• 作成日 : 2024年10月25日

ゲストハウスの開業に必要な事業計画書の書き方は?資金調達の方法も解説

ゲストハウスを開業する際、事業計画書を入念に作成しましょう。綿密な計画を立てることで資金調達がしやすくなり、事業の成功にもつながります。

この記事ではゲストハウスの事業計画の書き方や記入例、作成する際のポイントについてご説明し、資金調達の方法についてもご紹介します。

ゲストハウスの開業に必要な事業計画書とは

事業計画書とは、事業の目的や内容、運営の方針や収支の見通しなどをまとめた計画書のことです。近年、訪日する外国人が増えており、宿泊施設の需要が高まっています。ホテルや旅館よりも安価で開業できるため、自宅や中古住宅を活用してゲストハウスを開業しようと思われる方も一定数いる傾向です。

一方で、開業するにはある程度の初期費用は必要です。特に観光地であればホテルや旅館も含めて多くの競合が存在します。行き当たりばったりの発想ではなく、しっかりと事業計画を立てたうえで開業することが、安定した経営の第一歩です。特に融資を受けるなどして資金調達を行う場合は事業計画書の提出が求められるので、必ず用意しておきましょう。

ゲストハウスの事業計画書の書き方・記入例

ここからは記入例をもとにゲストハウスの事業計画書の書き方についてご紹介します。以下をご参考に適切な事業計画書を作成してみましょう。

創業動機・目的

事業の概要や創業の目的について記載します。「業種」に関しては「宿泊業(ゲストハウス)」と記載すれば問題ありません。「開業予定期」には開業予定の年と月を記入します。

業種 宿泊業(ゲストハウス)開業予定期 ○年○月
1.創業動機・目的
現職を退いた後は、従業員としてではなく、自分で事業を立ち上げようと考えていた。私の経験を生かすのであれば宿泊業が最適と考えているが、昨今のニーズや管理コストを総合的に考慮すると、ゲストハウスが適しているという結論に至った。

職歴・事業実績

代表者の方の学歴や職歴について記載します。履歴書の学歴・職歴欄のようなイメージです。過去の勤務先のほか、ゲストハウスの経営・運営に役立つ経験があれば、1行程度で簡潔に記載するとアピールにつながります。

2.職歴・事業実績(勤務先・役職・経験年数・資格等)
年次具体的内容
○年○月○○大学卒業
○年○月~○○ホテルに就職
○年○月~支配人として主に管理業務に携わる。
○年○月退職予定

取扱商品・サービス

「取扱商品・サービスの内容」では、ゲストハウスで提供するサービスの内容や価格について記載しましょう。

次に「セールスポイント 販売ターゲット・戦略」には、対象とする観光客層や、売りとなるサービス、集客方法などの戦略を記載します。また、「競合・市場などの分析」では、宿泊業界全体の動向や開業地の状況、競合の有無などを記載します。

3.取扱商品・サービス
取扱商品・

サービスの内容

宿泊サービス(簡易宿所)の提供(1,800円~/泊)
セールスポイント

販売ターゲット・戦略

  • ○○エリアへの観光客をメインターゲットとし、大きな需要が見込める訪日外国人観光客を目指す。
  • 多言語対応の受付ロボを配備し無人受付を基本とするが、セキュリティに配慮していることは前面に出して顧客からの安心と信用を獲得できる。
競合・市場などの分析
  • 観光や宿泊の分野では、特にインバウンド需要が高まっており、価格が高騰しつつある。
  • 訪日外国人観光客が利用しやすいサービスの提供が特に重要と考えられる。
  • 開設予定地の近隣は再開発が進められており、観光客も増えている。

取引先・取引関係

販売先や仕入先、外注先の売上・支払いのシェアや掛取引の割合、回収・支払いの条件について記載しましょう。ゲストハウスの顧客の大半は観光客であるため、販売先は「一般個人」とすれば問題ありません。従業員を雇う場合は人件費の支払条件も記載します。

4.取引先・取引関係
取引先名シェア掛取引の割合回収・支払の条件
販売先一般個人100%100% 末 日〆 翌月末 日回収
   日〆    日回収
   日〆    日回収
仕入先   日〆    日支払
   日〆    日支払
   日〆    日支払
外注先   日〆    日支払
   日〆    日支払
   日〆    日支払
人件費の支払 末 日〆 翌月15 日支払
(ボーナスの支給月   月、  月)

従業員

常勤役員、従業員(3カ月以上継続して雇用する人)の人数について記載します。また、従業員に家族従業員やパート従業員が含まれている場合は、その人数も記載します。

5.従業員
常勤役員の人数
(法人のみ)
従業員数
(3カ月以上継続雇用者)
2人(うち家族従業員)   0人

(うちパート従業員)    2人

借入の状況

代表者個人の借入状況について記載します。住宅ローンや自動車ローン、教育ローンなどプライベートな借入れも漏れなく明らかにしましょう。

6.借入の状況(法人の場合、代表者の借入)
借入先名借入残高年間返済額
○○銀行
○○支店
□事業☑住宅□車□教育□カード□その他1,400万円130万円
□事業□住宅□車□教育□カード□その他万円万円
□事業□住宅□車□教育□カード□その他万円万円

