- 更新日 : 2023年9月19日
ベンチャー企業・スタートアップとは?定義や企業例7選を紹介
ベンチャー企業と並べて語られることが多いスタートアップですが、実際のところどのような違いがあるのか、ビジネスモデルやイノベーション、成長スピード、資金調達などの観点から解説します。また、日本と海外のスタートアップ企業の違い、スタートアップで起業するメリットやデメリットについてもわかりやすく説明します。
目次
ベンチャー企業とは?
ベンチャー企業とは独自の技術やビジネスモデルをもとに大企業では取り組みにくい事業に挑戦する、成長段階の企業を指します。
以下は、日本政策金融公庫の示すベンチャー企業の定義です。
【日本政策金融公庫による「ベンチャー企業」の定義】
ベンチャー企業とは、革新的な技術・製品・サービスを開発し、イノベーションを生み出す企業であり、設立数年程度の若い企業。
より詳細な分類では、ベンチャー企業を「技術ベンチャー」「ネットベンチャー」に区分することもあります。
技術ベンチャーとは、革新的な技術そのものを開発している企業です。ネットベンチャーとは革新的な技術を使用し、インターネットサービスなどを開発している企業を指します。
出典:日本政策金融公庫「現代のベンチャー企業を知る」
多くのベンチャー企業はベンチャーキャピタルの出資を受けて、運営されています。ただし、独自の事業を展開している成長段階の上場企業を「大手ベンチャー」と呼ぶケースもあるため、注意しましょう。
スタートアップとは?
スタートアップとは、イノベーションを起こして短期間のうちに圧倒的な成長率で事業を展開する企業のことです。アメリカでベンチャー企業やIT企業などが集まるシリコンバレーで誕生した言葉といわれています。
スタートアップの特徴
スタートアップには、次の特徴があります。
- ビジネスモデルに革新性があること
- 大きな社会課題を解決に導くこと
- IPOやM&Aなどの出口戦略があること
なお、スタートアップという言葉は比較的新しいため、スタートアップとして分類される企業も新しい企業であることが多いです。しかし、スタートアップの定義では設立年については問われないので、ビジネスモデルに革新性があり、社会課題の解決につながる事業を行い、出口戦略があればすべてスタートアップだと考えられます。
スタートアップとベンチャー企業の違いは?
スタートアップと類似するイメージの言葉に「ベンチャー企業」があります。いずれも事業に新規性があり、社会課題にアプローチするなどの勢いのある企業として捉えることが少なくありません。
ベンチャー企業とはそもそも和製英語で、英語圏で使われることはあまりないと考えられます。明確な定義はありませんが、設立して間もない企業や社員数が少ない企業、また、スタートアップのように新規性があり、社会課題にアプローチする企業など、幅広い意味合いで使われることが多いです。
スタートアップはベンチャー企業の一つとして考えることもできます。新しく誕生した企業や小規模で経営している企業全体をベンチャー企業とすると、その中でも新規性があり、勢いよく成長する企業をスタートアップ、それ以外の企業をスモールビジネスというように分けて考えられます。
なお、英語でベンチャーというと企業側ではなく投資を行う側(ベンチャーキャピタル)を指すことが一般的です。ベンチャーについてより詳しくは次の記事で解説しています。ぜひご覧ください。
スタートアップとスモールビジネスの違いは?
スタートアップとスモールビジネスは、いずれも日本ではベンチャー企業とひとくくりにされることが多いかもしれません。しかし、紹介したようにベンチャー企業という大きな枠の中に、スタートアップとスモールビジネスが存在すると考えられます。
スモールビジネスは、スタートアップとは対立する概念ともいえます。スタートアップは短期的に急成長することを目指しますが、スモールビジネスは長期的スパンで事業を進め、出口戦略を設けません。また、スタートアップのように新しいマーケットを開発するのではなく、既存マーケットで事業を展開します。
例えば、新しくパン屋を始める場合は、スモールビジネスと考えられるでしょう。爆発的な売上増を期待するのではなく、地域に根ざして長期的スパンで事業を進めていきます。また、パンを焼いて売るというビジネスは特に新規性のあるものではありません。既存のマーケットで事業を展開し、長く安定した利益獲得を目指します。
仕事内容を一言で説明できるかどうかも、スタートアップとスモールビジネスを見分けるポイントです。これから新しいマーケットを開発するスタートアップはビジネスモデルも既存のものとは異なるため、関係者以外に説明することが難しいでしょう。また、同時に複数のビジネスを進めることも多いため、より説明しづらくなることがあります。
一方、スモールビジネスは既存マーケットで事業を展開するため、ビジネスモデルも従来のものを踏襲し、事業関係者以外にも簡単に仕事内容を説明することが可能です。
日本と海外のスタートアップ企業の違いは?
