• 更新日 : 2025年11月6日

個人事業主が法人化すべきタイミングは?メリットやデメリット、手順とあわせて解説

法人化とは、個人で行っていた事業を法人として新たに設立した会社に移行することです。法人化は「法人成り」とも言われ、節税のメリットを活かしたり、社会的信用を高めたりする目的として行われることがあります。今回は、個人事業主が法人化するメリットやタイミング、手順について解説します。

法人化すべきタイミングと選ぶべき会社形態

ここでは個人事業主が法人化を検討するタイミングについて解説します。

所得金額が800万円~900万円前後になった

一般的に個人事業主・フリーランスとしての所得金額が800万円~900万円前後になった場合、法人化したほうが有利であると言われています。所得税が超過累進税率を採用する一方、法人税の税率は中小企業に対しては所得800万円以下の部分に軽減税率(15%)が適用されるからです(※適用期間は2027年3月31日まで)。

年間の所得金額800万円が見え始めたタイミングで税理士などの専門家に相談し、シミュレーションを立てましょう。

課税売上高が1,000万円を超えた

前々年の課税売上高が1,000万円超の事業者は、消費税の納税義務が発生します。そして、法人設立後、資本金1,000万円未満であれば原則として法人を新規設立して1期目と2期目は消費税の納税義務が免除されます(ただし、特定新規設立法人などの場合は免除されない場合があります)。

したがって、課税売上高が1,000万円を超えた場合、納税義務が発生する年より前に法人成りをすることで事実上消費税の納税義務を遅らせることが可能です。

なお、実際には消費税の納税義務の判定は上記以外にもあるため、税理士などの専門家への相談をおすすめします。

将来のビジョンが明確になった

​法人化のメリットは節税効果だけにとどまりません。​法人化することで、社会的信用が向上し、金融機関からの融資や新規取引の際に有利に働きます。​また、法人登記によって企業の存在が公的に確認できるため、取引先や顧客からの信頼を得やすくなります。​

さらに、法人化は人材採用の面でも有利です。​法人は社会保険への加入が義務付けられており、福利厚生の充実が図れます。​これにより、求職者にとって魅力的な雇用環境を提供でき、優秀な人材の確保が期待できます。​

このように、事業の拡大や将来的なビジョンが明確になった段階で法人化を検討することは、信用力の向上や人材確保、資金調達の面で大きなメリットがあります。​法人化は、事業の成長を支える重要なステップと言えるでしょう。

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法人化で選べる会社形態

日本で法人として設立できる形態には、「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」の4種類があります。それぞれの特徴とメリット・デメリットを理解したうえで、自身に適したビジネススタイルを選ぶことが大切です。

1.株式会社

最も一般的な会社形態です。出資者である株主は出資額の範囲で責任を負い、経営は取締役が担います。社会的信用が高く、株式の発行などを通じた資金調達も可能なため、スケールアップを目指す事業に向いています。ただし、一定の設立費用がかかり、決算公告などの事務負担もかさむため、小規模な事業にはややハードルが高いと言えるでしょう。

2.合同会社

2006年の会社法改正で誕生した比較的新しい形態で、出資者全員が経営に関与します。株式会社に比べて柔軟な運営が可能であり、設立費用のハードルが低く、内部自治の自由度が高いのが特徴です。一方で、知名度が株式会社に比べて低く、信用力も一般的には劣るとされますが、近年は大手企業でも合同会社を採用する例が増えています。

3.合資会社

出資者のうち一部が無限責任(債務に対して無制限に責任を負う)を負い、他は有限責任という特徴があります。歴史のある家業などでは今も見られますが、新設するケースはまれです。無限責任のリスクがあるため、慎重な判断が求められます。

