- 更新日 : 2023年11月30日
NPO法人設立の要件や手順は?メリット・デメリットも解説
NPO法人は、非営利で社会貢献活動を行う団体で、法人格を持つのが特徴です。NPO法人の設立には、メリット・デメリット双方あるため、両者を勘案したうえで設立を検討しましょう。また、NPO法人ならではの設立手順を理解することも必要です。今回はNPO法人とは何か、設立のメリット・デメリットや設立手順などを解説します。
目次
NPO法人とは
そもそもNPOとは、Non-Profit Organizationの略で、日本語では特定非営利活動のことです。特定非営利活動とは、以下の20種類の分野に該当する活動であり、不特定かつ多数のものの利益に寄与する活動のことを指します。
- 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
- 社会教育の推進を図る活動
- まちづくりの推進を図る活動
- 観光の振興を図る活動
- 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
- 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
- 環境の保全を図る活動
- 災害救援活動
- 地域安全活動
- 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
- 国際協力の活動
- 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
- 子どもの健全育成を図る活動
- 情報化社会の発展を図る活動
- 科学技術の振興を図る活動
- 経済活動の活性化を図る活動
- 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
- 消費者の保護を図る活動
- 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
- 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動
引用:特定非営利活動(NPO法人)制度の概要|内閣府 NPOホームページ
NPO法人は、上記のような社会貢献活動を行い、構成員への収益分配を目的としない団体です。NPO法人は、特定非営利活動促進法に基づき法人格を取得しているため、法人名義で契約の締結や土地の登記といった権利義務の関係を処理できます。
NPO法人について、詳しくは以下をご覧ください。
NPOの種類
NPOには、以下の3種類があります。
- NPO法人(特定非営利活動法人)
- 認定NPO法人(認定特定非営利活動法人)
- NPO団体
NPO法人は、上述のとおり特定非営利活動を行う法人のことです。
認定NPO法人とは、NPO法人の中でも、より高い公益性を持っていると認定された法人のことです。寄附金の金額や寄附者の人数といった、客観的な基準をもとに認定されます。NPO法人よりも申請要件は難しいですが、その分税制上のメリットは大きいのが特徴です。
NPO団体とは、社会貢献を目的に特定非営利活動を行う団体のことです。法人ではなく、あくまでも個人の集まりであるとみなされるため、法人名義で契約の締結や建物の所有などは行えません。
このように、NPOにも種類があるため、設立を検討している方はそれぞれの特徴や違いについて理解しましょう。
NPOとNGOの違い
NPOとよく似た言葉に、NGOがあります。NGOは、Non-governmental Organizationの略称であり、日本語では非政府組織と呼ばれます。
NPOとNGOは、どちらも営利を目的せず、社会貢献活動を行う団体である点で共通しています。両者の違いは厳密には規定されていません。外務省によると、日本では海外の課題に取り組む活動を行う団体のことをNGO、日本国内の課題に取り組む活動を行う団体をNPOと呼ぶ傾向にあります。
NPO法人設立の要件
NPO法人を設立するためには、所轄庁に申請して設立の認証を受ける必要があります。認証後、登記をすることで法人の設立が可能です。NPO法人を設立するにあたって、まずは法人設立の要件を理解しましょう。
特定非営利活動促進法に基づき法人格を取得できる団体は、次のような要件を満たす必要があります。
- 特定非営利活動を主たる目的とすること
- 営利を目的としないこと
- 宗教活動や政治活動を主たる目的としないこと
- 特定の公職者(候補者を含む)または政党を推薦・支持・反対することを目的としないこと
- 10人以上の社員を有すること
- 社員の資格を得喪するにあたって、不当な条件を付さないこと
- 報酬を受け取る役員の数が、役員総数の3分の1以下であること
- 暴力団でないこと、または暴力団もしくはその構成員・その構成員でなくなった日から5年を経過しない者の統制の下にないこと
また、活動内容は冒頭で紹介した20種類の分野に該当する必要があります。さらに、活動内容の対象者が不特定多数であることと、社員が10人以上で、さらに役員として3名以上の理事と1名以上の監事が必要です。
NPO法人設立のメリット
NPO法人を設立するメリットは以下のとおりです。
- 株式会社よりも設立費用が安い
- 税制面での優遇がある
- 社会的信用を得られる
株式会社に比べると、NPO法人の設立に関する金銭的ハードルは低いと言えます。さらに、法人を設立することで税制面の優遇や社会的信用を得られ、社会貢献活動を行いやすくなるのもメリットです。
ここでは、NPO法人を設立するメリットについて解説します。
株式会社よりも設立費用が安い
NPO法人を設立するにあたって、出資金や最低資本金などの決まりは存在しません。そのため、十分な資金や財産がない場合でも設立できるのがメリットです。また、登録免許税法の対象外であるため、設立にあたってかかる費用は印鑑作成費用や住民票請求費用、そのほか手続きに関する交通費や通信費程度です。定款認証代・収入印紙代・登録免許税などが不要なため、設立のためにさまざまな費用が必要な株式会社に比べると、設立費用を安く抑えられます。
税制面での優遇がある
NPO法人は、税制面での優遇を受けられるのがメリットです。税金が一切かからないわけではありませんが、法人住民税の均等割が免除になる、入会金や会費などは税金の対象となる収益にはカウントされない、などの優遇措置があります。
また、認定NPO法人や特例認定NPO法人の場合、寄附した者や企業に対して所得税が減税されたり、自治体によっては寄附した者が住民税控除を受けられたりする、などの優遇措置があるのは特長です。
