- 更新日 : 2021年2月22日
森下千里の起業に密着! イチからわかる会社設立(3)
タレントとして活躍する森下千里さんの起業を追いながら、会社設立のプロセスを明らかに…前回、G.S.ブレインズ税理士法人さんの事務所を司法書士法人オネストさんの押田先生と共に訪れ、ヒアリングシートを元に起業に必要な情報をひとつひとつ整理していきました。
そして、その場では決められなかった会社名をどうするか、代表者の住所をどうするかという宿題を持ち帰りました。
その後、会社の定款を作っていき様々なことが具体的に決まってきた2週間後、(今度は株式会社マネーフォワードのオフィスに)再び集まりました。
現状の定款の確認
押田:先日の打ち合わせを受けて作りました現状の定款になります。
森下:やったー!
定 款
第1章 総 則
(商号)
第 1 条 当会社は、@@@@株式会社と称し、英文では・・・・・と表記する。
押田:本日はこちらの定款を元に事業目的の確認、それと前回宿題になっておりました会社名や代表者・会社の住所をどうするかなどを確認できればと思います。会社名の方は決まりましたでしょうか?
森下:決まりました!株式会社は後株にしたいと思います。普段はInc.でもいいのですか?
押田:そうですね。ホームページや名刺などでは、両方併記している会社さんや英文しか載せていない会社さんもいらっしゃいます。ただ役所に提出する正式な書類などは株式会社という言葉が入っていないといけません。
森下:そうなんですね。では後株で決まりでお願いします。Inc.はどこかに表記するのですか?
押田:定款上に英文表記を入れることはできますが、入れないと使えないというわけではありません。ですので、英文表記を入れても入れなくても問題はありません。
森下:じゃあ定款には英語表記はナシで大丈夫です。
押田:ではこちらの会社名で会社の印鑑を作ってください。通常は3本セットです。
森下: 周りに会社印は2本でもいいという人がいたのですが?
押田:法務局に登録する会社の実印と銀行で使う銀行印を兼ねてしまう人もいます。あとは実印と銀行印を作って角印を作らない方もいます。
森下:でも3本あったほうがいいのですか?
木村:はい。それぞれ使う目的と頻度が違いますので3本を使い分けた方がいいですね。実印はとても重要な印鑑ですから滅多に使わないです。銀行印も印鑑と通帳があればお金を下ろせるものですから別々に保管された方が良いです。日頃使う角印も認め印としてあった方が便利です。
森下:わかりました。3本セットを買います!
会社の事業目的は?
※一部抜粋
(目的)
第 2 条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。
1.飲食店の経営及びコンサルティング
2.各種イベントの企画、開催、運営、コンサルティング及びプロデュース
3.ピラティス、ヨガ等のパーソナルトレーナーの派遣及びスタジオの経営
4.化粧品、サプリメント、美容器具、スポーツ用品、衣料、衣料雑貨品、装身具、貴金属、日用品雑貨その他の商品の企画、開発、制作、輸出入及び販売
5.書籍、写真集、雑誌その他の出版物の企画、制作、執筆、デザイン、編集及び販売
6.音楽、映画、映像作品、録音、録音物の企画、制作、販売及び配信事業
押田:では続いて「事業目的」です。前回の打ち合わせを受けて、このような形になっています。他にこのような事業を入れたいという希望はございますか?あとは表記する順番の確認もお願いします。
森下:順番は関係あるんですか?
押田:通常は上の方にメインとなる事業を持ってくることが多いです。
森下:飲食店はやるとしてもかなり先のことになると思うので、順番としては後の方へ繰り下げてください。2番の「各種イベント企画」ですが、今ゴルフのイベントに関わっているのですが、「ゴルフ」または「スポーツ」と書かなくても大丈夫ですか?
押田:他にもいろいろなイベントをやると思いますので「各種」という形で表記しています。
森下:では特に「ゴルフ」と入れなくても大丈夫なんですね。あと「イベント」というと1回きりのものというイメージがありますが、ずっと何年も続いていく仕事になりそうなのですが、こちらは大丈夫でしょうか?
