• 更新日 : 2024年9月6日

独立・開業時の補助金、助成金と選び方【女性、個人事業主】まとめ

独立・開業に役立つ補助金・助成金の情報を当記事にまとめました。補助金などを活用するときはメリットやデメリット、注意点を理解しておくことが重要です。本記事で要点を押さえておきましょう。

利用できる補助金や助成金の具体例、そして選び方についても解説していますので、ぜひチェックしてください。

補助金・助成金とは?

補助金と助成金は、どちらも国や地方公共団体からの資金援助である点は共通していますが、管轄省庁や目的、審査基準などが異なります。

特徴補助金助成金
管轄省庁経済産業省、中小企業庁など厚生労働省など
目的政策目的の達成(経済活性化、技術開発、創業支援など)特定の活動の支援(雇用促進、労働環境改善、人材育成など)
対象者企業、個人事業主など
審査あり(交付要件を満たして審査を通過する必要がある)
返済の必要性原則としてなし

各制度の特徴を理解し、ご自身の状況や目的に合ったものを選ぶことが重要です。

補助金

補助金は、国や地方公共団体が政策を達成する目的で、企業や個人などの事業者に対して交付する返済不要の金銭です。

例えば「地域経済の活性化」や「地域雇用の創出」、「新技術の開発」、「環境問題への対策」など、さまざまな政策目標達成を目指して実施されています。

補助金を受けるためには、申請書を提出し、審査に通過しないといけません。審査に通るのは簡単ではありませんが、その反面、うまくいけば資金調達ができるだけでなく「この補助金についての受給実績がある」というアピールもできるようになります。信用力を高めたり、新たなビジネスチャンスを広げたりする効果も期待できます。

助成金

助成金の多くは厚生労働省が管轄しており、雇用創出や労働環境の改善、人材育成などの企業活動を支援するために金銭が交付されます。

労働者の雇用安定やスキルアップ、職場環境の改善などに取り組む場合は利用を考えてみましょう。

なお、助成金を受けるためには補助金と同様、申請書を提出して審査に通らなければいけません。

独立時に補助金・助成金を活用するメリット

独立・開業を目指す方にとって、よくある大きな問題が「資金不足」です。この問題を解決する資金調達の方法はいくつかありますが、補助金や助成金を活用することには次のメリットが挙げられます。

メリット解説
資金調達の負担軽減独立・開業時には設備投資や運転資金など多額の資金が必要となることもあるが、補助金や助成金を利用できれば、資金の負担を軽減でき、資金繰りの安定化を図れる。
事業計画のブラッシュアップ補助金や助成金の申請にあたって事業計画書を作成することがある。この事業計画を策定する過程で、自社の方向性や戦略をより具体化でき、計画の質を上げやすくなる。
信用力の向上「補助金・助成金を受給できた」という事実は社会的信用を高めることにつながる。大きな目標を達成できている、作業効率を上げる取り組みを行った、職場環境をよくした、など何かしらの水準をクリアしたことを意味するため、外部との取引においてプラスの印象を与えやすい。
コネクションの構築補助金・助成金の申請やセミナーへの参加を通じて、同じように独立を目指す仲間や事業をサポートしてくれる専門家との接点を持つことができ、今後コネクションとして使えるかもしれない。

