、介護度が重く常に介護が必要な場合は、退去となることがあります。
健康型有料老人ホーム
日本ではあまり見かけない老人ホームですが、健康型有料老人ホームもあります。
健康型有料老人ホームは健康維持を目的としたもので、家事や食事などのサポートを行います。介護が必要になった場合は、他の施設に移る必要があります。
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅は、その名の通り住宅です。介護や医療の機関と連携し、高齢者を支えます。高齢者が住むため、基本的にはバリアフリーの賃貸住宅になります。
サービス付き高齢者向け住宅を運営するためには、設備など一定の条件をクリアする必要がありますが、税の優遇措置を受けることができます。
老人ホーム経営のメリット
老人ホームの経営には、メリットもデメリットもあります。老人ホームの経営を考える際には、メリットとデメリットの両方を理解しておくことが重要です。まずは、老人ホームの経営のメリットから見ていきましょう。
社会貢献性が高い
老人ホームの経営のメリットのひとつが、社会貢献性の高さです。高齢化社会の現代において、老人ホームの存在は欠かせません。将来性があるとともに、社会に貢献し、地域の住民に喜んでもらえます。
収益性が高い
一般的に、老人ホームの経営は収益性が高いです。需要が高く、入居者を見つけやすいだけでなく、いったん入居が決まると、一般的な賃貸物件に比べて入居者が他の施設に移ることが比較的少なく、長期的に安定した収入が得られる傾向にあります。
エリアの候補地が多い
老人ホームは他の物件と異なり、駅や商業施設からの距離などの周辺環境によって、収益が大きく変わることはありません。駅から離れているエリアであっても十分、需要があります。
エリアの候補地が高いため、他の施設での運用が難しくても、老人ホームとして運用できることも多くあります。
老人ホーム経営のデメリット
次に、老人ホームの経営のデメリットを見ていきましょう。
介護事業者を見つけるのが難しい
老人ホームの経営を運営者に委託するパターンでは、介護事業者を自分で見つけることは困難です。老人ホームの建設を手掛ける大手建設会社やコンサルティング会社などから紹介を受けるケースが多くみられます。
そのため、複数の介護事業者を比較して、より良い事業者を見つけることが難しいのが現状です。
土地や建物を転用しにくい
介護施設は、介護を必要とする入居者に合わせた特殊な構造となっています。そのため、万が一、老人ホーム経営の事業に失敗した場合に、土地や建物を転用しにくくなります。
また、転用する場合も取り壊し費用や改修費用などに多くの資金が必要になります。
初期投資の回収に時間がかかる
老人ホームの経営では、初期投資に大きな資金が必要です。運営も自分で行うパターンでは、建築費以外に土地の購入代や設備代や広告宣伝費、求人費などがかかります。
初期費用が、3億円程度またはそれ以上も金額がかかることもあり、回収に時間がかかります。
老人ホーム経営を始める際の流れ
老人ホームの経営は、自治体の審査などが必要となります。そのため、事前に自治体と打ち合わせをするなど、手順を踏んでいく必要があります。老人ホーム経営を始める際の流れは、以下のようになります。
- 老人ホームの設立・経営プランを立てる
- 自治体の担当と事前に相談する
- 都道府県の指針に基づき審査を受ける
- 法人の設立(審査合格後)
- 備品の調達と人員の確保
- 自治体と事前協議後、設置届の提出
- 建設工事の開始
- 経営開始
老人ホームの経営をするためには、都道府県の審査に合格する必要があります。そのため、老人ホームの設立・経営プランを立てたら、まずは、自治体の担当者とそのプランで審査に通りそうかの打ち合わせをして、必要であればプランの修正をしましょう。法人でない場合は、審査が通り次第法人の設立を行います。
また、老人ホームの構造にも詳細な基準があるため、建設工事をする前には必ず自治体と事前協議し、設置届を提出する必要があります。
老人ホーム経営は成長が見込まれる業種
高齢化社会が進む中、老人ホームの経営は需要が増え、成長が見込まれる業種です。
老人ホームの経営には、大きく分けて「運営者を委託するパターン」と「運営も自分で行うパターン」の2つがありますが、どちらであっても高い需要があります。
ただし、老人ホームの経営には、メリットもデメリットもあり、デメリットが大きくなると、経営に失敗してしまう可能性が出てきます。老人ホームの経営を考える際には、メリットとデメリットの両方を理解しておきましょう。
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