• 更新日 : 2023年6月23日

ゴーストレストランの開業に必要なことは?店舗不要の飲食店の作り方

ゴーストレストランの開業に必要なことは?店舗不要の飲食店の作り方

実店舗を持たずにデリバリーサービスでお客様に料理を届ける、ゴーストレストランが注目を集めています。ゴーストレストランの開業は、店舗の取得・改装費用がかからないため、初期投資を少なく抑えられるのがメリットです。この記事では、ゴーストレストランのメリット・デメリットや開業の方法・費用、必要な資格について解説します。

ゴーストレストランってどのようなお店?

それでは最初に、ゴーストレストランがどのようなお店なのかを見ていきましょう。

デリバリー専門のレストランのこと

ゴーストレストランとは実店舗を持たずに営業する、デリバリー専門のレストランのことです。ニューヨークで誕生し、新しい飲食店のスタイルとして日本でも広がりを見せています。

一般にレストランの開業には大きな初期投資が必要です。店舗の敷金や礼金、設備や改装の費用がかかるため、小規模でも数百万円、それ以上の規模になると1,000万円程度が必要になるといわれています。しかし、店舗を持たずに開業すれば初期投資を大幅に削減できるため、資金面でのハードルがぐっと下がることになるのです。

ゴーストレストランでは、電話やインターネットで注文を受け付け、デリバリーサービスを利用してお客様に料理を配達します。近年では新型コロナ感染拡大の影響で、日本でもフードデリバリーサービスが一気に普及したため、ゴーストレストランの開業は十分現実的な選択肢になっているといえるでしょう。

自宅の台所や店舗の間借りで開業する人も

ゴーストレストランは自宅のキッチンや店舗の間借りでも開業できます。ゴーストレストランの営業形態は、大きく分けて、以下の3つがあります。

【1】自宅キッチンの利用

ゴーストレストランはキッチンだけあれば開業できるため、自宅のキッチンを利用しての開業も可能です。自宅のキッチンを利用できれば、開業費用は大幅に節約できることになります。

ただし、どのようなキッチンでも開業できるわけではありません。ゴーストレストランも飲食店となるため、保健所の検査をクリアして飲食店営業許可を取得しなければならないからです。

保健所の検査をクリアするためには、以下のような条件を満たす必要があります。

  • 建物の構造・面積
    建物は清潔で丈夫であり、目的に応じた広さが必要。また、調理スペースと住居スペースが区切られていなければならない。

  • 水洗いできる素材であり、勾配がつけられて排水口が備えられていること。

  • 床から1メートルの高さまでは、タイル張りやコンクリートなどの耐水性のある素材であること。

  • 虫の侵入を防ぐ網戸が設置されていること。
  • 換気システム
    シャッター付きの換気システムがあること。
  • 照明
    手元がしっかりと見える明るい照明であること。
  • 洗浄・給湯設備
    2層式のシンクと給湯設備が設置されていること。
  • 手洗い設備
    住居用とは別に、手洗い専用の設備があること。
  • 冷蔵・冷凍設備
    温度計付きの冷蔵・冷凍設備。
  • 保管庫
    調理器具や食材を保管するための、扉が付いた棚があること。
  • ゴミ箱
    調理場専用のゴミ箱があること。

一般の家庭用キッチンで以上の条件をすべて満たすのは、難しいこともあるでしょう。保健所の検査を受け、飲食店営業許可が下りなかった場合には、以下のシェアキッチン、クラウドキッチンの利用を考えます。

【2】シェアキッチンの利用

シェアキッチンとは、一つのキッチンを複数のお店で利用するものです。例えば、夜だけ営業する飲食店のキッチンを、昼間の時間帯だけ借り受けるなどのケースが該当します。家賃や光熱費の応分の負担は必要となりますが、物件取得費や内装工事費、備品代などの初期投資は不要です。

【3】クラウドキッチンの利用

クラウドキッチンとは、あらかじめデリバリー専門店の入居を想定して作られた施設です。ブースで区切られた複数のキッチンが設置され、そのうちの一つをレンタルで利用します。かかる費用は家賃や水道光熱費、売上金額に応じた手数料などです。

