- 作成日 : 2024年8月23日
AI経営とは?概要やメリット・デメリット、活用事例を紹介
AI経営とは、AI(人工知能)の技術を企業運営に導入する経営手法です。高度な分析を迅速に実行でき、トレンドの予測や顧客ニーズの把握などの質も高められるでしょう。
この記事では、AI経営によって、具体的にどのようなメリットがあるのか、どのように導入するのかを解説します。
目次
AI経営とは?
AI経営とは、経営戦略や業務プロセスにおいて人工知能を活用する経営手法です。経営層から現場の担当者まで、AIの力を借りることでデータ基づいた迅速で、かつ正確な意思決定が可能になり、企業の成長を大きく加速させることができるでしょう。
導入の仕方は企業や業種、業務内容によってさまざまです。市場や競合他社の分析など経営戦略の策定に必要な情報を入手する目的で導入することもあれば、単純作業を自動化して現場の作業効率を高めるなど、AIによってできることは多岐にわたります。
また、AIの技術は現在進行形で加速的に進歩しており、今後さらにその可能性は広がるといわれています。そのため、AIをどう効果的に活用していくかが、市場での優位性を保つうえで大事なポイントとなるでしょう。
AI経営を導入するメリット
AI経営を導入することのメリットを、以下の4つに大別することができます。
- 迅速かつ精度の高い意思決定ができる
- 業務プロセスの効率化・自動化
- 顧客満足度や従業員エンゲージメントの向上
- コスト削減の可能性がある
なぜそのメリットが得られるのか、ここでは詳しく説明しましょう。
迅速かつ精度の高い意思決定ができる
経営判断において、人間の直感や経験に加えて、AIが分析した大量のデータも活用できるようになり、より客観的、合理的な意思決定が可能となるのが大きなメリットです。市場トレンドや顧客行動の変化をいち早く捉えて、競合他社に先駆けた戦略を立てることにも役立つでしょう。例えば、小売業においてAIによる需要予測を行い、在庫管理を最適化させて欠品あるいは過剰在庫を削減できます。
また、素早く精度の高い意思決定ができることで、新規事業の創出やイノベーションの加速にもつながります。
これまで見過ごされていたビジネスチャンスやイノベーションのきっかけを見つけ出せたり、AIを活用した製品・サービスの開発を進めたりして、競争優位性を確立することも期待できます。
業務プロセスの効率化・自動化
高度なAI技術でなくとも、定型的な業務や単純作業であれ、早いタイミングで自動化が可能です。これによって、従業員の負担を軽減し、その労力をより高度な業務に割ける環境を構築できるとともに、生産性の向上や人材不足の解消という効果も期待できます。
一例として、コールセンターにてAIチャットボットを導入し、顧客からの一定の問い合わせを自動化することで、オペレーターの対応時間を大幅に短縮するなどが実現できるのです。
また、業務プロセスが効率化・自動化は、リスク管理の強化やセキュリティ強化にも寄与します。インシデントが発生した場合、スピード感を持って対応することが大変重要になってきますが、検知・防御・排除などにかかる作業について自動化の範囲を拡大できれば被害を最小限に抑えられるでしょう。
顧客満足度や従業員エンゲージメントの向上
多くのデータを用いて分析することで、個々の属性や性質に合わせた最適な提案をすることができます。このパーソナライズの質を高めことができるのもAI技術の強みです。例えば、顧客の行動履歴や属性情報を分析し、顧客に合わせた商品やサービスを提供することで、顧客満足度を高められ、ロイヤルティの向上にも期待できるでしょう。
また、同様の技術によって従業員に向けた提案ができるようになるので、従業員のスキルや能力を分析して各従業員に合わせた最適なトレーニングや情報を提供するなどといった、人材育成プログラムを構築するのにも役立つでしょう。
顧客のみならず従業員に対しても目を向け、よりよい環境を作っていくことが従業員のエンゲージメントを高め、離職率の低下などにもつながります。
コスト削減の可能性
AIを導入した経営を進めていくことで、結果的にコストが従来よりも下げられる可能性があります。
システムの導入やその後の運用に初期費用やランニングコストが発生するので、部分的な観点から見ればコストは増大しますが、それ以上に別のコストが削減できれば、全体のコストの観点もプラスに捉えることができるでしょう。
このように、業務効率化や自動化による人件費の削減、在庫管理の最適化によるコスト削減など、さまざまな形でコスト削減に貢献してくれます。
AI経営を導入するデメリット
AI経営を導入するときはデメリットにも着目し、それを許容したうえでメリットの方が大きくなるかどうかを考えることが大事です。
一般的なデメリットは、以下のとおりです。
初期投資の負担がかかる
AI経営を実現するためには、まずAI技術を自社に導入する必要があります。通常は自社でAIシステムを開発するのではなく、ベンダーから提供されているシステムを利用することが一般的です。
導入するシステムが部分的・特定業務にしか関与しないものであれば、大きな費用がかからず、ランニングコストしか発生しないことも珍しくありません。一方で、企業の基盤システムとなるような、各部門・各業務を横断する大きなシステムを導入する場合、多額の初期投資が必要となることがあるため、注意しましょう。
AI技術を適切に使う人材が必要
AIシステムを導入すれば全自動であらゆる精度・効率が向上していくわけではありません。結局、そのAIを適切に扱う人材が必要になります。
AI経営の質を高めるためにも、AIやITシステムに詳しい人材を配置することが望ましいでしょう。AIシステムの規模が大きくなるほど、より高度な取り扱いをするほど、特化した人材の必要性は高くなります。
また、AIは進化のスピードが速いため、最新情報にアンテナを張ることで自社で使える技術や機能をうまく取り込んでいく姿勢も必要です。
コスト増大の可能性
先述で「コスト削減の可能性」があることを取り上げましたが、これはあくまでも導入が成功した場合です。反対に導入がうまくいかなければ「コスト増大の可能性」も十分に考えられます。
コストについて考えるときは上記の初期費用のほか、ランニングコストにも注目しましょう。昨今はITツールの導入も買い切り方式ではなく、サブスクリプション方式を採用していることが多く、初期費用が低く抑えられる代わりに毎月の費用負担が発生します。また、初期費用に加えてランニングコストが発生することもあるため、料金体系をよく確認しましょう。
そして、AI導入による効果がランニングコストを上回るように運用することが大切です。
事業者はどのようにAI活用を進めるべき?
