- 更新日 : 2023年8月21日
経営改善の基礎知識!流れや支援制度・経営改善計画書のテンプレも紹介
業績が悪化している場合、早急かつ適切な経営改善が必要です。また、業績が良い場合でも経営改善を継続すれば利益が増加し、会社の成長につながるでしょう。しかし、そもそも経営改善とは何なのでしょうか?何から始めればいいのでしょうか?
この記事では中小企業の経営者向けに経営改善の基礎知識や流れ、国の支援制度などをご紹介します。
目次
経営改善とは?
経営改善とは一言でいえば会社の業績を改善すること、もっと平たくいえば「会社が儲かるようにする」ことです。会社が儲かるようになるために必要なのは「売上高を上げる」か「利益率を上げる」のいずれかです。当たり前のことで、言うのは簡単ですが、これらを実現するのは容易ではありません。
売上や利益が上がっていない要因を分析してそれを改善する方法を計画・実行し、その結果を検証してさらに改善していくというPDCAを回していくことで、会社の業績が徐々に良くなっていきます。
経営改善の種類
経営改善には大きく「財務面の経営改善」「戦略面の経営改善」「管理面の経営改善」の3つに分けられます。これらを行うことで、売上や利益が上がりやすい会社に生まれ変われます。
なお、会社が伸び悩んでいる要因は「財務状況が悪いから」「戦略が間違っているから」というように一つだけではない場合もあります。特に業績が悪化している場合、「もともと利益率が低く、今までは何とかなっていたけど急激に売上が下がって利益が出なくなってしまった」など、複数の要因が絡み合っている可能性も大きいといえます。経営改善を行う際には財務面、戦略面、管理面の全てを見直しましょう。
財務面の経営改善
業績が悪化している要因として利益が上がっていないということが考えられます。利益とは収益(売上などの収入)から費用(事業活動に伴う出費)を差し引いた金額です。特にそれなりに売上があるのにもかかわらず利益が出ていない場合や赤字に陥っている場合は、経費や仕入などの費用がかかりすぎているという要因が考えられ、改善が必要となります。
まずは財務諸表から会社の財務状況を把握して状況が悪化している要因を考え、特にヒントとなるのはキャッシュフロー(お金の流れ)を把握します。そして「どこでお金が出ていってしまっているのか」を突き止めましょう。
課題が見えてきたらそれを改善する方法を模索します。たとえば仕入原価が高いのであれば、材料を別の安いものに切り替える、仕入先を変えるなどの方法があります。他にも賃料や光熱費などの経費を削減する、融資の返済条件を変更して支払利息を下げるなどの対策が考えられるでしょう。
こうした改善を積み重ねることで、会社が儲かりやすい体質に生まれ変わります。
戦略面の経営改善
会社が儲かるためには出ていくお金を減らすだけでなく、入ってくるお金、つまり売上を増やす必要があります。戦略面の経営改善とは「いかに売上を伸ばすか」を考えることです。
こちらも営業や集客の方法を見直す、新しい事業や市場に参入する、新商品を開発する、既存商品を改良するなど、さまざまな方法があります。
戦略面での経営改善を行う際にはSWOT分析がよく用いられます。Strength(自社の強み)、Weakness(自社の弱み)、Opportunity(機会=自社や製品・サービスに良い影響を与える外部環境。社会情勢やトレンドの変化など)、Threat(脅威=自社や製品・サービスに悪い影響を与える外部環境。競合状況など)を洗い出し、それらに基づいて成長戦略を策定します。
管理面の経営改善
業績を回復させるためには「ヒト・モノ・カネ」の管理改善も重要です。たとえば組織改編や人材の採用、教育などが挙げられます。従業員一人ひとり、あるいは組織全体のパフォーマンスを上げることで、売上の増加や生産性の向上につながります。
管理面での改善で重要なのはKPI(重要業績評価指標)を定め、定期的に評価しながら改善に取り組むことです。売上高、顧客満足度、生産能力、あるいは従業員の労働時間や離職率など、さまざまな指標を用いて評価することができます。
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経営改善の流れ
経営改善を行う際の3つのアプローチについてご紹介しました。いずれにおいてもおおむね流れは共通しています。ここからは中小企業庁が出している『収益力改善支援に関する実務指針』をもとに、経営改善の流れについてご紹介します。
経営課題の明確化
まずは自社にどのような課題が発生しているのかを明確にしましょう。経営課題は一つとは限りません。むしろ前述のとおり複数の要因が絡み合って業績が悪化しているケースが一般的です。
会社が抱える課題は短期的に改善できるものがあれば、中長期的に取り組む必要があります。優先順位を定めることが重要です。
課題解決策の検討
経営課題が見つかったら、次はそれらを解決するための方法を検討します。以下のポイントが重要です。
