• 作成日 : 2024年10月18日

法人登記を司法書士に依頼すべきケースは?メリットや費用相場などを解説

法人登記は、会社の設立や重要事項の変更を公的に認めてもらうための申請であり、自分で手続きすることもできます。しかし、専門知識が必要で手間のかかる作業は、法人登記の専門家である司法書士へ依頼する方がメリットは大きいことも事実です。

本記事では、法人登記を司法書士に依頼するメリットや手続きの流れ、費用について解説します。

法人登記を司法書士に依頼すべきケース

法人登記とは、法人(会社や団体など)が法的に存在することを正式に証明するために、法務局に必要情報を登録する手続きです。

新たな会社設立個人事業主が法人成り(法人化)する際には、法務局への法人登記を実施しなくてはなりません。また、会社設立時以降にも、取締役の異動、本店所在地の移転など、会社の重要事項に変更があった場合には、都度その変更事項を登記することが義務付けられています。

会社経営に不可欠な法人登記は、自分で手続きすることも可能ですが、代理人に手続きを依頼することも可能です。その代理を業務として提供するのが司法書士です。法人登記の代理申請業務は、司法書士の独占業務と定められています。士業であっても、司法書士(および弁護士)以外は登記申請の代理業務を行えません。

では、どのような場合に法人登記を司法書士へ依頼すべきなのでしょうか。以下で詳しく見ていきましょう。

どのようなケースで法人登記を司法書士に依頼するべきか?

司法書士は商業登記をはじめとした法人登記の専門家であり、会社設立などの登記申請の際には心強い味方です。

もし以下のようなケースに該当するならば、司法書士への依頼を検討すべきといえます。

<法人登記を司法書士に依頼すべきケース>

  • 法人登記の詳しい手順、手続き方法がわからない
  • 開業したばかりで人手が足りない
  • 将来を見据えて頼りになる専門家とつながりたい

登記申請には、提出書類の作成や法務局に出向いて行う手続き(もしくは郵送による手続き)など、煩雑で手間のかかる作業が発生します。日常的に発生する作業ではないため、慣れない準備や手続きに負担を感じる人も多いでしょう。

そして、法人登記が必要なタイミングは会社設立時だけではありません。会社設立以降に生じた役員変更や会社の住所変更、事業内容の変更など、会社の基本情報が変更される際にも必ず登記が必要です。

このような場合、会社法では、(本店所在地においては)原則として2週間以内に登記が必要とされています(会社法第915条第1項)。

登記事項が発生する都度、期限内に手順や方法を調べて自分で手続きを進めることは、専門家以外にとって非常に高いハードルです。

上述の内容からわかるように、頼れる専門家が身近にいることは企業経営における安心感につながるでしょう。

では、実際に司法書士に依頼できる法人登記の手続きはどういった内容でしょうか。以下で、詳しく解説していきます。

参考:e-Gov 会社法第九百十五条一項

<商業登記とは>

商業登記は、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社などの会社を対象とした登記です。

一方、法人登記は、会社以外の法人も含む登記を指します。たとえば、一般社団法人、一般財団法人、NPO法人、社会福祉法人、発行法人なども対象です。

司法書士に依頼できる内容

上述したように、法人登記は司法書士の独占業務です。設立登記ならば、申請書類の作成や定款認証や商業登記の申請など、すべての手続きを依頼できます。会社を新たに設立した後も、役員改選や子会社の新規設立など、突発的に登記が必要となった場面でも司法書士は頼りになるでしょう。
専門家として司法書士へ依頼できる登記の内容は、以下のとおりです。

<司法書士が書類作成や申請代理業務を行える登記の例>

登記の種類登記が必要なタイミング
会社設立登記会社の新規設立時
役員変更登記代表取締役や取締役、監査役等の変更時
本店移転登記会社の本店を移転する際
商号変更登記会社名を変更する際
目的変更登記事業目的を変更する際
増資の登記資本金を増加させる際
解散・清算結了登記事業を終了させる際

上記に加えて、司法書士と司法書士以外の各士業へ依頼できる業務内容を知っておくことも、後のち役に立つことでしょう。
以下にそれぞれの士業へ依頼できる業務内容を一覧でご紹介します。ぜひ参考にしてください。

<代表的な士業の業務範囲>

司法書士弁護士行政書士税理士社会保険労務士
登記申請書の作成
設立等の商業登記の代理申請
定款認証の代理申請
議事録等の作成
許認可申請
法人税申告
税務相談
社会保険関連届出
労務関係届出
雇用保険関係届出

司法書士に法人登記を依頼するメリット

法人登記は知識と時間さえあれば、自分で申請可能な手続きです。一方、専門的な知識と経験が豊富な司法書士に依頼すれば、以下に紹介する3つのメリットを受けられることも押さえておくべきです。

