- 更新日 : 2025年7月9日
夫婦での起業は個人事業主と法人化どちらがおすすめ?配偶者の雇用や節税効果も解説
法人化とは、個人事業主が会社を設立し、事業を法人に移し替えることです。本記事では、個人事業主と法人化、それぞれの起業スタイルの特徴、そして配偶者を従業員や代表、役員にするメリットや注意点について解説します。
夫婦での起業を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
夫婦で起業するなら、個人事業主と法人化どちらがおすすめ?
夫婦で起業する場合、いくつかパターンが存在しています。それぞれのパターンの概要については、以下のとおりです。
どちらかが個人事業主として起業し、配偶者を雇用する
夫婦で起業するにあたって選択されやすい、オーソドックスなパターンです。片方は個人事業主として事業を運営し、もう片方はサポート役として関与します。
起業した場合、会計帳簿を作成しなければなりませんが、このパターンでは個人事業主1人分だけ用意すれば問題ありません。開業届を出して青色申告をすれば、さらに大きな節税効果も期待できるでしょう。
夫婦が別の事業で個人事業主として起業する
起業するにあたって、どちらも個人事業主になるパターンもあります。両者が得意分野の事業をそれぞれ展開することで、共倒れのリスクを減らせるのがメリットです。
ただし、確定申告の際は会計帳簿を2つ分用意しなければならないため、事務作業の手間がかかります。また、夫婦間の業務委託は、受注側は売上を、発注側は経費をそれぞれ計上できない点に注意しましょう。
どちらかが法人を設立し、配偶者を雇用する
片方が法人を設立し、配偶者に手伝ってもらうパターンも一般的です。一定の所得を超えている場合、法人の設立によって高い節税効果が期待できます。
ただし、個人事業主のときと比較すると、法人登記をはじめとする手続きが多くなる点がデメリットです。また、家族従業員は原則雇用保険に加入できません。
法人化して配偶者を従業員として雇用するメリット・注意点
夫婦で法人化する場合、片方が配偶者を従業員として雇用するケースは珍しくありません。以下では、配偶者を従業員として雇用するメリット、そして雇用するにあたって押さえておきたい注意点について解説します。
メリット
代表的なメリットの1つとして、人材募集の必要がない点が挙げられます。従業員の募集をする場合、面接をする採用担当者の人件費や求人広告を掲載するための広告費用など、さまざまな費用を確保しなければなりません。
採用した従業員も長く働いてくれるとは限らず、万が一、数ヶ月程度で退職されてしまった場合、さらなる採用コストがかかり、会社の経営状態に影響を与える可能性もあります。しかし、配偶者を従業員として雇用すれば、各種採用コストはかからず、退職のリスクも通常の従業員よりも低く抑えることが可能です。
また、控除を受けながら給与を経費に入れられるため、さらなる節税効果も期待できるでしょう。そのほかにも、家族の時間が増やせる、仕事の相談がしやすいなどがメリットとして挙げられます。
注意点
配偶者を従業員として雇用する場合は、配偶者が名ばかり従業員にならないように注意しましょう。家族経営の会社では、実態は勤務していないにもかかわらず、給料だけ支給されているケースは、決して珍しくありません。
配偶者を雇用するメリットの1つに給与を経費に入れられる点を挙げましたが、給料は労働に従事している方が受け取るべきものです。もしほかの従業員が名ばかり従業員の存在を知ってしまうと、仕事に対するモチベーションを失ってしまい、最悪の場合退職されかねません。
もちろん、法的にも問題があるため、配偶者を雇用する場合はしっかり仕事をこなしてもらいましょう。それ以外にも、仕事とプライベートの区別がつきにくい、配偶者とほかの従業員の扱いのバランスに注意しなければならないなども、デメリットとして挙げられます。
法人化して配偶者を代表や役員にするメリット・注意点
夫婦で法人化する場合、配偶者をただの従業員ではなく、法人の代表や役員にするケースもあります。配偶者を法人の代表や役員にするメリット、そして注意点は以下のとおりです。
メリット
