- 作成日 : 2025年1月23日
本屋経営は難しい?政府の書店振興プロジェクトや経営アイデアまとめ
本屋の経営は難しいといわれています。売れる・儲かる本屋を経営するためには、本屋の経営難の要因を理解し、必要に応じて柔軟な経営アイデアを取り入れることが大切です。
この記事では、本屋の経営が厳しいといわれる理由や政府による書店振興プロジェクト、売上アップにつながる経営アイデアの具体例などを紹介します。
目次
本屋の経営はなぜ厳しいといわれるのか?
一般的に、本屋の経営は厳しいといわれています。なぜ、そのように考えられているのでしょうか。
本屋の経営が厳しいとされる代表的な理由について解説します。
書店数・販売額の減少
本屋の経営が厳しいといわれる理由のひとつに、書店数や書籍・雑誌販売額の減少が挙げられます。
書店の数は、2014~2024年までの10年間で約3分の2に減少しました。一般社団法人日本出版インフラセンター調べでは、2014年3月時点で15,621だった書店登録数が、2024年3月時点には10,927まで減少しています。
1996 年のピーク時には2兆6,564億円だった書籍・雑誌販売額は、2023年に推定1兆5,963億円(約4割減)となりました。
これらの数字には、書店経営の難しさが現れているといえるでしょう。
参考:一般社団法人日本出版インフラセンター 書店マスタ管理センター、日本図書館協会 書店・図書館等の連携による読書活動の推進について ~書店・図書館等関係者における対話のまとめ~
ネット書店や電子書籍の普及
本屋がつぶれる理由のひとつとして、ネット書店や電子書籍の普及が関係していると考えられています。
ネット書店や電子書籍の普及による影響は雑誌販売金額に特に大きく現れており、2017年にはピーク期(1996年:1兆5,633億円)の3分の1程度となる6,548億円まで落ち込みました。
かつての日本では、雑誌販売が出版市場を牽引していました。しかしインターネットやスマートフォンの普及にともなって急激に市場が縮小したことにより、雑誌販売を中心とした従来型の書店経営に打撃を与える結果になったと見られています。
参考:書店・図書館等関係者における対話の場 書店・図書館等の連携による読書活動の推進について~書店・図書館等関係者における対話のまとめ~
粗利率が低め
粗利率が低めである点も、書店経営の難易度を上げる原因として指摘されています。
日本の出版社は書店との契約に基づき全国一律の価格で本を販売できることから、粗利率が固定化されます。そのため、たとえ経営コストが上がったとしても、書店側は小売価格にコストを上乗せできません。
また、売れ残った本を書店が出版社に返品できる「委託配本制度」では、出版社が在庫リスクを抱えるため、本1冊あたりの粗利率の書店取り分は22%程度に抑えられています。
2024年に開始した本屋を活性化させる政府のプロジェクト
街中にある書店の新たな支援策を検討するために、経済産業省は2024年3月に「書店振興プロジェクトチーム」を発足させました。
書店関係者との車座対話などを通じてヒアリングを行い、2024年10月には「関係者から指摘された書店活性化のための課題(案)」を公表のうえ、パブリックコメントを実施しました。
2024年末現在では、書店が活用できる資料として「書店経営者向け支援施策活用ガイド」「全国書店ヒアリングでの声」を公開しています。
本屋の経営を検討している場合、今後のプロジェクトの動向に注目しておくとよいでしょう。
参考:経済産業省 「関係者から指摘された書店活性化のための課題(案)」を公表します
売れる本屋の経営アイデア5選
売れる・儲かる本屋を経営するために工夫を凝らすことは、非常に大切です。
ここでは、参考にしたい経営アイデアを5つピックアップして紹介します。
①ネット販売やSNS連携を活用する
売れる本屋の経営アイデアの1つめは、ネット販売やSNS連携の活用です。
近年、書店による出版物販売額は落ち込んでいる一方、ネット販売額は増加傾向にあります。日販ストアソリューション課「出版物販売額の実態 2023」によると、ネットによる出版物販売額は2022年度2,872億円で、2012年度の1,446億円から2倍に増加している状況です。
ネット販売と組み合わせた、SNS連携による集客も有効です。書店公式LINEやX、InstagramなどのSNSを活用して、イベント開催情報などを発信するとよいでしょう。
参考:全国書店ヒアリングでの声
②カフェなどを併設する
2つめの経営アイデアは、本屋以外の機能もプラスした事業展開です。たとえば、読書を楽しめる「ブックカフェ」や「泊まれる本屋」などが挙げられます。
