• 更新日 : 2023年9月15日

経営指標とは?経営者が知っておきたい指標・分析のポイントを解説

経営者として事業を運営する中では、大口の新規顧客の開拓や新たな投資の状況確認など、大きな案件に心を砕くことが多いものです。

一方では、経営者として会社全体の経営状況を把握しておき、全体のバランスを考えながら指示を出すことも必要となります。そのようなとき、「経営指標」について理解を深めておくと心強いのではないでしょうか?

経営指標とは?

経営指標とは、企業の経営状況を数字で表したものです。売上高や利益、資産、キャッシュフローなど、主として決算書の数字を用いて計算します。経営指標はその企業の経営状態や業績を評価し、健全性や成長性を示します。

経営指標は経営者や投資家が企業を分析し、意思決定をするために重要な判断材料となり、戦略的な判断を下す手助けとなります。

経済指標との違い

経済指標も数字で表された指標ですが、対象となる国などの経済状況を示すデータです。政府や公的・民間団体が実施した調査に基づき、定期的に公表されるものが多く、景気動向やインフレ率、失業率など、経済の全体的な状況を把握するための数字です。

例えば、「平均時給」は労働市場の需給バランスを反映する経済指標と言われます。平均時給が上昇するのは労働需要が高まり、景気が拡大に向かっていると判断されるためです。

このように、「平均時給」の動向から景気動向の判断のほか、物価動向や賃金格差など経済社会の状況を見ることができます。そして、平均時給を参考にして政府は金融政策や経済政策を検討し、民間では賃金交渉や人材政策を検討するなどの影響が考えられ、一つの指標が経済社会に与える影響は大きいと言えます。

つまり、経営指標と経済指標とでは、次のように対象範囲や利用目的が異なります。

指標 対象となる範囲 指標の利用目的
経営指標 その企業 企業の経営状況を分析するため
経済指標 その国や地域 経済の全体的な状況を把握するため

なぜ経営指標は重要なのか

経営指標は、その企業のこれまでの売上高や利益、資産など決算書を用いて計算されます。

経営指標が決算書よりも具体的で業績の傾向がつかみやすく、将来の経営活動に活用しやすいのは、次のような特徴があるからです。

自社の現状を客観的に把握できる

日本は同族会社の比率が非常に高い国で、経営者がオーナーとなっているケースが多々あります。同族会社では、オーナーである経営者が独占的に事業を運営するため、経営状況の客観的な把握が難しい場合があります。

そこで経営指標を使うと、売上高、利益、資産などの数字を用いるため、経営者の感情や主観を捨て、偏りなく冷静に会社の状況を把握することができます。経営指標の使い方によっては問題箇所を事前に把握し、対策を講じてリスクを最小限に抑えることができます。つまり、経営指標によるリスクの早期識別にも役立ちます。

経営計画の見直しができる

経営指標は、企業の収益性、生産性、安全性、成長性など、多方面から経営状況を分析することができます。経営者は、自社の気になる部分について経営指標を活用し、必要な経営戦略を立案したり、現状の経営を見直したりすることができます。

また、同じ経営指標を継続して把握することにより、経営計画の効果を評価することもできます。

経営の判断材料につながる

経営指標で示される内容により、経営者は意思決定の基礎として利用することができます。

さらに、経営指標をもとに自社の弱みや課題を認識し、対応策を講じることも可能です。

経営指標は企業の実績を「可視化する手段」とも言えるため、即時に企業の状態を把握できることから、迅速な判断材料につながります。経営指標の活用を継続することで、企業の成長につなげることが可能となります。

経営指標でわかること、指標の一覧

ここでカテゴリー別に代表的な経営指標をご紹介しましょう。経営指標を、「収益性」「生産性」「安全性」「成長性」の4つのカテゴリーに分けて解説します。

収益性の分析に用いる経営指標

収益性とは、無駄なく効率的に稼げているかを見る指標で、決算書上の「利益」とその他の数字との関係から分析します。

収益性の分析において、売上高と利益の関係に着目しているのが利益率です。損益計算書上には5つの利益がありますが、ここではその一部として売上総利益営業利益当期純利益についてそれぞれ売上高との関係を見ていきます。

