- 作成日 : 2017年12月4日
NPO法人の設立費用はほとんどかからないって本当?

NPO法人の設立費用は、株式会社や持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)と比較するとほとんどかからないというのは本当なのでしょうか。
また、意外と知られていないNPO法人を設立した後にかかる費用などについても紹介していきます。
NPO法人の設立費用から設立後までの流れを確認するとともに、株式会社の設立費用などと比較しながら理解を深めていきましょう。
そもそもNPO法人の設立費用はどれくらい?
NPO法人を設立するまでの大まかな流れは、
2.所轄庁へのNPO法人設立認証申請
3.所轄庁での審査を経て、認証か不認証の決定
4.認証後、2週間以内に法務局などの登記所にてNPO法人設立登記申請
となります。
一方、株式会社を設立するまでの大まかな流れは、
となります。
持分会社は2の公証人による定款認証が必要ないため、定款作成後すぐに法務局で登記申請を行なうことができます。
4の設立登記申請は原則として登録免許税法第2条に従い、登録免許税として以下の内容で課税されることになっています。
設立形態 | 登録免許税額 |
---|---|
株式会社 | 資本金額の7/1000 ※ただし15万円に満たない場合は15万円 |
合同会社 | 資本金額の7/1000 ※ただし6万円に満たない場合は6万円 |
合名会社・合資会社 | 1件6万円 |
(出典:登録免許税の税額表|国税庁)
しかしNPO法人は登録免許税法第2条の課税範囲の対象外となるため、登録免許税は非課税、つまり0円で設立登記ができます。
また、NPO法人設立が株式会社や持分会社の設立と比較したときに大きく異なる点として、所轄庁からの認証を得なければならない点を挙げることができます。
株式会社や持分会社は公証人による定款認証を受ける必要がありますが、「会社法」に適合した定款を作成し、設立費用として定款認証手数料(5万円)や電子定款ではない場合の収入印紙(4万円)などを納めれば、誰でも認証を受けることができます。
しかしNPO法人の認証を得る所轄庁は都道府県や政令指定都市が該当し、それぞれの行政手続法や条例で定められている「認証基準」によって認証されるか否かが決定します。
また、その他の異なる点として
・公告・縦覧期間が最低2か月間定められている
・審査結果がわかるまでに最低3か月かかる ことから、認証を受けるまでかかる時間が、法律によってコントロールされている点が挙げられます。

(出典:特定非営利活動法人(NPO法人)設立までの流れ|内閣府)
NPO法人の設立費用はほとんどかからないと言われている理由として、
・NPO法人の登録免許税は非課税
・公証人による定款認証手数料5万円や収入印紙税4万円がかからない
というメリットがある反面、認証までに時間がかかるデメリットがあります。
では、設立するまでに時間がかかるだけで設立費用がかからないのであれば、やはり株式会社や持分会社よりもNPO法人のほうが得られるメリットは大きいのでしょうか。
NPO法人設立後にしなければならない手続きについても確認していきましょう。
NPO法人を設立してからどのような手続きが必要なのか
NPO法人を設立したら、あとは自由に非営利活動だけを行なえばいいのかというとそうではありません。所轄庁への報告が年に一度義務付けられているのです。
もちろん株式会社や持分会社であったとしても、決算書類を作成したり株主総会を開催したりするなど、金融機関や株主などの利害関係者へ対して報告・開示義務があります。
しかしNPO法人が所轄庁へ行なう報告義務の内容によっては、認証基準に適合しなくなっていると判断されることもあるため、NPO法人の認証取消という行政処分を受けることも考えられるのです。
またNPO法人の定款変更に関しても、株式会社や持分会社とは異なる手順を踏まなければなりません。株式会社が定款を変更しようとする場合は、株主総会の決議によって完了します。
持分会社が定款を変更しようとする場合は、総社員(従業員ではなく出資者としての社員)の同意によって完了します。
しかしNPO法人の定款を変更しようとする場合は、所轄庁へ定款変更の認証申請書を提出しなければなりません。
所轄庁へ提出しただけでは定款変更が完了せず、設立認証時同様に2か月の縦覧期間に加えて2か月の審査期間が必要となるため、最低でも4か月以上の時間を要することになります。
さらに審査によっては不認証の決定が下される場合も考えられ、必ずしも定款変更が認められない場合もあるのです。
まとめ
NPO法人の設立費用は、株式会社や持分会社と比較するとほとんどかかりません。
しかし設立するために作成しなければならない書類や、所轄庁へ認証してもらうまでにかかる時間や手間、労力を考えたときに、自力で設立するのではなく行政書士などの専門家に依頼することも選択肢として浮上することが考えられます。
専門家の手助けを得ながらNPO法人を短期間で確実に設立するか、株式会社や持分会社を設立するか、どちらにしてもある程度の設立費用はかかると見込んでおいたほうがよいでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。