• 更新日 : 2025年5月19日

マッサージ店を開業するには?許認可や資格、資金、助成金をまとめて解説

適切な集客方法によっては、年収1,000万円を実現しているマッサージ店も存在しています。

開業にはあん摩・マッサージ・指圧やはり・きゅう、接骨院などは国家資格が必要ですが、リラクゼーション目的のもみほぐしや足つぼマッサージ、カイロプラクティックなどは、医療行為に該当しない限り、資格がなくても施術を行うことができます。

開業を成功させるには、開業前からのSNSでの集客や、コンセプトとターゲットの明確な設定などが必要です。本記事では、開業に必要な許認可や資金などについて解説します。

目次

マッサージ店の開業・経営の現状は?

マッサージ店の開業・経営の現状はどのようになっているのでしょうか。民間企業が発表した『美容センサス2024年上期』の調査によると、マッサージを含むリラクゼーションサロンの市場規模は、総額で約3,674億円に達しており、前年比で約9.6%増加しています。整体、もみほぐし、足つぼなどの分野は約2,564億円と市場の大半を占めています。

2000年以降、新型コロナウイルス感染症の影響で一時的に利用が落ち込みましたが、感染症の5類感染症への移行を受け施術への抵抗感が薄れ、2023年になり利用率が回復傾向です。

かつては女性に偏っていた利用状況ですが、近年は男性の利用率も増加しています。また、利用者1回あたりの施術料金や、年間の利用回数もここ数年で上昇傾向にあり、業界全体として収益の拡大が期待されています。

今後も高齢化の進行や健康志向の高まりを背景に、リラクゼーション業界全体や国家資格を要する施術所(あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう、柔道整復)の市場は、成長が期待されます。特に、男性客の利用拡大など、従来とは異なる需要の変化も市場を牽引する要因と考えられ、マッサージ店を開業するには適切なタイミングといえるでしょう。

マッサージ店の開業ができる資格

マッサージ店の開業に必要な資格について解説します。

あん摩マッサージ指圧師【必須】

器具を使わず、手や指で押したりもんだりする施術であるあん摩・マッサージ・指圧を行うためには、国家資格である「あん摩マッサージ指圧師」の資格が必要です。資格の取得には、文部科学大臣または厚生労働大臣に認定された養成施設(専門学校・大学など)で3年以上学び、国家試験に合格するのが条件となっています。

もしもこの資格を保有せずあん摩・マッサージ・指圧を行った場合、「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」に違反することになります。ただし、リラクゼーション目的の『もみほぐし』は医療行為に該当しないため、資格は不要です。

はり師・きゅう師【必須】

はりやおきゅうなどの器具を使って施術を行うためには、はり師やきゅう師の国家資格が必要です。文部科学大臣または厚生労働大臣に認定された養成施設(専門学校・大学など)で3年以上学び、国家試験に合格すると資格が得られます。

こちらも無資格で施術を行った場合、「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」に該当することになります。

柔道整復師【任意】

骨折や脱臼などを、手術をせずに治療するほねつぎ・整骨院・接骨院を開業する場合には、柔道整復師の資格が必要です。文部科学大臣または厚生労働大臣に認定された養成施設(専門学校・大学など)で3年以上学び、国家試験に合格すると資格を取得することができます。

マッサージ店を開業する場合、必ずしも必要とは限りませんが、柔道整復師の資格を取得することで学んだスキルや技術が施術に活かせ、ほねつぎ・整骨院・接骨院の開業の選択肢も増えるというメリットがあります。

その他の資格・民間資格【任意】

その他の資格・民間資格として、以下のようなものもあります。

  • アロマテラピーを行うアロマテラピー検定・アロマテラピーアドバイザー
  • リンパマッサージを行うリンパケアセラピスト・リンパドレナージセラピスト(ただし、医療行為に該当しない範囲で実施可能)
  • 足つぼマッサージを行うリフレクソロジスト
  • ストレッチを行うストレッチングトレーナーパートナー
  • 整体を行う整体師
  • カイロプラクティックを行うカイロプラクター

これらの資格は、認定団体の規定により講習を受講し、試験を受けることで取得できます。これらの資格取得は必須ではありませんが、一定の知識や技術があることを証明できるため、お客さまからの信頼獲得につながります。

