• 更新日 : 2024年10月10日

飲食業の資金調達方法は?自己資金の目安や融資を成功させるコツを解説

飲食業で資金調達をする方法には、融資やクラウドファンディング、個人的な借入や助成金・補助金の活用などがあります。本記事では、飲食業が資金調達をする方法を紹介し、融資を受ける際のポイントや注意点も解説します。費用を抑えることで資金繰りの改善に役立てる方法も紹介するため、ぜひ参考にしてください。

飲食業の資金調達方法は?

飲食業が運転資金を調達する主な方法には、次のものが挙げられます。

  • 日本政策金融公庫からの融資
  • 制度融資
  • 信用金庫からの融資
  • 銀行からの融資
  • クラウドファンディング
  • 個人的な借入
  • 助成金・補助金の活用

以下では、それぞれの資金調達の方法を詳しく紹介します。どの方法が自分に合っているかを検討しましょう。

日本政策金融公庫からの融資を利用する

日本政策金融公庫は、中小企業や小規模事業者を対象として広く融資を行っている政府系の金融機関です。中小規模の飲食業事業者が融資を受けたい場合は、まず日本政策金融公庫の融資制度を検討しましょう。

飲食業で利用できる日本政策金融公庫の主な融資は以下の3つです。

  • 一般貸付(生活衛生貸付)
  • 振興事業貸付
  • マル経融資

それぞれの特徴と借入できる条件を見ていきましょう。

一般貸付(生活衛生貸付)

飲食業で設備資金の融資を受けたい場合は、一般貸付の中の「生活衛生貸付」が利用できます。通常の一般貸付とは異なり設備資金にしか使えません。しかし、通常の一般貸付の融資限度額が4,800万円であるのに対し、飲食業で生活衛生貸付を利用する場合の限度額は7,200万円までと大幅に高くなります。返済期間も13年以内と、通常の一般貸付に比べると長くなっています。

振興事業貸付

振興事業貸付は、一般貸付(生活衛生貸付)よりも有利な条件で借り入れができます。設備資金の限度額は1億5,000万円、運転資金の限度額は5,700万円です。

飲食業で振興事業貸付を受けるには、生活衛生同業組合の組合員となり、厚生労働大臣による振興計画の認定を受けなければなりません。生活衛生同業組合とは、飲食業や美容・理容業、クリーニング業などの生活衛生に関する事業の種類ごとに設立された団体で、健全な経営や生活衛生水準の向上を目指すものです。

講習会への参加や業界内の情報共有ができる、組合の共済保険に加入できるなど、融資の面以外のメリットもあります。

マル経融資

マル経融資は、担保や保証人がなくても受けられる融資です。融資限度額は2,000万円で、運転資金の場合は7年以内、設備資金の場合は10年以内の返済期間となっています。

マル経融資の対象は、商工会や商工会議所の経営指導を受けている小規模事業者です。なおかつ、商工会や商工会議所の長などから推薦を受けなければなりません。

制度融資を利用する

制度融資とは、都道府県や市区町村といった自治体が独自に設ける融資制度です。自治体と金融機関、信用保証協会が連携して運営しており、利用者は利子や信用保証料の補助を受けられるなど、中小企業が融資を受けやすい制度となっています。自治体によって対象者や内容は異なるため、詳しくは各自治体の制度融資を調べてみましょう。

信用金庫からの融資を利用する

信用金庫は、地域社会の利益を目的としている金融機関です。株主の利益を優先して考える銀行よりも、個人事業主や中小企業でも融資を受けやすい傾向にあります。ただし、銀行に比べると金利は高いといえるでしょう。

銀行からの融資を受ける

銀行からの融資も、資金調達の方法の1つです。銀行からの融資では返済能力があるかどうかが重視されるため、信用金庫より審査が厳しい傾向にあります。個人店舗で借入をしたい場合や自己資金が少ない場合は、融資を受けられないことも少なくありません。

ただし、信用金庫より金利は低めです。銀行からの融資を受けられたという事実は、信用力の向上にもつながるため、チャレンジしてみることも一案です。

クラウドファンディング

飲食業での資金調達には、クラウドファンディングも選択肢の1つです。他の飲食店と差別化を図ることで多くの人の応援を得られ、ファンや常連客の増加が見込めます。

クラウドファンディングでは多くの場合で支援者へのリターンが必要ですが、飲食業では自分の店舗の商品をリターンとして提供できます。融資と違って、集めた資金を返済の必要がないことも、飲食業でクラウドファンディングを行うメリットです。

一方で、資金が集まるまでの時間はかかりやすいでしょう。リターンの提供に手間がかかることも、デメリットの1つといえます。

知人や家族からの支援を受ける

知人や家族から借入をすることも、資金調達の方法の1つです。融資を利用する前に、近い間柄の人から個人的にお金を借りようと考える方もいるのではないでしょうか。相手の了承を得られれば、早急にお金を借りられる可能性があります。

しかし、支援をしてくれる人がいくら親しい間柄であっても、後々トラブルとならないよう注意が必要です。口約束だけでなく、借用書や契約書をきちんと作成しておくことでトラブルを防止でき、贈与とみなされて課税されることも防止できます。書類には、借入金額や返済期限、利子に関することなどを記載しておきましょう。

助成金・補助金を活用する

明確な目的がある場合は、その内容に合致した助成金や補助金を活用することも一案です。雇用している従業員の賃上げや、高齢者や障害者の採用など、特定の取り組みによって受給できる助成金があります。また、新たな調理設備やソフトウェアを導入したい場合は、補助金が使えることもあるでしょう。