4.合名会社

出資者全員が無限責任を負うという形態で、設立自体は可能ですが、現在ではほとんど利用されていません。実務的には選択肢から外して考えて問題ないでしょう。

個人事業主と一人法人(法人化)の違い

起業を検討する際、まず決定しなくてはならないのが「個人事業主」として始めるべきか、「法人(いわゆる一人会社)」を設立すべきかという点です。それぞれに特徴やメリット・デメリットがあり、自分の事業内容や将来のビジョンに合わせて選ぶことが重要です。

個人事業主の特徴

個人事業主は、比較的手軽に始められる事業形態の一つです。開業に際しては、税務署に「開業届」を提出するのみであり、費用も発生しません。法的には事業と個人が一体と見なされるため、法人のように別人格ではなく、売上や経費もすべて個人の所得として扱われます。

税制面では「所得税」が課され、収入が上がると累進課税によって税率も高くなります。また、社会保険への加入については、製造業などの法定16業種は常時5人以上の従業員を使用する場合、加入義務がありますが、サービス業などの非適用業種は従業員数に関係なく適用除外となります。

経費については、自宅兼事務所などの家事関連費を一部経費として認められる場合がありますが、法人ほど自由度は高くありません。

また、信用面では法人に劣る傾向があり、資金調達の際にも銀行融資や補助金で不利になることがあります。ただし、スモールビジネスや副業など、小規模で柔軟な運営には適しています。

一人会社(法人)の特徴

一人会社とは、1人で設立・運営する株式会社や合同会社などの法人を指します。法人格を取得するため、設立には法務局への登記が必要となり、登録免許税や定款認証の費用がかかります。一般的な設立費用は20万~25万円程度が目安です。

法人化すると、事業と個人は法的に別人格として扱われます。そのため、万が一事業で損失が発生しても、責任は出資額の範囲に限定される「有限責任」です。税制面では法人税が適用され、一定の節税メリットが期待できるほか、役員報酬として所得を分散させることもできます。

また、法人は社会保険への加入が義務付けられており、役員1人でも健康保険・厚生年金への加入が必要です(ただし、役員が報酬を受け取らず、労働の実態がない場合は適用対象外となることもあります)。

法人には決算申告義務があり、株式会社の場合は決算公告も求められます。廃業時も、清算や解散登記などの法的手続きをする必要があるため、運営・管理には一定のコストと手間がかかります。

どちらが向いているか?

では、どのような場合に個人事業主、あるいは一人法人を選ぶべきなのでしょうか。

個人事業主が向いているのは、起業したばかりの段階や、スモールビジネス、副業として収益を得たい場合です。コストと手間を最小限に抑えたい方にとっては、個人事業主は適切な選択肢であり、将来的に事業が成長した段階で法人化することもできます。

一方、一人法人は、売上が安定し節税を図りたい、あるいは金融機関からの融資を受けやすくしたい場合に有効です。また、人材採用を計画している場合や、法人としての信用力を必要とするビジネス(例:BtoB取引など)にも適しています。事業のフェーズや目標に応じて、適切な選択を考えましょう。

以上のことを踏まえると、

  • シンプルに始めたいなら → 個人事業主
  • 節税や信用力を重視するなら → 法人化(一人会社)

となります。

個人事業主と一人会社の比較表

比較項目 個人事業主 一人会社(法人)
法的地位 個人と事業が一体 法人として独立
(会社は別人格)
開業手続き 税務署へ開業届を出すのみ
(無料)
法人登記が必要
(登録免許税・定款認証費用が発生)
設立費用 ほぼゼロ 数万円〜20万円程度が目安
税制 所得税
(累進課税)
法人税(定率)+
役員報酬に所得税
社会保険 原則任意
(業種・従業員数による)
強制加入
(役員1人でも適用)
経費計上 限度あり
(家事関連費など制限あり)
幅広く認められやすく、
節税効果が高い
資金調達 信用面でやや不利 銀行融資・
補助金で有利
信用力 低め
(個人の実績に依存)
高め
(法人格による信頼)
責任範囲 無限責任
(個人資産でも補填の可能性)
有限責任
(出資額まで)
決算義務 青色申告決算書などの提出 決算公告(株式会社)・
法人税申告
廃業手続き 廃業届を提出するのみ 清算・解散登記などが必要

