- 更新日 : 2024年1月9日
学童保育を開業するには?必要な資格や資金の目安、条件を解説
共働き世帯やひとり親世帯の増加に伴い、児童福祉施設のニーズが高まっています。待機児童問題が騒がれる近年、主に保育所の拡充や体制整備がフォーカスされていましたが、小学生を預かる受け皿の拡大・整備は未だに追い付いていない状況です。
増加する共働き世帯・ひとり親世帯の仕事と育児の両立支援に向けて、学童保育の開業を検討している方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、学童保育の概要から開業に必要な手続きと開業方法、さらに開業資金の目安や活用できる助成金・補助金制度まで詳しく紹介します。
目次
学童保育とは?
学童保育とは、放課後や夏休み・冬休みといった長期休暇において、保護者の代わりに小学生を預かる施設です。地域によって、「放課後児童クラブ」「学童クラブ」などと呼ばれることもあります。
学童保育の運営元には自治体と民間の2種類があり、自治体が運営する公立学童保育は小学校の敷地内にあることが特徴です。学校外の学童保育は、基本的に民間学童保育となります。民間学童保育は自治体が運営する公立学童保育と違って、夕食や宿泊などフレキシブルに対応する点が特徴です。
また、学童保育サービスは共働き世帯・ひとり親世帯の子どもを預かることを主な目的としているため、預かり時間中は遊びや学びを提供することが基本です。しかし、一部の民間学童保育は遊びや学び以外にも、ピアノ・英会話といった稽古も行っています。
学童保育の種類
学童保育とひとくちに言っても、運営・管轄先によってその種類や呼び名が異なります。
放課後児童クラブ | 厚生労働省(自治体)が管轄する学童保育 |
---|---|
放課後子ども教室 | 文部科学省が管轄する学童保育 |
民間学童保育 | 事業者が運営する学童保育 |
ここからは、放課後児童クラブ・放課後子ども教室・民間学童保育それぞれの概要を説明します。
放課後児童クラブ
放課後児童クラブとは、厚生労働省が管轄する学童保育です。具体的には自治体から設立されるものであり、公立学童保育の一種となります。
放課後児童クラブには、自治体が設立・運営する「公設公営」と、自治体が設立後にNPO法人や民間企業に運営を委託する「公設民営」の2種類があることも特徴です。
いずれにおいても児童館や学校内に設置されることが基本で、放課後児童支援員や保育士など専門性に優れた学童保育指導員が配置されます。
放課後子ども教室
放課後子ども教室とは、文部科学省が管轄する学童保育であり、自治体が運営する公立学童保育の一種です。
放課後子ども教室では、児童館や学校を使用して地域住民とともに学習・スポーツや文化活動・交流活動・育成支援を行います。
自治体による公設運営が最も多いものの、近年では自治体から委託を受けてNPO法人や民間企業が運営するケースも増加傾向にあります。短期プログラムとして放課後児童クラブと連携することが多く、地域のボランティア(支援者)や住民が児童指導員を担うことも特徴です。
民間学童保育
民間学童保育とは、NPO法人や民間企業といった事業者が自治体の助成を受けずに設立・運営する学童保育です。学校外で設置されることが基本で、公立学童保育にはないさまざまなサービスを柔軟に提供します。
公立学童保育と異なり、22時~24時など夜の遅い時間帯まで子どもを預かったり、場合によっては宿泊にも対応したりします。利用料金は高い傾向にあるものの、仕事で忙しい保護者からは非常に重宝される学童保育の種類と言えるでしょう。
学童保育の開業に必要な資格は?
