• 更新日 : 2024年9月27日

ワインバーの事業計画書の書き方・無料テンプレート【簡単解説】

事業計画書は、ビジネスのビジョンや目標、マーケティング戦略を示す書類です。事業を成功させるには、事業の方向性や目標を明確にし、計画を整理しながら事業計画書を記載することが重要です。本記事では、ワインバーの事業計画書について、テンプレートを基にした書き方や、作成のコツなどを解説します。事業計画書のテンプレートが必要な場合は、以下からダウンロード可能です。

ワインバーの事業計画書はなぜ必要?

ワインバーを開業するに当たり、事業計画書を作成する目的は、主に2つあります。

1つ目は、資金調達のためです。ワインバーの開業は一般的に、物件取得やリフォームなどに数百万円から数千万円ほどの費用が必要です。資金準備のために民間の金融機関や日本政策金融公庫から融資を受ける際、事業計画書でビジョンや目標、収支計画を明確に示す必要があります。

2つ目は、事業の方向性を明確にするためです。事業計画書を詳細に記載することで、ワインバーのコンセプトや提供するサービス内容を整理し、具体的な運営計画を立てられます。

事業計画書は、事業の方向性を見失わずに経営を行い、目標達成に向けた着実な準備を進めるために必要な書類です。

ワインバーの事業計画書のひな形、テンプレート

事業計画書 ワインバー
マネーフォワード クラウドは、ワインバー向けの事業計画書のひな形、テンプレートをご用意しております。事業計画書作成の参考として、ぜひダウンロードして、ご活用ください。

ワインバーの事業計画書の書き方・記入例

ワインバーを開業する際に必要な事業計画書の書き方と具体的な書き方を紹介します。事業計画書では、各項目を具体的に記載することが重要ですが、全体に一貫性を持たせることも同様に重要です。

各項目の意図を理解し、事業開始後の指針となる計画書を作成しましょう。一貫性を持った事業計画書を作成することで、効果的な戦略を実行でき、事業の成功と安定を期待できます。

創業の動機・目的

「創業の動機・目的」は、ワインバーの経営理念やコンセプトにもつながる重要な項目です。過去の経験や市場のニーズから開業に至った経緯を詳しく記載することで、ビジョンが明確になります。

事業計画書全体の方向性が決まる部分になるため、具体的に記載してください。

また、動機・目的は、金融機関で融資を受ける際にも重要視されます。開業したい理由や開業への熱意を示しましょう。

(記入例)
一般社団法人日本ソムリエ協会からソムリエ・エクセレンスの認定を受け、より多くの方にワインについて学んで欲しいという思いから、酒類に関する講師としても活動。さまざまな活動を通して業界内でのつながりを構築できたこと、そして資金と店舗の確保も進んできたため、創業手続きを始める。

職歴・事業実績

「職歴・事業実績」は経営者の過去の職歴や実績、保有資格を詳細に記載します。経歴だけでなく、過去の経験で学んだことやスキルも示してください。
特に、融資審査では、飲食業界やワインに関する経験・資格を強調することで信頼感を得やすくなるでしょう。

たとえば「ソムリエ資格を持ち、10年以上の飲食店勤務経験がある」といった具体的な実績を挙げると明快です。

(記入例)
〇年〇月 〇〇大学卒業
〇年〇月~ 株式会社〇〇に就職
〇年〇月~ ワインバー〇〇に転職
〇年〇月 「ソムリエ・エクセレンス」取得
〇年〇月 退職

取扱商品・サービス

「取扱商品・サービス」は、ワインバーで提供する商品やサービス内容を、詳細に記載します。

たとえば、以下のように、競合との差別化を具体的に示すとよいでしょう。

  • ワインの種類・特長
  • 競合との価格差
  • スタッフの質
  • イベントの有無・内容

顧客の求めるサービスを行うことが事業成功のポイントになるため、マーケティング戦略を制定し、サービス内容をよく検討してください。

(記入例)

取扱商品・サービスワインの提供
セールスポイント国産ワインのほか、国外さまざまな生産地から直輸入することで多種多様な世界のワインを取りそろえる。
販売ターゲット〇〇圏内を中心に、特に〇〇エリアのオフィス街で働く会社員を主なターゲットとする。
戦略ワインに合うおつまみなどの食材も直輸入し、ほかの店では味わえない食を提供する。
競合・市場などの分析・〇〇県ではワインの消費量が特に多く、ワインに対してのなじみみが深い。