個人事業主が法人化するメリット

個人事業主が法人化することによるメリットを6つご紹介します。

節税対策になる

法人化を検討するうえで、関心が高いテーマの一つとして節税対策が挙げられます。先述の通り、所得税は超過累進税率であり、所得が多いほど税率が高くなり、一方で法人税の税率は所得金額に応じて段階的に設定されています。なお、中小法人の場合、所得800万円以下の部分に15%、超える部分に23.2%の税率が適用されます。

役員報酬や退職金を損金に計上できるのも、節税対策の一例です。また、法人設立により、一定期間は条件次第で消費税の納税義務が免除される場合があります。さらに、個人名義の生命保険を法人名義にして損金に算入することなどで節税することも可能です。

社会的な信用度が高くなる

法人は個人事業主より、社会的な信用度の面で高く見られることがあります。例えば、仕入先との掛取引、銀行からの借入、ファクタリング会社への債権の譲渡などの場面において法人のほうが信用を得られることがあります。

欠損金を10年間繰越できる

節税効果と考えることもできますが、法人は欠損金の繰越期間が長いこともメリットの一つです。青色申告の個人事業主が純損失を3年間繰越できる一方、青色申告の法人は欠損金を最長で10年間の繰越が可能です。そのため、多額の損失が出るような場合、法人のほうが欠損金の期限切れのリスクが低いと言えます。

有限責任となる

株式会社・合同会社などの法人形態の場合、役員が保証した債務などを除いて、会社債権者への責任は出資額が限度となります(※株式会社の役員・持分会社の有限責任社員の故意または重大な過失による責任までは免除されません)。

決算期を自由に設定できる

個人の決算日は12月31日ですが、法人の決算日は自由に設定できます。法人化により、自社の業界の繁忙期を避けて決算日を設定できるのもメリットです。

社会保険に加入できる

社会保険に加入できる点も法人化の大きなメリットです。個人事業主・フリーランスなどは基本的に国民健康保険や国民年金に加入しますが、法人化して会社の役員になった場合、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入します。

社会保険は国民健康保険と異なり、家族を扶養に入れることができるため、報酬額や扶養の人数などによっては社会保険の保険料のほうが低くなることがあります。このような方にとって、法人化することはメリットと言えるでしょう。

個人事業主が法人化するデメリット

ここからは個人事業主が法人化することによるデメリットについてご紹介します。

手続きに費用が発生する

会社を設立するにあたっては、定款作成・定款認証・登記などの手続きに費用が発生します。参考として、専門家などに依頼せず自分で会社を設立した場合の費用は以下の通りです。

  株式会社 合同会社
定款認証手数料 資本金など100万円未満の場合:3万円
資本金など100万円以上300万円未満:4万円
上記以外:5万円
4万円
登録免許税 15万円 6万円
合計 22.2万円 10万円

赤字でも法人住民税の支払いが発生する

法人に課税される住民税のうち、均等割については赤字でも支払う必要があります。均等割は資本金などの金額・従業員数などによっても異なりますが、標準税率の地方公共団体の均等割は以下の表にまとめました。

資本金などの額 都道府県民税均等割 市町村民税均等割
従業者数50人超
市町村民税均等割
従業者数50人以下
1,000万円以下 20,000円 120,000円 50,000円
1,000万円超1億円以下 50,000円 150,000円 130,000円
1億円超10億円以下 130,000円 400,000円 160,000円
10億円超50億円以下 540,000円 1,750,000円 410,000円
50億円超 800,000円 3,000,000円 410,000円

出典:法人住民税|地方税制度|総務省を加工して作成

つまり、赤字になっても毎年最低70,000円の均等割を支払います。

事務作業に手間がかかる

法人は、個人事業主に比べて事務作業に手間がかかります。特に税務申告は法人のほうが複雑なため、法人成りのタイミングで顧問税理士をつけるケースも少なくありません。また、株式会社の場合は、株主総会の開催と議事録の作成をするなど運営上の事務作業も発生します。

