• 更新日 : 2023年12月5日

個別指導塾の開業が増加中!?学習塾の開業方法、経営のコツを解説

個別指導塾の開業が増加中!?学習塾の開業方法、経営のコツを解説

ニーズが高まっているため、個別指導塾(学習塾)を開業して成功できる可能性があります。ただし、個人向けの小規模の塾でもさまざまな費用がかかるため、資金調達方法をあらかじめ検討しておくことが大切です。

本記事では、個別指導塾と集団指導塾の違いを説明した上で、開業の流れや手続きについて詳しく解説します。

個別指導塾の開業が増加中!人気の理由

一般的に、個別指導塾とは、マンツーマンで生徒に指導する形式の塾のことです。近年、学習塾全般で売上高が増加傾向にあります。2012年の学習塾売上高が約4,058億円に対し、2022年には約5,568億円でした。

その中でも、とくに個別指導塾の開業が人気を集めています。個別指導塾が注目される主な理由は、以下のとおりです。

  • 少子化により1人あたりの学習費が増えた
  • 質の高い授業のニーズが高まった
  • 小さな塾なら低コストでも開業できる
  • 専門的な資格がなくとも開業できる

それぞれ詳しく解説します。

参考:経済産業省 長期データ19.学習塾

少子化により1人あたりの学習費が増えた

少子化により、子ども1人あたりにかける学習費が増えたことが、人気の理由です。

たとえば、2018年時点で公立中学校の1人あたり学習費が488,397円、私立中学校で1,406,433円でした。4年後の2022年には、公立中学校で538,799円、私立中学校で1,436,353円まで増加しています。

つまり、生徒や保護者のニーズをしっかりと掴めば、個別指導塾の開業で高い売上を期待できるでしょう。

参考:文部科学省 平成30年度子供の学習費調査
参考:文部科学省 令和3年度子供の学習費調査

質の高い授業のニーズが高まった

生徒や保護者の質の高い授業に対するニーズが高まっている点も、個別指導塾開業が注目を集めている理由です。個別指導塾なら先生に質問しやすく、学習カリキュラムや学習環境が充実していると考える生徒や保護者が一定数います。

個別指導塾を開業し、質の高い授業を求める生徒や保護者の間で話題になれば、高収入にもつながるでしょう。

小さな塾なら低コストでも開業できる

小さな塾であれば、低コストで開業できる点も人気の理由です。個別指導塾なら、自宅などでも開業できます。

最初から大きな損失を抱えたくないと考えている人でも、比較的低いハードルで始められる点が、個別指導塾開業の増加につながっているのでしょう。また、最初は自宅で始めて、生徒を十分に集められることが判明してから、広い教室を借りる方法もあります。

専門的な資格がなくとも開業できる

専門的な資格を持たずに始められる点も、個別指導塾開業に人気が集まる理由です。個別指導塾なら、「教員免許を持っていないけれど教えることが好き」な人が先生になれます。

ただし、資格を所有していることも無駄ではありません。資格を持っていることをアピールすることで、個別指導塾の集客に役立つことはあるでしょう。

個別指導塾と集団指導塾の違い

個別指導塾と集団指導塾の主な違いは、カリキュラムや料金などです。個別指導塾は各生徒にあわせたカリキュラムを設定するのに対し、集団指導塾では複数人に同時に対応するため、決まったカリキュラムを設定する傾向にあります。また、料金は個別指導塾の方が割高のことが一般的です。

そこで、保護者は子どもが自分のペースにあわせて学習できるのが個別指導塾のメリットととらえる一方で、料金の割高さをデメリットと考える可能性があるでしょう。

個別指導塾は儲かる?年収の目安

一般的に個別指導塾経営による年収の目安は、500万円前後です。ただし、開業スタイルや生徒数、コストなどによっても金額は大きく異なります。

また、最初は収入が低くても、評判が広がって生徒数が増えて教室を増やせば、さらに年収を上げることもできるでしょう。経営が軌道に乗れば、1,000万円以上の年収も目指せます。

個別指導塾の開業スタイルは?

