• 更新日 : 2023年12月5日

ホテル経営の基礎知識!儲かる?失敗しないためのポイントも紹介

ビジネスホテルや旅館などを法人経営や個人経営するのが、ホテル経営です。ホテル経営には、自分で経営する方法のほかに、リース方式など様々な方法があります。

開業で多額の初期費用がかかるケースが多いホテル経営ですが、儲かっている・成功している人もいます。ここでは、失敗しないためのホテル経営の基礎知識について解説します。

ホテル業界の動向

はじめに、ホテル業界の最近の動向から見ていきましょう。

コロナ禍を経て回復傾向

コロナ禍で低迷していたホテル業界ですが、新型コロナウイルスの影響が収まるとともに、回復傾向にあります。

まずは、宿泊者数を見ていきましょう。観光庁が令和5年6月に公表した「宿泊旅行統計調査」には、令和5年4月・5月のホテル業界動向の調査結果(速報)が記載されています。

宿泊旅行統計調査によると、令和5年4月の延べ宿泊者数は4,554万人でした。コロナ前の2019年同月比で10.2%減となっていますが、前年同月比では39.0%増です。また、令和5年5月の延べ宿泊者数は5,012万人でした。こちらも コロナ前の2019年同月比では2.5%減となっていますが、前年同月比では36.2%増です。

コロナ前の水準までの宿泊者数には戻っていませんが、前年と比べると大きく宿泊者数が増加しており、回復傾向であることが分かります。

次に、収益についてです。帝国データバンクが令和5年7月に公表した「旅館・ホテル業界 動向調査(2022年度)」では、旅館・ホテルの6割超が「増収」と回答しています。また、2022年度の「旅館・ホテル」市場(売上高ベース)も 3.4 兆円と、前年よりも2割増となっており、このことからも、ホテル業界が回復傾向であることが分かります。

参考:
統計情報・白書|観光庁「宿泊旅行統計調査 調査結果第2次速報 令和5年4月分(第2次速報値)報道発表資料」宿泊旅行統計調査(令和5年4月・第2次速報、令和5年5月・第1次速報)
「旅館・ホテル業界」 動向調査(2022年度) | 株式会社 帝国データバンク「旅館・ホテル業界」動向調査(2022年度)

円安による海外観光客の増加見込み

ここ最近、急激な円安が進んでいます。令和5年1月では1ドル=130円前後で推移していたのが、令和5年6月末では1ドル=144.99円と、半年で15円程度も円安になっています。

円安によって海外観光客が増加することが見込まれており、今後ますますホテル業界の市場は拡大していくと考えられます。

ホテル経営は儲かるのか?

次に、ホテル経営が本当に儲かるのかどうかを見ていきましょう。

ホテル経営者の年収は?

国税庁は毎年、提出された確定申告書をもとに、納税者や所得金額、税額などの調査結果を公表しています。ホテル経営者自体の金額が分かる資料はありません。

しかし、令和5年2月に公表された「令和3年分 申告所得税標本調査」には、ホテル経営者などの不動産所得者の平均所得金額について記載されているため、参考になります。これによると、令和3年の不動産所得者の平均所得金額は、約543万円です。

令和2年が約540万円、令和元年が約521万円、平成28年が約512万円であることを考えると、年々、不動産所得者の平均所得金額が高くなっていることが分かります。

参考:標本調査結果|国税庁、「令和3年分申告所得税標本調査

ホテル経営を始める際の初期費用は?

ホテル経営の初期費用には、物件の取得費用や改装費、人件費や広告費などが必要です。初期費用の金額は、立地や物件を建設するのか、居ぬき物件を取得するのかなどによって、大きく異なります。また、経営するホテルの種類によっても異なります。

初期費用の目安は、次のとおりです。

  • シティホテル:48億円程度
  • バジェットホテル(宿泊特化型ホテル):10億円程度
  • レジャーホテル:7億5,000万円程度
  • ビジネスホテル:4億5,000万円程度

ホテルの経営形態

ひとくちにホテル経営といっても、経営形態は様々です。ホテルを経営するには、主に以下のような形態があります。

所有直営方式

所有直営方式とは、ホテルの経営者が実際にホテルを所有し、ホテルの運営も行う方式です。ホテル経営としては一般的なもので、個人事業主がホテル経営をする場合も、所有直営方式が多いです。

