• 更新日 : 2023年10月23日

経営人材とは?必要なスキル・育成事例も紹介

経営人材とは、経営の目標・課題などを設定する人材のことです。社長や副社長、専務などの経営陣を指します。企業の将来を見通して経営の意思決定を行い、企業の発展を目指す存在です。

本記事では経営人材の意味や求められるスキル・能力の要件などを解説します。経営人材を育成する商社・三菱商事の事例も紹介しますので、参考にしてください。

経営人材とは?

経営人材とは、経営の目標を設定し、実行に移す決定権を持つ人材のことです。具体的には、社長や副社長、専務、常務などを指します。経営人材は企業の成長に欠かせない存在であり、経営人材を育成することが、企業の将来のために重要です。

経営人材とよく似た言葉に「幹部人材」がありますが、意味は異なります。違いをみてみましょう。

経営人材と幹部人材の違い

経営人材が経営や事業の目的や目標を設定する人材であるのに対し、「幹部人材」は、経営人材が決定した目標に応える人材を指します。

経営人材は「自社は今後、何を目指してどこへ向かうのか」といった問いを立て、目標や行動方針を作る立場です。これに対し、幹部人材は問いに答え、具体的に行動するリーダーの役割を担います。

どちらも会社経営に欠かせない存在ですが、役割と求められるスキルは明確に異なります。

幹部人材は経営人材と一般社員の中間に位置し、該当するのは部長や課長といった役職の人です。

経営人材に必要なスキル・能力は?

経営人材には、判断力・決断力などの求められるスキルがあります。ここでは、経営人材に必要なスキル・能力や求められる理由を解説します。

判断力・決断力

経営人材には、冷静な判断力や決断力が求められます。どのような場面でも物事を客観的に判断し、大きな決断を迫られたときには最善の決断を下せなければいけません。

ビジネスの変化が激しい時代にあって、企業にはこれまで以上に迅速な意思決定が求められます。危機に直面している場合にも冷静な視点を持ち、経営状況が安定しているときにも油断せず、客観的な視点で素早く意思決定できる決断力が求められます。

創造力

経営人材には創造力も欠かせません。価値観が多様化し、変化も速い時代において従来の習慣や既存の考え方に囚われていると、移り変わる世の中のトレンドや価値観に取り残されてしまいます。企業の成長は望めないでしょう。

市場の変化も激しく、常に新しい商品・サービスの開発・アップデートが求められています。他社と差別化し競争を勝ち抜くためにも、経営人材には豊かな創造力が求められるでしょう。

戦略的な意思決定能力

経営人材には、先を見通して戦略的に意思決定できる能力も必要です。変化が激しく将来の予測がつきにくい市場において、新しいニーズを見つける能力が求められます。

今日の市場は、細分化されていることも特徴です。多様化する市場のなかでニーズを見極め、ビジネスチャンスを見出せる観察力や好奇心、先見性の高さなどが必要とされるでしょう。

組織への影響力

経営人材には、組織への影響力も欠かせません。高いコミュニケーション能力を持ち、多様な価値観を持つさまざまな相手と折衝できる柔軟性と適応力があり、組織に影響力を与えられる人材が求められます。

そのためには、ポジティブな思考も必要です。前向きな姿勢で周囲をまとめる能力があれば、危機的な状況にあるときでも乗り越えることができるでしょう。

グローバル能力

ビジネスのグローバル化が進み、多くの企業が海外に向けて事業を拡大しています。グローバル化に対応していくためには、グローバルビジネスへの適応力が求められます。柔軟な視野で海外市場や人材に目を向けることのできる、グローバルな能力が不可欠です。

今後、海外進出を予定している企業では、グローバル能力を持つ人材の育成は欠かせないといえるでしょう。

経営人材を育成するためのポイント

経営人材の育成は、大きく3つステップで行います。

  • 人材を選定する
  • 重要なポジションに就かせ経験を多く積ませる
  • 経営陣からのバックアップを充実させる

それぞれ、詳しくみていきましょう。

人材を選定する

まず、自社にどのような経営人材が必要か、求める人物像を明確にします。漠然とした経営人材を考えるのではなく、経営戦略をもとに、必要なスキル・能力を具体化しましょう。

人物像を明確にしたら、候補者を選定します。選定方法は企業によりさまざまで、各部門の上司から推薦を募る・人事評価の高い人材から選抜するといった方法があげられます。

重要なポジションに就かせ経験を多く積ませる

人材を選定したら、育成計画を策定します。育成方法は、OJTや内部・外部講師による研修などがあり、企業理念や経営戦略からしっかり学ぶためには社内研修が適しています。