個人事業主が法人化する手順

ここからは個人事業主が法人化する手続きの流れを解説します。

法人の設立

個人事業主が法人化する手続きとして、最初に行うのは法人の設立です。具体的には以下の手続きが必要となります。

  • 定款の作成
  • 定款の認証
  • 資本金の払込み
  • 設立登記

なお、法人設立にかかる期間は2週間~3週間を目安に考えておきましょう。

廃業手続き

次に、事業を廃止したことを税務署や税事務所に届出をします。申請内容は以下の通りです。

  • 税務署への個人事業の廃業届
  • 税務署への所得税の青色申告取りやめ届(青色申告の承認を受けていた場合)
  • 税務署への事業廃止届(消費税の課税事業者であった場合)
  • 税務署への所得税および復興特別所得税の予定納税額の減額申請(必要な場合)
  • 税事務所への事業廃止申告(法定業種の事業を行っている場合)

資産などの引継ぎ・名義変更

法人の設立が完了したら、資産などの引継ぎ・名義変更を行います。例えば、個人事業主の車両などの資産は法人へ売却または現物出資で引継ぐことができますが、売掛金などの営業債権は債権額から回収不能金額を差し引いた金額で引継ぎが可能です。また、個人の名義で契約していた事務所・保険・リースなどの名義変更なども求められます

個人事業主の法人化と起業による法人設立はどう違う?

個人事業主の法人化と起業による法人設立の違いは、法人設立前から事業を行っているか、新たに事業を行うかです。個人事業主の法人化とは、あくまでも個人で行っていた事業を法人に引き継ぐことです。一方で、起業による法人設立は、法人を設立して事業を開始することを意味します。

法人設立前から個人として事業を行っている場合は「個人事業主の法人化」と言えますが、法人として新たに事業を行う場合は「起業による法人設立」というのが正しい表現となります。

個人事業主の法人化における経営者全体の傾向は?

個人事業主の法人化を検討する際、実際の経営者がどのような経緯で法人成りを選択しているのか、データから参考となる傾向を見ていきましょう。

設立間もない企業の7割以上が個人事業主から法人化している

マネーフォワード クラウドで実施した調査によると、会社設立者全体1,040名のうち、57.8%が会社設立前に個人事業主として事業を行っており、法人成りの形で会社を設立しています。

特に設立間もない企業ほど個人事業主からの法人成りの割合が高く、設立1年以内の企業では68.5%、設立2~3年以内の企業では75.2%と全体の中で最も高い数値を示しています。

出典:マネーフォワード クラウド、先輩起業家が一番困ったことは?【会社設立の意思決定調査】(回答者:会社設立の経験がある方1,040名、集計期間:2024年1月)

個人事業主における段階的な法人化の有効性

この調査結果から、多くの経営者が個人事業主として事業基盤を固めてから法人成りを選択している傾向が読み取れます。この段階的なアプローチは、法人化を検討する個人事業主にとって有効な戦略といえるでしょう。

まず個人事業主として事業を開始し、所得が800万円~900万円前後になる、あるいは課税売上高が1,000万円を超えるなど安定的な収益が見込めるようになった段階で法人化を検討することで、リスクを抑えた判断が可能になります。個人事業主時代の実績を基に、株式会社か合同会社かの選択、資本金の設定、役員報酬の適切な金額設定など、法人化に必要な諸条件を現実的に判断できるため、より成功確率の高い法人化が実現できるでしょう。

法人化にはメリットもデメリットもある!

法人化にはメリットだけではなく、デメリットもあります。一度法人化をすると、個人事業主に戻るには時間・費用・労力がかかります。法人化することでどのような影響があるか精査して、メリットがデメリットを上回るようであれば法人成りを検討してはいかがでしょうか。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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