ゴーストレストランを開業するメリット・デメリット

飲食店をゴーストレストランとして開業するメリットとデメリットを見ていきましょう。

初期投資・人件費を抑えられる

ゴーストレストランとして開業する1番のメリットは、初期投資と毎月の人件費を抑えられることです。

実店舗を構えて飲食店を開業すれば、店舗取得のため、敷金や礼金、保証金、仲介手数料、前払い家賃2カ月分などの費用がかかります。また、必要に応じて内装工事やテーブル・椅子の購入なども必要になるでしょう。ゴーストレストランの開業ではこれらの費用は不要となるため、初期投資の大幅な削減が可能となります。

ゴーストレストランでは料理を作るだけで、来店したお客様へのサービスは不要です。そのため、サービススタッフを雇う必要がなくなり、人件費も削減できます。

席数・回転率による制限がない

席数や回転数による売上の制限がないことも、ゴーストレストランのメリットです。

一般に実店舗を構えた飲食店では、テーブルと席を設置しなくてはならないため、席数以上にお客さんを入れられないことが売上を制限する要因となります。また、お客さんが席で食べている間は新しいお客さんは座れないため、お客さんの回転率も売上の制限要因です。

テーブルと席を設置しないゴーストレストランは、席数・回転率の制限を受けません。そのため、キッチンの業務効率次第で、売上をいくらでも伸ばすことが可能です。

フードデリバリーが普及したため需要は堅い

コロナ禍によってフードデリバリーが普及したため、ゴーストレストランの需要が堅く見込めることもメリットです。

ICT総研の『2021年 フードデリバリーサービス利用動向調査』によると、日本のフードデリバリー市場は、コロナ前の2018年には3,631億円でした。ところが、2019年には4,172億円へと拡大、新型コロナによる外出自粛が目立ち始めた2020年は4,960億円、2021年には5,678億円へと伸び続けています。2022年は6,303億円、2023年は6,821億円へとさらに拡大の予測もあります。

このようなフードデリバリーの需要拡大の動きを受け、店舗型の飲食店もデリバリーサービスを提供するようになっています。フードデリバリーの利用は新しい生活様式として定着したため、ゴーストレストランの需要もこのまま堅調に推移するでしょう。

リピーターをつくりづらい、という難点も

以上のようにさまざまなメリットがあるゴーストレストランですが、デメリットもあります。それは、リピーターをつくりにくいということです。

店舗型のレストランであれば、店主やスタッフの人柄でお客さんに親しみを感じてもらい、なじみ客となってもらうことも比較的容易です。それに対してゴーストレストランでは接客を行わないため、お客さんとの接点は料理のみとなってしまいます。

料理の味が他店と比較して飛び抜けているならリピーターの獲得もできますが、そうでもない場合には新規のお客さんしか獲得できないという、厳しい世界でもあるのです。

ゴーストレストラン開業のために必要なことは?

ゴーストレストランの開業に必要な、開業資金や業者との契約、公的機関への届け出・手続きについて解説します。

開業資金の目安

開業資金の目安は、開業形態が自宅、シェアキッチン、クラウドキッチンのそれぞれで、以下のようになります。

自宅で開業する場合

自宅で開業する場合、キッチンの仕様が保健所の検査をクリアし、何の変更もせずに開業できるなら、必要な費用は以下のもののみとなります。

  • 食品衛生責任者受講費用 ……1万円程度
  • 飲食店営業許可申請費用 ……1万5,000円程度
  • 新たに必要な調理器具や消耗品の購入代金 ……3万円程度

【合計 6万円程度】

シェアキッチンで開業する場合

夜だけ営業しているバーのキッチンを昼間だけ借り受けるようにした場合には、飲食店営業許可申請は、もう取得されているので必要ありません。厨房設備の追加などをしないのなら、必要な費用は以下のとおりです。

  • 家賃の前払金 ……8万円程度
  • 食品衛生責任者受講費用 ……1万円程度
  • 新たに必要な調理器具や消耗品の購入代金 ……3万円程度

【合計 12万5,000円程度】

クラウドキッチンで開業する場合

クラウドキッチンをレンタルし、厨房機器を新たに購入しない場合は、必要な初期費用は以下の程度となるでしょう。

  • クラウドキッチンの契約金と月額利用料前払金 ……70万円程度
  • 食品衛生責任者受講費用 ……1万円程度
  • 飲食店営業許可申請費用 ……1万5,000円程度
  • 新たに必要な調理器具や消耗品の購入代金 ……3万円程度