まだ経営に携わった経験がない候補者には、経営人材が行う業務や責任などを理解し、経営戦略について体系的に学べる研修が必要です。

経営人材の候補者を成長させるためには、重要なポジションに就かせて実務経験の機会を提供することも大切です。会社全体の業務の把握が必要な経営人材にとっては、実際に実務に就いて学ぶことが欠かせません。そのためには、リーダーシップを発揮できる現場に配置したり、さまざまな部署を横断したりする経験も必要です。

経営陣からのバックアップを充実させる

経営人材の育成には、経営陣の積極的な関与が欠かせません。育成を現場に任せるというスタンスで育成しても、候補者は経営陣の一員になるという意識を持てないでしょう。特に経営者は、自ら率先して育成に関わることが大切です。

経営者や経営陣が常に関心を向け、定期的にコミュニケーションをとることも必要です。実際に経営に関わる人たちと直接交流を持つことで、候補者のモチベーションも高まるでしょう。

経営者や経営陣が人材育成に高い関心を寄せることで、社内の人材育成に対する意識も高まり、人材が成長しやすい環境が作られるでしょう。

三菱商事の経営人材の育成事例

大手総合商社の三菱商事は、経営人材の育成に積極的に取り組んでいる会社です。ここでは、経営人材の代表的な育成事例として三菱商事の事例を紹介します。

人材育成の基本方針

三菱商事では「人材は最大の資産であり、競争力の源泉である」という考えのもとに、「経営マインドをもって事業価値向上にコミットする人材」を育成することを基本方針としています。

さらに中期経営戦略2021において人事制度改革を行い、4つの重点方針を打ち出しました。

  • 社員の自律的成長と会社による成長支援
  • 多様な経験を通じた早期育成
  • 実力主義と適材適所の徹底
  • 経営人材の全社的活用、ふさわしい処遇の実現

この方針のもとに、「現場のプロ育成」「経営実践」「経営人材活用」という3つの段階的な人材育成プログラムを確立しています。

キャリア自律の促進

三菱商事では従業員がやりがいを持って仕事に取り組み、能力を最大限に発揮して継続的に成長できるよう、次のようなキャリア自律の支援を行っています。

  • 成長対話
  • タレントレビュープログラム
  • キャリア自律を促す仕組み

成長対話は従業員の自律的成長を高めることを目的に、年に1回、キャリア開発などに焦点をあてて上司との対話を行う取り組みです。

タレントレビュープログラムでは、成長対話を経て確認した従業員のキャリアへの希望などを共有し、さまざまな視点からキャリア開発を促進しています。

さらに、キャリア自律を促す仕組みでは、自身が挑戦したい組織への異動をサポートする施策や、スキルの習得を提供する施策を推進しています。

人材の早期育成

三菱商事では「現場のプロ育成」「経営実践」のステージにおいて、階層別の人材育成プログラムを設けています。

若手社員向けの研修では、新人研修や、入社1〜3年目までの若手社員を対象にした段階的な2つのプログラムを実施しています。

また、グローバル社会に順応できる人材を育成する「グローバル研修生制度」も設けられており、同社の「入社8年目までに全職員が海外経験を積む」という方針を支えている制度です。

さらに、DXの加速に向け、全社員のIT・デジタルリテラシー向上を目的とした「デジタル人材育成プログラム」も実施しています。

経営人材の全社的活用・ふさわしい処遇の実現

段階的な育成・活用の3番目のステージ「経営人材活用」では、重点方針である「経営人材の全社的活用、ふさわしい処遇の実現」が図られます。経営人材として成長する最終段階です。

経営人材としてふさわしい人材が、適材適所で難易度や重要性の高い経営職務に登用されます。結果責任を問われ、職務と成果にふさわしい処遇体系が実現される段階です。

出典:人材育成・エンゲージメント強化|三菱商事株式会社
構想力と実行力|三菱商事株式会社

自社の未来を担う経営人材を育成しよう

経営人材は、経営の目標などを設定し、企業の意思決定に関わる人材です。企業が成長するためには、全社をあげた経営人材の育成が欠かせません。経営人材には判断力や決断力、創造力などのスキルが求められます。

経営人材の育成には重要なポジションに就かせて経験を積ませるなどの施策が必要で、経営者・経営陣の関与も不可欠です。

自社に必要な経営人材の人物像を明確にし、適切な人材育成計画を策定しましょう。


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