法人登記を自分で行うか司法書士へ依頼するか迷ったときは、これらのメリットが費用に見合っているか検討した上で判断しましょう。

スピーディーに会社設立ができる

新たに会社を設立するには、さまざまな手続きが必要です。たとえば、法務局への登記申請以外にも、役所・税務署・都道府県税事務所・社会保険事務所への申請手続きなど、設立準備作業は山積みです。

そこで、登記の専門家である司法書士へ依頼すればスムーズな登記申請が可能となり、会社の設立手続きもスピーディーに進みます。もし自分で法人登記の準備を進めるとしたならば、一つひとつの申請手順を調べて確認しながら慎重に準備を進めなければならず、多くの時間を要するでしょう。

手続きのミスを防ぎやすい

一般的に、法人登記は誰もが頻繁に行うような手続きではありません。慣れない作業を正確に進めるのは至難の業です。

万が一提出書類に不備があれば、最初から申請書類を作成し直す必要もあります。法人登記を独占業務とする司法書士へ依頼すれば、ミスのない正確な手続きで安心して設立準備を進めることが可能です。

本業に集中できる

会社設立当初は、限られたリソースの中で全メンバーが多くのタスクを抱えていることが一般的です。そのような中でメンバーが忙殺され、本業である事業の成長に手が回らなくなることは避けなければなりません。

法人登記だけでなく、会計や法務、労務まわりなど、専門知識が必要な業務は外部に委託することでサービス開発や顧客開拓といった本業に専念できます。

司法書士に法人登記を依頼する際の注意点

司法書士は法人登記の専門家であるものの、一連の会社設立手続きや設立後に必要となる申請業務のすべてをカバーしているわけではありません。

とくに、会社の新規設立に必要となる以下のようなケースでは、司法書士は専門外となることをあらかじめ頭に入れておきましょう。

経営の相談は難しい

司法書士は、会社経営のプロフェッショナル資格ではありません。経営相談を希望するならば、税理士や公認会計士、中小企業診断士など、経営支援をサポートする士業や専門家へ相談するのがよいでしょう。

なお、行政機関へ許認可が必要な事業を開始する際には、会社設立時に行政書士へ申請書の作成を依頼する必要があります。

税務の届け出は自分で行う必要がある

会社設立時に必要な手続きのうち、税務面に関する届け出は司法書士の業務範囲外です。したがって、税務関連の届出に関しては、自分で手続きを行うか、税務の専門家である税理士へ依頼する必要があります。

自分で手続きを行うことが難しい場合は、税務書類の作成、税務代理、税務相談を独占業務とする税理士へ相談しましょう。

融資などのサポートを行っていない場合がある

融資の相談や補助金の申請など、資金繰りに関する相談は司法書士では難しいことが多いでしょう。

取引金融機関以外の融資相談先としては、税理士や中小企業診断士などの別の士業か、専門サポートを提供する事業者から見つける必要があります。

司法書士に法人登記を依頼するときの費用相場

司法書士へ設立登記申請を依頼する場合のコストは、大きく分けて「司法書士への報酬」と「その他の費用」が必要です。それぞれの内訳について、以下に解説していきます。

司法書士への報酬

司法書士へ支払う報酬は、依頼する業務の「契約形態」によって異なります。

  • 単発契約: 会社設立時の登記手続きのみを依頼する場合、この1回分の費用のみ必要です。一回あたりの相場は5万〜20万円程度といわれています。相見積もりで何社か比較するのがおすすめです。
  • 顧問契約:設立後も継続してさまざまな法律的な相談や手続きを依頼する場合、月額固定の費用を支払います。顧問契約の費用は司法書士によってまちまちです。しっかりと見積もりを確認しましょう。

その他の費用

法人登記には、司法書士への報酬以外に以下の費用がかかります。

  • 登録免許税: 会社を設立する際に国に支払う税金です。会社の資本金によって金額が異なります。
  • 収入印紙代: 定款に貼り付ける印紙代です。(電子定款の場合は不要)
  • 謄本請求手数料: 登記簿謄本を請求する際にかかる手数料です。
  • 定款認証手数料:定款を公証人によって認証してもらう際にかかる手数料です。(合同会社の場合は不要)

司法書士に法人登記を依頼する際の流れ

本章では、実際に会社設立時の設立登記を司法書士へ依頼する際の一連の流れについてご紹介します。

設立登記の場合、大まかな目安として登記申請から完了まで5〜6日程度の期間が必要といわれています。以下が一般的な設立登記申請の手続き手順です。ぜひ参考にしてください。

