- 更新日 : 2025年10月14日
定款の原本証明が必要になる場面と作成方法
許認可申請などを行なう際に「定款の写しについては、原本証明が必要となります。」という指示が出ている場合があります。定款の原本証明とはどのようなものかを解説し、定款の原本証明が必要になる場面や定款の原本証明の作成方法についても紹介していきます。
定款の原本証明が果たす役割
定款の原本は原則として公証役場と会社でそれぞれ1部ずつ保管することになっています。会社を法人登記するためには公証人によって認証された定款が必要となりますが、公証人が認証した定款は公証役場で原則として20年間保存されることとなっています(公証人施行規則第27条)。
また、会社では本店または支店に備え付け、株主や会社債権者などがいつでも閲覧したり謄本又は抄本の交付の請求をしたりできるようにしておく必要があります(会社法第30条)。
公証役場と会社の本支店で保管されている定款の原本を、提出書類として指定される場面がありますが、保存義務のある定款原本そのものを提出するわけにはいきません。
そこで定款原本をコピーした「定款の写し」に対して「原本証明」を付加することによって、同義であるとしたものが、定款の原本証明の役割です。
定款の原本証明が必要になる場面
行政機関等への書類申請
助成金の申請や許認可申請などで、申請書類と共に定款原本の提出を求められる場合があります。定款の写しを原本証明とセットにして提出するだけでなく、原本と相違ないか受領時に確認する場合があります。
受付窓口に直接申請する場合は、定款原本確認後ただちに返却してもらうことになりますが、郵送によって申請を行なう場合は返信用封筒を同封しなければならない場合があるため、どのように対応すればよいか申請先に確認するようにしましょう。
金融機関との取引
金融機関によりますが、法人口座を開設する場合に定款の提出を求められることがあります。口座開設以外にも、一定金額を超える大口取引を行なう場合や、貸金庫サービス契約時にも「取引時確認」として提出することがあります。
定款は公証人による認証を受けた「原始定款」と、株主総会の特別決議で変更することになった「現行定款」があります。設立当初の定款は株主総会を招集することができないため公証人による認証が必要となりますが、会社設立後は株主総会という会社の意思決定を行なう機関によって変更決議を行なうため公証人の認証は不要となります。
公証人による認証を受けていない「現行定款」も法的な効力は認められていますが、公証人の署名が入った「原始定款」の提出を求められることがあります。
原始定款の提出を求められた場合に備えて、適切に管理するようにしましょう。
税務署への法人設立届出書
会社を設立登記して2か月以内に、本店所在地を管轄する税務署へ「法人設立届出書」を提出しなければなりません(法人税法第148条)。
添付書類として、
1 定款、寄付行為、規則又は規約の写し
2 設立趣意書
3 設立時における貸借対照表
が挙げられており、原則として1部ですが資本金1億円以上の内国普通法人に限っては2部提出する必要があります。
税務署への法人設立届出書の添付書類の場合は、「写し」しか記載されておらず原本証明が必要である旨の記載はないため、原本証明をする必要はありません。
定款の提出を求められた場合であっても、必ずしもすべての定款に原本証明が必要ではないため、十分に確認する必要があります。
定款の原本証明のやり方
定款の原本証明を求められた場合には、原則として「現行定款」が必要になります。前述したように公証人の署名が入った「原始定款」の提出を求められる場合は、その指示に従います。
会社を設立してから一度も定款内容に変更が発生していない場合は「原始定款」が「現行定款」になるため「原始定款」を用意することになります。
それぞれ必要な定款のコピーをすべて作成した後、余白に以下の文言を付け加えます。
平成〇〇年〇月〇日
東京都〇〇区〇〇1-1-1
〇〇株式会社
〇〇〇〇(代表者氏名) 印
申請機関によっては、押印に代えて直筆の署名も認められる場合や製本が必要になる場合があります。上記は原本証明の一般的な方法ですが、注意すべき点が他にもないかどうか申請窓口で確認するとよいでしょう。
電子定款で会社を設立した場合は、公証役場に「同一情報の提供」を請求する必要があります。同一情報の提供とは定款謄本の交付のことであり、電子定款によって作成されたPDFデータをプリントアウトした文章は、電磁的記録に保存されている内容と同一であることになります。
同一情報の提供を請求するには以下の計算式による手数料がかかります。
同一情報の提供手数料:1通700円+(20円×定款ページ数+1枚(認証文))
定款のページ数が5枚の場合は700円+(20円×6枚)=820円となります。
電子定款なら原本証明もスムーズに対応可能
電子定款で会社を設立した場合、原本証明が必要な際は前述のとおり、公証役場に「同一情報の提供」を請求することになりますが、紙の定款より迅速に取得できるメリットがあります。
また電子定款の最大の利点は、デジタルデータとして管理できることです。許認可申請や金融機関との取引で頻繁に原本証明が必要になる企業では、電子定款のバックアップを社内で適切に管理することで、必要時に即座に対応できます。定款変更があった場合も、変更履歴をデジタルで管理できるため、現行定款と原始定款の区別が明確になります。
さらに、電子定款は設立時の印紙代4万円が不要なため、その節約分で将来の原本証明請求費用を十分に賄えます。
まとめ
定款原本そのものの提出が求められた場合に原本証明が必要となりますが、写しで対応可能な場合には、原本証明をする必要はありません。定款の提出が求められた場合に備えて、いつでも取り出せるように保管しておきましょう。
よくある質問
定款の原本証明が果たす役割とは?
定款原本をコピーした「定款の写し」に対して「原本証明」を付加することによって、同義であるとしたものが、定款の原本証明の役割です。詳しくはこちらをご覧ください。
定款の原本証明が必要になる場面は?
行政機関等への書類申請の場面、金融機関との取引の場面、税務署への法人設立届出書の場面などです。詳しくはこちらをご覧ください。
定款の原本証明で必要なものは?
定款の原本証明を求められた場合には、原則として「現行定款」が必要になります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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