- 更新日 : 2024年3月12日
合同会社と個人事業主の違いは?会社設立のメリット・デメリットも解説!
個人事業主がその事業において会社を設立するといえば、まずは「株式会社」が頭に浮かぶという方も多いのではないでしょうか。しかし、設立できる会社の種類はそれだけではありません。株式会社以外にも合名会社、合資会社、合同会社などがあります。
今回は「合同会社」にスポットを当て、株式会社等との違い、設立費用や資金調達方法、そして社会保険、税金について解説します。
合同会社設立のメリット・デメリットにも触れますので、ぜひ参考にしてください。
目次
合同会社とは?
始めに合同会社とは何かを知っておきましょう。
合同会社とは、株式会社などと同様に日本の会社形態の一種です。2006年の会社法施行により、それまであった有限会社が廃止(※)され、合同会社が設立できるようになりました。
※すでに設立済みの有限会社で会社法施行時に特に手続きを行わなかったところは、2022年現在もそのまま有限会社として存在しています。
合同会社の特徴を簡単に押さえておきましょう。
- 出資者と会社の所有者(経営者)が同じ
株式会社は出資者(株主)と経営者が別です。また、株主総会を開催する必要があり、株主は出資比率に応じて議決権を持ちます。しかし、合同会社は出資者と会社の所有者が同じです。株主総会を開く必要もなく、出資者以外の人が経営についての議決権を持つこともありません。
- 出資者と会社の所有者(経営者)が同じ
- 合同会社の社員は全員が有限責任社員となる
合同会社の社員は出資した金額までしか責任を持たなくても良い「有限責任社員」です。倒産し、大きな負債を抱えた場合でも、出資金額以上の責任を負う必要がありません。
合同会社の役職についても把握しておきましょう。
- 代表社員
代表権を持つ社員。合同会社では定款で定めない限り、社員全員が業務執行社員で代表社員となる。ただし、社員同士で意見が異なり経営が混乱することを避けるために、定款で代表社員を1人に定めることもできる。
- 代表社員
- 業務執行社員
経営に関わる社員。合同会社では社員全員が業務執行社員となるが、定款で業務執行社員とその他の社員を区分することも可能。
- 業務執行社員
- 社員
合同会社に出資した人。定款に定めていない限り、社員は全員経営に携わる。
合同会社についての詳細はこちらの記事も参考にしてください。
個人事業主とは?
合同会社の特徴と併せて、個人事業主の特徴も把握しておきましょう。
個人事業主とは、株式会社や合同会社などの法人を設立せず、個人で事業を行う人のことです。この場合の事業とは「独立して継続的に同じ種類の取引を行う」ことを指します。不定期にフリーマーケットに出店し、不用品を販売しているといった人は個人事業主とはなりません。また、個人で事業を行う際は税務署に「開業届」を提出する必要があります。
個人事業主は「フリーランス」や「自営業」と混同されがちです。違いは以下の通りです。
- 個人事業主
個人で事業を行う人。税務上の区分として個人事業を行うことを税務署に報告している。
- 個人事業主
- フリーランス
雇用関係を持たず、個人で事業を行っている人。開業届提出の有無は問わない。
- フリーランス
- 自営業
自分で事業を行っている人。個人事業主とは異なり、法人化している場合もある。
個人事業主についての詳細はこちらの記事も参考にしてください。
合同会社と個人事業主の違いは?
合同会社、個人事業主、それぞれの特徴をつかんだところで、合同会社と個人事業主の違いについてご紹介します。
費用の違い
個人事業主になる場合には開業届を税務署に提出しますが、その際に費用はかかりません。しかし、合同会社を設立する際は以下のような費用がかかります。
※電子定款を利用する場合は不要 | |
このように、最低でも10万円(電子定款利用の場合は6万円)はかかります。その他、会社実印を作成する場合は印鑑作成費用も必要です。
合同会社の場合、資本金についても考えなければなりません。法律では資本金1円から合同会社を作ることはできますが、経営を安定させるためには1円の資本金は現実的ではありません。取引先や金融機関からの信用、融資の受けやすさのことを考えると、資本金は運転資金の数ヵ月分など、ある程度の金額を準備しておいた方がいいでしょう。
なお、合同会社設立を検討する場合は、かかる費用についてもきちんと把握しておく必要があります。
税金の違い
個人事業主の場合、超過累進課税のため、所得金額が増えるとその分所得税額も増えます。以下の所得税の速算表で税率を確認してみましょう。
合同会社の場合は法人税を納めます。法人税の税率は原則として以下の通りです。
所得金額が多くなると、合同会社の方が税率は低くなります。これから事業を拡大したい、売上を伸ばしたいと考えるならば、合同会社の方がお得になる可能性が高いでしょう。
ただし、住民税については注意してください。個人事業主の場合、赤字になれば住民税が課税されなくなりますが、合同会社などの法人の場合は、赤字であっても法人住民税の均等割部分の支払いが必須であるためです。従業員数50人以下で資本金1,000万円以下の場合の法人住民税の均等割部分の税額は7万円(都道府県民税均等割部分:2万円、市町村民税均等割部分:5万円※地域によって異なる場合もあります)となっています。
経理事務の違い
個人事業主の経理については、自分でできる場合が多いでしょう。しかし、合同会社の経理は個人事業主よりも煩雑になるため、経理担当社員の雇用や税理士、会計士の力を借りる必要が生じます。その分費用がかかる点に気を付けなければなりません。なお、税理士に依頼するかどうかは、個人事業主の場合は任意ですが、資本金5億円以上などの大会社は監査法人の監査が義務付けられています。
社会保険への加入義務
個人事業主の場合、製造業、運送業など一定の業種で常時5人以上の従業員を雇用する場合に社会保険への加入義務が発生します。合同会社の場合は1人であっても社会保険加入が義務です。
個人事業主が合同会社を設立するメリットは?
