• 更新日 : 2023年9月14日

合同会社では給与がなぜ役員報酬になるの?決め方や注意点なども解説

2006年5月に「新会社法」が制定された際、新たに「合同会社」という企業形態が新設されました。資本金1円で設立ができるこの「合同会社」は、設立費用も安く決算公告や役員の重任登記が不要であるなど多くのメリットがあります。今回は、「合同会社」の給与が役員報酬とされる理由や報酬額の決定方法などについて解説します。

合同会社では給与ではなく役員報酬が支払われる理由

合同会社が支払う社員の給与は、ケースによっては税法上の「役員報酬」として取り扱われることがあります。社員に対する給与がなぜ「役員報酬」になるのかを解説しましょう。

合同会社では全員が業務執行社員であり代表社員=役員

合同会社の特徴の一つに、会社設立の際の出資者が全員「社員」であり、かつ「業務執行者(役員)」「代表者」である点が挙げられます。例えば、株式会社であれば出資者(株主)と役員は必ずしも同一である必要はありません。株主であるからといって、必ずしも役員に就任しなければならない、というわけではないのです。

それに対して合同会社の場合、特別に選任した場合を除いて、出資者が全員「業務執行社員」となり、かつ会社を代表する「代表社員」となります。

一人で設立した合同会社でも役員として報酬を受け取る

他の企業形態と同じく、合同会社も最低1名の出資者が必要です。事業主が1人で合同会社を設立する場合、自分自身が出資者となりますので同時に「社員」かつ「代表社員」としての立場を有することになります。

従業員に対する給与と異なり、会社の役員に対する給与は税法上「役員報酬」となりますので事業主は会社から「役員報酬」を受け取ることになるのです。

合同会社の役員報酬の決め方は?

合同会社も他の企業形態と同じく、手続きに従って役員報酬を支給しなければなりません。次に役員報酬の決定方法について解説します。

定款で定めるか、毎年開催する定時社員総会で決定する

合同会社で役員報酬を決定する方法は2つあります。

1.定款で定める方法

会社の定款のなかで、役員報酬の額をあらかじめ定めておく方法です。社員各人の報酬額についてはさらに2つの決定方法があります。

  • 役員報酬の総額を定めて、それを各社員で分配する方法
  • 個々の役員報酬額を定める方法

2.定時社員総会で決定する方法

一般的に法人は年に1度、法人税等の確定申告を行いますが、申告書提出前の「決算日以降2ヶ月以内」に社員総会(株主総会)を開催します。これを「定時株主総会」と呼びます。定時株主総会では、決算の承認議事などが行われますが、そのなかで翌期の「役員報酬額」を決定するという方法です。

定期同額給与が原則

給与は労働の対価として受け取るものですが、「給与」と「役員報酬」では決定的な違いがあります。それが「役員報酬は定期同額でなければならない」という点です。「定期同額給与」とは法人税法で定める役員報酬に対する規定であり、役員報酬は「一度決定した金額を」「定期的に」「同額で」支給しなければならないとしています。

例えば、前章で解説した定時社員総会で役員報酬を決定した場合、総会で決定した金額を毎月定期的に同額で支給しなければなりません。途中で支給額を増額したような場合、その支給額は「定期同額給与」に該当しなくなり、法人税の計算上、超過した部分については損金不算入となります。

諸手当を報酬に上乗せできない

社員の給与に基本給の他、役職手当や家族手当といった「諸手当」を付けることがあります。なかには皆勤手当のように毎月変動する手当もありますが、合同会社の場合、この諸手当を報酬に上乗せできません。

前章で解説したとおり、役員報酬は定期同額でなければなりません。したがって、残業手当や皆勤手当といった諸手当を毎月の役員報酬に上乗せできないのです。

合同会社の役員報酬、注意点は?

以上のことを踏まえ、合同会社の役員報酬を決定する際に注意すべき点についてまとめてみましょう。

途中変更や賞与の支給は不可

「定期同額」のところでも触れましたが、役員報酬は「定めた金額を毎期定額で支給」しなければなりません。したがって、期中において報酬額を増額あるいは減額することはNGです。

報酬額を決定する際には、翌期の働きぶりや家庭事情などを予測して役員報酬を決定するのが良いでしょう。また「事前確定届出給与」の届出をしている場合を除き、役員に対して支給する賞与も「定期同額給与」には該当しませんので注意が必要です。

報酬額決定や金額変更の議事録を残しておくほうが良い

役員報酬を定款で定めるにせよ、定時社員総会で決定するにせよ、議事録の作成は必ず行ったほうが良いでしょう。役員報酬は、社員全員の合意のもと決定されるものであり、そのためには「いつ」「誰が出席し」「いくらに決定した」という記録が必要になります。

記録がなければ後にトラブルになることも予想されます。社員同士の話し合いの内容を記録したものが「議事録」であり、報酬額を決定や変更した場合にはその都度作成しておきましょう。

役員報酬は経費にできるため節税も可能

役員報酬には「定期同額」という縛りがありますが、定期同額の要件さえ満たしていれば給与と同じく、支給した全額を法人の経費(損金)とできます。

経費が増えますので利益が少なくなり、結果として法人税額が少なくなりますが、「過大報酬」には注意が必要です。役員報酬が経費にできるからといって、社員が事業規模等を考慮せず多額の役員報酬を支給すると問題になります。

「過大報酬」とは、支給額が同業他社の役員報酬や事業規模、職務内容等を勘案した適正な役員報酬額を超えている状態を指します。過大報酬とならない、明確な支給ラインというのはありませんが、役員報酬を取りすぎないように注意しましょう。

会社設立後は早めに報酬額の決定を

会社の設立第一期目はまだ、役員報酬の金額が決定されていない状態です。事業を開始したばかりで利益が読みにくい状況であるため、役員報酬を決定しづらい面もあります。

しかし、先にも述べた通り役員報酬は1ヶ月以内に支給する定期同額である必要があります。会社設立後は早めに役員報酬を決定するようにしましょう。

経営を圧迫させないためにも報酬額の決定は慎重に

役員報酬は確かに法人の経費になりますが、過大すぎると利益が少なくなります。また、過大報酬を実際に支給すれば会社の資金繰りにも必ず影響が出てきます。合同会社の経営を健全なものとするためにも、役員報酬の決定は慎重に行いましょう。

よくある質問

合同会社では給与ではなく役員報酬が支払われる理由は?

合同会社の仕組みとして、特別に選任した場合を除いて、出資者が全員「業務執行社員」となり、かつ会社を代表する「代表社員」となるためです。詳しくはこちらをご覧ください。

営業が不調で経営悪化、来月から役員報酬を0円にしたいがOK?

著しい業績の悪化や病気による執務不能など、明確な理由がある場合に限り減額することができます。詳しくはこちらをご覧ください。


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