AIを活用してみたい方は、多いと思います。しかし、それと同時に、どうやって導入・活用を進めていけばいいのかイメージできないと感じる方もいるのではないでしょうか。
AI経営の導入に失敗しないよう、おおまかな流れを紹介しますので、参考にしてください。
手順 | 内容 | |
---|---|---|
1 | AI技術を理解する | ・AIで何ができるのか、どのような技術があるのかを理解することが重要 ・画像認識や自然言語処理、予測分析などさまざまな技術があり、機能性を深く理解すれば活かし方も見えてくる |
2 | 自社の課題を明確化 | ・自社の業務の中でどのような課題があるのか、その課題はAIによって改善できるのかを考える、あるいは現状問題とはなっていないものの、さらにスピードや質を向上させられる分野はないかを考える |
3 | AIベンダーの選定 | ・技術力への定評、実績の豊富さ、サポート体制、料金体系などに注目して、AIベンダーを選定する |
5 | 段階的に導入 | ・導入失敗によるリスクを低減し、導入効果を最大化するためには、まず小規模なPoC(Proof of Concept、実証実験)から始め、AI導入の効果を検証する、続いて一部の業務でAIを導入(パイロット運用)した後、問題がなければ本格導入を行う。 |
AI活用・導入を進めるうえでは、経営陣や現場の従業員がAI技術に対して受け入れようとする姿勢も求められます。新たな技術を取り入れることに対して抵抗を持つ方もいるかもしれませんが、積極的に活用しようとする前向きな気持ちがなければ期待する効果が得られない可能性が高くなります。
職場の雰囲気によっては、導入に先立ってAIに対する教育や研修を実施することも考えましょう。
AI経営を導入している事例
AI経営を導入している企業はすでに全国に多数存在しています。そのうちの一部について、どのようなシステムを導入し、どのような結果が得られたのかを簡単にご紹介いたします。
職人の技術を学習したAIオーブンの開発事例
株式会社ユーハイムでは、菓子職人の焼き加減を学習させたAIにより高品質なバウムクーヘンを自動で焼き上げるオーブンを開発しました。
このバウムクーヘン専用のAIオーブン「THEO(テオ)」は、職人による焼き具合を層ごとに画像センサーで解析し、その技術を機械学習しています。技術をデータ化させることによって、無人でも職人と同じレベルの商品製造が実現可能となりました。今後は菓子職人の人材不足を助けるものとして展開していくことも想定されているようです。
工具破損の予知・検知を行うスマート工場化を実現した事例
株式会社山本金属製作所では、工具の破損について予知・検知するAIシステムを開発し、そこから自社をスマート工場化しました。さらに、他社の機械加工最適化を支援するサービスの提供まで展開しています。
同社ではまずAI導入を進めるための人材を採用し、そこから10年にわたり工具のデータを収集・分析していました。その蓄積が実を結び、学習データの要件を定義できたことで、AIの活用がスムーズに進められたのです。
AI検品システムで生産性と安全性が向上した事例
六甲バター株式会社では、製造ラインに流れてくるチーズをAIシステムにより検品するシステムを構築することで、生産性と安全性の向上につなげています。
AIによるカメラ画像分析を自動で行うことで、1分間に500個流れてくるチーズを検品することで、AIが学習した画像の比較により製品の良し悪しを判断できようになりました。この導入によって製造ラインのスピードを維持しつつ目視では発見が難しい箇所も網羅的に検査できるようになっています。
参考:ビジネスの現場に役立つAI導入・活用事例集と契約実務・知的財産の手引き
AI経営で他社に差をつけよう
AI経営は、企業が競争優位性を高め、持続的な成長を遂げるうえで強力な味方となるでしょう。データに基づく意思決定や業務効率化、新たな価値の創出など、AIは多くのメリットをもたらしてくれます。
一方で、コストの発生や運用体制の構築、人材育成など、課題もいくつか存在しています。この点をクリアできれば他社よりも有利に働き、事業をさらに発展させることができるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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