顧客の滞在時間を延ばし、満足度を高めることで、売上向上を狙えるでしょう。
③雑貨・ステーショナリーなども販売する
店のコンセプトに沿った雑貨やステーショナリー、CD・DVD、など、本以外のアイテムをあわせて取り扱う方法もあります。
本よりも利幅が大きいアイテムを販売することで、さらなる売上アップを目指せるでしょう。
④イベントや著者のサイン会を開催する
作家によるトークイベントやサイン会、朗読会、ワークショップ、セミナーなどを開催して集客し、店舗を盛り上げる方法もあります。
地域住民の困りごとやニーズに寄り添ったイベントを実施することで、地域コミュニティとしての役割を果たせるメリットもあります。
⑤空間づくりにこだわる
以下のように趣向を凝らした店舗空間が話題性を高め、集客につながることもあります。
- 古民家を活用する
- コンセプトに沿った個性的な内装デザインを施す
- 地元クリエイターの作品を集めたギャラリーを併設する
顧客にとって居心地のよい場所を提供して満足度を高められれば、売上アップを期待できるでしょう。
本屋を経営する方法4つのパターン
本屋経営の代表的な方法は、以下の4つです。
- 実店舗で本屋を経営
- ネットショップで本屋を経営
- 実店舗とネットショップの併用
- フランチャイズで本屋を経営
経営パターンごとのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
実店舗で本屋を経営
1つめは、実店舗を構えて本屋を経営する方法です。実店舗による本屋経営には、以下のようなメリットがあります。
- 直接中身を確認した本がその場で手に入るため、顧客満足度が高まりやすい
- 陳列棚に並ぶほかの本も、目的の本とあわせて購入してもらえる可能性がある
- カフェの併設など、本屋+αのビジネス展開も可能
ネットショップで本屋を経営
2つめは、実店舗は構えず、オンラインショップで本屋を経営する方法です。ネットショップによる本屋経営には、以下のようなメリットがあります。
- 実店舗の経営に必要なテナント料・備品購入費などの経費を抑えられる
- 全国の消費者をターゲットに、24時間365日営業できる
- 宅配サービスを利用できるため、顧客がまとめ買いをしやすい
実店舗とネットショップの併用
3つめは、実店舗とネットショップを連携させて本屋を経営する方法です。実店舗とネットショップの併用による本屋経営には、以下のようなメリットがあります。
- 実店舗とネットショップ双方のメリットを享受できる
- 紙の書籍と電子書籍を併用する「ハイブリッド読者」を取り込める可能性がある
フランチャイズで本屋を経営
4つめは、フランチャイズに加盟して本屋を経営する方法です。フランチャイズによる本屋経営には、以下のようなメリットがあります。
- 顧客データを集めて売れ筋や傾向を把握しやすい
- 本部に大規模な宣伝をしてもらいやすい
- 複数店舗合同キャンペーンなどが実施される可能性がある
本屋の開業・経営に必要な資格は?
本屋の事業形態によっては、開業・経営にあたって特定の資格や許認可が必要になるケースがあります。
ここでは、本屋の開業・経営に必要な資格や許認可について、ケース別に解説します。
中古本を販売する場合
「中古本」を販売する場合、古物商許可が必要です。古物商許可とは、古物営業法で定められている中古品を事業として売買するために必要な営業許可のことです。
古物商許可を得るためには、営業所の所在地を管轄する警察署への申請が必要となります。
新刊を販売する場合
「新刊」に限定して販売する経営スタイルで、本屋以外の事業(カフェなど)を展開しない場合、特別な資格や許認可を取得する必要はありません。
経営スタイルを変更する際は、必要資格などを確認しましょう。
本屋以外の事業も経営する場合
本屋以外の事業もあわせて展開する場合、許認可や資格が必要になる可能性があります。
本屋に飲食店やホテルを併設するケースで必要となる許認可や資格の例は、以下のとおりです。
併設店舗の種類 | 許認可の例 | 資格の例 |
---|---|---|
飲食店 | 飲食店営業許可 喫茶店営業許可 | 食品衛生責任者 |
ホテル | ホテル営業許可 旅館業営業許可 温泉利用許可 下宿営業許可 簡易宿泊営業許可 | (※開業に必須ではない) 防火管理者 食品衛生責任者 |
許認可の申請内容は自治体によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
本屋を開業・経営するための手続きの流れ、必要書類
本屋の開業・経営に向けた準備の主な手順は、以下のとおりです。
- 本屋のコンセプトを決める
- コンセプトに合った本を仕入れる
- 本屋の事業計画書を作成する