収益性の指標 計算方法および指標の意味等
売上総利益率
(%)
計算方法:売上総利益 ÷ 売上高 × 100
取り扱う商品やサービスがどれくらい利益を生み出しているかが把握できます。売上総利益率が高いほど、原価率が低く、商品やサービスの付加価値が高く、収益性が高いとされます。同業他社と比較することで自社の収益力の高さが判断できます。粗利率(あらりりつ)とも言います。
営業利益率
(%)
計算方法:営業利益 ÷ 売上高 × 100
営業利益は売上高から売上原価と販管費を差し引いたものであり、企業の本業での収益性を表す指標として用いられます。
営業利益率が高いことで、本業で効率的に利益が出ていることや販管費が効率的に削減できていること、コスト競争に強い企業であることなどがわかります。
純利益率
(%)
計算方法:当期純利益 ÷ 売上高 × 100
売上高からすべての費用を差し引いた純利益の割合が純利益率です。純利益率が高い場合は、企業全体として収益力が高く、経営効率が良く、財務体質も健全になっていることなどが推測されます。
ただし、当期純利益には不可避的な特別損益も反映されているため、特殊要因がある場合には考慮する必要があります。

また、資産と利益の関係に着目したのがROA(Return on Assets)であり、資本と利益の関係に着目したものがROE(Return on Equity)です。

収益性の指標 計算方法および指標の意味等
ROA
総資産利益率
(%)
計算方法:当期純利益 ÷ 総資産 × 100
ROAは総資産に占める当期純利益の割合を示す指標で、資産が効率的に活用され、利益を生み出していることを表します。
ROAが高いと、資産を効果的に活用した結果が利益に反映されており、資産から無駄なく利益を生み出していることになります。
ROE
自己資本利益率
(%)
計算方法:当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
ROEは自己資本からどれだけの利益を上げたのかを表す指標です。
株主から見ると、ROEが高い企業は出資した資本をうまく使って、効率良く利益を上げている企業と言えます。

生産性の分析に用いる経営指標

企業における「生産性」とは、企業が資産や人員などのリソースを効率的に活用して、商品やサービスを生産する能力を言います。ここでは2つの生産性を表す指標を紹介します。

生産性の指標 計算方法および指標の意味等
労働生産性 計算方法:生産量 ÷ 労働者数、付加価値 ÷ 労働投入量
労働生産性は、物理労働生産性として労働者一人当たりの生産量を表すものと、付加価値労働生産性として、労働者一人当たりの付加価値を表すものがあります。後者は「付加価値額」などと表現されることもあります。
資本生産性 計算方法:付加価値額 ÷ 有形固定資産、営業利益 ÷その資産への投下額など
資本生産性は、企業が保有する機械装置や設備、土地等の事業の資本となる資産がどのくらいの成果を上げられたのかを表す指標です。
ある資産がどれくらいの効果を上げられたのかを知りたいときは、投下した資本を分母にするなどして測定します。

付加価値とは、企業が新たに生み出した価値の合計値を言います。計算方法はいくつかあり、そのうちの一つは総生産高から外部購入価額を差し引いて求めます。付加価値の考え方としては、利益に近いと言えます。

また、これらの指標の計算においては、自社内の経済効果を図るために独自の計算方法をすることもあります。

安全性の分析に用いる経営指標

指標における「安全性」とは、財務的な安定性のことで、企業の資金繰りや倒産リスクについての情報を把握するために使われます。安全性は収益性とも大いに関係しているため、先に挙げたROEなどは安全性の指標として示されることもあります。

ここでは、数多くの安全性の指標のうち流動比率と自己資本比率を紹介します。

安全性の指標 計算方法および指標の意味等
流動比率
(%)
計算方法:流動資産 ÷ 流動負債 × 100
流動比率は、流動資産と流動負債のバランスを示しており、短期的な財務安全性についての指標です。
短期的な支払いを必要とする流動負債と同じく、短期的に現金化される流動資産のバランスを見ることで短期的な将来の安全性を知ることができます。流動比率が100%以下の場合、支払額のほうが回収額より大きいこととなり、危険な状態と言えます。
自己資本比率
(%)
計算方法:自己資本 ÷ 総資本 × 100
流動比率は、自己資本が資本全体のどれだけを占めるかを示す指標です。返済不要である自己資本の比率が小さいほど会社の安全性は低い、すなわち危険な状態であり、逆に自己資本比率が高いほど経営は安定している会社と言えます。
銀行などの金融機関においては財務安全性が重要視され、一定の自己資本比率が求められています。

成長性の分析に用いる経営指標

企業の成長性を見るにはいろいろな手法があり、売上高や各種利益の推移を見るだけでも成長性の分析には大いに役立ちます。ここでは、例として売上成長率を挙げておきます。

成長性の指標 計算方法および指標の意味等
売上成長率
(%)
計算方法:
(現在の期間の売上高−前の期間の売上高) ÷ 前の期間の売上高 × 100
売上高が一定期間内において、どれだけ増加または減少したかを示す指標です。企業の成長性を評価するために広く使用されます。成長率がプラスの場合には、顧客の獲得、市場シェアの拡大などが考えられます。
マイナスの場合は成長ではなく、縮小となります。