【合計 76万円程度】

デリバリー業者との契約や防火設備費用なども見積もる

ゴーストレストランの開業には、デリバリー業者との契約が必要です。主なデリバリー業者には、以下のものがあります。

Uber Eats

デリバリーサービスで一番有名なのは、やはりUber Eatsでしょう。全国でサービス展開しており、アプリの使い勝手も良いといわれています。

出前館

日本では最大手のデリバリーサービスです。ただし、他のサービスと比較して売上手数料がやや高いといわれています。

menu

全国主要都市を中心にエリア拡大中のサービスです。ゴーストレストランの競合が比較的少ないため、新規参入でも売上を確保しやすいかもしれません。

また、調理器具や給湯設備、防火設備、空調設備など各種機器・設備の点検もしておきましょう。不具合がある場合には、修理のための費用がかかる可能性があります。

食品衛生責任者・飲食店営業許可などの届け出や手続きを忘れずに

飲食店の開業にあたっては、飲食店営業許可の取得が必要です。飲食店営業許可を取得するためには、まず食品衛生責任者を設置しなくてはなりません。

食品衛生責任者は、調理師や栄養士などの資格を持っていればすぐになれます。資格を持っていない場合でも、食品衛生責任者養成講習会を受講することでなれます。

食品衛生責任者を設置したうえで、管轄の保健所の検査を受けます。保健所の検査に合格すれば、営業許可証がもらえます。

ゴーストレストランを順調に経営していくために

ゴーストレストランを順調に経営していくために、どうすればよいかを解説します。

デリバリーの強みを意識したサービスを展開する

まず、デリバリーの強みを意識したサービスを展開しましょう。デリバリーの大きな強みは、前述のとおり席数や回転率に売上が左右されないことです。たくさん注文が入っても、調理可能であれば対応できます。そのため、調理時間をどう短くできるかが、サービスのポイントになってきます。

逆に、デリバリーの弱みは、配達している間に冷めてしまうことです。そのため、冷めてもおいしく食べられるメニューを開発する必要があります。

お店の宣伝を工夫する

ゴーストレストランは実店舗を持たないため、何もしなければお客様の目に留まることがありません。お客様に存在をアピールするには、お店の宣伝に工夫が必要です。

デリバリーサービスはインターネットから注文するため、インターネット上で多くの人の目に留まる方法を考えることが有効です。SNSを活用したり、ホームページを立ち上げたりするのがよいでしょう。

また、デリバリー可能エリアにチラシを配ったり、フリーペーパーに広告を出したりするのもおすすめです。イベントやケータリングなどを受注すれば、それをきっかけに知名度が一気に高まる可能性もあるでしょう。

開業が手軽だからこそ運営計画をしっかりと練る

ゴーストレストランは比較的手軽に開業できますが、だからこそ運営計画をしっかりと練る必要があります。安易な気持ちで開業すれば、経営に失敗する可能性があるからです。

運営計画を練るためには、事業計画書を作成してみるのがよいでしょう。創業の動機や資金の状況、事業の見通しなどを1枚の紙にまとめると、事業を客観視できるようになります。

事業計画書の作成にあたって重要なのは、地域のニーズをしっかりと把握したうえで、競合にはない自分の強みを考えることです。市場調査も重要ポイントになってくるといえるでしょう。

開業のしやすさが魅力!ゴーストレストランを始めてみませんか

実店舗を持たずにデリバリー専門で営業するゴーストレストランは、自宅のキッチンや店舗の間借りで開業する人もいます。初期投資や人件費を抑えられる、あるいは席数・回転率による制限がないなどのメリットがある一方、リピーターをつくりにくいというデメリットもあります。

ゴーストレストランの開業にあたっては、開業資金を準備し、デリバリー業者との契約や防火設備費用などを見積もったうえで、飲食店営業許可などの届け出・手続きを行います。デリバリーの強みを意識したサービスを心がけ、お店の宣伝を工夫すれば、順調に経営できるでしょう。


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