管理運営受託方式

管理運営受託(委託)方式とは、ホテルの経営者がホテルの所有者であるものの、運営を外部の業者に委託する方式です。また、自身の所有ではないホテルの運営を受託するタイプのホテル経営も含まれます。

個人事業主がホテルの経営者である場合、自身が所有するホテルの運営を外部業者に委託することで、負担を軽減できます。

リース方式

リース方式とは、ホテルの所有者が経営者である点は所有直営方式や管理運営受託方式と同じですが、ホテルを運営者に貸し出して収益を得る経営形態のことです。

経営者は運営を行わず、賃貸収入(リース料)を得られます。リース方式では、経営者の運営負担を軽減できるほか、賃貸収入として長期に安定した収益を得ることができます。

フランチャイズ方式

フランチャイズ方式とは、フランチャイズを展開している有名企業とフランチャイズ契約を結ぶ経営方式です。

経営者はフランチャイズ料などを支払うことで、ホテル経営のノウハウを得たり、フランチャイズの知名度を利用したりして、ホテル経営を比較的早くから収益化できます。

ホテルの収益構造

ホテルの収益構造は、一般的に宿泊、飲食、イベントの3つがあります。宿泊は、ホテルの収益でいちばん大きな割合を占めます。宿泊料が主な収入で、人件費や消耗品費などが経費になります。なかでも人件費が多くの割合を占めます。

飲食やイベントは、料理や飲料を提供したり、宴会場や会議室などのスペースを提供したりして収入を得ます。宿泊に比べて利益率が高いです。料理や飲料を提供する場合は、材料の仕入代が必要になります。また、飲食・イベントのどちらの場合も、人件費が大きな割合を占めることになります。

ホテルの収益構造では、宿泊の稼働率を良くすることはもちろんのこと、人件費の効率化や、飲食・イベントの稼働率を良くすることも、収益を上げるうえで重要となります。

ホテル経営を行うために必要な許可は?

ホテル経営を行うために必要な許可には、次のものがあります。

旅館・ホテル営業の許可

旅館やホテルを営業するためには、旅館業法にもとづいた許可が必要です。旅館業の許可は都道府県知事などから受けるもので、条例で定められている換気や照明などの構造設備基準などが審査されます。

飲食店業の許可

ホテル経営では、飲食サービスを提供するために飲食店業の許可が必要です。飲食店業の許可とは、食品衛生法にもとづく営業許可で、保健所の検査などを受ける必要があります。

公衆浴場営業の許可

ホテル経営では大浴場などの公衆浴場営業を行うため、公衆浴場法にもとづく許可を受ける必要があります。公衆浴場営業の許可は都道府県知事などから受けるもので、規模などにより、浴場の図面や消防法令適合通知書など様々な書類を準備しなければなりません。

ホテル経営を始める際の流れ

ここからは、ホテル経営を始める際の流れについて見ていきましょう。

事業計画を作成する

ホテル経営を成功させるためには、最初に綿密な事業計画を作成する必要があります。ホテルを経営するエリアやターゲット層などを細かく決め、ホテルの建築から営業開始までの期間や必要な資金などの計画、人材教育の方法なども考えます。

事業計画を作成したら、すべての行動は事業計画をもとに行われないといけません。そのため、事業計画には具体的な行動方針まで盛り込むようにしましょう。

資金調達をする

ホテルの建設や設備代など、ホテルを開業するための初期費用として多額の資金が必要です。自己資金で工面するのは難しいため、金融機関からの融資や国や自治体の補助金・助成金などを利用して、資金を調達する必要があります。資金調達には時間がかかることもあるので、余裕をもって準備します。

営業許可の取得

ホテル業を営業するためには、旅館・ホテル営業の許可や飲食店業の許可、公衆浴場営業の許可が必要です。営業許可を得るまでには様々な書類を準備したり、申請から許可が出るまで時間がかかったりします。余裕をもって、営業許可の申請手続きを行いましょう。