自治体からの委託と助成を受けて放課後児童クラブなどを開業するときや、学童保育の自宅開業をするときは、受け入れ児童40人程度に対して2名以上の「放課後児童支援員」の資格が必要です。
また、自治体の運営基準が適用されない民間学童保育を開業するにあたって必須となる資格は、特にありません。しかし、保護者が安心して子どもを預けられるようにするためにも、ほとんどの民間学童保育が放課後児童支援員や保育士・幼稚園教諭、さらに看護師といった有資格者を雇用していることも特徴です。
学童保育の開業に必要な手続きや条件
学童保育を開業するためには、定められた条件を満たしたうえでいくつかの必要な手続きを進めなければなりません。
ここからは、学童保育の開業に必要となる手続きと満たすべき条件を紹介します。学童保育の開業を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
市町村への届出
学童保育の開業にあたってまず必要となる手続きが、市町村への届出です。
「放課後児童健全育成事業」と総称される学童保育を開業するためには、児童福祉法の規定にもとづいた「放課後児童健全育成事業開始届」を開業場所を管轄する自治体に提出しなければなりません。
また、放課後児童健全育成事業開始届のほかにも収支予算書・事業計画書・職員名簿・有資格者の資格証明の写しといった各種書類も添付しなければならないため、あらかじめ準備しておくとスムーズです。
学童保育の施設の基準
学童保育施設には、遊びや学び、教育を含む生活の場としての機能が備わった専用区画を設けなければなりません。専用区画の面積は、児童1人につきおおむね1.65㎡以上が基準となっています。1.65㎡は、約1畳分に相当します。
しかし、必ずしもこの施設基準を満たさなければならないというわけではなく、支援・取り組みに支障をきたさない場合に限り、基準以下の面積であっても問題ありません。
出典:厚生労働省|放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)について~
学童保育の開所日数
学童保育は、原則として年間250日以上の開所が定められています。しかし、利用者に対するニーズ調査の結果、250日以上開所する必要がないと判断された場合に限り、特例として200日以上の開所でも問題ないとされています。
また、学童保育の開所時間は小学校の授業のある日で1日3時間以上、授業のない日で8時間以上と定められているほか、授業の終了時間や保護者の労働時間も考慮する必要があります。
出典:厚生労働省|放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)について~
放課後児童支援員の確保
厚生労働省・文部科学省が管轄する学童保育を開業・運営するためには、放課後児童支援員の有資格者を雇用しなければなりません。学童保育の開業準備や集客の段取りがある程度整ったあとは、なるべく早い段階で放課後児童支援員を採用しましょう。
前述の通り、放課後児童支援員は子ども40人程度に対して2人必要です。2人のうち1人は放課後児童支援員のサポート役を務める補助員の配置も認められています。
正社員として働いてくれるスタッフがなかなか集まらない・開業当初は人件費をなるべく抑えたいという場合は、アルバイト・パートといった雇用形態で採用活動を進めることもポイントです。
出典:厚生労働省「~放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)について~
学童保育の開業方法
学童保育事業の経営形態には、「フランチャイズでの開業」と「独立型で開業」の2つのスタイルがあります。
これらの開業方法によって、必要な知識や経営方針、さらに得られる利益も大きく異なるため、あらかじめ自分にはどのような開業方法が向いているのかを理解しておくことがポイントです。
ここからは、学童保育の2つの開業方法について、それぞれ詳しく説明します。
フランチャイズでの開業
学童保育におけるフランチャイズ開業は、フランチャイズ契約を募集する本部(フランチャイザー)による学童保育経営のノウハウを学びながら、フランチャイザーの名を冠した学童保育を経営するスタイルです。
多数の学童保育を展開するフランチャイザーの専門的なノウハウやアドバイスを伝授してもらいながら、ネームバリューを利用して集客できる点は大きなメリットと言えます。しかし、加盟金やロイヤリティを支払わなければならない・経営者の裁量で学童保育運営ができないというデメリットもあります。
独立型で開業
学童保育における独立型開業は、いわゆる「個人経営」となります。
フランチャイザーのような存在がいないため、個人の技量が非常に重要であり、ゼロからブランドを構築する必要もあるでしょう。その反面、経営に自分のアイデアを柔軟に取り入れることが可能で、個人の裁量ですべてを決められるというメリットもあります。
学童保育に関する経営ノウハウがある方に適した経営形態と言えるでしょう。
学童保育の開業資金の目安
学童保育の開業に必要となる資金は、約2,000万~2,300万円が目安です。このうち1,500万~1,800万円程度は物件の取得費用や内装費をはじめとした初期費用で、残りの200万~500万円程度はランニングコストにあたります。
学童保育の開業後、経営が安定して黒字化を実現できるまでには最低でも半年程度の期間を要します。半年~1年ほど赤字が続いた場合でもすべての支出に対応できるよう、その間の運転資金も開業資金として含めることが大切です。
学童保育の開業に活用できる助成金・補助金
学童保育の開業資金の調達方法として、助成金・補助金制度の活用も有効です。
下記は、学童保育の開業に活用できる助成金・補助金制度の一例です。
●子育てと仕事の両立支援に対する助成活動(生命保険協会) |
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出典:一般社団法人 生命保険協会|保育所・放課後児童クラブを対象とした助成活動の実施について~備品購入や建築・設備工事の支援 総額2,500万円を助成~)
●民間学童保育室運営事業費補助金(大阪府高槻市) |
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出典:高槻市|高槻市における放課後児童健全育成事業の制度概要等について
団体や自治体によって実施されている助成金・補助金制度はそれぞれ異なるため、一度開業を検討している地域の制度を確認すると良いでしょう。
学童保育開業向けの事業計画書テンプレート(無料)
こちらから自由にお使いいただけるので、ぜひご活用ください。
学童保育の開業は助成金・補助金制度を上手に活用しよう
学童保育とは、放課後や夏休み・冬休みといった長期休暇において、保護者の代わりに小学生を預かる施設です。学童保育を開業するためには、定められた条件を満たして必要な手続きを進めなければなりません。
学童保育ビジネスをスタートさせるために必要となる事業資金は、約2,000万~2,300万円が目安です。すべてを自己資金で用意するのは困難なため、金融機関からの融資のほか、団体や自治体ごとの助成金・補助金制度を活用するのも良いでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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