• 更新日 : 2023年7月28日

経営目標とは?具体例をもとにわかりやすく解説!

経営目標とは?具体例をもとにわかりやすく解説!

あなたの会社では経営目標を設定していますか。売上高や利益をベースに目標を設定している会社が多いですが、中には市場シェアや顧客満足度などをベースに経営目標を設定している会社もあります。ところで、会社は何のために経営目標を設定しているのでしょうか。経営目標の基本につき、SMARTによる目標設定法とともに解説します。

経営目標とは?

経営目標とは、文字通り会社を含む各組織が経営する上で設定される目標です。組織は通常、何らかの事業目的を持って活動しています。株式会社を筆頭とする営利法人の場合、売上高や利益などの会社の損益に関する経営目標が設定されるケースが多いですが、それぞれの事業目的に関する経営目標が設定されるケースもあります。一般的には、会社の損益に関する経営目標と会社の事業目的に関する経営目標が並列して設定されるケースが多いようです。

経営目標と経営理念、経営計画の違い

経営目標と似た言葉として経営理念があります。経営目標と経営理念の違いは何でしょうか。経営目標が会社を含む各種の組織が経営する上で設定される目標である一方、経営理念は会社のあるべき姿、あるいはなりたい姿を言葉にしたものといっていいでしょう。

例えば、スターバックスコーヒーの経営理念(ミッション)は「人々の心を豊かで活力あるものにするために―ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」です。

経営計画は、経営目標や経営理念を実現するための具体的な行動計画をまとめたものであり、登山における登山計画書や、航空機のフライトのためのフライトプランのようなものです。

経営目標の英語表記は?

英語では経営目標を何というのでしょうか。英語では単にgoalまたはgoalsという単語が使われたり、company’s goalまたはcompany’s objectiveという熟語が使われたりするケースが多いようです。goalという言葉についてケンブリッジ英語辞書は、「狙い」または「目的」という意味とともに、「サッカーやホッケーなどのスポーツ競技において、プレーヤーがボールを特定のエリアに入れると獲得できるポイント」という意味であると説明しています。

経営目標を立てるメリット

ところで、組織が経営目標を立てるメリットは何でしょうか。いくつかありますが、特に規模が大きい組織や、現時点で思うようなパフォーマンスが上げられていないといった組織、あるいは結束力が弱くチームとしての力が十分に発揮できていない組織などにとって、以下2つのメリットが大きいでしょう。

チームの組織力を高められる

経営目標を立てる最大のメリットは、チームの組織力を高められることです。リーダーとしての経営者の最も重要な仕事のひとつは経営目標の設定ですが、リーダーが優れた経営目標を設定することで組織が目指す地点や姿が明確になり、その実現のために必要なリソースやソリューションの確保、あるいは人材の最適配置などが行えるようになります。具体的で実現可能性が十分な目標を設定することで、チームメンバーのモラルとモチベーションのアップが可能です。

経営パフォーマンスを評価できる

また、経営者が経営目標を立てることで経営パフォーマンスを評価できるというメリットもあります。経営者が何らかの経営目標を立てない場合、その経営者を評価することが、経営目標を立てた場合と比べて明らかに困難です。どのような経営目標にせよ、経営者が経営者の責任において経営目標を設定し、その結果について株主や従業員、あるいは取引先や消費者などのステークホルダーによる評価を受けることが重要となるでしょう。

経営目標の種類・具体例

経営目標にはどのような種類があるのでしょうか。およそ経営に関するものであれば、どのようなものでも経営目標になり得ます。一般的な経営目標としては「収益目標」「組織目標」「人事目標」「社会貢献目標」などが挙げられます。また、そうした各種の目標は、関係する部署ごとに設定されます。以下にそれぞれ解説します。

収益目標

収益目標は会社の収益に関する目標です。具体的には、例えば上場企業の場合、売上高、営業利益経常利益当期純利益、配当などに関する目標です。いずれも数字で設定された、わかりやすい経営目標です。

一般的には年次で設定され、目標の達成状況が四半期ごとに共有されます。また、年次の収益目標に加えて、3年から5年といった中期や、10年といった長期の収益目標をそれぞれ設定する会社もあります。

収益目標の具体例

  • 202X年3月期の売上高○○○億円、営業利益○億円、経常利益○億円、当期純利益○億円を目標とする。
  • 202X年3月期の売上高○○億円、EBITDA○○億円を目標とする。
  • 202Z年までに▽▽社を買収し、○○億円の売上高と○億円の営業利益を追加で獲得する。
  • 202Z年内に赤字子会社○○を廃業し、年内の黒字転換を目指す。
  • 202Y年に売上高○○○億円を確保し、東証へIPOを行う。
  • 年内に赤字の□□セグメントを売却し、債務超過を解消する。
  • 202Y年までに遊休資産を売却し、経常利益○○億円を確保する。

組織目標

組織目標は必ずしも収益とは直接関係しない、会社が組織として掲げる目標です。具体的には、製品の研究開発、新規事業への進出、マーケティングや販売スキーム、製品ブランド開発などに関する目標です。

組織目標の具体例

  • 我が社の新規事業として、202X年までに生成AIを使ったアウトソーシング事業を開始する。
  • 我が社の主力製品である○○の派生バージョンを年内に開発し、販売を開始する。
  • 我が社の事業とのシナジー効果を得るために、202X年までに○○社を買収する。
  • 我が社のマーケティングスキームを、202X年までにテレビCM中心からソーシャルメディア中心へ完全に切り替える。
  • 年内に主力製品△△の新たな販売方法としてインターネットを使ったD2Cを開始する。
  • 202Y年までにソーシャルメディアにおける我が社のプレゼンスを現在から500%拡大させる。
  • 202Z年までに我が社の主力ブランド□□の消費者認知度を現在の3倍に増加させる。