必要な資金と調達方法

ゲストハウス開業に必要な資金(設備資金と運転資金)の内訳と見積先(仕入先候補)、金額および資金を調達する方法や金額を記載します。

必要な資金よりも調達資金の方が少ないとなると「不足している資金はどうするのか」ということになりますので、なるべく必要資金の合計と調達資金の合計は合致するよう算出しましょう。

7.必要な資金と調達方法
必要な資金見積先金額調達方法金額
設備資金店舗、工場、機械、車両など(内訳)

  • 物件取得費
  • 設備等導入費
  • リフォーム工事費
○○社

○○社

○○社

2,400万円

600万円

400万円

1,400万円

自己資金1,050万円
親、兄弟、知人、友人からの借入万円
日本政策金融公庫、国民生活事業からの借入1,500万円
他の金融機関からの借入(内訳・返済方法)万円
運転資金商品仕入、経費支払資金など(内訳)

150万円

50万円

100万円

合計2,550万円合計2,550万円

事業の見通し

売上高や売上原価、人件費や家賃などの経費、利益がどれくらいになるか、開業直後と1年後もしくは軌道に乗ったときの見通しを記載します。また、その見通しを立てるに至った根拠についても明らかにしておきましょう。

8.事業の見通し(月平均)
創業当初1年後または軌道に乗った後

( 年 月頃)

見通しに関する根拠を記入する
売上高①97.5万円114万円(収支計画)

<創業当初>

① 売上高

平均客単価5,000円×部屋数10×平均稼働率65%×営業日数30日=97.5万円

② 原価率 0%

③ 経費

人件費:パート10万円×2人

家賃:0万円

支払利息:1,500万円×年1.6%÷12カ月=2万円

その他:光熱費、消耗品費等 22万円

<創業1年後>

① 売上高

3社のシミュレーション結果の平均値を採用し、稼働率76%として計算。売上高は114万円

② 原価率 創業当初の割合を維持

③ 経費

人件費:パート1人雇用

その他:4万円増加

売上原価②
(仕入高)
0万円0万円
経費人件費20万円30万円
家賃0万円0万円
支払利息2万円2万円
その他22万円26万円
合計③44万円58万円
利益①-②-③53.5万円56万円

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ゲストハウスの事業計画書を作成するポイント

以上で事業計画書の書き方や記入例についてご紹介しました。実際に作成する際には、以下のポイントを意識すると、より良い計画が立てられるようになります。

見通しの根拠を明らかにする

事業計画で融資の担当者が特に着目するのは見通しです。例えば、売上高の見込みは客単価や部屋数、平均稼働率、営業日数をかけ合わせることで算出できます。先述の記入例でも触れていますが、根拠を明らかにしておくことが大切です。

不測の事態を想定しておく

事業には不測の事態がつきものです。例えば、コロナ禍による観光客の激減により、多くの宿泊業が業績悪化に悩まされました。また、物件に不具合が見つかり、予想以上の工事費がかかることも考えられます。こうしたさまざまなリスクを想定し、現実的な計画を立てること、不測の事態が発生しても、経営を維持できるプランを考えておくことが重要です。

ゲストハウスを開業するときの資金調達方法

ゲストハウスの開業資金を調達する方法には以下のようなものがあります。

日本政策金融公庫の融資を活用する

日本政策金融公庫とは中小企業や小規模事業者、起業家を支援する政府系金融機関です。創業融資を活用することで、所定の要件を満たせば無担保・無保証、低利息で事業資金を借入れることができます。

地方銀行・信用金庫の融資を活用する

銀行融資は事業資金を調達する一般的な方法です。審査がありますが、銀行との取引実績を積んでおけば信用力が上がり、いざというときに追加融資を受けやすくなります。

保証協会の融資を活用する

保証協会とは金融機関から融資を受けやすくするために、事業者を保証する公的機関です。特にこれから創業される方、保証人を立てられないという方は、信用保証協会の保証付き融資を受けて借入れるという方法もあります。

補助金・助成金を活用する

国や自治体では創業を支援するためのさまざまな補助金、助成金制度があり、これを活用するというのも一つの手です。また、省エネ住宅化や耐震工事など、物件のリフォーム工事の際に使える補助制度もあります。補助金や助成金を活用することで、返済の負担を軽減することが可能です。

ゲストハウスを成功させるには収支計画書も大切

事業計画のなかでも特に重要なのは収支計画です。どんぶり勘定で計画を立ててしまうと「思ったよりも売上が得られなかった」「経費がかかりすぎてしまった」という事態にもなりかねません。特に開業時は物件の調達費や工事費など、かなりの資金が必要です。経費についてはしっかりと見積もりを取り、現実的な見通しを立て、売上についても慎重に見込みを算出することが大切です。

ゲストハウスを開業するならまず事業計画書を作成しよう

ゲストハウスを開業する際に、事業計画書をしっかりと作り込めば、さまざまなリスクの軽減につながります。また、融資担当者の納得度も高まるので、資金調達もしやすくなるでしょう。まず事業計画書を作成し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。


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