日本と海外のスタートアップ企業の違いは、スタートアップエコシステムが確立しているかどうかという点にあります。
スタートアップエコシステムとは、スタートアップ企業が生まれやすい環境のことです。新しい技術を開発する大企業や大学の研究機関、新しい企業をサポートする公的機関、資金面でのサポートを行うベンチャーキャピタルなどがネットワークを作り、スタートアップ企業を支えつつ発展していきます。
アメリカなどの海外ではスタートアップエコシステムが確立しているため、スタートアップ企業が生まれやすく、成長しやすい土壌があるといえます。一方、日本ではスタートアップエコシステムが確立していないため、誕生しても成長しにくく、出口戦略が難しいことが多いです。
ベンチャー企業・スタートアップの代表例
「ベンチャー企業」と一口に言っても企業によって特色が異なり、事業内容や成長戦略はさまざまです。以下では、日本の主要なベンチャー企業をピックアップして紹介します。
カカクコム
カカクコムは1997年に創業され、家電や生活雑貨の購入支援サイトを運営している企業です。カカクコムは2003年に東証マザーズ・2005年に東証一部へと上場し、飲食店の検索・予約サイトや保険のコンサルティングサービスを立ち上げました。近年では、飲食店向け業務支援アプリの開発や求人情報一括検索サイトの運営などにもチャレンジしています。
楽天
楽天は1997年の創業以来、イノベーションの力を重視して多様な事業を展開し、成長してきた企業です。楽天はインターネットショッピングが一般的ではなかった時代に大規模な通販モールを開設した後、金融事業やスポーツ・文化事業なども手がけて、世界市場へと進出しました。近年では携帯キャリア事業においても一定の成功をおさめ、EC事業や金融事業とのシナジー効果を狙っています。
出典:楽天「楽天の歴史」
サイバーエージェント
サイバーエージェントは1998年に創業され、インターネットメディア事業やゲーム事業などを展開している企業です。創業以来継続しているインターネット広告事業では国内トップクラスの市場シェアを獲得し、広告主から高い評価を得ています。2016年に開局したインターネットテレビ事業においても順調に利用者を獲得し、アプリのダウンロード数は8,300万件を超えました。
出典:サイバーエージェント「トップメッセージ」、「インターネット広告」
メルカリ
メルカリは循環型経済の実現を狙ってフリマアプリを立ち上げ、2023年で創業10周年を迎えた企業です。フリマアプリ事業の他に現在では、金融事業やECプラットフォーム事業も手がけています。
メルカリの目標は最先端技術の力で世界の人を結び、あらゆる価値が循環する社会を形成することです。メルカリでは自社の目標を達成するための一歩として、創業の翌年からアメリカ市場へも進出し、前向きなチャレンジを続けています。
エン・ジャパン
エン・ジャパンは2000年に前身企業の一部門が独立する形で設立され、求人情報サイトの運営を行っている企業です。
エン・ジャパンは今後、採用活動や人材評価を効率化する手段として注目度が高まる「HR-Tech(テック)」分野に注力し、市場シェアの拡大を目指す方針です。海外市場では今後の成長期待度が高いインドやベトナムに注目し、グローバル展開を進めています。
出典:エン・ジャパン「沿革」、「事業内容(個人投資家の皆様へ)
LINE
LINEは2011年の震災をきっかけに、大切な人との関係性を深めるための手段として、コミュニケーションアプリをリリースした企業です。LINEのリリースしたアプリはアジアを中心に人気が高まり、世界で数億人の利用者を抱えるサービスへと成長しました。LINEでは動画や音楽を楽しめるプラットフォームや生活関連サービスを提供するプラットフォームも運営し、より豊かなユーザー体験の提供を目指しています。
出典:LINE「LINEの企業理念」、「LINE/LINEプラットフォーム」
DMM.com
DMM.comは競合他社との差別化を図る目的で地方のレンタルビデオ店がインターネットビジネスに挑戦し、誕生した企業です。DMM.comの運営する総合サービスサイトの会員数は2023年時点で約4,101万人となっています。
DMM.comには新規ビジネスへの挑戦を応援する文化があり、他社との業務提携やM&Aにも積極的です。1998年の創業から現在までに、オンラインゲーム・FX・英会話関連のサービスも手がけ、主力事業へと成長させました。
ベンチャー企業やスタートアップで働くメリット
キャリアに対する考え方が多様化する昨今では、あえて大企業からベンチャー企業やスタートアップ企業に転職し、活躍する道を選ぶ人もいます。ベンチャー企業やスタートアップ企業で働くことのメリットは主に、以下3点です。
(1)担当できる業務の範囲が広い