押田:問題ありませんが、では広く類似のものを含むように「イベント等」という表記にしましょう。
森下:そんなずるい書き方でもいいんですか!?
押田:その点も特に問題ありません。では順番も繰り上げて「各種イベント等」という表記にしておきましょう。
森下:ありがとうございます!
4.化粧品、サプリメント、美容器具、スポーツ用品、衣料、衣料雑貨品、装身具、貴金属、日用品雑貨その他の商品の企画、開発、制作、輸出入及び販売
森下:4の「化粧品、スポーツ用品、輸入及び販売」などというのは、それ以外のもの各種も大丈夫ということですか?
押田:はい。例示の最後に「その他」と書いてありますので。
森下:出ました!魔法の言葉「その他」!
木村:はい(笑)「その他」や「等」とありますので問題ありません。
森下:ありがとうございます!
経営コンサルティング業務
森下:他社の定款で見たのですが「経営コンサルティング業務」とひとつ入れただけで様々な業種のアドバイス業務なども入るのですか?
押田:はい。かなり広くとれますので、念のため入れておきましょうか?
森下:お願いします。あと「eコマースのサイトの運営」なども書かなければいけませんか?もしもネットで物を売ることがあったとしたら…
押田:それを書く場合もありますが、販売は販売ですので、店舗販売、通信販売、ネット販売、広く含めて全部を「販売」とまとめることもあります。特にこの会社はeコマースでやっていきますというのを重視したい会社さんは表記することが多いです。
森下:でしたら、書かなくても大丈夫ですね!
株式や不動産は?
森下:あと会社で不動産を買うことってできますか?
木村:できます。不動産を買って自分達で使うのなら定款に入れなくてもいいです。不動産を買って貸すのであれば賃貸業になるので事業目的にいれた方が良いですね。
森下:会社で買って、自分達が寮にしたり住んだりするのも問題ないのですか?
木村:もちろんです。ビジネスではないので、その場合は定款に書く必要はありません。
森下:会社で株を買う場合はどうなりますか?
押田:資産運用のために個人で会社をお持ちの方ですと、有価証券の取得・保有や、管理・運用・売買などで利益が上がれば、それは会社の利益になるので書いている方はいます。
森下:書いてない場合に株を買っても大丈夫なのですか?
押田:買えないわけではありませんが、会社として利益を上げていくのであれば書いておいた方が良いです。
豊田:ただ金融機関からお金を借りる場合、事業目的に入っていると貸したお金で株を買われてしまうのではないかと思われて断られる可能性もあります。例えば本業のイベント企画の運転資金のためにお金を借りるのに、定款に有価証券の売買と書いてあると、そちらにお金が流れてしまうと思われかねないという懸念はあります。
押田:過去にFXといった内容を書いていたら、融資するにあたって金融機関から消すように言われたという事例もあります。
森下:そうなんですね。個人で株を買う場合と会社で株を買う場合の違いってありますか?
木村:会社で株を買った場合、他の事業の利益と全部一緒の売上になりますので、プラスが出れば他のマイナス分を相殺できます。逆にもし株でマイナスが出てしまっても他がプラスでしたら、その分を相殺できます。個人の場合ではそうはいきません。株の損益は、株の損益だけでしか通算できません。
森下:だから会社で買うと良いことがあるんですね!
木村:ただ利益が出た場合の税率は個人の方が安いことがあるので、どちらが有利かというのは難しい問題です。
森下:世の中そんなにうまくいっていないということですよね!会社で株を運用して利益を上げていくというわけではないので、事業目的に入れるのはやめておきます。
木村:わかりました。
年末調整と確定申告は?
森下:会社を設立したあとの話なのですが、今後は会社の決算とは別に個人でも確定申告しなければならないのでしょうか?
木村:森下さん、個人の収入がお給料だけでしたら特に必要ありません。
森下:年末調整も不要ですか?
木村:年末調整は必要です。通常は年末調整だけで良いのですが、基本的にお給料だけが収入で、そのお給料が2,000万円超の場合は、確定申告が必要になります。
森下:2,000万年以下だったら確定申告しなくていいのですか?
木村:はい、年末調整だけで問題ありません。
森下:でも代表取締役や役員はサラリーマンではないのでは?