- 課題に対して市場の変化やビジネスチャンス・リスクなどの外部環境や自社の強み・弱みを踏まえて解決策を検討する
- 経営課題の優先順位やスケジュール、資源配分を踏まえて、限られたリソースの中で実行可能な改善策を考える
- 担当者や管理責任者を明確にし、進捗状況を定期的に確認する機会を設け、場合によっては組織改編も検討する
アクションプランの策定
洗い出した課題およびその解決策に基づいて、経営者や従業員が具体的に実行できる行動計画を作成します。以下のような視点を持って策定しましょう。
- 担当者の意見も踏まえながら、経営者と従業員双方が納得できるプランを策定する
- アクションプランを実施する責任者、取り組みの内容や方法、スケジュールについて具体的かつ実行可能な取り組みを検討すると、進捗状況が確認しやすいようKPIを設定する
- 取り組みによってどれだけ収益につながったか?KPIなどの重要業績評価指標が改善されたか?を明確な数値にする
- PDCAサイクルを回すために、経営者と従業員が状況を確認できるようモニタリングを実施し、そのスケジュールについても決めておく
数値計画策定
計画を実行したとしても、その効果が見えなければ、根本的な経営改善にはなかなか結びつきにくいといえます。以下のようなポイントを参考に売上高や原価、費用などの数値計画を立てましょう。なお数値の設定にあたっては、社会情勢や市況の変動によって不利な状況になることも想定することが重要です。
資金繰りの検討
運転資金の不足を回避しても資金に不足があった場合、早急な対策を行う必要があります。そのためにはキャッシュフローを分析し、今後の収支を予測することが大切です。以下のようなポイントを踏まえて以下のことを考えましょう。
以上を踏まえて月次の資金収支を計算して、運転資金の不足が予想される場合は対応策を検討する
金融支援内容の検討
金融支援を受ける際には前項までの内容を踏まえて、自社の財務状況や収支、キャッシュフローや金融支援が必要な理由を理解した上で、取引金融機関に支援が必要であることを報告し、支援の内容を協議します。また、借入金における返済計画の実現性や他の金融機関との公平性を考慮した上で金融機関と情報を密に共有し、金融支援の必要性や返済計画などに対して理解を求めていくことが大切です。
中小企業庁の経営改善の支援制度
中小企業の育成や発展を支援する中小企業庁では、経営改善のさまざまな支援策を用意していて、経営改善策の策定サポートや資金援助を受けることが可能です。資金繰りに困った場合や良い改善案が策定できない場合は、こうした制度の利用も検討してみましょう。
ここからは「経営改善計画策定支援」「早期経営改善計画策定支援」「収益力改善支援」という3つの支援制度についてご紹介します。
参考:中小企業活性化協議会(収益力改善・再生支援・再チャレンジ支援)|中小企業庁
経営改善計画策定支援
経営改善計画策定支援は、またの名を「405事業」とも呼ばれます。コロナ禍の影響による借入金の返済負担といった増加などの財務上の問題を抱えており、かつ経営改善計画を策定することが難しい中小企業の経営者向けの支援制度です。国が認めた専門家(税理士など)の支援を受けながら経営改善計画を策定した上で金融機関への返済条件等を変更する場合、専門家に対する支払い費用(報酬など)の2/3(上限300万円)を国が負担します。
早期経営改善計画策定支援
早期経営改善計画策定支援とは、別名「ポストコロナ持続的発展計画事業」のことです。こちらもコロナ禍の影響によって資金繰りが悪化した中小企業の経営者向けの制度です。国が認定した税理士などの専門家の支援を受けて資金繰り計画やビジネスモデル俯瞰(ふかん)図やアクションプランなどの経営改善計画を策定する際に、最大20万円を上限に費用の2/3を国が補助してくれます。
収益力改善支援
経営難に陥るおそれがある中小企業の経営者を対象とした制度です。中小企業活性化協議会が1~3年間の収益力改善計画(収益力改善アクションプラン+簡易な収支・資金繰り計画)の作成を支援し、定期的なモニタリングや場合によっては他の支援策への移行などをサポートをしてもらえます。税理士などの専門家にこれらの業務を依頼する場合は報酬が必要になりますが、本制度を利用して中小企業活性化協議会に依頼した場合は無料です。
経営改善は早めかつ具体的に!場合によっては第三者に頼ろう
今回は経営改善の基本的な考え方や種類、流れについてご紹介しました。経営改善の必要性を感じた時点で、業績がかなり悪化している恐れもあります。なるべく早期に取り組み、かつ具体的なアクションプランや目標を設定して実行に移しましょう。
また、国ではさまざまな支援制度を用意しています。ご自身で経営改善が難しいと感じた場合は、制度の利用も検討されることをおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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