• 更新日 : 2023年10月23日

経営用語-マトリクス組織とは?企業例6社・メリットデメリットも

経営用語-マトリクス組織とは?企業例6社・メリットデメリットも

経営用語のひとつ、マトリックス組織(マトリクス組織)は異なる系統を縦と横で組み合わせて網目のようにした組織形態のことです。関連する事例として、トヨタや花王などが挙げられます。

本記事では、マトリクス組織の概要や経営に取り入れるメリットなどを紹介します。失敗しないために、デメリットも説明するため参考にしてください。

マトリクス組織とは?

もともと、マトリクス(マトリックス、matrix)は、基盤や行列などを意味します。そのため、マトリクス組織とは、2つの系列を縦・横に組み合わせて網の目のようになった形態の組織のことです。

従来のピラミッド型組織では、代表者から役員、役員から部(営業部・総務部など)、部から各課へと「上から下」に命令や指示が出されていました。それに対してマトリクス組織では、「上から下」だけでなく「横」に命令・指示が出される点は特徴です。

会社でマトリクス組織を導入する場合、機能別だけでなく、事業別・エリア別などの分類も加えます。たとえば、X社に勤めるAさんが、「営業部」に所属すると同時に、「関西エリア」にも所属するのがマトリクス組織です。Aさんは営業部長からも関西エリアマネジャーからも、指示を受けることがあります。

機能別組織・プロジェクト型組織との違い

マトリクス組織は、機能別組織やプロジェクト型組織と異なります。

機能別組織とは、業務内容によって組織が分かれている形態のことです。一般的に、機能別組織の会社の従業員が新規プロジェクトに参加する場合、プロジェクトのマネジャーよりも所属する部の長の命令・指示が優先される傾向にあります。

プロジェクト型組織は、さまざまな部署の従業員を集めて作ったプロジェクト単位で、仕事を進める形態のことです。プロジェクト型組織では、プロジェクトマネジャーの権限が比較的大きいため、責任が明確になりやすい傾向にあります。

マトリクス組織は、機能別組織とプロジェクト型組織を合わせたような形態といえるでしょう。

マトリクス組織の種類

マトリクス組織は、種類によってプロジェクトにおける責任者の選任方法などが異なります。マトリクス組織の種類は、以下のとおりです。

  • ストロング型
  • ウィーク型
  • バランス型

それぞれの特徴や、メリットとデメリットを解説します。

ストロング型

ストロング型とは、プロジェクトの責任者としてプロジェクトマネジャーを設けるマトリクス組織です。プロジェクトマネジャーは、プロジェクトマネジメントに特化した部署の中から選定されます。

選定されるプロジェクトマネジャーの権限が強く、指示が明確になる点がストロング型のメリットです。また、プロジェクトマネジャーはマネジメントに関する専門性や経験を備えていることが一般的であり、メンバーの負担を軽減できます。

一方、プロジェクトマネジャーが在籍するための部署を設立しなければならない点がストロング型のデメリットです。部署の設立・維持には一定のコストがかかるでしょう。

ウィーク型

ウィーク型とは、プロジェクトの責任者としてプロジェクトマネジャーを置かないマトリクス組織です。プロジェクト進行に伴い何か決断を下さなければならない場面では、メンバーそれぞれが自らの判断で行動します。

責任者の決断を待つ必要がないため、余計な時間がかからずスムーズに業務を進められる点がウィーク型のメリットです。とくに臨機応変な対応が求められる場面では、メンバーの自由度が高く、多角的なアプローチが可能なウィーク型が効果を発揮します。

ウィーク型のデメリットは、責任の所在が曖昧になりやすい点です。また、メンバーに自分で決断する知識・スキルや経験などが備わっていなければ、かえって業務が滞る可能性もあります。

バランス型

バランス型とは、プロジェクトのメンバーから責任者を選任するマトリクス組織です。そのため、プロジェクトごとにプロジェクトマネジャーが所属する部署が異なることがあります。

プロジェクトに関わる人物がプロジェクトマネジャーを務めるため、プロジェクトの進捗状況を把握しやすい点がバランス型のメリットです。そのため、プロジェクトマネジャーのスムーズな指示や決断を期待できるでしょう。

バランス型のデメリットは、指示系統が複雑になる恐れがある点です。メンバーはプロジェクトマネジャーだけでなく、所属する部署の長の指示にも従わなければならないため、調整や対立で現場が混乱することもあるでしょう。

なお、部署の長・マネジャーが、特定のプロジェクトマネジャーを兼任することもあります。

マトリクス組織の導入企業例

日本でも、マトリクス組織を導入している企業がいくつかあります。主な事例は、以下のとおりです。

  • 資生堂
  • オリンパス
  • トヨタ自動車
  • 富士通
  • 花王
  • デロイトトーマツコンサルティング

それぞれの特徴を確認していきましょう。

資生堂

資生堂は、スキンケア・メイクアップ・フレグランスなどの「化粧品」を中心とする事業に加え、レストラン事業や教育・保育事業も展開している会社です。2016年より、資生堂では6つの地域とブランドカテゴリーを掛け合わせた、マトリクス型のグローバル経営体制を敷きました。