個別指導塾の主な開業スタイルは、以下のとおりです。

  • 自宅で個人塾を開業する
  • テナントを借りて開業する
  • フランチャイズに加盟して開業する
  • オンラインで開業する

それぞれの概要を紹介します。

自宅で個人塾を開業する

自宅で個人塾を開業すれば、賃料やテナント料が発生しません。一人の生徒にマンツーマンで授業する場合や、2〜3人の生徒に個別指導する場合は、自宅の一室に机と椅子を用意するだけで対応できるでしょう。

ただし、立地条件を選べない点、自宅に行くことに抵抗を覚える生徒・保護者がいる点などが自宅で個人塾を開業するデメリットです。

テナントを借りて開業する

テナントを借りて開業する場合は家賃が高くなりますが、生徒数が増えたときにも対応しやすいです。テナントで個人指導塾を営む際は、事前に「居抜き物件」と「スケルトン物件」の違いを理解しておきましょう。

居抜き物件とは、以前その場所で運営していた店舗の設備などが残っている物件です。それに対してスケルトン物件は、コンクリートが剥き出しで室内に何も残されていない物件を指します。

初期投資にかけるお金を抑えたい場合は、居抜き物件を探すとよいでしょう。

フランチャイズに加盟して開業する

フランチャイズに加盟して個別指導塾を開業すれば、本部の知名度を活用して集客できます。また、塾での指導経験がない場合、浅い場合は、フランチャイズに加盟することで教育や経営のノウハウを手に入れられる点もメリットです。

一方、ロイヤリティが発生するため、儲け(利益)が少なくなる点がデメリットとして挙げられます。また、原則として教材や経営方針を本部の指示に従わなければなりません。

オンラインで開業する

インターネットを通じて生徒に指導するオンラインの個別指導塾を開業すれば、ランニングコストを抑えられます。なぜなら、教室の確保にかかる費用がほとんどかからないためです。

また、幅広いエリアから生徒を集められる点もメリットとして挙げられます。近所に子どもがいない場合でも、オンラインならうまく集客すれば多くの生徒を集められるでしょう。

ただし、対面に比べて生徒や保護者との信頼関係を構築しにくい点がデメリットです。

個別指導塾の開業に必要なもの、費用は?

規模によって異なりますが、一般的に個別指導塾開業に数百万円はかかります。かかる主な費用は、以下のとおりです。

  • 物件取得費
  • 内装費・改装費
  • 教材費
  • 宣伝広告費

また、開業後も人件費や光熱費、賃料などの運転資金が発生します。開業してまもない頃は生徒が集まらない可能性もあるため、数ヶ月分の運転資金も確保するようにしましょう。

開業に必要な資金を用意できない場合は、開業スタイルを見直すことも大切です。

個別指導塾の開業の流れや手続き

個別指導塾開業の手続きの流れは、以下のとおりです。

  • 個別指導塾のコンセプトを策定
  • 教室用意のための物件取得や改装
  • 什器・備品を準備する
  • 申請書類の手続き
  • 生徒を集める

各手順を詳しく解説します。

個別指導塾のコンセプトを策定

個別指導塾の開業を決断したら、まず目的やコンセプトなどを考えます。具体的にどのような個別指導塾にするのか決めましょう。

また、事業計画も策定します。策定にあたって検討することは、一度に指導する生徒の人数・対象年齢・指導方法・指導場所などです。コンセプトの乖離がないように、事業計画を策定していきましょう。

教室用意のための物件取得や改装

コンセプトや事業計画に従い、個別指導塾の教室を用意しなければなりません。目的に見合う物件を探しましょう。

物件探しでは、賃料に加えて生徒の通いやすさも重要です。また、保護者の送迎を前提としているのであれば、十分な駐車スペースがある場所を選びましょう。

なお、個別指導塾で同時に複数の生徒を指導することを想定する場合、パーテーション設置などの改装も必要です。

什器・備品を準備する

教室を決めたら、什器や備品を準備します。個別指導塾に必要な什器・備品は、以下のとおりです。

  • 椅子
  • ホワイトボード(黒板)
  • ロッカー
  • OA機器

予算が不足している場合は、リサイクルショップで購入する方法やリースも検討しましょう。

そのほか、教材費なども必要です。フランチャイズで開業する場合、教材選びの手間は省けます。

申請書類の手続き

個人事業主として開業する場合、事業の開始日から1ヶ月以内に所轄の税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出しましょう。また、所得税の青色申告を受けるためには、「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出しなければなりません。

さらに、自治体が定めた期限までに「事業開始(廃止)等申告書」の提出が必要です。

参考:国税庁 A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続
参考:東京都主税局 事業を始めたとき・廃止したとき
参考:国税庁 A1-9 所得税の青色申告承認申請手続