マッサージともみほぐしの違い

国家資格の取得者であるあん摩・マッサージ指圧師が行う「マッサージ」は、治療を目的としており、医師の同意を得るなど一定の条件を満たせば健康保険が適用される場合があります。

それに対して、同様に手や指を使って行う「もみほぐし」は、心身のリラックス・緊張緩和などのリラクゼーションを目的として行うもので治療ではないため、前述の通り、資格は不要です。

ただし、ぎっくり腰や寝違えなどの痛みをともなう不調、あるいはねんざのような怪我の診察・治療は、もみほぐしではできません。治療目的のマッサージを行いたいならば、あん摩マッサージ指圧師の資格が必要です。

マッサージ店は儲かる?開業後の年収の目安

公益社団法人東洋療法学校協会が、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師の養成施設を卒業した人に対するアンケート調査によれば、マッサージ店を開業している人の年収は、平均値は約215万円であるものの、600万円以上の人が全体の6.1%とされています。

経営の工夫と働き方次第では、年収1,000万円を目指すことも十分可能といえるでしょう。

マッサージで独立・開業する方法や許認可

マッサージで独立・開業する方法を解説します。

自宅で開業する

マッサージで独立・開業の方法としてまず挙げられるのは、自宅での開業です。自宅での開業は家賃が不要となるため、コストを抑えて開業できます。その一方、住宅地での営業は集客が難しい、あるいはお客さまに生活感を感じさせない工夫が必要といった課題もあります。

なお、賃貸アパートやマンションで開業する場合、契約上の制限により事業利用が禁止されていることがあります。開業前に、管理会社や大家に事前に許可を取ることが重要です。

貸店舗で開業する

貸店舗での開業は一般的です。施術メニューとターゲットに合わせて自由に立地を選べること、および看板や内装などを思い通りに作れることがメリットです。その一方、貸店舗は契約費用や家賃が高額になることがデメリットとなります。賃貸マンションの一室を利用すれば、家賃を抑えることは可能でしょう。

前述の通り、賃貸マンションの一室を利用する場合には、店舗の営業が可能な物件を選ばなくてはなりません。その点、SOHO物件は、住居、自宅、店舗のいずれにも使えるため、おすすめです。内装が充実しているSOHO物件は、内装工事費を抑えられるメリットもあります。

フランチャイズ契約で開業する

フランチャイズ契約での開業も考えられます。有名サロンのブランドを利用できるうえ、技術や設備、宣伝などのサポートも受けられることがメリットです。

その一方、経営方針や施術方法は本部に従わなければならないため、自分の思い通りにはできないこと、および毎月のロイヤリティーの支払いが必要なことがデメリットといえるでしょう。

レンタルサロンで開業する

日時を指定して借りるレンタルサロンで開業すれば、店舗の契約費用や継続的な家賃がかからないため、店舗を借りるのと比較して固定費を大幅に抑えられます。

一方、内装の変更や家具の持ち込みができないこと、アロマオイルなど匂いの放つものを使えないことなどがあるため、施術内容に制約される可能性があるでしょう。

出張訪問サービスで開業する

店舗を持たず、お客さまの自宅へ出張して施術を行う出張訪問サービスでの開業は、店舗へ通えない高齢者などをターゲットにできます。店舗を構えていないため、店舗の契約費用や家賃などの固定費が発生しないのがメリットです。

一方で、看板などの設置ができないため、集客の工夫が必要となるでしょう。高齢者を集客するためには、チラシのポスティング、あるいは新聞・タウン誌の広告、電車やバス、駅などの交通広告など、高齢者が目にしやすい広告媒体を使用することがポイントとなるでしょう。

【必要となる許認可】

前述の通り、マッサージ店を開業する場合、施術の内容によっては、あん摩マッサージ指圧師などの国家資格が必要となります。

また、開業する際には、施術所(あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう、柔道整復)として営業する場合、保健所への届出が必要となる地域があります。

例えば、東京都では施術所(あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう、柔道整復)を開設する際には、開設後10日以内に開設届を保健所へ提出しなければなりません。開業地を所管する自治体に確認しましょう。

その他、個人事業主として開業するのであれば開業届を税務署に提出します。法人の場合は登記手続きが必要です。

マッサージ店の開業資金

マッサージ店の開業に必要な資金を見てみましょう。

店舗にかかる費用

店舗にかかる費用は、レンタルサロンや出張訪問サービスでの開業なら施術に必要な備品や広告費などの初期費用は発生しますが、契約費用や家賃はかかりません。

自宅での開業は、店舗の契約費用はかからないものの、自宅の生活感を抑えるために改装が必要です。改装は、リフォームや家具一式をそろえるのに50万円程度がかかると見込まれます。

