• 更新日 : 2020年5月8日

中小企業の事業継承における問題とは

今日、中小企業においては、後継者不足という問題で悩んでいるところが多いと言われています。中小企業経営者の平均年齢はあがってきているにも関わらず、後継者が育っていないことに加え、事業継承するための手立てなどの正しい情報を知らないことも不安の要因になっているようです。今回は、中小企業の事業継承における問題、その解決策の一案などを紹介します。

事業継承

中小企業の場合は特に事業を引き継ぐ相手として、まず浮かぶのは親族でしょう。役員や社員にゆだねる場合もあります。そして、最終的には第三者にお願いすることになるかもしれません。

1. 親族への事業継承の問題点

中小企業の場合、息子・娘等の親族に事業継承するのが今までは一般的で、もっとも多い形でした。しかし近年では、親族が事業継承する意思がない、事業継承する能力(経営等)不足、などにより事業継承が困難であることも多くなっています。

2. 役員または社員への継承の問題点

中小企業の場合でも親族ではなく、優秀な役員や社員を次期経営者にと考えることもあります。この場合には、社員自身が事業継承する意思があるか、会社の業績が悪くないか、会社の借入金が多くないか、譲渡金額の折り合いをつけて決めることができるか、などの課題がでてきます。

実際、業績が良ければ良い程、その自社株式を買い取るために必要な資金を持っている状態の社員はいないと考えられます。逆に、業績の悪い会社や借入金の多い会社であれば、その会社を引き継ごうとする社員はあまりいないでしょう。そのどちらにも偏らず、経営状況も安定しており、自社株式も買い取れる状態であることがスムーズに事業継承できる状態と言えます。

3. 第三者への事業継承の問題点

第三者への事業継承での問題点は、その事業を欲しいと思ってくれる相手がいるかどうかという点です。自社に魅力的なものがあってこそ、事業継承したいと思ってくれる相手が現れるものです。当然、業績が悪い中小企業であれば会社を欲しがってはくれないでしょう。

M&A

M&Aという方法が、この後継者問題解決への起爆剤として注目を集めています。英語のMergers and Acquisitionsを略したM&Aという呼び名には、日本語で「合併・買収」という意味があります。上記の事業継承先でいえば、親族や社員以外の第三者ということになります。なお、日本では、企業の合併買収だけでなく、事業の譲渡や提携など広い意味で利用されています。

多くの場合、M&Aに際して、経営者が自社株式を売却する株式譲渡という方法がとられます。中小企業の場合は特にそうです。株式譲渡の方法であれば、譲渡先の株主が新しい経営者に変わることになりますが、会社の財産状況等には大きな変化はありません。そして旧経営者は現金で株式の売却金額を手に入れ、一方株式の買主が、新しい株主となり会社の経営陣を決め、改めて経営をしていくという形となるのです。

清算・廃業について

事業継承することができず、ついには廃業、あるいは事業の清算を行わなければならないこともあるでしょう。後継者がいないから会社をたたもう、と考えている経営者もいると思います。清算・廃業することで発生する問題点としては、まず資産をすべて売却してもなお負債が残ることが多いという点です。また、すべての従業員を解雇しなければならないことも心苦しいものです。資産を現金化する場合、簿価のとおりにはいかないものです。不動産や大きな設備等の会社の資産に関しては、その時の時価で売却をするので簿価より低くなるケースも多いのです。

まとめ

中小企業であれば、遅かれ早かれ事業継承問題にぶち当たります。経営が順調でいて財務状況が良い会社は、清算・廃業も上手く行うことが可能ですが、また同時に後継者になりたいと考える人もいることでしょう。親族や社員の中から後継者になりえる人がいる場合は、その教育や準備は早めに進めておく方が良いでしょう。そして親族、社員に該当する者がいないようであれば、M&Aの活用を視野にいれてみてはいかがでしょうか。良い相手が見つかれば、売り手買い手のみならず、従業員や取引先にとっても良い結果となるのではないでしょうか。いずれにしても、十分前もって考え、準備を進めておくことが重要です。

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