このように、独立・開業時の補助金・助成金の活用は、資金調達だけでなく、事業の成長・発展を加速させるうえで有効な手段といえます。

独立時に補助金・助成金を活用するデメリット

補助金や助成金を活用する前には、デメリットについても知っておかないといけません。

デメリット解説
時間と手間がかかる補助金・助成金の申請には、事業計画書の作成や必要書類の収集など、多くの時間と手間がかかる。特に独立・開業時は事業の準備や顧客開拓などやるべきことが山積みであるため、申請手続きに時間を割くことが大きな負担となりやすい。
審査に通らない可能性がある当然ながら、補助金・助成金の対象者に入っていても、審査に通らなければ受給はできない。時間をかけて準備をしたにもかかわらず、不採択となることも珍しくない。競争率の高さが影響するケースもあるため要注意。
受給までの時間が長い審査に通ったとしても、実際に金銭が交付されるまでには長い期間を要する。独立・開業時は資金繰りがシビアになりがちだが、受給までのタイムラグに耐える必要がある。
長期間の報告義務を課されることがある補助金・助成金の受給後、継続的に事業の進捗状況や成果について報告しないといけないケースがある。この場合は報告書の作成に手間がかかったりコストがかかったりするため要注意。報告内容によっては返還を求められる場合もある。

こういったデメリットを十分に理解し、そのうえで得られるメリットの方が大きいかどうかを判断しましょう。

独立時に申請できる補助金・助成金

独立時に申請可能な補助金・助成金をいくつかご紹介します。

なお、各制度は頻繁に申請枠や要件などが変更されていますので、利用するタイミングでの最新情報を必ずチェックするようにしてください。

ものづくり補助金

1つは「ものづくり補助金」です。こちらは正式名称「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」と呼ばれる補助金で、インボイス制度や働き方改革などの制度へ対応する事業者(中小企業などの比較的規模の小さな事業者)を支援するための制度です。

申請枠には次の3つがあります。

  1. 省力化(オーダーメイド)枠
    • 人材不足の解消などに取り組む事業者が利用できる
    • 補助率は1/2・2/3
    • 補助限度額は最大8,000万円
  2. 製品・サービス高付加価値化枠
    • 革新的サービスの開発に取り組む事業者が利用できる
    • 「通常類型」では、補助率1/2・2/3、補助限度額は最大1,250万円
    • 「成長分野進出類型」では、補助率2/3、補助限度額は最大2,500万円
  3. グローバル枠
    • 海外事業に取り組む事業者が利用できる
    • 補助率は1/2・2/3
    • 補助限度額は3,000万円

IT導入補助金

「IT導入補助金」は、ITツールの導入による経営改革(DX)や業務効率改善を目指す事業者向けの補助金です。次の申請枠や類型が用意されています。

  1. 通常枠
    • デジタル化による業務効率の改善、売り上げアップを支援する。
    • ソフトウエアの購入やクラウドの利用料のうち1/2以内(最大450万円)が支援される
  2. インボイス枠
    • インボイス対応類型:インボイス対応の会計ソフトなどが補助対象。PCやレジ機といったハードにも対応している
    • 電子取引類型:インボイス対応の受発注システムなどが補助対象
  3. セキュリティ対策推進枠
    • サイバー攻撃対策のサービス利用やツール導入を支援する
    • 費用のうち1/2以内(最大100万円)が支援される
  4. 複数社連携IT導入枠
    • 複数の取引先間でツールを導入し、商圏全体の生産性向上を目指す場合などに支援が受けられる

小規模事業者持続化補助金

「小規模事業者持続化補助金」は、持続的な発展に向けて取り組む事業者を支援する補助金です。

事業活動を長く続けられるような取り組み、例えば「販路の開拓」「業務効率の向上」などに資する取り組みに対し、その費用が一部支給されます。新製品を開発したり、ホームページ制作をしたりする行為も要件を満たすことがあります。

次のように多くの申請枠が設けられており、それぞれ満たすべき要件や補助率、補助限度額が異なりますので、注意してください。

  1. 通常枠(補助率2/3、補助上限50万円、インボイス特例50万円)
  2. 賃金引上げ枠(※補助率2/3、補助上限200万円、インボイス特例50万円)
  3. 卒業枠(補助率2/3、補助上限200万円、インボイス特例50万円)
  4. 後継者支援枠(補助率2/3、補助上限200万円、インボイス特例50万円)
  5. 創業枠(補助率2/3、補助上限200万円、インボイス特例50万円)