木村:代表取締役や役員はサラリーマンと同じです。収入がお給料だけですので、年末調整のみで済みます。
森下:社長も固定給ってことですよね?
木村:そうです。社長さんは皆さん、固定給をもらっているサラリーマンと同じような考え方になります。確かに元々、個人事業主をやられていた方が会社を作った時に一番混乱するのがこの部分になります。今まで残ったお金はすべて自分のお金として自由に使えていたのが、会社のお金になってしまうというのがこれまでとの大きな違いです。
森下:確かにそうですね!今後はしっかりと分けていきます。
会社の株は?
第2章 株 式
(発行可能株式総数)
第 5 条 当会社の発行可能株式総数は、1,000株とする。(株式の譲渡制限)
第 6 条 当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない。(特定の株主との合意による自己株式の取得)
第 7 条 当会社は、株主総会の決議によって特定の株主との合意によりその有する株式の全部又は一部を取得することができる。
2 前項の場合、当会社は会社法第160条第2項及び同条第3項の規定を適用しないものとする。(株券の不発行)
第 8 条 当会社は、株式に係る株券を発行しない。
森下:「自分で増資すること」と「株券を発行はしない」というのは、一緒ではないということですよね?
押田:株式を表す株券という紙(証券)を発行しないということです。
森下:あ、本当の株券のことを言っているんですか?
押田:そうです。今は法令上も発行しないことが原則で、外部から出資する人も株券をわざわざ出してくださいという方はほとんどいません。
森下:「発行可能株式総数1,000株」になっていますが、増資する場合はどうなるのですか?
押田:最初に1株1万円で300株、300万円分を発行することになっています。一度定款上で上限を決める必要があるため、仮で1,000株としています。これは将来的な増資の可能性などを踏まえて枠を決めます。昔は上限が4倍というのがあったのですが6条に書かれている譲渡するのに会社の承認が必要という譲渡制限規定がありますので今は上限は何株でもかまいません。
森下:1,000株は妥当なところなのですか?
押田:仮に1,000株ということにしたのですが、数年以内に自分でお金をこれぐらい入れたいとか、誰かから出資を入れてもらう話が来ているといったお話があれば、もう少し多めに枠をとっておきます。
森下:仮に300株300万円でスタートして、どこかで銀行から300万円で融資してもらったら株も600株になるということですか?
木村:融資と株は全く別の話です。会社の株は、森下さんと同じように肩を並べて権利を持つ、株主になりたいという人だけが持つものです。
森下:銀行や誰かに融資はしてもらうことと、株式を発行して出資を受けるということは全く別物なのですね。
押田:株式を発行して出資を受けるということは、森下さんと同じ株主の立場になります。同じ立場になったあとは、出資額の割合で会社の支配権が決まります。増資としてお金を受けることは、会社の支配権をその割合で持たせてしまうことになります。当然、株主として、会社の財務状況とか見られることになります。
森下:わかりました。融資はいいけど株はあげないよと言えばいいということですね。
森下:仮に今300株として、上限が1,000株なので残りの700株を誰かに渡してしまったら、割合が多い方に会社を持って行かれてしまうということですよね?
木村:そうです。
森下:恐ろしいですね!
任期と事業年度の確認
(任期)
第 22 条 取締役の任期は、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
2 補欠又は増員により選任された取締役の任期は、前任者又は他の在任取締役の任期の残存期間と同一とする。~~~~~~~~~
(事業年度)
第 25 条 当会社の事業年度は、毎年3月1日から翌年2月末日までとする。
押田:あと任期はこちらでよろしいでしょうか?
森下:はい、10年でお願いします。
押田:もし外部から役員を入れるようなことがありましたら、そのタイミングで変更いたしましょう。
森下:わかりました。
押田:それと事業年度はいかがいたしましょうか?3月設立を想定するのでしたら、一番長く一期目を取る場合は2月末までとなります。
森下:3月決算や9月決算の会社さんが多いイメージがありますけど?
木村:3月、12月が多いですね。
森下:多いということは2月末より3月末にした方が良いですか?