・〇〇エリアのオフィス街は人通りも多いが居酒屋などの競合も多い。ワインバーも数件あるが、世界のワインを多く取りそろえている店は1件のみ。

取引先・取引関係

「取引先・取引関係」は、ワインの仕入先や取引先との関係を記載する項目です。ワインの供給元や食材の仕入先を事業計画書に明記することで、安定した供給体制を示せるため、信頼感が高まります。また、特別な提携関係がある場合は独自性を伝えられ、強みとして強調できます​。

(記入例)

取引先名シェア掛取引の割合
販売先一般個人100%100%
仕入先株式会社〇〇(ワイン)35%100%
株式会社〇〇(チーズ)20%100%
〇〇(おつまみなど)45%100%

従業員

「従業員」は、雇用予定の従業員数を記載します。ワインバーでは、接客・配膳・調理など、さまざまな役割があります。ワインバーの運営に必要なスタッフを具体的に挙げ、事業計画書に示してください。

また、ワインの専門知識を持つスタッフの雇用は、サービス品質の向上に直結します。質の高いスタッフを雇用するための、具体的な採用・研修の計画も示すとよりよいでしょう。

(記入例)
常勤役員の人数:1人
従業員(3か月以上継続雇用者):1人
うち家族従業員数:1人
うちパート従業員数:0人

借入の状況

「借入の状況」は、経営者の借入状況や返済計画を記載します。住宅ローンや自動車ローン、教育ローンなど、すべての借入金額を漏れなく記入してください。

また、金融機関から新たに融資を受ける場合、現在の借入金の返済計画を具体的に示すことで、金融機関からの信頼を得やすくなります。返済能力があることを示し、新たな融資につなげましょう。

(記入例)

借入先名内容借入残高年間返済額
〇〇銀行〇〇支店住宅ローン1,900万円140万円

必要な資金と調達方法

「必要な資金と調達方法」は、設備資金や運転資金にかかる借入希望額と、調達方法を記載します。
設備資金と運転資金はそれぞれ以下のような内容が挙げられます。

  • 設備資金:物件取得費・設備費・椅子やテーブルなどの什器 など
  • 運転資金:人件費・ワインや食材の仕入費・広告宣伝費 など

事業を安定して継続していくため、設備資金はできる限り抑え、運転資金は2~3か月分を目安に記載しましょう。

また、必要資金をどのように調達するのかを明確にし、現実的な計画であることを示すことも重要です。

(記入例)

必要な資金調達方法
内容見積先金額金額
設備資金内外装工事費

機械設備費

什器、備品費

〇〇社

〇〇社

〇〇社

1,000万円自己資金800万円
運転資金人件費

商品仕入

広告宣伝費

800万円日本政策金融公庫からの借入1,000万円
合計1,800万円合計1,800万円

事業の見通し(月平均)

事業の見通しは、月平均の売上や経費を予測し、具体的に記載します。予測は市場調査に基づき、実現可能な数値を挙げてください。

見通しに関する根拠には、売上高や経費を詳細に明示する計算式を用いて、具体的な収支計画が伝わるように記載しましょう。

一般的に、ワインバーの売上は「平均客単価×一日の平均客数×営業日数」で計算します。事業を成功させるには、予測される売上に基づき、人件費や仕入代、家賃などの経費が、売上よりも下回るように設定する必要があるでしょう。

さらに、売上から経費を差し引いて残った利益からは、借入金の元本を返済をします。月々の返済元本を上回る利益が残るよう、収支計画を立てなければなりません。

事業計画書の作成時点で利益を算出できなければ、事業開始後にも収益性がないとみなされるケースが一般的です。

(記入例)

創業当初1年後見通しに関する根拠
売上高292.5万円362.7万円(収支計画)

<創業当初>

① 売上高

平均客単価4,500円×平均客数25人/日×月間営業日数26日=292.5万円

② 原価率 35%

③ 経費

人件費:役員報酬80万円、家族従業員20万円

家賃:38万円

支払利息:1,000万円×年2.4%÷12ヵ月=2万円

その他:光熱費、消耗品費等 7万円

<創業1年後>

① 売上高

立地条件、店内規模が近い他店における平均客数で計算。

平均客単価4,500円×平均客数31人/日×月間営業日数26日=362.7万円

② 原価率 創業当初の割合を維持

③ 経費

その他:2万円増

売上原価(仕入高)102.4万円126.9万円
経費人件費100万円100万円
家賃38万円38万円
支払利息2万円2万円
その他7万円9万円
合計147万円149万円
利益43.1万円86.8万円