物件の建設・購入

原則、ホテル業の経営では、ホテル物件の建設や購入が必要です。ホテル物件の建設や購入には数千万円以上かかることも多く、資金調達やローンの手続きなどが必要です。

また、どのような物件を建設・購入するのかも重要です。費用を抑えても開業後に集客ができなければ意味がありません。費用対効果を考えて、適切な費用をかけることが必要です。

従業員の採用・教育

SNSが広まっている現在のホテル経営において、従業員の質は集客につながる重要なものです。従業員の質が良くても悪くてもSNSですぐに広がり、集客の増減につながります。そのため、必要な数の従業員を確実に採用し、マナーなどを教育していく必要があります。

人手不足で、必要な人材が集まらないこともあるので、コンサルティング会社や人材派遣会社など、外部の業者を使って従業員を採用するのも方法のひとつです。

集客・PR

ホテルの開業前・開業後にかかわらず、経営するホテルをPRし、集客しなければ、経営は成り立ちません。自社ホームページや旅行サイト、SNSなどを利用し、経営するホテルを積極的にPRしていきます。

ホテル経営者で有名な人は?

ホテル経営者として成功を収めている人は多いです。例えば、次のような人がいます。ホテル経営で成功された方の考え方や手法を参考にし、自分のホテル経営に生かしていくことも重要です。

・元谷芙美子さん

元谷芙美子さんはアパホテルの経営者で、日本各地にアパホテルを展開しています。低価格で高品質のサービスを受けられることで有名で、駅近くにも多くあり、ビジネスマンを中心に利用されています。

参考:【公式】アパグループ|APA GROUP

・星野佳路さん

星野佳路さんは、星野リゾートなどを運営している経営者です。利用されなくなったホテルなどを大胆にリニューアルし、再生させてきました。現在では、リゾート施設だけでなく、日本全国でホテル経営を展開し、成功しています。

参考:私たちについて|星野リゾート【公式】

ホテル経営に失敗しないためのポイント

最後に、ホテル経営に失敗しないためのポイントを見ていきましょう。

エリア選定にこだわる

ホテル経営では、コンセプトやターゲット層などを明確にする必要があります。コンセプトやターゲット層を明確にしたら、それに合ったエリア選定にこだわりましょう。

大都市に近い観光地のエリアにするのか、避暑地などのエリアにするのか、もしくはビジネスマンが多いエリアにするのかによって、ホテルの構造なども異なります。ホテル経営に失敗しないためにも、エリア選択にはこだわりましょう。

ランニングコストをコントロールする

ホテル経営を安定させるためには、安定した収益を生む必要があります。収益を生むためには、売上はもちろんのこと、費用も抑える必要があります。そこで重要なのが、ランニングコストのコントロールです。費用を必要以上に抑えて、サービスの質が下がり集客が減少しては、元も子もありません。

例えば、閑散期には人件費を落とす、宴会が多い時期のみ食材を多く仕入れるなど、サービスの質を安定させるように工夫し、ランニングコストをコントロールしましょう。

インバウンド需要に左右されることを理解しておく

ホテル業界は新型コロナウイルスの拡大により、宿泊客や売上の減少などの大きな影響を受けましたが、その要因のひとつにインバウンド需要が減少したことがあります。

昔に比べて、今はインバウンド需要により収益が大きく変わります。今後、インバウンド需要はコロナ前の水準に回復することが予想されるため、ホテル業の宿泊客や売上は増加が予想されます。

しかし、いつ新型コロナウイルスのような、特別な事情が生じるかわかりません。ホテル業界はインバウンド需要に左右されることを理解し、常にインバウンド需要が減少した際の対策を講じておくことが重要です。

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ホテル経営はこれから儲かる可能性が高い

ホテル業界は、コロナ禍を経て回復傾向にあります。宿泊数や売上高も、コロナ前に近づく勢いで年々回復しています。また、円安の影響もあり、インバウンド需要も増加の見込みです。そのため、ホテル経営は今後、儲かる可能性が高い業種になります。

ただし、エリア選定を間違えたり、ランニングコストのコントロールをおろそかにしたりすると、経営が失敗する可能性もあります。また、インバウンド需要の影響を受けやすい業種でもあります。インバウンド需要の状況を確認しながら、常に最善の方法を取れるようにしましょう。


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