- 開業届や必要な許認可を申請する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①本屋のコンセプトを決める
まずは、本屋経営の基本方針となるコンセプトを決めましょう。取り扱い商品や内装デザインなどに一貫性をもたせるためにも、コンセプト設計は欠かせない工程といえます。
コンセプトの具体例は、以下のとおりです。
- 特定ジャンルに特化した本を集めて販売する
- ブックカフェスタイルにする
- 「選書サービス」がある本屋にする
- オンライン販売専門の本屋にする
- 移動型の本屋にする
顧客が利用したくなるようなコンセプト設計を目指しましょう。
②コンセプトに合った本を仕入れる
経営したい本屋のコンセプトが決まったら、コンセプトやニーズに沿った本を用意しましょう。
新刊の場合、出版社または本の問屋である取次店から仕入れます。新刊の流通は、出版社が取次店に送品し、取次店から全国の書店に発送するかたちが一般的です。
なかには、直接取引に対応している出版社もあります。取次店による取り扱いのない新刊を仕入れたい場合は、出版社との直接取引を検討してみましょう。
出版社・取次店ともに、新刊の仕入れ方法は以下の2種類です。
- 委託販売:仕入れた本が売れ残った場合は返品可能
- 買い切り制:売れ残った本を返品できない代わりに、仕入れ価格を抑えられる
中古本は、古書組合に加入のうえ古書交換会(市場)に参加することで入手できます。また、以下からも仕入れ可能です。
- 古書店
- Amazon
- ブックオフ
- メルカリ
③本屋の事業計画書を作成する
設定コンセプトをもとに、本屋経営の事業計画書を作成しましょう。
事業計画書とは、事業のサービス内容やビジョン、ビジネス戦略など、具体的なビジネスモデルを記載する書類のことです。融資を受ける際には、必ず事業計画書を提出しなければなりません。
スムーズな開業につなげるためにも、しっかりとした事業計画書を作成することが大切です。
マネーフォワードでは本屋向けの事業計画書テンプレートを無料で配布しています。下記ページからダウンロードください。
④開業届や必要な許認可を申請する
本屋の経営スタイルによっては、古物商許可・飲食店営業許可といった許認可などの申請が必要です。事前に許可申請に必要な時間や提出書類などを調べておくと、スムーズに開業準備を進められます。
なお、本屋の経営スタイルに関係なく、事業の開始日から1か月以内に税務署に「開業届」を提出する必要があります。
本屋の開業に必要な費用の目安
本屋の開業に必要な費用の目安を、ケース別に紹介します。
条件によって必要費用は異なるため、ひとつの参考にしてみてください。
実店舗の場合
実店舗を構える本屋の開業資金の目安は、1坪あたり80万〜100万円程度です。開業エリアや立地条件などによって、金額は異なります。
たとえば20坪程度の実店舗の場合、主に以下の費用がかかるというシミュレーション結果(人件費を除く)があります。
- 店舗保証金:テナント料の6~10か月分程度
- 広告費など:約10万円
- 商品:坪あたり約40万円
- 書棚・什器備品:坪あたり約10万円
- 内装費用:坪あたり約10万円
- 看板:約50万円
- 空調一式:約50万円
- 事務用品:約10万円
参考:出版流通学院 書店を開業する時、した後の予算はどのくらい?
ネットショップ・ECサイトの場合
ネットショップ・ECサイトによる本屋の開業資金の目安は、60万~400万円程度といわれています。
費用内訳の目安は、以下のとおりです。
- 仕入れ:約50万~300万円
- 広告費など:約10万~50万円
- ネットショップ作成サービスの初期費用:約0~6万円
- ネットショップ作成サービスの月額利用料:約0~10万円
ネットショップ・ECサイトによる本屋経営では、テナント料の支払いや設備投資が不要なため、実店舗よりも開業コストを抑えやすいでしょう。
経営アイデアを駆使して売れる本屋を目指そう
書店数・販売額の減少やネット書店・電子書籍の普及、低い粗利率などの理由から、本屋の経営は厳しいといわれています。2024年3月には、経済産業省による「書店振興プロジェクトチーム」が始動しました。
本屋は実店舗だけでなく、ネットショップによる開業も可能です。また、さまざまなアイデアで店に付加価値を与えることで、売上アップを期待できるでしょう。経営アイデアを駆使して、売れる本屋経営を目指してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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