ワインバーの事業計画書作成のポイント

本章では、ワインバーの経営を成功させるために検討すべきポイントを解説します。ワインバーを成功させるには、テンプレートに記載されている内容をさらに深掘りし、詳細な事業計画書を作成することが重要です。実際に事業を開始した際に想定外の事態が発生しないよう、ワイン業界や市場について深く理解しましょう。

季節需要による集客トレンドを分析したうえで、収支計画を立てる

ワインバーは季節によって集客数が大きく変動するため、月ごとの売上増減を理解することが重要です。需要の増減に基づいて売上見込みや仕入量を決め、月ごとの収支計画を立てましょう。

たとえば、ワインの年間消費量や外食時の飲酒代についてのデータを参考にすると市場の動きに合った収支計画を立てやすくなります。

総務省統計局が2016年~2018年に実施した「家計調査」※1によると、1世帯当たりのワインの支出金額は7月~9月にかけて需要が落ち込む一方で、11月~12月には需要が高くなる傾向があります。
また、総務省統計局が2021年~2023年に実施した「家計調査」を基に、経済産業省が行った分析※2では、外食の際にかける飲酒代は7月~9月頃に落ち込み、11月~12月にかけて増加傾向です。

つまり、ワインバーの収支計画においては、夏場は需要が減ることを見越したうえで、仕入量や人件費を決め、収支計画を立てる必要があります。

さらに、ワインの管理も大切です。適切に保管しないと品質が劣化するため、季節需要が少ない時期に多くのワインを仕入れると、管理が難しくなり、消費期限内に提供できずに廃棄するリスクが高まります。

過去のデータや市場調査を基に季節需要を適切に把握し、見通しの根拠を記載するとよいでしょう。

※1 出典:ワインの支出 ― 家計調査結果より ―|総務省統計局を基に筆者が作成

※2 出典:おうち飲みしていましたか?|経済産業省を基に筆者が作成

ワインに対する深い専門知識があることを記載する

ワインバー以外にもワインを提供する飲食店は数多く存在します。しかし、ワインバーの大きな特徴として、幅広い種類のワインを取りそろえ、それぞれの特徴や料理とのペアリングを説明できる点が挙げられます。ワインに対する専門知識は、他の飲食店との差別化要素になるため、具体的に示してください。

事業計画書には、ワインに関する深い専門知識と、質の高いサービス提供スキルを強調することが重要です。

たとえば、ワインに関する資格を取得していることを明記すると、顧客や金融機関からの信頼を得やすくなります。一般社団法人ソムリエ協会が認定するソムリエやワインエキスパートなどの資格を取得しているスタッフがいると、専門性が証明されやすくなるでしょう。

事業計画書には、以下のポイントを記載してみてください。

  • ワインに関する仕事に携わった年数
  • ペアリング提案の経験・エピソード
  • ソムリエやワインエキスパートなどの資格取得状況

ワインバーの開業に必要な資格・許可について

ワインバーを開業する際には、必須の資格・許可と形態によって必要な届出の2種類があります。許可や届出を適切に行うことで、法令を遵守し、安全で信頼されるワインバーの運営が可能です。事前に各種手続きを確認し、必要な書類を整えましょう。

必要な許可・届出

  • 食品衛生法に基づく営業許可:「飲食店営業」の営業許可を取得
  • 食品衛生責任者の配置:食品衛生責任者の資格を有するものを各店に1人配置

食品衛生責任者について|一般社団法人東京都食品衛生協会

ワインバーの形態によって必要な届出等

ワインバーの営業形態によって、必要な届出や許可は変わります。
たとえば、以下の3つのケースでは、別の届出が必要になります。

  • 午前0時から午前6時の間に主に酒類を提供するケース:深夜酒類提供飲食店営業開始届出書
  • 建物の収容人数が30人以上のケース:防火管理者選任届出書
  • 防火対象物の使用を開始するケース:防火対象物使用開始届出書
  • ワインを販売(テイクアウト)するケース:酒類販売業免許

営業形態や店舗を置く地域によって、さまざまな届出・資格が必要です。開業するワインバーの形態に応じて、適切な届出を行ってください。

 


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