  1. 司法書士へ設立会社の登記内容を伝達
  2. 司法書士による必要書類の作成
  3. 提出書類のチェック・実印の押印・登記費用の納付
  4. 司法書士による定款認証の代理
  5. 資本金の振込
  6. 司法書士による登記申請の代理
  7. 設立登記完了

それぞれの手順について以下で詳しく見ていきましょう。

手順1:司法書士へ設立会社の登記内容を伝達

設立登記を依頼するにあたり、まずは会社設立の登記に必要な基本情報を司法書士へ伝えましょう。

具体的には、以下のような情報を伝える必要があります。

手順2:司法書士による必要書類の作成

上述した「手順1」の内容をもとに、司法書士が必要書類を作成します。ここでいう必要書類とは、以下に記載した書類です。もしも自分で設立登記を申請する場合には、これらを不備なく用意する必要があります。

登記申請書/登録免許税の収入印紙貼付台紙/登記すべき事項/定款/取締役の就任承諾書/資本金の払い込みを証明する書面/印鑑届書/印鑑証明書

手順3:提出書類のチェック・実印の押印・登記費用の納付

手順2で司法書士が作成した書類に間違いがないかを依頼者側がチェックします。いくら専門家が作成しているとはいえ、記載内容に相違がないかのチェックは怠らないようにしましょう。

問題ないことが確認できれば、新規設立会社の実印を押印し、登記申請費用を支払います。

手順4:司法書士による定款認証の代理

司法書士は公証人役場へ出向き、ここまでに用意した必要書類を提出した上で定款認証を行います。公証人による定款認証は、法人設立に際して作成される原始定款のみに限られます。

なお、定款認証は実際に公証人役場へ足を運ぶ以外にも、オンライン申請による電子定款の認証も可能です。

手順5:資本金の振込

定款認証を終えた後、依頼者は資本金を指定の口座へ入金します。振込額は手順1で決定した資本金の額です。証憑書類として、通帳などに記載された入出金明細が必要です。

手順6:司法書士による登記申請の代理

資本金の振込後に、代理人として司法書士は所轄の法務局へ出向き、新会社設立の法人登記を申請します。登記申請は郵送でも可能です。

新設会社の「会社設立日」は、法務局で司法書士が会社設立の登記を申請した日が該当します。

手順7:設立登記完了

登記申請が完了した会社設立日からおよそ1〜2週間後に法人登記が完了します。ただし、登記申請が多い時期には、登記申請から完了までさらに多くの期間を要することがあります。

登記完了予定日経過後に、あらためて法務局へ出向き「登記簿謄本(履歴事項全部証明書)」を受け取りましょう。

法人登記の際の司法書士の選び方のポイント

法人登記を依頼する際の司法書士選びは、会社設立がスムーズに進むか否かを左右します。はじめて法人登記を司法書士に依頼する場合、どの司法書士にお願いするべきか悩むこともあるでしょう。

信頼できる司法書士を選ぶために、以下の3つのポイントを参考に、慎重に検討することをおすすめします。

ポイント1:法人登記の実績と評判

法人登記に関する豊富な経験と専門知識が高い司法書士を選びましょう。知り合いに紹介をお願いするか、Webサイト等で過去の実績や口コミ、専門分野をしっかり確認して信頼できる先を選ぶことが重要です。

ポイント2:円滑なコミュニケーション

司法書士とのコミュニケーションを円滑にできることは、契約後の進行に影響を与える重要なポイントです。初回に問い合わせた際の応対品質、質問に対して迅速かつ丁寧に対応してくれるかを確認しましょう。

また、問い合わせの手段(電話・メール・チャット・オンライン等)も事前に確認しておくと安心です。

ポイント3:明瞭な料金体系

料金が明確で、納得できるものであるかを確認します。まずはWebサイト等を確認して大まかな費用感を掴んでおくのがオススメです。

ある程度候補を絞ったら、いくつかの相見積もりを取って比較します。依頼できる業務範囲や追加費用が発生する可能性等、見積条件に関する不明点もしっかりと事前に確認しましょう。

負担大の法人登記は司法書士への依頼がおすすめ

司法書士は法人登記を独占業務とする登記の専門家です。

会社設立時のように業務が立て込む時期の煩雑な事務手続きは、創業メンバーにとって大きな負担です。専門知識が必要となる登記業務を依頼できることは、設立準備において負担軽減となることは間違いありません。

本業を第一に考えた場合、法人登記に限らずさまざまな事務手続きを外部委託し、専門家の助けを得ることは合理的な判断といえます。費用対効果をよく検討しながら、司法書士をはじめとした経験豊富な士業や専門家の力を借りることが、事業を成功に導く近道といえるでしょう。


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