助成金や補助金は、多くの場合で使い道が決まっています。運転資金を調達したい場合ではなく、目的のための資金が足りないという場合に検討するとよいでしょう。

飲食業の融資を成功させるポイント

さまざまな資金調達の方法がある中で、金融機関からの融資は多くの飲食業者が利用しています。以下では、飲食店が金融機関から融資を受けるためのポイントを見ていきましょう。

自己資金をできる限り多く準備する

金融機関から融資を受けたい場合に、自己資金がどれだけあるかは重要なポイントの1つです。たとえば、創業融資を受ける場合では、創業にかかる金額の3割ほどの自己資金を準備する人が多いといわれています。借入希望額の3分の1から2分の1程度の金額は、自己資金で確保しておきたいところです。

創業資金ではなく、開業後に運転資金の融資を受ける場合も同様に、自己資金が多ければ審査に通る可能性は高くなります。融資の審査に通ったとしても融資実行までには時間がかかるものです。そのため、現時点では自己資金があっても、将来的な資金繰りの悪化が見込まれる場合は、早めに融資の申し込みをしておくことがおすすめです。

事業計画書を入念に作成する

融資を申し込む際に提出する事業計画書は、審査における重要な資料です。これまでの経歴や実績、自分の店の強みや他店との違い、今後の展望などから、「将来性があり返済可能である」と判断されなければ、融資には通りません。

事業計画書には、事業に関係する経験や経歴を厳選して書きましょう。これまで準備してきたことや実績も、将来的に事業を継続していけると判断する材料となります。今後の売上や費用の見通しについても、過去の数値データを根拠に見積ることで、無理のない計画であると判断してもらえるでしょう。融資担当者に納得してもらえるような事業計画書を作成することが大切です。

飲食店の事業計画書のテンプレート一覧

事業計画書を作成する場合は、テンプレートを使うと便利です。以下のページでは、飲食店のジャンル別のテンプレートをダウンロードできます。事業計画書の書き方についても詳しく解説しているため、ぜひ参考にして作成してみましょう。

融資で飲食業の資金を調達する際の注意点

融資を申し込む際には、気をつけたいポイントが2つあります。審査に悪影響を及ぼす場合もあるため、しっかりと頭に入れておきましょう。

「見せ金」をしない

自己資金を多く見せるために一時的に借り入れ、融資実行後に返済してしまう「見せ金」は避けましょう。融資の審査で見せ金をしていると判断されれば、金融機関からの信用を落としてしまいます。審査にも通らない可能性が高いため、見せ金をするメリットはありません。

必要な額の融資を申し込む

融資の申請では、必要な金額を申し込みましょう。そもそも必要性を証明できなければ審査に通ることは難しく、多額の金額を借りられたとしても返済金額も多くなります。「足りないといけないから」という不安もあるかもしれませんが、何にどれだけの金額が必要かを突き詰めて考えることで、根拠のある融資金額を計算できるでしょう。ただし、まったく余裕がないギリギリの金額にはせず、ある程度の余裕は持たせることも大切です。

飲食業の運転資金を抑えるポイント

資金調達によってお金を借りるのではなく、出ていく費用を減らすことで資金繰りを改善するという方法もあります。借入を検討する前に、以下の3つのポイントを見直し、賢く飲食業を経営しましょう。

仕入原価・仕入先を見直す

食材の仕入原価を低く抑えられれば、日々かかる費用も少なくて済みます。仕入原価が高い場合には、安価に材料を入手できる仕入先を探すとよいでしょう。スーパーなどの中間業者を挟まず、農家などから直接仕入れるという方法もあります。

1つの仕入先から多くの量を仕入れている場合は、仕入先に交渉してみるのも一案です。ただし、付き合いが短く信頼関係の構築がまだ不十分な仕入先に対しては、価格交渉は避けた方がよいでしょう。自分の希望だけを主張するのではなく、仕入先も納得できる着地点を見つけることが大切です。

食材のロスを削減する

仕入れた食材を無駄なく使うことも、日々かかる費用を抑えるためのポイントです。食材のロスが多ければ、仕入が効率よく売上につながりません。食材が無駄になっていないか確認するとともに、提供する量が多すぎて食べきれず残されていないかも確認してみましょう。

材料を腐らせてしまうことも、仕入の無駄につながります。先に仕入れた材料から使い、冷蔵庫の中を清潔にすることを徹底しましょう。上手な鮮度管理は、お客様に新鮮な料理を提供することにもつながります。

電気やガスの契約会社を見直す

電気やガスを契約する会社によって、光熱費の金額は変わります。近年は電気やガスが自由化されたことによって、契約する会社を自由に選べるようになりました。そのため、現在契約している会社から変更することで、光熱費が安くなる場合があります。複数社の見積りを取り、比較してみるとよいでしょう。

飲食業の資金調達には融資をうまく利用しよう

飲食業で資金調達をする方法はさまざまですが、多くの事業者が金融機関からの融資を利用しています。まとまった金額が入るものの、計画的に返済する必要があるため、将来の見通しをしっかりと立てておかなければなりません。そのためには、事業計画書を作成してみることをおすすめします。加えて、日頃の経営を見直して経費の無駄を省くことも大切です。融資に関するこうした流れの中で、資金繰りや経営を改善していけるとよいでしょう。


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