※赤字事業者については3/4

なお、申請時点で開業していない創業予定の方に関しては対象外ですので、先に設立手続きや開業届などの手続きを済ませておく必要があります。

事業再構築補助金

「事業再構築補助金」は、ポストコロナ時代の事業者を支援するための補助金です。

社会情勢の大きな変化に伴い「事業の転換」や「業種の転換」、あるいは「新分野への展開」などに取り組まざるを得ない事業者も多いと思います。そのような場合に同補助金が利用できます。

申請枠および類型は次の通りで、ほかの補助金同様に補助率や補助限度額がそれぞれ設定されていますので、利用にあたってよくチェックしておきましょう。

  1. 成長分野進出枠
    • 通常類型
    • GX進出類型
  2. コロナ回復加速化枠
    • 通常類型
    • 最低賃金類型
  3. サプライチェーン強靱化枠

なお、どの申請枠を利用する場合でも次の3つの要件は満たさないといけません。

  • 「事業再構築」の定義に該当する事業であること
  • 事業再構築指針に沿った事業計画書を作成し、認定経営革新等支援機関の確認を受けること
  • 付加価値額(営業利益、人件費、減価償却費の合計額)が一定以上増加すること

創業助成金(東京都)

「創業助成金」は、都内で新たに事業を立ち上げる方に向けて東京都中小企業振興公社が支給を行う助成金のことです。

創業予定がある、あるいは創業から5年未満の方が対象です。その他のポイントは次のように整理できます。

  • 次のいずれかを満たす必要がある
    • TOKYO創業ステーションの事業計画書策定支援修了者
    • 東京都制度融資(創業)利用者
    • 都内の公的創業支援施設入居者 など
  • 助成対象期間
    → 交付決定日から6か月~2年
  • 助成限度額
    → 100万円(下限)~400万円(上限)
  • 対象経費
    → 人件費、賃借料、広告費、備品費、専門家費用、市場調査などの委託費
  • 助成率
    → 対象経費の2/3以内

【女性向け】独立時におすすめの補助金・助成金

特に女性向けの制度として、「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」が挙げられます。ほかにも目を通しておきたい支援事業もありますので併せてチェックしてください。

若手・女性リーダー応援プログラム助成事業(東京都)

「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」とは、東京都が実施する助成事業です。都内商店街の活性化に対し、より寄与する役割・期待値が高いと思われる方を対象に助成金が支給されます。

助成対象の経費区分は次のように分けられており、それぞれに助成率と限度額が設定されています。

対象経費助成率限度額
事務所整備費店舗の新装や改装工事3/4以内400万円

※「宣伝・広告費」については上限150万円

設備や備品の購入
広告宣伝
店舗賃借料3/4以内1年目:180万円

2年目:144万円

3年目:120万円

同事業により助成金を受け取れるのは、「女性」または「39歳以下の男性」であって、創業を予定している方あるいは個人事業主の方です。この前提のもと、次の要件をはじめとする各項目を満たさないといけません。

  • 申請者がその事業に専ら従事できる
  • 申請時点で実店舗を持っていない
  • 助成対象の業種に該当する※

※こちらから確認できます。

https://wakajo-shotengai.com/requirements/

その他独立に役立つ支援事業について

補助金・助成金ではありませんが、女性向けに優遇措置が講じられている制度がいくつかあります。

例えば日本政策金融公庫の「新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」です。創業融資の1種で、「女性」または「35歳未満か55歳以上の方」であれば比較的利息の負担を小さくして融資を受けられます。

ほかにも、男女共同参画局にて女性向け起業支援をこちらのページで紹介しております。

https://www.gender.go.jp/kaigi/renkei/team/kigyo/kigyo04.html

経済産業省では起業を考えている女性向けに「わたしの起業応援団」という、情報交換・連携ネットワークが作られています。起業に関する相談などをしたいときはこちらも利用してみるとよいでしょう。

https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/joseikigyouka/index.html