個人事業主が合同会社を設立するメリットを見ていきましょう。
節税できる
所得が増えてくると、個人事業主の所得税率よりも合同会社の法人税率の方が低くなるため、税負担が軽くなります。
また、経費として認められる範囲も個人事業主より合同会社の方が広いため、節税しやすくなります。
株式会社設立より手続きが簡単
株式会社設立の際は、定款の勝手な変更などの不正を防ぐため、公証役場での認証手続きを行う必要があります。しかし、合同会社の場合はその手続きは不要です。
費用の違いにも注目してください。合同会社設立は最低10万円程度から可能です。しかし、株式会社設立の際には、少なくとも20万円以上かかります。具体的には次のような費用です。
※電子定款を利用する場合は不要 | |
その他、合同会社のときと同様に資本金や社印作成費用等もかかります。
また、決算時期になれば、株式会社は決算公告を行わなければなりません。しかし、合同会社にはその義務がないため、決算公告費用や手間を節約することができます。
その他のメリット
個人事業主と比較すると、合同会社の信用度の方が高くなります。取引先からの信用はもちろんですが、金融機関からの信用も得やすくなりますので、融資の際も個人事業主よりも有利になることが一般的です。
個人事業主が合同会社を設立するデメリットは?
合同会社の設立はメリットばかりではありません。デメリットもありますので押さえておきましょう。
設立時にお金がかかる
個人事業主は開業届を提出すれば事業が開始できます。それに伴う費用は不要です。しかし、合同会社設立の際には最低でも10万円はかかります。(電子定款を利用する場合は6万円~)
また、資本金1円から設立はできますが、実際には数ヵ月分の運転資金程度の資本金を準備することが一般的です。このように、個人事業主を始めるときよりもお金が必要になる点には気を付けてください。
株式会社と比較すると制限が多い
合同会社も法人の一種のため、個人事業主と比較すると取引先や金融機関からの信用度は高くなりますが、株式会社と比較すると、信用度は決して高くありません。
さらに、合同会社が事業規模を拡大しても、上場ができないため、資金調達方法が限られる点もデメリットでしょう。
また、定款等で定めない限り、合同会社の全社員は同等の決定権を保有しています。社員同士で意見が異なると、経営が混乱する可能性があるという懸念点もあります。
個人事業主が株式会社を設立するという選択肢も
個人事業主の方が株式会社を設立することも可能です。株式会社とは、次のような特徴を持つ法人を指します。
- 意思決定を株主総会で行う
- 会社の所有者(株主)と経営者が異なる。
ただし、オーナー企業などの場合は株主=経営者である場合も。 - 役員の任期は最長10年(上場会社の場合は2年)
- 決算公告が必要
- 定款認証が必要
個人事業主や合同会社と比較すると信用度が高い点がメリットです。また、株式を発行し資金を調達することができるため、事業を拡大したいという場合でも資金調達が比較的容易です。
ただし、設立時の費用や手間は、合同会社設立時よりもかかりますので気を付けてください。
会社設立のメリット・デメリットを理解しておきましょう
個人事業主が会社を設立する場合、株式会社以外にも合同会社という選択肢もあります。合同会社は最低10万円程度からと比較的低コストで会社設立できる点がメリットです。しかも、個人事業主よりも信用度が高くなるため、金融機関からの資金調達もしやすくなります。
また、所得が高くなると、合同会社にかかる法人税の方が個人事業主にかかる所得税よりも税率が低くなるため、節税効果も期待できるでしょう。
ただし、個人事業主よりも経理事務が煩雑になり、経理専用の社員や税理士・会計士の手を借りる必要が生じる、株式会社と比べると信用度が低く、上場できないため資金調達方法が限られる、というデメリットあります。
設立を検討する際は、これらメリット・デメリットも頭に入れておいてください。
よくある質問
合同会社と個人事業主の違いは?
合同会社が支払うのは法人税、個人事業主は所得税、などの違いがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
個人事業主が合同会社を設立するメリットは?
代表的なメリットには取引先や金融機関の信用を得やすくなる、というものがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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