多くのベンチャー企業やスタートアップ企業では部署の垣根にとらわれず、広範な仕事を担当できます。未経験の仕事へも積極的に挑戦すれば自分自身の可能性は広がり、市場価値の高い人材への成長を図れるでしょう。
(2)意思決定のスピードが速い
多くのベンチャー企業やスタートアップ企業は大企業と比較して企業規模が小さく、承認や決済のプロセスがシンプルです。経営陣の意思決定スピードも大企業と比較して速いことが多いため、新規アイデアの企画・提案から実践までの流れがスムーズに進みやすいでしょう。
(3)成長の機会が多い
ベンチャー企業やスタートアップ企業では入社直後から新規プロジェクトの責任者を任されるなど、成長のチャンスが多くあります。与えられたチャンスを生かして失敗を恐れずに行動すれば、短期間で劇的な自己成長を図ることも可能です。
ベンチャー企業やスタートアップで働くデメリット
ベンチャー企業やスタートアップ企業で働くキャリアには多くのメリットがある一方で、向いていないと感じる人もいます。自分自身の決断を後悔しないためには以下のデメリットを踏まえた上で、ベンチャー企業・スタートアップ企業への就職・転職を検討しましょう。
(1)業務負担が大きい場合がある
人手不足が深刻なベンチャー企業に就職すると担当する業務量が多く、体力的なストレスを感じる可能性があります。ただし、ベンチャー企業などでは自分自身の裁量で働き方を決定できるケースも多く、工夫次第では体力面の負担を感じにくいスタイルで働くことも可能です。
(2)待遇が不安定な場合がある
経営基盤が強固な大企業では従業員の待遇が比較的安定的です。一方のベンチャー企業などでは給料水準が経営状況に左右されやすい上、十分な福利厚生制度も整備されていないケースがあります。
(3)社内体制が整っていない場合がある
ベンチャー企業などでは社内体制が固まっていないことも多く、事業方針や経営者が比較的頻繁に変更されます。安定的な働き方を希望する人は、頻繁な変更をストレスに感じる可能性が否めません。
スタートアップで起業するメリット・デメリットは?
これから起業する場合、従来のビジネスで始める(スモールビジネス)か、新しいマーケットを開発してスタートアップで始めるか考える必要があります。スタートアップとして起業するメリット、デメリットを紹介するので、起業方針を決める際の参考にしてください。
メリット
スタートアップは今までにないビジネスモデルなので、社会に受け入れられると爆発的に成長する可能性があります。また、競合会社がない、もしくは少ないので、市場を独占できる点もメリットです。
スタートアップとして企業を成長させた後は、IPOやM&Aで巨額の資金調達が可能なこともあります。また、企業が成長していなくても新規性や将来性を評価された場合には、事業の高額売却が可能です。
デメリット
スタートアップは、スモールビジネスと比べるとハイリスクハイリターンの事業です。そこそこの利益を得ることは難しく、受け入れられるかまったく受け入れられないかの二択になりがちな点がデメリットといえます。小規模のまま地道に続けたいときは、スモールビジネスが良いでしょう。
スタートアップで起業する方法は?
起業の方法は、スタートアップもスモールビジネスも同じです。しかし、スタートアップでは既存のビジネスモデルや市場を利用しないため、ビジネスモデルの確立とアイデアが成功のカギを握るといえるでしょう。
資金調達の方法
資金調達の方法としては、以下のものが挙げられます。いずれもスタートアップだけでなくスモールビジネスでも活用できる方法です。
- エンジェル投資家からの出資
- ベンチャーキャピタルからの出資
- 日本政策金融公庫(新創業融資など)
- 補助金制度、助成金制度
スタートアップで社会にイノベーションを起こそう
スタートアップは社会にインパクトを与え、イノベーションを起こせる企業です。社会課題の解決を思いついたら、起業という形で実現してみてはいかがでしょうか。
よくある質問
スタートアップとは?
革新性のあるビジネスに取り組む企業のことです。短期間で爆発的な成長を遂げることもあります。詳しくはこちらをご覧ください。
ベンチャー企業とは?
新しい技術・ビジネスモデルを中核とした新規事業を興し、急速な成長を目指す新興企業のことを表す和製英語です。詳しくはこちらをご覧ください。
スタートアップとスモールビジネスの違いは?
ビジネスの内容を一言で表現できるものはスモールビジネス、そうでないものはスタートアップです。また、事業の革新性や既存マーケットとの関わり方、成長スピードも異なります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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