人事目標

人事目標は文字通り組織の人事に関する目標です。具体的には、人材の採用、労働環境、社内カルチャー、社員教育、社内コミュニケーション、賃金やベネフィットなどに関する目標です。

人事目標の具体例

  • 来年度においては、新卒採用○○人、中途採用○○人を目標とする。
  • 202Y年までに、新規事業専属人材○人を同業他社からヘッドハントする。
  • 202Y年までに副業を完全に解禁する。
  • 202Y年までに、全社員の50%を完全リモートワークによる勤務に移行する。
  • 年内にオンラインによる社員スキルアップ教育システムを導入する。
  • 年内に社員コミュニケーション用にプラットフォーム□□を導入する。
  • 202X年までに正社員の20%を裁量労働制へ移行する。

社会貢献目標

社会貢献目標は、組織の社会貢献に関する目標です。具体的には、組織のCSR(Corporate Social Responsibility, 企業の社会的責任)、サステナビリティやSDGsなどへの取り組み、地域社会への貢献、ボランティア活動などに関する目標です。

社会貢献目標の具体例

  • 202Y年までに我が社のCSRに関する基本指針を制定、発表する。
  • 202Y年までに我が社の「サスティナビリティ・レポート」発行を開始する。
  • 202X年までに自然保護を目的とした公益信託ファンドを設立する。
  • 来年度中にSDGコンパスに基づき我が社のSDGsを設定する。
  • 地域社会への貢献活動として、来年度中に「地域おこし協力隊」に我が社から○名参加させる。
  • 来年度の我が社のボランティア活動として、○○○と□□□へそれぞれ参加する。
  • 年内に子どもたちの教育活動として自社のオンライン学習システムを一部開放する。

経営目標を立てる際は「SMART」を意識

経営目標を設定する際は「SMART」の手法を用いて行うことがポイントとされています。SMARTによる目標設定法は、1981年11月に経営コンサルタントのジョージ・T・ドーランがマネジメントレビュー誌に発表したものです。発表当初より経営やアカデミズムの現場で注目を集め、現在に至るまで世界中の経営者や経営学者などによって多用されています。なお、SMARTによる目標設定法は、具体的には以下のモデルで構成されています。

Specific(具体的である)

SMARTの構成要素の第一はSpecific(具体的である)です。あなたとあなたの組織は何を成し遂げようとしているのか、誰がチームメンバーに加わるのか、その活動をいつどこで始めるのかなど、目標は可能な限り具体的で、わかりやすい言葉と具体的な数字やイメージなどとともに関係者に明示される必要があります。また目標の具体像を明らかにするとともに、誰が目標実現の責任を負うのかについても明らかにする必要があります。

Measurable(測定可能である)

SMARTの構成要素の第二はMeasurable(測定可能である)です。目標実現に向けてのチームの活動をどのように測定するのか。例えば屋外イベントを開催する場合、来店者数を測定するのか、または売店の売上を測定するのか。ランディングページを作成してデジタルコンテンツを販売する場合、ランディングページへのアクセス数を測定するのか、または実際の販売数を測定するのか、あなたはこれらの質問に答える必要があります。

Achievable(達成可能な)

SMARTの構成要素の第三はAchievable(達成可能な)です。無能なリーダーが往々にして陥りがちなのが達成不可能な目標設定をすることです。明らかに達成が不可能な目標は、チームのモラルとモチベーションを低下させ、リソースを空費させて実際にプロジェクトを失敗に至らしめます。チームメンバーに「十分に達成が可能である」と思わせ、チームのやる気を十分に引き出す目標を設定することがリーダーの重要な仕事です。

Relevant(適切である適切である)

SMARTの構成要素の第四はRelevant(適切である)です。「適切である」とは、設定される目標が組織の経営理念や価値観、あるいは倫理基準などと整合性がとれていて、適切であるという意味です。同様に、設定される目標はチームメンバーの職務上負っている責任や価値観、倫理観などとも十分な整合性がとれている必要があります。適切ではない目標を設定すると、その時点でチームメンバーの目標達成に向けたコミットメントを引き出せなくなります。

Time-bound(期限がある)

SMARTの構成要素の第五はTime-bound(期限がある)です。例外を除き、世の多くのプロジェクトには期限があります。SMARTによる目標設定法では、全てのプロジェクトに期限を設定することを求めています。プロジェクトの最終的な期限はもとより、月単位や四半期単位でのプロジェクトレビューを行うことも重要なタスクです。期限を設定せず、プロジェクトをだらだらと継続させてしまうことがないように厳に戒めるべきでしょう。

経営目標を設定して組織力を最大限に高めよう!

以上、経営目標の基本について、SMARTによる目標設定法なども含めて解説しました。カール・フォン・クラウゼヴィッツの代表的著作『戦争論』は、軍事戦略家に求められるのは、戦争目的を踏まえてあらゆる軍事行動に最適な目標を設定することであり、その次に目標を達成する上で必要な行動方針を見積もれることであるとしています。組織の経営者に対しても、事業遂行のための最適な目標を設定することが求められています。組織の事業目的を最大限実現する目標を設定できるよう目指してください。


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