生徒を集める

開業の準備が整ったら、生徒を集めましょう。生徒を集める具体的な方法は、以下のとおりです。

  • 個別指導塾のホームページを作成する
  • SNSで発信する
  • チラシを配布する

より多くの人にアピールするためには、ホームページやSNSの活用が欠かせません。また、近隣住民を集めるには、チラシや口コミが効果的なこともあります。

個別指導塾を開業する際に利用できる助成金・補助金

個別指導塾で新たに講師を雇うにあたって、厚生労働省の「地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)」を利用できる場合があります。地域雇用開発助成金とは、対象地域の事業主が事業所の設置や整備をして、地域に居住する求職者を雇う場合に、要件を満たせば最大3回の助成を受けられる制度です。

個別指導塾開業にあたって利用できる助成金がない場合でも、日本政策金融公庫で「新創業融資制度」を利用し、資金を調達する方法があります。新創業融資制度は、新たに事業を始める人や、事業開始後まもない人を対象にした融資です。

参考:厚生労働省 地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)
参考:日本政策金融公庫 新創業融資制度

個別指導塾の開業・経営に成功するために

個別指導塾の開業・経営に成功するために必要なことは、以下のとおりです。

  • 生徒が集まる立地を選ぶ
  • 他塾との差別化を図る
  • 開業資金・初期費用をなるべく抑える
  • 塾経営や経理に関する知識をつける
  • 生徒の学習ニーズに対応する
  • オンライン授業を取り入れる

それぞれの内容を紹介します。

生徒が集まる立地を選ぶ

個別指導塾の開業・経営に成功するには、生徒が集まりやすい立地を選ぶことが重要です。生徒が徒歩でも通いやすいか、もしくは駅近でアクセスが便利かなどをチェックしましょう。

また、競合が少ないエリアを選ぶこともポイントです。周囲に大手競合が存在する場合、知名度がない状態で開業すると、集客に苦戦するでしょう。

他塾との差別化を図る

どうしても大手学習塾との競合を避けられない場合は、差別化を図ることで集客を成功させましょう。規模や知名度で真っ向から争おうとしても、大手には対抗できません。

差別化を図る方法として、独自の質の高いカリキュラムを提供する、保護者とのコミュニケーションをしっかりとる、ITツールを活用して斬新かつ魅力的な授業を進めるなどが挙げられます。

開業資金・初期費用をなるべく抑える

開業後の資金に余裕を持たせるため、開業資金や初期費用を極力抑えることが大切です。

十分な資金がない場合に、自宅での開業から始める、SNSのようにお金のかからない宣伝手法を活用するなどの方法で初期費用を抑えられます。また、テナントを借りる場合は、期待できる売上に見合わないような高額の賃料の物件は避けるようにしましょう。

塾経営や経理に関する知識をつける

マーケティングなど、塾経営に関する知識をつけておくことも大切です。子ども一人あたり学習費は上昇傾向にありますが、少子化の中で経営戦略なしに勝負しても生き残りは難しいでしょう。

また、経理に関する知識も重要です。たとえ塾が軌道に乗っていても、資金繰りを把握せず、生徒からの月謝入金が遅れるなどの事態を招くと、諸経費の支払いが必要なタイミングで資金が不足する可能性があります。

生徒の学習ニーズに対応する

生徒の学習ニーズに対応することもポイントです。

質の高い教材やカリキュラムを提供しているつもりでも、生徒が関心を示さなかったり、学習効果が出なかったりすると退塾につながります。そこで、定期的に生徒とこまめにコミュニケーションをとり、「塾で何を重点的に学びたいか」「何が苦手で何が得意か」などを十分に把握しておけば、学習ニーズにあったカリキュラムを提供しやすくなるでしょう。

オンライン授業を取り入れる

オンライン授業を取り入れることも、個別指導塾で成功する秘訣です。

オンライン授業を活用すれば、遠方にいる生徒や部活などで遅い時間にしか学習できない生徒にも対応できます。そのため、自宅やテナントで対面で指導するスタイルの塾でも、一部にオンライン授業を取り入れることにより、生徒や保護者に利便性をアピールできるでしょう。

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個別指導塾開業で成功するにはニーズが鍵

「少子化で1人あたりの学習費が増えた」「低コストでも始められる」などの理由で、個別指導塾の開業に注目が集まっています。しかし、他の学習塾との激しい競争に生き残るためには、生徒や保護者のニーズをとらえた上で集客しなければなりません。

マーケット知識を活用することや、生徒・保護者とこまめなコミュニケーションをとりニーズを把握することにより、個別指導塾経営での成功を目指しましょう。


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