木村:いえ2月末決算だからといって何か不利があるということは基本的にありません。日本人の感覚として年度の変わり目となる3月というのが多いのでしょう。
森下:仮に3月末にしたらどうなるのですか?
押田:3月に設立して3月決算ですので、いきなり決算をやらなければならなくなってしまいます。
森下:それは大変ですね。2月決算というのは特に悪くないのですか?
木村:季節変動で2月に一番お金が減ってしまう時期とかですとその後の納税などを考えると少し問題ですが、そういうことがないのでしたら全く問題ありません。
森下:でしたら1期目を長く取って2月決算にします。
今後オフィスを借りる?
森下:あの、もし今後オフィスを借りようと思ったら、会社の名前で物件を借りられますよね?
木村:はい、借りられます。
森下:個人で不動産を借りる時は連帯保証人を立てますよね。会社で借りる時はどうなるのですか?
木村:自分が連帯保証人になることを求められることもあります。
森下:え?連帯保証人が自分?
押田:はい、法人借主代表として森下さん個人で連帯保証人になるということです。
森下:あ、それでいいんですね!
押田:はい、会社と個人は別の主体ですので。第三者が必要になることはあまりありません。
森下:なるほど、ありがとうございます。すごく勉強になります!
今後、必要なもの「印鑑証明書」
押田:今後ですが個人の印鑑証明書が1通必要になります。それとその印鑑(実印)でご捺印いただく書類がございますのでその印鑑をお持ちください。
森下わかりました!
押田:あとは先ほども話に出ました会社のご実印ですね。
森下:はい、すぐ3本セットを作って用意します!
押田:よろしくお願いします。
そして今回の打ち合わせを受けて会社の定款を修正。そして1週間後、最後の打ち合わせとしてG.S.ブレインズ税理士法人さんの事務所に集まりました。
押田:定款は無事完成しましたので、本日はご署名・捺印をいただきたいものがございます。電子定款を作成して公証役場で認証手続きを受けてきますのでその「電子定款作成・認証委任状」、それと代表取締役に就任されますので「就任承諾書」です。
森下:うれしいです!(それぞれの書類に署名)
押田:会社の実印として登録する印鑑でのご捺印をお願いします。これまでにこの印鑑を押されたことは?
森下:ないです。初めてです。
押田:では初めてのご捺印お願いします。
森下:(それぞれの書類に捺印)いいですね〜!
押田:あと会社も個人と同じで印鑑証明書を取る時に必要な印鑑カードを代理で交付申請してきますので、その交付申請書に捺印をお願いします。
森下:わかりました!(交付申請書に捺印)
押田:あとは印鑑証明書をお持ちいただけましたか?
森下:はい!
押田:そちらをお預かりいたします。
■必要になる書類:「電子定款作成・認証委任状」、「登記申請委任状」、「就任承諾書」「出資の払込に関する証明書」「印鑑届書」、「印鑑カード交付申請書」
押田:明日、公証役場に行って認証手続きを受けてきますので、明日以降の日付で出資金の記録をつけていただければと思います。
森下:口座に振り込めばいいんですよね?
押田:森下さんの個人名義の口座にその金額を振り込んでください。一度、出して入れても大丈夫です。その通帳の表紙と入金した部分の写しが必要となります。出資金とは無関係の行は黒塗りしていただければと思います。
森下:わかりました!
押田:会社設立の準備は以上になります。後は、法務局で設立登記の申請を行った日が会社設立日となります。
森下:ついに会社設立ですね!私、社長になっちゃいます(笑)イチから全部教えていただき、ありがとうございました!
木村:ここがスタートですのでがんばってください。
森下:がんばります!
3回の打ち合わせを経て、ついに会社設立となりました!会社名、会社の住所などを決め、重要な事業目的の内容を細かく精査。
名前が決まれば会社印も作り、様々な書類に捺印。起業は初めてのことだらけで戸惑うのも当然かもしれませんが、今回のように相談しながら順を追って進めていけば決して難しいものではありません。
昔より会社設立が簡単になった今の時代ですから、何かやりたいことがあるという方は会社を設立して社長として事業に取り組んでいくのも大きなチャンスになることでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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