ANNUAL REPORT2019によると、縦にプレステージ・コスメティクスなどの「ブランド」、横に日本・中国・アジアパシフィック・欧州・米州・トラベルリテールの「地域」とする体制を敷いています。

参考:株式会社資生堂 ANNUAL REPORT 2019

オリンパス

オリンパスは、内視鏡事業や治療機器事業など、主に医療に関する事業を手掛ける会社です。オリンパスでは、2015年4月1日より体制を変更し、マトリクス組織を導入しました。

従来、社長の下に医療事業グループなどの各グループが配置されていたのに対し、体制変更後は横に事業ユニット、縦に機能部門が配置されるようになっています。

参考:オリンパス株式会社 戦略的事業拡大実現に向けた経営体制強化(組織変更)について

トヨタ自動車

トヨタ自動車は、世界中で自動車を販売するメーカーです。2013年から第1トヨタ・第2トヨタなどのビジネスユニットに括る「ビジネスユニット制」を導入していましたが、2016年4月の組織改正に伴い、新たに製品群ごとのカンパニーも導入しています。

縦に地域軸(第1トヨタ・第2トヨタなど)、横に製品軸が広がっているため、マトリクス組織ともいえるでしょう。

参考:トヨタ自動車株式会社 トヨタ自動車、新体制を公表-仕事の進め方変革を通じて「もっといいクルマづくり」「人材育成」を促進-
参考:トヨタ自動車株式会社 株主の皆様へ

富士通

富士通は、DXパートナーとしてテクノロジー・サービス・ソリューション・製品を提供する会社です。2014年4月より、富士通は「グローバルマトリクス体制」をスタートさせています。

従来、富士通グループは日本と海外で顧客へのフロントの営業体制が分かれていました。グローバルマトリクス体制の導入に伴い、顧客の世界の地域に分けた地域軸と、製品やサービス内容に基づく事業軸を組み合わせた体制に移行しています。

参考:富士通株式会社 統合レポート2016

花王

花王は、ハイジーン&リビングケアやヘルス&ビューティケアなどの事業を展開する会社です。花王では、ビジネスユニットと商品開発研究や基盤技術研究などの機能ユニットを組み合わせた、マトリクス運営を導入しています。

マトリクス運営によりそれぞれの専門領域が柔軟に交わることで、研究開発のスピードアップに貢献しているとのことです。

参考:花王株式会社 組織運営

デロイトトーマツコンサルティング

デロイトトーマツコンサルティングは、日本でコンサルティングサービスを担う会社です。デロイトトーマツコンサルティングでは、「Industries(インダストリーサービス)」と「Offerings(オファリングサービス)」によるマトリクス組織の形態をとっています。

インダストリーサービスは、業界に関する知識やプロジェクト経験を持つ軸、オファリングサービスは顧客となる企業の機能や目的に対応したサービスを提供する軸です。2つの軸を中心としたマトリクス型の体制をとることで、さまざまな課題に迅速に対応できる総合力や統合力を発揮しています。

参考:デロイト トーマツコンサルティング合同会社 Collaborative Approach

マトリクス組織のメリット

マトリクス組織を導入することのメリットの一つ目は、従業員同士が積極的にコミュニケーションをとることで、業務効率化につながることです。また、部署の垣根を越えてプロジェクトに取り組むため、会社やプロジェクトの全体像が見えやすくなります。

マトリクス組織を導入する2つ目のメリットは、新規事業の立ち上げがしやすくなる点です。専門性の高い人材を集めることで、すぐに新商品の開発に取り組めます。

マトリクス組織を導入する3つ目のメリットは、現場にある程度の決定権を与えることで管理職や役員の負担を軽減できる点です。あらためて状況を一から説明しなくても、現場のことをわかっている人たち同士で課題を解決できるため、メンバーのストレス軽減にもつながるでしょう。

マトリクス組織のデメリット

マトリクス組織では、指揮命令系統が複数存在するため、それぞれの長の考えが異なる場合にどちらの指示に従うべきか悩むことがある点はデメリットです。それぞれの長が揉めることで、業務が滞ることもあるでしょう。

また、一部の従業員に重い業務負担がのしかかる可能性がある点もデメリットです。現場で解決しなければならない問題がいくつもあるため、メンバー間でスキルや経験に差がある場合に業務量に差が生じることはあります。

経営でマトリクス組織の採用を検討する

マトリクス組織とは、2つの系列を縦・横に組み合わせて網の目のようになった形態の組織のことです。会社でマトリクス組織を導入する場合、機能別・事業別・エリア別などの分類を組み合わせます。

マトリクス組織を導入するメリットは、業務効率化につながることです。一方で、指揮命令系統が複数存在することで現場が混乱することがある点はデメリットとして挙げられます。

さまざまな事情から、自社の組織体制の変更を検討している場合は、マトリクス組織の導入も検討しましょう。


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