独立時の補助金・助成金の選び方

「補助金・助成金を利用するかどうか」、また「どの補助金や助成金を利用しようか」と悩んでいる方は、選び方に関して次のポイントを意識していただければと思います。

目的を明確にするざっくりと「立ち上げをするなら大きなお金が必要だろうな」と考えるのではなく、資金調達の目的を明確化する。目的が具体的に定まることで、本当に必要な資金の額などが見えてくる。
対象者を確認する利用を検討している補助金・助成金をチェックし、そもそも対象者に含まれているのかを確認する。年齢や事業の規模、開業からの年数、業種、地域などの条件が定められていることもある。
申請期限を確認するほとんどの補助金・助成金には申請期限が設けられている。「すでに締め切られている」「次の公募がいつ始まるのかわからない」こともあるため、今実際に利用できるのか、そして申請期限までに準備が整うのか、早めに着手することが重要。

申請にあたってさまざまな作業が発生しますし、審査に通るのも簡単ではありません。そこで専門家や行政機関にアドバイスを求めることも重要です。特に専門家への依頼は申請の成功率に大きく関わるため、自分だけで対応できる自信がないのなら専門家の利用も積極的に検討しましょう。

独立時に補助金・助成金を受ける場合の注意点

「受給できるまでの期間が長い」「全額が支援されないことが多い」「違反行為があると返還しないといけない」この3点については特にご注意ください。

受給できるまでの期間が長い

補助金・助成金にはそれぞれ公募期間(数週間から数か月とさまざま)が設けられており、その期間内に必要な書類を準備して申請しなければなりません。

申請が受理された後も審査に時間がかかります。書類審査や面接審査などが行われ、数週間から数か月もの審査期間を要するケースもあります。

そして審査を通過して無事交付決定を受けても、すぐにお金は振り込まれません。

このように、実際に金銭的な支援がなされるのは一定の取り組みを行ってから数か月以上がたってからです。後払いですので、すでに資金不足に陥っている段階で補助金や助成金を頼ることは困難でしょう。

全額が支援されないことが多い

補助金・助成金で支援される額は、一定の取り組みにかかった経費の一部です。まるまるすべてを支援するのではなく、1/2や2/3程度の割合で支援されるのが一般的です。

そこで「補助金を使えばこの取り組みが無料でできる」「負担なくツールを導入できる」などと考えないようにしてください。半分程度の負担は覚悟し、それに耐えられる資金力は持っていないといけません。

違反行為があると返還しないといけない

補助金・助成金は公的な資金から出されるものであり、その取り扱いについては厳重に取り締まられています。

もし虚偽の報告をしたり偽りの内容で申請したりしていると、後で補助金・助成金の返還を命じられます。

「バレなければ大丈夫だろう」「最悪バレてもその分を返せばいいだけだ」などと軽く見てはいけません。支給された分の返還だけでなく、加算金や延滞金などを上乗せした額で支払わないといけません。特に悪質な場合だと刑事罰を科されることもあります。

そのためルールは厳守する姿勢で取り組みましょう。

独立開業時は補助金・助成金の利用も考えてみよう

事業の立ち上げ時に考える資金調達といえば「融資」が一般的ですが、補助金や助成金も利用できるケースがあります。後払いのため別の方法による資金調達も必要になるかもしれませんが、今後の負担を軽減するのに補助金や助成金が大いに役立つことでしょう。

申請に通らない可能性がありますし、手続きの手間が大きいなどの難点もありますが、返済が不要な資金が手に入るのは事業者にとって大きなメリットです。新たな活動、改善、システムや設備への投資などに取り組むときはぜひご検討ください。

税理士コメント

忙しい業務の傍らに、助成金や補助金の申請書類を書き進めるのは大変なことです。

しかし、申請書類の作成過程では、自らの事業を第三者目線で見る機会が得られ、収支計画などの数字の妥当性もだんだんと理解できるようになります。

申請書類の作成を専門家に任せるより、苦しくても1度は経営者自らが作成することで、事業の方向性が見えてくるように思います。


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