貸店舗で開業する場合には、店舗の契約費用(敷金や礼金、仲介手数料、初月の家賃など)に100万円程度、改装費用に50万円程度を見込む必要があります。

設備や備品のための費用

設備や備品のための費用として、自宅や貸店舗で開業する場合には以下のものがかかります。

マッサージ店の設備や備品のための費用
  • 施術用のベッドや椅子:5万から10万円
  • 施術用の家具類:5万から10万円
  • パソコンなどの事務用品:0~10万円(持っているものを使用できれば不要)
  • 洗濯機などの電化製品:0~20万円(持っているものを使用できれば不要)
  • タオルやシーツ・施術着などの消耗品費:5万円程度

ランニングコスト3カ月分

上記のほかに、開業当初は売り上げがなかなか上がらないため、毎月かかるランニングコスト3カ月分程度の現預金を準備する必要があります。ランニングコストには、以下のようなものです。

マッサージ店のランニングコストの内訳
  • 毎月の家賃や管理費・駐車場代
  • 水道光熱費
  • 消耗品費
  • スタッフを雇っている場合は人件費
  • 携帯電話やインターネットなどの通信費
  • 広告宣伝費
  • 税金や保険料 など
  • マッサージ店の開業に必要な届出・手続き

    マッサージ店の開業に必要な届出・手続きを解説します。

    開業届

    開業届は、開業してから1カ月以内に、納税者の住所地または事業所の所在地を所轄する税務署に提出する必要があります。詳細は国税庁の公式ホームページを参照するか、税務署に問い合わせましょう。

    施術所開設届出書

    あん摩マッサージ指圧師やはり師、きゅう師の資格を持つ人が、その施術を行うマッサージ店を開業する場合には、マッサージ店の所在地を管轄する保健所へ開業から10日以内に、施術所開設届出書の提出が必要です。必要な書類は、保健所の窓口または自治体の公式ホームページで入手できます。

    事業開始等申告書

    個人事業を開始する場合には、都道府県に事業開始等申告書を提出する必要もあります。開業届と併せて作成・提出するとよいでしょう。

    マッサージ店の開業に活用できる助成金・補助金

    マッサージ店の開業に活用できる助成金・補助金には、以下のようなものがあります。

    名 称概 要
    キャリアアップ助成金有期雇用労働者(アルバイトやパートなど)を正社員に転換すると、1人あたり最大80万円(大企業は60万円)を受け取れる
    人材開発支援助成金「人材育成支援コース」の場合、訓練期間中の賃金について1人1時間あたり760円(大手企業の場合は380円)が助成される
    地域雇用開発助成金指定の地域に開業すると50万から800万円を1年ごとに最大3回受け取れる
    両立支援等助成金男性労働者が育児休業を取得しやすい雇用環境整備や業務体制整備を行い、育児休業を取得した場合、1人目については20万円、2人目・3人目は10万円が助成される
    自治体独自の助成金そのほかにも、地域独自の助成金がある(例:東京都の「働き方改革助成金」など)

    マッサージの開業・経営で失敗を防ぐコツ

    マッサージ店の開業・経営で、失敗を防ぐコツを紹介します。

    開業前からSNSなどで集客を行う

    マッサージ店の経営で最も重要なのは集客です。開業前からSNSなどで集客を行いましょう。また、前述のアンケート結果の通り、マッサージ店を選ぶ大きな要因となるのが「ネットの口コミ」です。良質な口コミの獲得にも力を入れましょう。

    近年では、ネットの口コミとして、以前は有力だったホットペッパーなどのポータルサイトに加え、Google Mapの口コミ情報を参考にする人が増えています。

    Google Mapの口コミ評価を高めるためには、サービスや商品の質を向上させながら、投稿をお願いするとともに、悪い口コミに真摯に対応することが必要です。明らかに店舗を陥れるような意図が感じられる内容や誹謗中傷と受け取れるような悪質な口コミは、削除依頼をすることも重要です。