社会的信用を得られる
NPO法人には情報公開義務が課せられており、毎年事業や法人に関する情報を都道府県庁や内閣府のホームページ上に公開する必要があります。このように、運営において高い透明性が求められるため、社会的信用につながりやすいのがメリットです。
さらに、一般社団法人や一般財団法人といったほかの非営利団体・企業に比べると、NPO法人の方が社会的信用や知名度が高いことは多いです。そのため、従業員の雇用や支援者集めなどがやりやすくなります。
また、NPO法人を設立することによって、法人名義で契約や資産保有が可能になります。さらに、行政からの委託事業や助成金への応募条件に「法人格であること」が定められていることもあり、活動するうえで有利になる可能性が高いです
NPO法人設立のデメリット
一方、NPO法人設立には以下のようなデメリットがあります。
- 社員が10名以上必要
- 独特な税務処理が必要
- 活動分野が限定されている
特に、社員や役員に関する要件が定められている点や、一般的な企業会計とは異なる独特な税務処理が必要になる場合がある点は見逃せません。社会貢献活動を行う際は、メリット・デメリットを勘案したうえで、NPO法人を設立するか否かを決めましょう。
ここでは、NPO法人設立のデメリットについて解説します。
社員が10名以上必要
NPO法人として認められるためには、社員が10名以上必要です。そのため、設立にあたってある程度のメンバーを確保する必要があります。
また、活動の趣旨に賛同する人なら誰でも社員になれ、いつでも退会できるようにしなければなりません。さらに、役員要件として、理事を3名以上、監事を1名以上置く必要があります。このように、人員配置に関して比較的細かく規定があるため、整備に時間がかかる点はデメリットです。
独特な税務処理が必要
NPO法人は、事業年度ごとに1回、所轄庁に事業報告書と収支計算書・社員名簿を提出することが求められます。
また、NPO法人が収益事業を行う場合は、収益事業とそれ以外を区分して会計処理を行う必要があり、一般的な企業会計とは異なる独特な税務処理が必要です。さらに、利益が残る場合は法人税や法人住民税の対象となることがあり、免除制度を利用するためにはさらに申請作業が発生するなど、税務処理が煩雑であるというデメリットがあります。
活動分野が限定されている
NPO法人として認められるためには、冒頭で紹介した20種類の非営利活動のうち、いずれかに該当する活動を行うことが必要です。
設立にあたって定款や設立趣旨書を提出する必要があり、そこには「主たる活動内容」を記載します。この記載内容が、規定されている20種類以外のものであると、NPO法人は設立できません。このように、NPO法人を設立するためには、活動分野が限定されてしまうというデメリットがあります。
NPO法人設立の手順
NPO法人を設立するためには、以下の手順で進めましょう。
- 所轄庁へ設立認証の申請
- 縦覧・審査・認証
- 法人設立登記手続き
申請の際は、上記で紹介した設立要件を満たしているかを確認してください。また、設立認証後、改めて法人設立登記手続きを行う必要がある点に注意が必要です。
ここでは、NPO法人の設立手順について解説します。
所轄庁へ設立認証の申請
まずは、所轄庁へ設立認証の申請を行いましょう。所轄庁とは、NPO法人の認証権および監督権を持つ行政機関のことで、原則として主たる事務所が所在する都道府県知事です。
申請時は、以下のような書類が必要であるため、準備しましょう。
- 定款
- 役員名簿
- 役員の就任承諾書および誓約書の謄本
- 住民票など、役員の住所または居所を証する書面
- 住民票など、社員のうち10名以上の氏名及び住所または居所を示した書面
- 設立趣旨書
- 設立についての意思決定を証明する議事録の謄本
- 認証要件への適合を確認したことを示す書面
- 設立当初の事業年度および翌事業年度の事業計画書
- 設立当初の事業年度および翌事業年度の活動予算書
縦覧・審査・認証
申請後、所轄庁が以下の項目について1ヶ月間縦覧を行います。縦覧とは、提出された書類を公開し、市民に自由に見てもらうことです。
- 申請年月日
- NPO法人の名称
- 代表者氏名
- 主たる事務所の所在地
- 定款に記載された目的
申請受付から3ヶ月以内に所轄庁が審査を行い、認証あるいは不認証の結果を申請者に通知します。その後登記手続きが必要であるため「認証通知が来たら設立手続き完了」というわけではありません。
法人設立登記手続き
認証通知後、2週間以内に法務局で設立登記手続きを行いましょう。認証通知が来ても、登記手続きを行わなければ設立はできません。
登記が完了したら、設立登記完了届出書・登記事項証明書・財産目録などを所轄庁に提出します。なお、主な事務所と法務局の管轄区域が異なる場所に従たる事務所を持つ場合、設立登記から2週間以内に、従たる事務所の所在地でも登記する必要がある点に注意が必要です。
なお、認証通知後6ヶ月以上登記手続きを行わないと、認証が取り消されてしまう場合もあります。通知が来たら、速やかに手続きを行いましょう。
NPO向けの事業計画書テンプレート(無料)
こちらから自由にお使いいただけるので、ぜひご活用ください。
要件や登記の流れを理解して、NPO法人を設立する
今回は、NPO法人の設立について、メリット・デメリットや設立要件、手順などを解説しました。社会貢献活動を行う際は、NPO法人を設立することで活動が進めやすくなったり、税制面での優遇を受けられたりします。設立には要件があり、NPO法人には独特な税務処理が必要になる場合もあるため、メリットとデメリットを理解して設立を検討することが重要です。また、登記の流れを正しく理解し、手続きをスムーズに進められるようにしましょう。
よくある質問
NPO法人とは?
NPO法人とは、営利を目的とせずに社会貢献活動を行い、特定非営利活動促進法に基づき法人格を取得している団体のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
NPO法人を設立するメリットは?
NPO法人設立のメリットは、株式会社よりも設立費用が安い、税制面での優遇がある、社会的信用を得られるなどです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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