経営指標を算出するため3つの財務諸表

いくつかの経営指標を見てきましたが、これらの数字のほとんどは決算書、特に「財務三表」と呼ばれる貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書の3つの表から得られます。中小企業でキャッシュフロー計算書を作成していない場合には、資金繰り表などを利用するとよいでしょう。

貸借対照表

貸借対照表は、一定時点での企業の資産と負債、純資産の内容と金額を対比させて表示しており、資産の構成とその活用状況が把握できます。資産の部および負債の部は、流動性配列法と言って流動性の高いものから低いものへと配列されています。

先に示した経営指標のうち、貸借対照表から読み取れる数字としてはROAにおける総資産、ROEにおける自己資本をはじめ、安全性指標の流動資産や負債などがあります。

損益計算書

損益計算書は、一定期間における企業の収益と費用を表示し、その差額である利益・損失を示し、収益額や費用額の大きさやその結果としての利益の内訳を把握できます。先に示した経営指標のうち、損益計算書から読み取れる数字としては売上総利益率などの収益性指標や成長性の指標としての売上成長率などがあります。

決算書においては、注記事項でさらに詳細なデータもわかります。まずは、過去5年分程度の決算書を集め、参考にした経営指標の推移を見て、傾向をつかむことから始めてみましょう。

キャッシュ・フロー計算書

キャッシュフロー計算書は、企業の現金の流れを追跡し、貸借対照表や損益計算書では示しづらい資金動向やキャッシュの増減原因を把握することができます。損益計算書で示される利益は現預金の動きとイコールではありません。この利益と現預金のズレを正しく認識するためにキャッシュフロー計算書が作成されます。

一定期間における企業のキャッシュの流れを分類して表形式したキャッシュフロー計算書は、営業活動、投資活動、財務活動のそれぞれからどれだけのキャッシュが発生したり消費されたりしたかを明確に示します。

最終的には、期末において現預金でいくら使えるのかなど、他の経営指標と組み合わせてより詳細な分析を可能にするのがキャッシュフロー計算書です。

経営指標を用いて分析する際のポイント

経営指標を用いて分析をする方法は企業によってさまざまです。経営の分析にあたってはできるだけ考え方に偏りがなく、効率的な方法が望まれます。以下にポイントを挙げておきますので参考にしてください。

同業他社や同規模の会社と比較する

自社の過去の数値だけではなく、同業他社や同規模の会社と指標を比較してみましょう。

同時期の自社以外の状況を知ることによって、自社の現況がよく見えてきます。

下記は、2021年の中小企業の経営指標の一部を表しています。あくまでも平均値ではありますが参考になるでしょう。

産業 ROE 売上高経常
利益率(%)
自己資本
比率(%)
全業種 8.29 4.26 40.13
建設業 11.59 5.12 43.05
製造業 10.70 5.10 44.30
情報通信業 13.70 7.76 56.98
運輸業、郵便業 6.78 2.31 33.88
卸売業 10.49 2.59 39.62
小売業 8.52 2.21 36.64
不動産業、物品賃貸業 9.18 35.18

出典:2023年版「中小企業白書」|中小企業庁付属統計資料(一部)を加工して作成

さまざまな経営指標を用いて分析する

営業利益率や売上成長率などは感覚的にも非常に理解しやすく、数字も採取しやすいですが、生産性の指標などはデータの採取からやや難しいと言えます。決算書などからデータが求めやすい経営指標とそうでないものがあるわけです。

しかし、同じ経営指標ばかりを求めるのではなく、幅広くいろいろな角度から指標を計算し、比較することによって新たなことが見えてきます。したがって、経営指標は偏らずに多方面から分析するようにしましょう。

分析後に経営課題を見つけ解決策を模索する

経営指標を計算するのは、その先になんらかの課題や問題を見つけるためでもあります。

分析結果から得られる内容によっては、大きく経営方針の転換を迫られる場合もあります。

業績がよい場合であっても、人件費はどうするか、投資はどうするかと将来への課題が見えてきます。経営指標から得られる大きなヒントを見逃さず、解決策の模索につなげましょう。

経営指標を活用し、経営課題の解決につなげよう

経営指標は年に一度だけ見るものではなく、半期や四半期などで振り返って見てみましょう。同じ指標でも時期によって異なることが見えてきます。社内のペーパーレス化やDXが進んでくると、経営指標のどんなところが変わるのかも見えてくるでしょう。

経営指標を利用して「今会社はどういう状態にあるのか」を把握し、経営課題の解決に役立ててください。


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