    コンセプトとターゲットを設定する

    マッサージ店は多数あるため、競合店との競争を勝ち抜かなければなりません。そのためには、一般向けに誰でも相手にするのではなく、コンセプトとターゲットを明確に設定し、競合店との差別化を図る必要があります。

    例えば、同じマッサージでも、腰痛や肩こりをほぐす高齢者向けの店舗と、妊活・妊娠中の人に向けた店舗とでは、コンセプトもターゲットも異なります。自分がどのような客層に向け、どのような施術を行いたいのか、しっかりと検討しましょう。

    立地・出店場所にこだわる

    集客を効率的に行うためには、立地・出店場所にこだわることも重要です。設定したコンセプトとターゲットに合わせた出店場所を選びましょう。

    例えば、駅前やオフィス街では比較的若いビジネスパーソンの来店が多く、住宅街ではファミリー層やシニア層の利用が見込めます。

    顧客のニーズを理解する

    マッサージ店の経営を軌道に乗せるためには、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客にリピーターになってもらうことも大切です。顧客のニーズを理解し、その人に合った施術を提供・提案することで、繰り返し来てもらうことを考えましょう。

    経理・経営の知識をつける

    店舗運営を始めれば、お金の流れをすべて帳簿に記録して、損益計算書貸借対照表などを作成したうえで、確定申告消費税申告を行わなければなりません。経理・経営の知識を身に付ける必要があるでしょう。

    帳簿への記録と申告作業は、会計ソフトを導入するとよいでしょう。また、決済方法としてスマホ決済やクレジット決済などを導入すれば、顧客の利便性も高まります。

    整体・マッサージ開業向けの事業計画書テンプレート(無料)

    こちらから自由にお使いいただけるので、ぜひご活用ください。

    マッサージ店を開業する際の注意点

    マッサージ店を開業するにあたっては、さまざまな法規制や許認可が関係します。ここでは、具体的な注意点をいくつかご紹介します。

    医療行為の取り扱いと資格の重要性

    マッサージの中でも、単なるリラクゼーション目的のものと、病気や怪我の治療を目的とした医療行為(治療マッサージ)では、大きく規制が異なります。

    リラクゼーション目的の場合は医療行為に該当しないため、特定の国家資格や厳格な許認可は必要ありません。

    一方で、病気や怪我の治療を目的としてマッサージを提供する場合、あん摩マッサージ指圧師の国家資格が必須です。鍼灸師や柔道整復師は、それぞれ鍼灸施術や柔道整復術に関する治療を行う際に必要な資格です。

    風営法との関連と注意事項

    一部のマッサージ店では、性的サービスとの境界線が問題となり、風営法の適用対象となるケースがあります。マッサージ以外に、風俗営業(性的サービスの提供など)の要素が含まれる場合は、風俗営業許可を取得し、店舗の営業時間、立地、広告表現などに関する規制を遵守しなければなりません。

    飲食提供に関する留意点

    マッサージ店において、食品やドリンクの提供や販売を行うケースもありますが、飲食物を提供する場合、食品衛生法の規定に基づき、保健所への届出や衛生管理が求められます。

    アルコールを提供する場合は、酒類提供のための飲食店営業許可(食品衛生法)および酒類販売業免許(酒税法)が必要になることがあるため、事前に管轄の行政機関に確認することが重要です。

    美容行為としてのマッサージの注意点

    フェイシャルマッサージやボディトリートメントは、一般的に美容目的の施術とされるため、医療行為には該当しません。ただし、自治体によっては美容業の届出が必要になる場合があります。

    リスク管理と顧客対応のポイント

    法令遵守だけでなく、トラブル発生時のリスク管理や顧客対応の体制も店舗運営には欠かせません。サービス内容や提供方法について、利用者からのクレームを迅速に解決するためのマニュアルを整備しましょう。万が一の事故やトラブルに備え、店舗運営保険や賠償責任保険への加入を検討することで、経営リスクの軽減が図れます。

    また、顧客対応やトラブルシューティングに関する定期的な研修を行い、全体としてのサービス品質向上に努めることが求められます。

    集客をしっかり行い、マッサージ店を成功させよう

    マッサージ店の開業を成功させるためには、集客が何よりも重要です。集客を効率的に行うためには、開業前からのSNSなどでの告知や、コンセプトとターゲットの明確な設定、立地・出店場所にこだわることなどの方法があります。集客をしっかり行い、マッサージ店を成功させましょう。


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