配偶者を代表、または役員にするメリットとして、所得分散が可能な点が挙げられます。所得分散とは、1人あたりの給与の額を減らして税金を安くすることです。所得分散自体は配偶者がただの従業員でも可能ですが、代表や役員にすると、より高額な所得分散ができます。
また、配偶者が社会保険に加入できる点もメリットです。会社の負担は大きくなりますが、将来受け取れる年金の金額が増え、社会保険は法定福利費として損金に算入できます。
そして、代表を配偶者にすることで、副業が発覚しにくくなります。昨今は副業を認めている会社も増えていますが、労働時間をはじめ制限を設けているケースも多いため、自由度が高いとはいえません。法人の代表や役員を配偶者のみにすれば、自分の名前はどこにも出ないため、副業が本業の会社にバレるリスクを最小限に抑えられます。
注意点
配偶者を法人の代表や役員にする場合、社員の反発を生まないように、細心の注意を払ってください。配偶者に実績があれば問題ありませんが、配偶者というだけでいきなり代表や役員に就任してしまうと、ほかの従業員の反発を生みかねません。
会社の従業員が不満を抱かないように、透明性のある報酬制度を設けましょう。また、事業年度途中で役員報酬を変更するのは、基本的に不可能です。
万が一財政状態が悪化しても、期首に決めた報酬額を必ず支払わなければなりません。そして、配偶者がほかの会社に所属している場合、副業が禁止されていないか、就業規則を確認しておきましょう。
夫婦で法人を設立する場合の会社形態
夫婦で法人を設立するにあたって、会社の形態を選択する必要があります。日本で現在設立できる会社の形態は4種類ですが、そのほとんどが株式会社と合同会社です。
以下では株式会社と合同会社、それぞれの形態の特徴について解説します。
株式会社
株式会社とは、株式を発行し、集めた資金をもとに経営する会社形態のことです。そして、発行した株式を所有している人は、株主と呼ばれます。
株主と経営者の役割が切り離されているのが特徴ですが、出資者と経営者は同一人物でも問題ありません。また、証券取引所で株式を公開している上場企業になれば、資金調達力や信頼性の向上も期待できるでしょう。
ただし、上場するとコストの増加をはじめ、さまざまなリスクも発生します。本当に会社にとってプラスになるのか、よく検討してから上場するか否か決定しましょう。
合同会社
合同会社とは、2006年5月に設けられた比較的新しい会社形態です。所有と経営が一致しているのが特徴で、夫婦で会社を経営する場合はこちらの形態を選択するのをおすすめします。
理由はいくつかありますが、まず株式会社と比較すると意思決定が早い点が挙げられます。株式会社の場合、重大事項の意思決定をするときは株主総会を開かなければなりません。しかし、合同会社であれば株主総会のような会議を都度開く必要がないため、意思決定をスムーズに行えます。
また、会社に対する貢献度に応じて自由に利益配分が可能な点も、合同会社をおすすめする理由の1つです。仕事量や役割に応じて公平に利益の分配が可能なため、ほかの従業員から不満を持たれにくくなります。
夫婦で会社を経営すると節税になる?
結論から述べると、夫婦で会社を経営することが節税につながるかは、課税所得額によって異なります。ポイントとなるのは、課税所得の額が800万円を超えるか否かです。
日本では現在累進課税が採用されており、課税所得が増えるほど税率が高くなり、納める税金の金額も大きくなっていきます。そして、法人の場合、800万円を基準に税率はほぼ一定です。
そのため、800万円を大幅に超える場合は、法人化した方が節税になります。法人化を検討している場合は、所得課税の額に着目しましょう。
参考:国税庁 No.2260 所得税の税率
参考:国税庁No.5759 法人税の税率
夫婦の経営方針に適した方法で起業する
以上、夫婦で起業する場合のメリットや注意点などについて取り上げてきました。個人事業主や法人化など、起業のスタイルはさまざまです。そのなかから、夫婦の経営方針に適したものを選択しましょう。
また、配偶者を採用する場合、プライベートな出来事を仕事に持ち込まない、贔屓しないなど、ほかの従業員に対して配慮が必要な点も忘れてはいけません。
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